比企谷八幡に特殊な力があるのはやはり間違っている。~救いようのない哀れな理性の化物に幸せを~ 作:@まきにき
葉山の依頼を先にこなすはずが思わぬところで増えてしまいました....。まぁでもいいやと開き直りでの投稿です。
葉山が奉仕部に来た翌日。
俺はある程度今回の依頼と葉山がどうしたいのか分かってしまっていた。葉山の今回のやり方は言ってしまえば葉山の自己満足だ。別に葉山自身が困るようなことにはならないし、俺には理解出来ないことだったが依頼を受けたからにはなんとかしようと、HRが始まる前に寝たフリをしながら横目で葉山達のグループを見ていた。
いつもの風景で別段変わったことはないなと思っていると、急に前から「おはよう、比企谷君♪」と声がした。つい最近もこの声を聞いた覚えがあった俺は声が聞こえた方に顔を向ける。
するとそこにはーーー。
天使がいた。
「比企谷君聞こえてる?」
「お、おう...」とおもわず一瞬口ごもってしまった。声のした方に顔を向けると前髪が目にはいるのか左手で髪を押さえながら俺に話しかけている、戸塚がいた。
「もう!比企谷君、挨拶してるんだからちゃんと返してよー」
戸塚は、むっとして怒った様子を見せているが不思議と可愛く見えてしまう。
「お、おう悪いな」と俺が謝るとチャイムが鳴り戸塚は自分の席に戻っていった。
HRが終わり次の授業の準備をしていると葉山が俺に話しかけてきた。
「やあ」
「・・・なんだよ」
「はは、そんなあからさまに嫌な顔をされると流石に傷付くな」
え?そんな嫌そうな顔してた?かなり隠してはいたんだけどな。
「本当に嫌だからな」
「誰かに直接ここまで否定されるのは初めてだな...それで何か分かったかい?」
「その話を教室でするのもあれだしな、取り合えず授業が始まるまで廊下に移動するぞ、いいよな?」
「ああ。構わない」
俺と葉山が教室から出ようとしたとき三浦と由比ヶ浜が何か言っていた気がするが無視して廊下に出る。
「ここまで来れば誰にも聞かれないだろ。そうだな、まず聞くが今回の依頼。犯人を探しても無駄だろ?」
「っ!・・・それは何故だい?」
葉山の問いに俺は黙って、ただ葉山を見ていると「・・・そうか、やっぱり気付いてたんだね」と葉山は答えた。
「今回の依頼、内容を変えるつもりはないのか?」
それは葉山が今しようとしている自己満足ではなく、自分の為に自分の理想を相手に押し付ける方法を取らないか?という意味を含めた問いだった。勿論葉山が俺の言葉をどこまで理解できるかは分からないが、今のこいつを見ているといままでの自分が否定されているようでイライラして仕方がなかったのだ。
「・・・断る。今回の依頼はあの3人にチェーンメールを出したのは誰かということだ」
「それならお「キーンコーンカーンコーン」・・・授業が始まるな、さっさと教室に戻るぞ」
「・・・ああ」
教室に戻ると1時限目の担任こと我等が奉仕部顧問の平塚先生が仁王立ちで待っていた。「お前は席についていいぞ葉山。比企谷はこっちにこい」と言い、葉山だけ椅子に座らせた。何故だ、そして今から俺に放つであろうあの拳、今日も調子が良いみたいでボキボキと鳴らしている。
「えと何で葉山は良いんですか?」と俺は素朴な疑問を平塚先生に聞いたところ、何故か三浦から俺が葉山を連れ出したことになっており全て俺のせいになっていた。三浦許すマジ。
俺は振り返り三浦の方を見ると三浦がすごい形相でこちらを睨んでいた。てかどれだけ睨んでんだよ...何?俺は仇か何かなのん?
「比企谷、今から鉄拳制裁を大人しく喰らうか後で私の手伝いをするかどちらかを選ばしてやる」
あー、あれだ。この人ただ貯まった雑務を俺に押し付けようとしてるだけだ。教師としてそれはどうなの?と思ったが鉄拳制裁よりはましだと後で手伝うことにした。
授業の合間の休憩時間に葉山のグループを見ても普段と変わらず、あっという間に4時限目になった。4時限目の授業は数学だった、苦手科目ということと昨日のテニスでの疲れもあってか、俺はいつの間にか眠ってしまっていた。
「ヒキ....がゃ...」
なんだろう、声が聞こえる。でもこれはあれだ俺が呼ばれているわけじゃない。
「ひき、がや!」
人の周りで騒いでるの誰だよ....煩い。
「比企谷!」
あー煩い。てか比企谷君、無視してないで返事してやれよ。
「ちょっと隼人~そんなやつどっちでもいいじゃん」
「そう言うわけにもいかないだろう...おい比企谷。いい加減に起きろ」
誰かの手により俺の体が揺すられる。俺は未だに重い瞼を擦りながら顔を上げると葉山とやたら俺を睨んでいる三浦がいた。
「やっと起きたか...比企谷。お前に用があるって子が来てるぞ?」
俺は今の状況が理解できないまま教室の入り口を見ると神埼彩月が俺の方を見ていた。
何故神崎がこんなところにいるのか分からない。俺は自然と葉山の方に目線を戻すと苦笑いしている葉山と俺を先程から睨んでいる三浦がいた。あまりに三浦が怖いので自然と3人が見えないところに目線を移動すると、葉山といつも一緒にいる戸部と大和と大岡の姿が目にはいった。だが普段の彼等とは違い、今は3人とも話そうとはせず携帯を弄っていた。その姿を見て全てが繋がった俺だが三浦の「あんた聞いてんの?」というドスの聞いた声で慌てて席から立ち上がり神崎のもとにいく。俺が立ち上がり三浦の隣を通りすぎようとした瞬間に「あんた、結衣を泣かせたら殺すからね」と言われ、意味のわからない恐怖を与えられた。
「あ、あの先輩....急にすいません」
クラスの男子の目が痛いと思いながら俺は「別に気にしてないから、用件は?」と言い話を切り出してもらう。
「あ、あの!」と神崎はいつもの小声ではなく勇気を振り絞ったような大声で「一緒に昼ごはん食べてくれないでひょうか!?」と噛みながら言った。うん、赤くなってる神崎も悪くないとか思いながら、俺は今教室にいることを思い出した。
神崎は今年入った1年の中では5指に入るほどに゛男子”から人気があるらしい。あだ名もあるらしく『神崎大和撫子』と言うらしい。一色から聞いたことだが。そんな女の子が昼ごはんに男子を誘ったらどうなるか....。
・・・・・・。
「「「うぉあああああ!」」」
「「「何故だぁああああああ!」」」
「まじかよ!ひきたに君!マジっべー!マジっべー!!」
と男子達の悲痛な叫びがこだました。てかマジっべーて何だよ。そして誰だよ、ひきたに君。
神崎は男子達の叫び声で少し驚いていたが俺に目線を戻して「駄目....でしょうか?」と上目使い+消え入りそうな声で言ってきた。その表情で男子達は再び騒ぎ始めるわ、三浦は睨んでくるわで俺が返事に困っていると、急に海老名さんが俺達の前に出てきて「神崎さん、悪いけど...ひきたに君は葉山君と付き合ってるから諦めて」と訳がわからないことを言ってきた。
「は?」
「え?....えぇえええええ!!」
神崎から聞いたこともないような悲痛な叫びがあがる。
「で、でも!男同士なんて「性別なんて関係ないわ!いやむしろそこがいい!葉山君がひきたに君を言葉攻めにしていたのを私は今日見たんだから!!葉山君の言葉攻めでひきたに君が全てその言葉を受けて、はや×はち....きましたわぁあああ!ぶはぁ!!」ひっ...」
海老名さんのテンションに引いた、神崎を他所に三浦が海老名さんを連れていってくれた。
「せ、先輩今の話本当です...か?」
「なわけないだろう。全部あいつの妄言だ」
「で、ですよね...でも!私は2番目でもいいですよ?」
「・・・は?」
「ひ、ヒッキー!に、にに二番ってどうゆうこと!?」
「お、落ち着け由比ヶ浜...俺が一番分かってない」
「それで先輩ご飯ですが...」
「あー俺1人で食べるのがす「あの、今日朝たまたま、ほんとたまたま起きてしまいまして、多めにお弁当作って来てしまったんですけど....駄目、ですか?」」
何この断りにくい状況、どこのラブコメだよ。小町~お兄ちゃん、もう帰りたいよ。
「・・・分かった、弁当勿体無いしな」
俺が答えると神崎は「はい♪」と笑顔で言ってきた。
ここに1秒でもいたくなかったので、足早に移動しようとすると、神崎が俺の腕に抱きついてきた。俺の思考が止まるのと同時に神崎は動かなくなった俺を引きずるように教室から出ようとした。俺の思考が少しずつ回復していくとこの状況の恥ずかしさと神崎の由比ヶ浜よりは小さく、雪ノ下よりはかなり大きい胸の感触が俺の腕に拡がった。
「ひ、ヒッキー!何くっついてるの!!」と由比ヶ浜が叫んでるが、どう考えても俺が悪いわけじゃない。まぁ俺から抱きついたら普通に警察に通報されるレベル....おい、由比ヶ浜携帯を構えてお前どこに電話を...おい。
「あっもしもし、ゆきのん?」
待ってくれ、由比ヶ浜...それだけはという俺の心の叫びもむなしく...。
「ヒッキーがねーーー。」
死刑判決を受けたのだった。
今は昼休みで普段ならベストプレイスで1人ご飯を食べている時間だ。なのに....どうしてこうなった。
俺は今、奉仕部で神崎と一色、雪ノ下と由比ヶ浜、それに何故か葉山と三浦と海老名さんというメンバーでご飯を食べている。
「つーか。何であーし等までこんなとこでご飯食べてるわけ?」
それは俺が聞きたいんだけど?何でいんの?ほんとに。
「まぁまぁ、優美子たまにはいいじゃん」
「でもさー海老名、あーしこの女のこと嫌いなんですけどー」
「あら、それは奇遇ね。私も貴女のこと嫌いだから安心してちょうだい。それに私はいつもここで食べていて、急に来た貴女に文句を言われる筋合いはないのだけれど」
「ま、まぁまぁゆきのんも、優美子もさ仲良くしようよ」
「無理」
「無理ね」
「はは、息ピッタリだし...」
「なぁ...俺もう帰っていい?」
「センパ~イ、今この状況で逃げたら切り落としますよ♪」
何を!?とは聞けなかった。
「あ、あの先輩、これ口に合うか分かりませんが食べてみてください」
神崎の作ってきた料理を見て俺は素直に美味しそうだと思った。でもいくら美味しそうでも学校のお弁当に、おせちはどうかと思う....。てか伊勢海老とかも入ってるし。
食べない訳にもいかないので玉子焼きを1つもらい食べた。その味は中はとろけるようにふわふわで外は固すぎず柔らかすぎずで何より絶妙な甘さを醸し出していておもわず口から「うまい...」と言っていた。
「ほんとですか!?ありがとうございます♪」
「じゃあ~明日はわたしが先輩にお弁当作ってきてあげますね♪」
「いやいいよ。俺はパン買って食べるから」
「えーそんなにわたしの手料理は食べたくないんですかー...」
「そういう訳じゃないが...」と俺はマッカンを飲みながら一色に答える。
「あっ!それなら~雪ノ下先輩~」
「何かしら?一色さん」
「勝負をしませんか?」
俺はこの時心底嫌な予感がしていた。
「勝負....?」
雪ノ下はいつもの冷静な口調ではなく少し語尾が強くなっている。
「はい♪ここにいる人で先輩に誰の料理が一番美味しかったか判定してもらうんです♪」
「何故私がこの男にそこまでしなくてはいけないのかしら?」
「もしかして雪ノ下先輩」
辞めろ一色...。お願いだからその先を言わないでくれ。雪ノ下にその言葉は...。
「私に負けるのが怖いんですか?」
皆さんからの意見を聞きまして色々と反省するところがありました。これからも不甲斐ないところはあると思いますが頑張って書いていきたいと思います。