比企谷八幡に特殊な力があるのはやはり間違っている。~救いようのない哀れな理性の化物に幸せを~   作:@まきにき

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皆様お待たせしました。嫉妬の後編がようやく書き終わりました。雪がふったり仕事が忙しかったりと大変な1年でしたがこれからも頑張って執筆は続けていきます(*´ω`*)



御気に入り数が1000件を越えました。沢山の方に読んでもらえて本当に嬉しいです。




嫉妬(後編)

嫉妬。

嫉妬と言えば七つの大罪の1つでもあり、

また旧約聖書に登場する海中の怪物レヴィアタンを連想する。曲がりくねった蛇を元にしているらしいが、上手く考えてあると言える。だが俺は思う、人間が持つ嫉妬は海中の怪物なんかよりも恐ろしくもっとずっとひねくれているのだと。

 

 

 

 

 

 

 

「それで比企谷君。あなたなりの解決方法を聞かせてもらえるかしら?」  

 

「ああ....だけど」

 

「大丈夫よ、今のあなたの考えなら大丈夫なはずよ」

 

「・・・分かった。まず一色、頼んでいたことだが、何か分かったか?」

 

「はい。先輩に言われて調べてみたんですけどやっぱり真歩ちゃんが好意を寄せていたみたいです。1度告白してフラれているみたいですし」

 

「これで殆ど決まりだな。それでその古市真奈という生徒はどんなやつなんだ?」

 

「それが....あまり目立たない性格と言いますか、普段から誰かと話しているところすら見たことがないので.....」

 

「え?それって......」

 

「おい由比ヶ浜、何で俺を見るんだ」

 

「い、いやぁー。なんでだろうなー。あはは」

 

「由比ヶ浜さん、別に隠す必要はないわ。そこにいる比企谷君同様にボッチということなのでしょう」

 

「そ、そんな...先輩には私がいますから....」

 

「さっちゃん。今はそんなことをいってる場合ではありません。それで先輩、どうやって証拠を見つけるんですか?」

 

「ああ、その件だが。もう一度聞く、辞めるなら最後だ。まだ間に合うからよく考えてくれ」

 

「先輩何度も言わせないでくださいよ」

 

「そうだよ!ヒッキー!」

 

「ええ。何も心配することなんてないわ」

 

「・・・最悪ここにいる全員が退学になるかもしれないんだぞ?」

 

「だから何なのかしら?」

 

「うんうん!それにさヒッキー。ここにいる全員で退学になっちゃったとしても退学になったときに考えれば良いよ♪」

 

「結衣先輩は相変わらずですね~。でもわたしも賛成です。ここにいる全員で退学になったら喫茶店でもやれば良いんですよ!雪ノ下先輩に紅茶を淹れてもらってさっちゃんと私と結衣先輩で接客をして」

 

「あれ?俺は?裏方でもないの?」

 

「先輩はそこのマスターに決まってるじゃないですか~♪」

 

「は?いや、え?」

 

「それは...中々面白そうね」

 

「うん、いいね!なんか、スッゴい楽しそう!」

 

「ね?さっちゃんもそう思うよね?」

 

「・・・うん!先輩達と私の大切な親友と一緒で本当に、楽しそうで....本当に.....」

 

「神崎?」

 

「彩っち?」

 

「神崎さん?」

 

「さっちゃん?」

 

「本当にありがとう、ございます」

神崎は満面な笑みを浮かべて幸せそうに笑っている。その姿を見るだけで俺は、、、俺は。

 

「それじゃあ作戦を説明するーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

翌日の放課後。

俺は今屋上に来ている。1人で。

何処も行く宛が無くなって1人黄昏の夕日を見に来ているわけではない。ある人物を待っているのだ。

キィーという甲高い音とともに屋上の扉が開いて1人の生徒が入ってくる。俺は緊張で何時もより鼓動が早くなっていく心臓を落ち着かせるため目を閉じて深呼吸をし、右目のコンタクトを外す。

 

「こんにちわ。比企谷先輩、呼ばれたのでここに来たのですが何か私に用ですか?」

 

「ああ。まあな」

俺は、まだ振り返らずに夕日を見ながら呟く。

そして携帯の録音ボタンを押した。

 

「?それで此方も向いてくれない先輩と何を話せばいいんですか?用がないのなら帰りますけど」

 

「お前、ここから夕日を見たことあるか?」

帰られるのはまずい...というか何でこっちに来ないで扉の前から動かないの?普通奥までくるでしょ?にしてもここからの夕日を見たことあるか?ってなんだよ...。

 

「いきなりなんですか?」

ごもっともで。

 

「さぁな。悪いけどこっちまで来てくれるか?」

携帯の録音は相手が近くに来ないと音を拾うことはできない。かといって近くで押そうとすれば異変に気付く。だからこっちに来る前に押す必要があったがこっちにこないとか予想外。

俺は諦めて古市の方に体を向ける。

 

「それで何のようなんですか?」

 

[どうせ。私のこと疑ってるんだろうし。はぁーめんどくさい]

 

「お前さ。・・・・ほんとにボッチか?」

 

「はぁ?」

古市は予想外のことを言われたのか首を傾けて聞いてくる。俺も最初はこんなことを聞こうとは思っていなかった。でも初対面の、それも異性に対してこんなにも流暢に話せるやつがボッチなはずがない。ソースは俺。

 

「いや悪い。お前いつも1人でいるって聞いてな、ボッチなのかと思ってたんだわ」

 

[誰からそんなこと...ああ。神崎か一色ちゃんからかな?]

 

「それで比企谷先輩。用ってなんですか?」

 

「・・・単刀直入に聞く。今回の神崎の件、犯人はお前だな?」

 

「その話ですか。勿論違いますよ?」

 

[私ですよ]

 

「・・・。そうか、因みにその話ってことはどんな話を聞かれるか最初から分かっていた。てことだよな?」

 

「・・・はぁ。そうですね。分かっていました。他にありませんし」

 

[でも何で私が写真を持っていったことを?・・・それが分からなければ疑いの余地すらないのに...もしかして平塚先生が?]

 

「っ!・・・ふ、古市」

 

「はい?」

 

「俺が何故お前を疑っているか。それはお前が進路指導室に写真を持っていくのをたまたま見たからだ」

 

「っ!?そんなはずは....あの時は誰もいませんでしたし、ありえません」

 

[それに...時刻は授業中の11時。私はお腹が痛いと言って持っていったんだから見られるはずは]

 

「俺実はさ。2年の最初に事故にあっててさ簡単にサボることが出来るんだよ。だからその時も保健室行ってきますって言って行こうとしたらたまたまお前を見たってこと。あの時は...確か11時くらいだったか」

 

「っ!?だ、だとしても!私はただ、神崎がホテルに入っていく所を写真に撮っただけ!それを報告しただけ!何か文句あるの!?」

 

「お前は写真を撮ったときに神崎が本当はどこにいたのか知ってるのか?」

 

「そ、そんなのホテルの前にいたに決まって「それはありえない」っ!」

 

[神崎はその時家にいたはず...毎週金曜日は親が遅いって聞いてたしその時電話もかけたけど誰も出なかった.......もしかして]

 

「神崎はその時間俺の家にいた」

 

「・・・・・・。ちょ!ちょっと待ってよ!あの写真は携帯のカメラから撮ったやつをパソコンにおとしたやつだから日付は分からないでしょ!?何で家にいたなんて言えるの?」

 

「ふーん。携帯ねぇ。ならさ古市、携帯で古市を撮ったって言うならその写真の画像を見せてくれないか?」

 

[あ......]

 

「そ、そんなのもう消去してるに決まってるでしょ!?」

 

「ならお前は神崎の写真を何時に撮ったんだ?」

 

「そ、そんなの.....し、知らないわよ!覚えてるわけないじゃない!」

 

「覚えてない、か」

 

「な、何よ...おかしな話じゃないでしょ?時間なんて見てなかった、ただそれだけよ」

 

「まあ。確かに時間をいちいち見てるやつは少ないわな」

 

「で、でしょ?」

 

「ならさお前が神崎を撮ったのは金曜日。それで間違いないよな?」

 

「ええ」

 

「時刻は写真を見るに午後6時以降だ。お前はそんな時間にそんな所で何してたんだ?」

 

「べ、別に遊んでただけよ!」

 

「ふーん。その金曜日って先週の金曜だよな?」

 

「そ、そうだけど?」

 

「なら余計にありえない。その日神崎はウチに泊まっている」

勿論これは大嘘。所謂フェイクだ。

 

「・・・え?」

 

「神崎の家の固定電話を調べたよ。非通知が1件入ってた。お前のだろ?でもさおかしいと思わなかったか?」

 

[....そんな......]

 

「神崎電話にでなかったろ?」

 

「・・・・」

 

「神崎は出なかったわけじゃない。いないからでれなかったんだ」

 

「・・・だとしたら!あなたたちも犯罪よ!」

 

「あなたたちも?」

 

[しまっ.....]

 

「それで?あなたたちも?なんなんだ?」

 

「・・・・・そ、そうよ!私が写真を偽造して持っていったのよ!あいつ!あいつのせいで!私は!」

 

「認めるんだな?偽造したことを」

 

「ええ。だから何?今更あなたの言うことを信じる人なんて」

俺は黙ってポケットから携帯を取り出して古市に録音中の文字を見せる。

 

「そ、それって!?」

 

「ああ。今までの俺とお前の会話が録音されている」

 

「私を嵌めたってこと?」

 

「どういう風にとってもらっても構わない、がお前のやったことは犯罪だ」

 

「・・・だって!仕方ないじゃない!あの子さえあの子さえいなければ....私は!」

 

「それは違うわ」

屋上に隠れて見ていた雪ノ下が此方に向かってくる。そのとき一緒に神崎と一色と由比ヶ浜も出てきた。

 

「!?な、なんでここに....いやそれよりも違うってどういう事ですか?あなたは何もしらないはずでしょ?というか誰ですか?」

 

「私の名前は雪ノ下雪乃よ。確かに私はあなたたちのことを知らないのかもしれないわ。でもね。あなたのやったことは自分がフラれたことを納得できずに神崎さんに原因を擦り付けただけ」

 

「っ!ち、違う!違う!違う!違う!!!」

 

「違わないわ。違うと言うならあなたが好きだった相手に対してあなたはどういった努力をしてきたのかしら?あなたのことは大体聞いたけれど努力をしていたとはとても思えないのだけれど」

 

「う、うるさい!私の事なんて何も知らない癖に!偉そうに!」

 

「そうやって怒鳴って否定して。他人の意見を受け入れずに自分のことを肯定し続ける。悪いとは言わないわ。けれど学ぶことも必要だと私は思うわ」

 

「・・・う、うるさい」

 

「ね、ねえ。古市さん?ゆきのんの言ってることあたしは間違ってないと思うな。好きな人を取られそうになる気持ち、辛いのはすごく良く分かるよ。でも..でもね。こんなやり方は間違ってる!」

 

「うるさい...うるさいうるさいうるさい!!!」

 

「真歩ちゃん.....わたしは多分一生あなたを許すことは出来ないと思う。さっちゃんは、わたしの大切な親友だから。どれ程傷付いて悩んだか知ってるから。でもお願い。さっちゃんにちゃんと謝って」

 

「・・・うぅ」

俺は本当に涙に弱いみたいだと心底自分に呆れながら夕日が沈んで周りが暗くなっていく中で星空を見上げながら大きく息を吸って吐き出した。

 

「皆。悪いけど1度奉仕部に戻っていてもらえるか?」

 

「・・・分かりました。行きましょう、さっちゃん」

 

「うん....」

 

「ヒッキー、らしいね。それじゃあ待ってるからね?」

 

「ああ」

 

「比企谷君」

 

「・・・」

 

「このまま終わりにだけはさせないわよ?」

 

「分かってる。それは俺もするつもりはない」

 

「そう。それを分かってくれていればいいわ」

 

 

古市と俺だけを残して全員が屋上からいなくなり涼しげな風の音と古市の泣き声だけが聞こえる。

 

「なあ。古市」

 

「・・・ひっく、、、は、はい」

 

「お前は間違いに気付けたか?」

 

「はい....」

 

[私のしてしまったことがどれ程のことか気付きました...でも謝りたくても......言葉が出てこなくて]

 

「なあ。古市」

 

「・・・はい?」

 

「星ってさ、幾つもあるだろ?」

俺は星空を見上げながら淡々と話続ける。

 

「・・・」

 

「あの星の輝きは、人が間違えた数で出来てるって思ったことはないか?」

 

「間違えた数?」

 

「ああ。人は誰しも間違ったことをする。だけどその間違いの大きさは人それぞれ大きい物や小さな物があるだろ?そんな間違いを重ねていってこの世界が出来上がってるんだ。星に願いを叶えてもらう。流れ星に願いを込める。それは願いを込めて星が流れれば間違いをやり直すことが出来るって事なんだと思うんだ」

 

「やり直す、ですか?」

 

「ああ。お前は今回大きな間違いをしてしまった。だけど生きていけばこれからだって間違いをすることだってあるだろう。だけどさ、きっとやり直せると思うんだよ。お前がそれを強く望めば、きっと星は流れてくれる」

 

「私に出来るでしょうか....」

 

「ああ、出来るさ。困ったら誰かに助けを求めればいい。誰もいなければ俺に相談すればいい。まっ俺なんかじゃ頼りないかもしれんがいないよりは楽になるだろ?」

 

「比企谷先輩は...さしずめ私にとっての天の川と言ったところですね」

 

「んな大層なもんじゃねーよ。それでどうだ?まだ言葉は見付かりそうもないか?」

 

「いえ....もう見つかりました。最初のお願いです、比企谷先輩。私を神崎の...神崎さんの所に連れていってもらえませんか?」

 

[早く謝らないと...謝って私は]

俺はコンタクトを元に戻して古市を奉仕部まで連れていった。

 

 

 

 

 

 

奉仕部の扉を開けると全員が椅子から立ち上がり俺を見てくる。俺は横にズレて古市を奉仕部の中に入るように促して神崎以外は奉仕部から出るように言って二人っきりにさせた。

 

 

「さてと。お前ら自販機行くぞ」

 

「いや、先輩....流石に早すぎて状況を飲み込めないんですけど?」

 

「ひ、ヒッキー....大丈夫なの?あの二人を二人っきりになんて」

 

「そうね。本当に反省しているのかなんて分かったものではないのだし」

 

「大丈夫だ。聞かれたくない話だろうしな、ほら行くぞ」

 

「えー!もう...」

 

「仕方ないですね...」

 

「まぁ。後でしっかりと話は聞かせてもらうわよ?」

 

「ああ。それで構わない」

 

少し肌寒くなった風が制服越しに伝わってきてそろそろ夏になるというのに春の兆しがまだ残ってる事が分かる。自販機の前まで来ると俺はマッカンに、レモンティーとミルクティーとコーヒーを買ってそれぞれに渡してマッカンの蓋を開けて一口呑み込む。

 

「ふぅ」

 

「クス。なんかヒッキーお爺さんみたい」

 

「いいだろべつに。今回は本当に疲れたんだよ」

 

「それにしても何故私はコーヒーなのかしら?」

 

「奢ってもらって文句まで言うな」

 

「わたしは~ミルクティー大好きなので嬉しいですよ♪先輩♪」

 

「あ、あたしだって嬉しいし!」

 

「おい。んなことで喧嘩すんなよ。奢った俺が悪いみたいじゃねーか」

 

「あなたが悪いのよ?」

 

「うんうん!」

 

「ほんとですよ!なので今度奢ってくれるときはもっとしっかりお願いしますね♪」

 

「いやもう奢らないし」

 

「あー先輩~。実はですね駅前の喫茶店で美味しそうなミルフィーユがあったんですよ~」

 

「へえー」

 

「あっ!それあたしも知ってる!!食べてみたいと思ってたんだぁー。ねえねえ!ゆきのんも一緒に行こうね!」

 

「わ、私はそういうお店はちょっと」

 

「えーいいじゃん。行こうよー」

 

「はぁー」

 

「先輩」

 

「ん?」

 

「行きましょうね。さっちゃんも一緒に皆で」

 

「ああ。気が向いたらな」

 

 

 

 

 




奉仕部で神崎と古市に何があったのかは次回にすることにします。

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