比企谷八幡に特殊な力があるのはやはり間違っている。~救いようのない哀れな理性の化物に幸せを~   作:@まきにき

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テニス勝負(前半戦)

 

一色と神埼彩月の問題が解決してから一色は奉仕部に入り浸っていた。由比ヶ浜の話によるとサッカー部のマネージャーをしているらしいのだがそっちに行っている気配はまるで見えない。

 

 

「あーそういえば、せんぱーい」

 

「なんだ?」

 

「先輩の目ってオッドアイだったんじゃないんですか?今どちらも赤いんですけど~」

 

あーそういえばそんな話をした気がしたが生憎と説明するのも面倒なので誤魔化すことにする。

 

「別に気のせいだろ」

 

「えー意味わからないんですけど~」

 

「ヒッキーの目の色が違うのはヒッキー、カラーコンタクトを付けてるからだよ?」

 

ちっ、余計なことを。

 

「えー、それじゃあ嘘じゃないですか~ていうか先輩、カラーコンタクトって校則違反ですよ?」

 

「由比ヶ浜何で言っちゃってるの?」

 

「えへへ」

 

えへへじゃねーよ。ちょっと可愛いとか思っちゃっただろうが!

 

「はぁ、俺のカラーコンタクトが違反ならお前の香水だって校則違反だろうが」

 

 

・・・・・。

 

 

一瞬の静寂。そしてその静寂を破ったのは由比ヶ浜だった。

 

「き、きもっ!ヒッキーマジきもい!何いろはちゃんの匂い嗅いでるの!」

 

近付かなくても残り香が残るレベルだから香水だって言ったんだが由比ヶ浜さんは何か誤解をしたらしく頬を赤く染めて俺をひたすらディスり始めた。

 

「由比ヶ浜さん、少し落ち着きなさい」

 

「で、でもさ!ゆきのん!」

 

おー、珍しく雪ノ下が俺を庇おうとしてくれている、うん涙が出てきそうだ。

 

「これが変態なのは最初からよ」

 

違う。余計にディスられただけだった。もうやめて!八幡のHPはもう0よ!

 

「あ、とそ、そうですか...それでその....どうですか?」

 

何が?

 

俺が黙っていると痺れを切らしたのか一色が言葉を続けてくる。

 

「ですから!その...臭くない、ですか?」

 

そんな頬を赤く染めながら上目使いで見られたら臭いなんて言えるはずがない、てか臭くないし。

 

「べ、別に臭くにゃい.....」

 

うん、おもいっきり噛んでしまった。人との接触をなるべく避けてきた弊害がこんなところで出てしまうとは...。

 

「ぷ、なんですか気持ち悪いですよ?先輩♪」

 

「っ!」

 

俺は一色の笑顔に思わず見とれてしまい慌てて顔を背ける。

 

「あー!ヒッキー!顔赤くなってるー!」

 

今そこを指摘するの?鬼なの?悪魔なの?

 

「ヒキガエル君ほんとに引いてしまうほどの気持ち悪さだわ」

 

「おいこら、なんで俺の小学校の時のアダ名知ってんだよ」

 

今では当たり前のようになっている会話を4人でしていると奉仕部の扉をノックする音が聞こえた。

 

「どうぞ」

 

因みに一色は俺と由比ヶ浜の間に椅子を持ってきて座っている。

 

「し、失礼します」

 

「あ!彩ちゃん!」

 

「由比ヶ浜さん、さっそく来ちゃった」

 

「うん!待ってたよ!」

 

「どういうことだ?」

 

「ほら!私もここの部員だし何か手伝えることはないかなーってそれで彩ちゃん、困ってたからここの部のこと教えたの!」

 

いや仕事増やすなよ。俺は働きたくない。

 

「ちょっと待ってくれるかしら。由比ヶ浜さんはそもそも部員ではないのだけれど」

 

違うんだ...。いつのまにか流れで部員になってる展開とかじゃないんだ。

 

由比ヶ浜本人も「違うんだ!?」と言って雪ノ下に部員の名簿に名前がないものと言われたので急いで入部届けを書いて雪ノ下に渡した。

 

「先輩、これって私も書いた方が良いんですかね?」

 

「俺に聞くな、知らん」

 

「一色さんは、サッカー部のマネージャーをやっていると由比ヶ浜さんから聞いたのだけれどそちらの方には行かなくていいのかしら?」

 

「あーとそれはですね...」

 

歯切れが悪いことから察するに行かないとまずいのだろう。本当に何でこんなとこに来てるんだ?

 

「あのー...」

 

そう言えば、忘れていたが依頼人が来ていたんだったな。それにしても由比ヶ浜の知り合いだけあってかなり可愛いな。

 

「彩ちゃん!ごめんね!取り合えず座って!」

 

「大丈夫かな?迷惑じゃなかった?」

 

「ううん!大丈夫だよ!皆優しいから!きっと彩ちゃんのお願い叶えてくれるよ」

 

ここで雪ノ下から「由比ヶ浜さん、それは違うわ」といつものくだりをしたのだがそれはいいとして。

 

「あの、うちのテニス部ってすごい弱くて...だから僕を鍛えて欲しいんです!」

 

「あなたが強くなったとしてもテニス部が強くなるとは限らないと思うのだけれど」

 

「そ、それは...」

 

「で、でもさ!ゆきのん!誰かが引っ張っていったほうが皆のやる気も上がると思うしさ!」

 

「で、でもね由比ヶ浜さん」と由比ヶ浜が雪ノ下を説得しているなか戸塚と言うらしい由比ヶ浜の友達は俺に話かけてきた。

 

「やっぱり....迷惑だったよね」 

 

「・・・んなことないんじゃねーのか?」

 

「え?」

 

「何かを真剣にやろうとすることは素直に凄いと思うし、あとはやり遂げられるかどうかだ。それに由比ヶ浜があれだけ言ってるんだ、下手に迷惑なんて言う方が失礼だと俺は思うぞ」

 

まぁ俺自身努力や、何かに真面目に打ち込んだことなんてないから気持ちが分かるなんて口が裂けても言えないが由比ヶ浜のやっていることに泥を付けることだけはしてほしくなかった。

 

「ぷ、先輩らしいですねっ♪」

 

「ほっとけ」

 

ガタン。と音がしたと思ったら戸塚がいきなり俺の手を掴んできた。

 

「そうだね!あの比企谷君本当にありがとう♪」

 

「いや、えっと...え?」

 

俺の頭の中ではパニック状態に陥り上手く思考が働かなかった、唯一分かっているのは女の子に手を握られているということだけだった。段々、手汗がとか考えられるようになってきたので少し落ち着いてきたのだろう。

丁度その頃、由比ヶ浜が雪ノ下を説得したらしく俺に話しかけてくる。

 

「ヒッキーも協力してね!」

 

「お、おう...」

 

「ありがとう♪」

 

「ところでさ、俺の名前知ってたみたいだけど知り合いだったっけ?」

 

「ヒッキー、ありえない!同じクラスじゃん!」

 

「あはは、同じクラスの戸塚彩加です。よろしくね」

 

「いや、俺、女の子の友達なんていねーし...」

 

なんだったら男の友達もいないまである。

 

「あはは、僕...男なんだけどな」

 

は?ははは。なんの冗談だ?

 

戸塚の表情を見る限り嘘には見えないがそれでも見た目からは信じることが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一悶着あったが俺は今体操着に着替えてテニスコートに来ていた。

 

 

「それで何でお前までいるの?」 

 

「えー良いじゃないですか~♪」

 

何故か一色も体操着に着替えて俺達と一緒にテニスコートに来ている。

 

「お前暇なの?」

 

「何言ってるんですか、暇なはずないじゃないですか~。先輩の為にここにいるんですよ♪」

 

「あーはいはい。あざとい、あざとい」  

 

一色は周りから可愛く見られたいがために自分を偽ってこういうことを言っているのを俺は初めて会ったときに聞いてしまっているので何を言われても聞き流すことが出来る。

 

「それじゃあ、練習を始めましょうか」

 

「は、はい!よろしくお願いします」

 

雪ノ下に深くおじきをしながら話を聞いている姿は真剣でどれ程真面目なのか見ているだけでも充分に伝わって来るほどだった。

雪ノ下の練習内容はとてもハードなものだった、確かに後々の事を考えれば良いのかもしれないが初日からこんなに飛ばしていたら戸塚の体が壊れてしまうかもしれない。それでは本末転倒だ。だが俺はこの時雪ノ下が以前由比ヶ浜に言った言葉を思い出して何も言えずに見ているだけしか出来なくなっていた。「成功できない人間は成功者の積み上げた努力を想像できないから成功出来ないのよ」雪ノ下は相手に厳しいがそれよりも自分にもっと厳しい。それ故に絶対的な信念を持っていて少しやり過ぎたこともしてしまうのだ。

 

「うわっ!」

 

戸塚が疲労困憊で足がもつれて転んだ。「彩ちゃん!」と由比ヶ浜がかけよっていくと雪ノ下は「まだ続けるつもりなの?」と言って戸塚に聞く。

 

「うん。皆、僕の為にやってくれてるから」

 

震える足でなんとか立ち上がると先程転んだ時が原因か少し足が擦れて怪我をしていた。

 

「そう。由比ヶ浜さん、私は少し行くところがあるからあとは任せたわ」

 

「え?ゆきのん?」

 

[確か保健室に救急箱があったわね]

 

成る程なと思い俺はコンタクトを付けて戸塚の元に向かう。

 

「あはは、あんまり上達しないし、見捨てられちゃったかな?」

 

「そんなことないよ!ゆきのん!頑張っている人を見捨てるなんて絶対しないよ!」

 

「そうだな、お前の料理にも最後まで付き合ってくれたしな」

 

「それはどういう意味だ!」と由比ヶ浜が叫んでいたが全員から笑い声が漏れた。

 

キィー。とテニスコートの入り口が開く音が聞こえて数人の生徒が入ってきた。

 

「あれーテニスとか超久し振りなんですけど~」

 

「べー!まじべー!」 

 

「ぐふふ、隼人君と戸部っちがボールの打ち合い...ぶはぁ!」

 

「ちょ!海老名まじ擬態しろし...ねえ、あーしらもここで遊んで良い?」

 

「三浦さん、僕達は別に遊んでいるわけじゃなくて」

 

「ええ?なに聞こえないんだけど?」

 

一色は何故か俺の後ろに隠れたが状況を見るになんとなく分かったのでそのままにしておく。

 

「ここは戸塚が許可もらって使ってるものだから他の人は無理なんだ」

 

「は?あんたも使ってんじゃん」

 

「いや、俺は練習に付き合ってて教務委託って言うか、アウトソーシングなんだよ」

 

てかなんだよこいつ、こえーよ。あと怖い。

 

「はー?何意味わかんないこと言ってんの?キモいんだけど?」

 

「まぁまぁ喧嘩腰になんなって、皆でやった方が楽しいって」

 

「皆って誰だよ。俺はそんな相手いねーから使えたことねえよ」

 

ああ、そうかこいつはあれだ。

 

「そう言うつもりでいったわけじゃないんだ、なんかごめんな、悩んでいるなら相談に乗るからさ」

 

俺が一番嫌いなタイプの人間だ。

 

「必要ない、強いて言うならここから出てってくれない?今すぐに」

 

後ろから一色が「何言ってるんですか!?」と小さい声で言ってる気がするがそんなもんはスルーだ、スルー。

 

「あんたさ、何生意気なこと言ってんの?」

 

「まぁまぁ、落ち着けって優美子」

 

「でも!」

 

「なぁ比企谷、こうしないか?俺とお前がテニスで勝負する、そして勝った方がテニスコートを使える。勿論戸塚君の練習の相手にもなる、それに練習相手は強い方が戸塚君の練習にもなるだろう?」

 

サッカー部のエースが帰宅部エースの俺にテニスで真剣勝負とか吹っ掛ける時点で公平じゃない気もするが、それが一番簡単に事なきを得そうな気がするのでその提案に乗っておく。

 

「何それ!面白そ!ねぇそれならいっそのこと混合ダブルスとかにしようよ、やだあーし頭良いんですけど~」

 

は?こいつ何いってるの?混合ダブルスとか俺にパートナーいない時点で詰んでるんですけど?

 

「あー俺パートナー「ひ、ヒッキー」ん?」

 

「あの、ヒッキー私で良ければ...」

 

「ばか!やめとけよ!あいつお前のことめっちゃ睨んでるだろ!」

 

「え!マジ?」

 

「結衣ーそいつと組むってことはあーしと戦うってことだけどそう言うことで良いってことなんだよね?」

 

「そ、それは...」

 

「先輩♪私がいるじゃないですか~」

 

「い、いろはちゃん!?」

 

「いやでもお前...」

 

「あー葉山先輩の事なら気にしなくていいですよ~それに私三浦先輩のこと嫌いですから♪」

 

「全く...お前は」

 

まぁこれで、なんとか試合ができそうだ。

 

「ま、待って!私も大丈夫だから!ね!ヒッキー!」

 

いや、ね?と言われても...この状況でどうしろと?

 

「先輩♪勿論わ・た・し・とやりますよね?」

 

「ひ、ヒッキー....」

 

何これ?テニス勝負より怖いんだけど?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




少し迷い中なので、一色と由比ヶ浜どちらと組ませたほうを見たいかよければ感想お願いします。

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