比企谷八幡に特殊な力があるのはやはり間違っている。~救いようのない哀れな理性の化物に幸せを~ 作:@まきにき
テニスのルールは少し自信がないので間違った表現などあれば御指摘お願いします。
どうしてこうなった。
今の状況を見ると一番適切な言葉と言えるだろう。戸塚から奉仕部に依頼があり練習に付き合っていただけだのはずだ。なのに勝手に横から入ってきた奴等に勝負を挑まれている。しかも何故か混合ダブルスで女子とペアを組んで勝負をしなくてはいけないというおまけ付きだ。え、何この状況どこの少年漫画の主人公だよ。
「それで~先輩♪どちらを選ぶんですか?」
気のせいか語尾が怖いんですが一色さん...。
「ひ、ヒッキー...そ、その」
なんだこのラブコメ主人公みたいな状況、こんな状況本来俺にくるべきイベントじゃないはずだ。それに仮に由比ヶ浜を選んだとしたら後々三浦達とわだかまりは出来てしまうだろう、一色は...大丈夫だな、うん。
「一色、テニスの経験はあるか?」
「ひ、ヒッキー、やっぱりあたしじゃ駄目?」
由比ヶ浜が今にも泣きそうな顔で俺に聞いてくる。やめてくれ、俺の元々少ないSAN値が削られていくから。
「そうじゃない、由比ヶ浜には雪ノ下を呼んできてもらいたいんだ。たぶん保健室にいるはずだから、頼めるか?」
「へ?ゆきのん保健室にいるの?」
「ああ、戸塚の足が擦れて怪我しただろ、それで救急箱を探しに行ってるんだ、たぶん」
「そ、そっか!」と言って由比ヶ浜は校舎の方に走っていった。
「それで一色、テニスの経験は?」
「ありますよ?」
「意外だな」
「聞いといて酷くないですか?」
「いやだってお前努力とかしなさそうだし」
「何いってるんですか!私超努力家じゃないですか!」
「いや知らないから、それで本当は何でテニスやってたんだ?」
「だって~テニスが出来る女子って可愛いじゃないですか~♪」
「・・・さぁて試合始めるかー」
「ちょ!先輩!待ってくださいよ!」
一色は俺がテニスコートに向かおうとすると慌てて服の袖を掴んでくる、少しドキッとなってしまったが平静を装ってなんとか振り返る。
「どうした?もう聞くことはないぞ?」
「そうじゃなくてですね、三浦先輩、中学の時テニス部で県選抜にも選ばれてるんですよ」
え?何それ、勝てる要素がないんですけど?どれくらい勝つのが無謀かと言うと勇者と魔王にモブキャラが勝とうとするくらい無謀。
「・・・お前三浦のボール打ち返せるか?」
「難しいですね、予めどこに飛んでくるか分かっていれば話は別ですが...」
ほう、それは良いことを聞いた。
「なあ一色、俺から作戦がある」
「何ですか?」
「まず初球は三浦の実力を見るために敢えて見逃す、そして2球目からは、ーーーーーーだ。」
「いやいや...先輩流石にそれは無理だと思うんですけど...」
「信じろって、上手くいくからたぶん」
この作戦は信じてもらえなかったら意味ないしな。と言ってもいくらなんでも無理か。
「たぶんですか...先輩らしいですね。・・・分かりました、先輩を信じます」
「は?」
信じてくれるとは思ってなかったので思ったことをそのまま口に出していってしまう。
「は?って何ですか?もしかして嘘だったんですか?」
「いや嘘じゃねーけど、こんな作戦、普通信じられなくないか?」
「はぁ、まーそうですね、ぶっちゃけ今でも疑ってます。でも先輩はそんな意味のない嘘をつくような人だとは思ってませんから♪」
それだけ言って一色はテニスコートに入っていく。一色の性格を知らなかったらうっかり惚れそうになってたなと頭を掻きながら俺もコートに入った。
「葉山先輩、ヨロシクお願いしますねっ♪」
「この頃部活に出てないと思ったらこっちにいたんだね、いろは」
「駄目でしたか~?」
「いや、駄目じゃないよ。でも程々にしてくれよ」
「はーい♪」
「ねえ?隼人、知り合い?」
「ああ、1つ下で一色いろは、サッカー部のマネージャーをやってくれているんだ」
「ヨロシクでーす♪」
「へえ。でもおかしくなーい?サッカー部のマネージャーってことは隼人のこと知ってるよね?」
「はい。知ってますけど?」
「それなら何でそいつとペアなんて組んでるわけ?」
「そんなこと三浦先輩には関係ないと思いますけど♪」
一色は、ずっと笑顔で三浦に答えているがこんな怖い笑顔はないだろう。なにせ空気が軋んでいてこの場所にいたくなくなる。そんな二人の雰囲気を感じ取ったのか葉山が三浦を宥めて試合開始となった。
審判は経験者の戸塚にやってもらい葉山達からサーブとなった。
「The best of 1set match 三浦&葉山is serving. Play!」
おお、なんて言うか本格的だなぁと思っていると三浦がサーブを打ってくる、最初のサーブのボールはある程度くる場所は決まっているので打ち返せるだろうと甘く考えての初球様子見だったのだが現実はそこまで甘くはなく三浦が打った打球は俺の予想よりかなり速かった。
「まじか...」
「15ー0(フィフティーン・ラブ)」
これは最初から使わないと駄目か...と半分諦めて審判(戸塚)にタイムを申告する。
「あれー?まだ初球だけど?あっ、勝ち目がないと分かって作戦会議?まじウケるんですけど~」
三浦が何か言ってるが気にせず俺は、右目のカラーコンタクトだけ外して一色を呼ぶ。
「先輩、何でコンタクト外してるんですか?」
[まじあのたてロールムカつくんですけど!]
「ああ、その意見には俺も賛成だが少し落ち着け」
「ん?」
「あ、ああいや何でもない。それよりあのボール打ち返せるか?」
「当たり前じゃないですか!」
[余裕ですよ!]
「そっか、それじゃあ手筈通りにな」
「はーい♪」
俺達は作戦会議を終えるとテニスコートの周りに下校しようとしていた生徒が集まっていた。
というか女子生徒ばかりが集まっていた。
「戸塚、タイムは終わりだ。始めてくれ」
「うん。それじゃあ15ー0(フィフティーン・ラブ)から始めます」
ダブルスのルール上俺と一色が交代で三浦のサーブを打ち返さなければならない。俺一人だったら確実に負けていたなと思いながら一色に全てを任せることにした。
三浦のサーブはダブルス用のコートギリギリを狙った良い打球だった。流石は県選抜に選ばれただけはあるだろう。
「三浦先輩~そんなんじゃ私からポイントはとれませんよ!」
一色は上手く合わせて葉山の方に打ち返す。俺と一色は手筈通り、俺が前に出て中央に移動し一色は後ろの中央に移動した。俺が一色に言った作戦は、ただ俺が走ったほうと逆に走ってくれ...だ。そうすれば全て一色の方にボールが飛んでくると説明した。他人任せと思われるだろうが当たり前だ、俺は出来るだけ動きたくない。簡単に言えばこの作戦は普通サーブするほうがやる高等テクニックの1つで゛オーストラリアンフォーメーション“と言うのだがその逆なので゛逆オーストラリアンフォーメーション“とでも名乗っておこう。
葉山は1度怪訝そうな顔をしたが俺にはどちらに打とうとしているのかまるわかりなので葉山が打つよりも少し早くに動き出す。
俺が右に走ることで一色は左に走り葉山が打った時には一色が丁度移動しており見事に決める。いやほんとに見事でした、葉山の上に打ち返してインさせるとかどこのプロだよとか思いながらもこちらに笑顔で駆け寄ってきた一色とハイタッチする。
「15-15(フィフティーン・オール)」
俺達の攻撃を見た、野次馬「生徒達」はたいへんはしゃいでおったそうな。
「ま、まぐれだし!」と三浦が言ってくるが悪いな三浦これはまぐれじゃないんだ、諦めてくれと心の中で合掌をして俺の番になる。
流石に俺が打ち返すのに先程の作戦は使えないので普通に横並びで対応する。
三浦のサーブをなんとか返した俺だが相手にとってはチャンスボールになってしまった、ふわふわと三浦のいる位置にボールを返してしまった。
[チャンス!でも隼人にあんな態度とって簡単に点とるのもあれだし~そうだ、スマッシュじゃなくてドロップショットで決めてやるし!]
俺は三浦が走ったのと同時に前に走った、三浦は驚いていたが気付いたときは既にドロップショットで打とうと構えている時だった、俺は軽く打ち返された、ボールを三浦に当てないように打ち返してポイントをとった。
「15-30(フィフティーン・サーティーン)」
このあとも゛逆オーストラリアンフォーメーション“で得点を取り1ゲームを先取した。
このまま俺達の勝ちで終わると思ったその時事件は起きた。
「これはなんの騒ぎかしら?」
酷く冷たい声で雪ノ下雪乃は現れた。
・・・さっきまでの賑やかな雰囲気が嘘のように辺りは静かになり周りにいた野次馬もいつの間にかいなくなっていた。
「まぁまぁ雪ノ下さん、落ち着いて」
「何故あなたがここにいるのかしら?」
今の雪ノ下に話しかけるとか俺には無理だなと考えながら見守ることにした。
「ちょっと手違いでね、勝負をしようってことになったんだ」
「勝負?」
「てかさーあんたこそいきなりきて何様のつもりなわけ?」
「おい、優美子やめ「私はあなたより前にここにいて正式に依頼を受けてここにいたのだけれど、それであなたは誰なのかしら?生憎だけれど虫のように群がって自分のテリトリー内でしか威張ることの出来ない人に心当たりなんてないのだけれど」...」
雪ノ下の後ろにいる、由比ヶ浜が何か言ってる気がするがこっちまで聞こえないほど声が小さいし泣きそうなので察することにした。
「なっ!あんたまじなんなわけ!?」
「ただ怒鳴り散らすことしか出来ないの?全くほんとに救えないわね」
遠目で見ても三浦は憤慨しているようで腕をプルプルと震わせている。因みに雪ノ下がなぜここまで機嫌が悪いのかと言うと自分を除け者にして勝手にこんなことをやっていたことで主に俺にあたりにいこうとしたが途中で三浦にケンカを売られ丁度いいからストレス発散の為に三浦に当たることにしたらしい。
俺の身代わりになった三浦に敬礼!
「っ!それならあーしと一騎討ちでテニスで勝負しようじゃん」
「おい!優美子!!」
「葉山君は黙っていなさい。これは私と三浦さんの問題だわ」
「それでどーなの?」
県選抜に選ばれた三浦がテニスで負けると思えないが、それよりも雪ノ下が勝負に負けることの方が俺は想像できないんだよな。
「いいわ。受けてたちましょう、でも後で部員に躾もしなくてはいけないの、悪いけれど1セット先に先取したほうの勝ちでいいかしら?その代わりあなたにサーブを譲るわ」
「とことん舐めてくれるじゃない...その自信たっぷりの顔を踏み潰してあげる」
「へえ、でも貴女には無理ね」
「そんなことやってみなきゃ分からないじゃない!」
「分かるわよ、だって彼に負けていたんでしょ?」
雪ノ下は俺の方を見ながら三浦に言う。どうでもいいが俺が関係ないところで俺をディスるのやめてくれませんかね、ほんとに。
「べ!別にあいつに負けていたわけじゃないし!殆どそっちのいろはって子が決めていただけてでそっちのやつは殆ど何もしてないし!」
「そう。゛貴女“にはそう見えたのね」
゛貴女゛には?俺は少し気になる事が出来たので未だに慌てている由比ヶ浜をこちらに呼ぶ。
「ヒッキーどうしよう!このままじゃ、ゆきのんと優美子が」
「大丈夫だ、あの二人のことは、ほっておけ。それよりも雪ノ下とお前はいつから試合を見てたんだ?」
「いつってえーとねー。ヒッキーに言われて保健室に行ったらほんとにゆきのんがいて、説明してそのまま連れてきたから殆ど最初からいたよ?」
「黙ってみてたってことか?」
「うん!面白そうだったし!」
「そうですか...」
「それにしても、いろはちゃん凄かったね!なんか優美子の打球、バーンて打ち返してポイント取っちゃうし!」
「い、いえ。あれは先輩のおかげですから...本当に凄いのは先輩ですよ」
「え?ヒッキーどういうこと?」
「雪ノ下は分かってるみたいだしあとであいつに聞いてみろ。それより試合が始まるぞ」
「え、えと。これより雪ノ下さんと三浦さんで試合をします。サーブは三浦さんからで1セット先に取った方の勝ち。それでは」
戸塚の「それでは」という掛け声とともに三浦がサーブを打った。俺達は初球三浦の実力を知るために見逃したが雪ノ下は難なく返してポイントを奪った。
「その程度なの?」
「くっ....くっそぉおお!」
三浦は先程よりも鋭い打球を打つがこれも雪ノ下に打ち返されてしまう。今度は三浦も反応して右サイドに打ち返す。雪ノ下は左サイドにいたので三浦のポイントかと一瞬思ったが三浦が打つ前にいつの間にか雪ノ下は左サイドに移動しており強烈な回転をかけて三浦のラケットを弾き飛ばす。
「先輩...雪ノ下先輩って何者ですか?」
「知らん、俺が聞きたいくらいだ」
ほんとにあいつ何者なんだろうな、弱点とかないのかね?あーあったは俺と同じで友達がいない。
「凄い!ゆきのん!」
俺達が雑談していると葉山がこちらに近付いてきた。
「やあ」
「なんだよ」
「優美子じゃ、雪ノ下さんには勝てない。それは分かっていたんだ」
「だから止めようとしたのか?」
「ああ。でも遅かった、出来ればあの二人には仲良くしてもらいたかったんだ」
それは無理だろう、あんなに性格が違っているのに仲良く出来るはずがない。
「隼人君、私もゆきのんと優美子には仲良くしてほしいって思うよ。でもあそこで止めても仲良くは出来ないんじゃないかなって思うんだ」
「でも、恐らく優美子はポイントを取れずに負けると思う、そしたら仲良くなるにはもっと難しくなるんじゃないかと思うんだ」
「そんな外面だけ気にしてる関係が友達って言えるのか?」
「・・・どういう意味だい?」
「ほんとはお前なら分かってるんだろ、外面ばっかり気にして本音を話せずに皆が大好きな葉山隼人を演じているお前ならな」
「・・・君は「悪いな試合が終わったみたいだ」...」
葉山がなにかをいいかけたが俺は葉山の言葉を制止して雪ノ下の元に向かう。
「ま、待って!ヒッキー」
「置いてかないでくださいよー!先輩!」
振り返ると葉山が下を向いて俯いていたのでキャラじゃないと思いながらも葉山の元に戻り「お前は今やらなきゃいけないことがあるだろ?」と言ってテニスコートで泣き崩れている三浦と元気づけている由比ヶ浜と最初三浦と一緒にきたやつらを残して部室に戻った。
連役やなぁ....おかしくなければいいなぁ。