比企谷八幡に特殊な力があるのはやはり間違っている。~救いようのない哀れな理性の化物に幸せを~   作:@まきにき

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注意ですがコードギアスで出てくるあの方とは何も関係ありません。



よければ感想や御指摘お待ちしてます。


俺の奉仕部生活はこうして始まる。

青春とは嘘であり、悪である。

青春を謳歌せし者達は常に自己と周囲を欺き自らの環境の全てを肯定的に捉える。

彼等は青春の二文字の前ならばどんな一般的な解釈も社会通念もねじ曲げてみせる、彼等にかかれば嘘も秘密も罪とがも失敗さえも青春のスパイスでしかないのだ。

仮に失敗することが青春の証であるのなら友達作りに失敗した人間もまた青春のど真ん中でなければおかしいではないか。しかし彼等はそれを認めないだろう。

全ては彼等の御都合主義でしかないのだ。

 

 

 

結論を言おう。

青春を楽しむ愚か者ども砕け散れ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今授業の際に何故か再提出になった作文「高校生活を振り替えって」を持って職員室に来ている。

 

「砕け散るのは君の方だ。なあ?比企谷。私が授業で出した課題はなんだったかな?」

 

「はあ。高校生活を振り替えってというテーマの作文でしたが」

 

「それで何故君はこんな舐めた作文がかけるのかね?なんだこれ。どうしてこうなった?」

 

今俺を怒っているのは国語教師兼生活指導の平塚 静先生だ。

舐めた作文と言われたが別に俺は舐めて書いたわけではない、むしろ今までの経験を生かして真面目に書いたのだ。俺には右目で相手を見ると相手の心の中で思っている声が聞こえてしまうという訳のわからない能力を持ってしまっている。この能力はなりふり構わずに相手の心を読んでしまうため人間という生き物の内に隠している黒い物を俺は散々いままで見てきてしまっているのだ。

こんな内容になっても仕方がないだろう。因みに今現在俺は右目と左目にカラーコンタクトをすることによりこの能力を封じている。勿論カラーコンタクトを右目だけつけると片方ずつ目の色が変わってしまうという中二病的なことになり恥ずかしいので両目に付けている。俺の能力はどうやら赤い物を通して見ると弱まるので目の色は赤色になっている。

 

「はあ。でも人間なんて所詮は内に黒い物を持っているものじゃないですか、そんな内にあるものを隠して青春をしている奴を嘘と表しても間違いではないと思いますが」

 

「確かにそうだと私も思う。だがな比企谷嘘と本当は紙一重だ。時に大切な嘘というのもあると私は思うよ」

 

「そんな嘘、俺は知りません」

 

なんせ、生まれて初めて母親を見たとき俺は聞いてしまっている。いや目で聞いてしまったのだ。「女の子が良かったのに...」俺は今でもこの事を忘れることが出来ない。産んでくれた者に産まれたことを拒絶されたのだ。当然俺は母親と仲良くすることなんて出来るはずもなく、なかなかなつかない俺に両親は嫌気をさしたのだろう、いつの頃だったかあからさまに俺を避けるようになっていた。そして俺も右目で両親を見るのが...いや聞くのが怖くなっていた。

 

 

ポフン。

 

俺の頭には平塚先生の手が乗っていた。こういうところだ、人の心理を見抜くというか普段は暴力的でがさつなのに急に優しくなる、俺はこの先生を信頼していた。勿論右目のカラーコンタクトは外したことはない。いや外すことが出来ないのだ。これだけ信頼してしまっていてもし裏切られたらと思うと怖くて仕方がなかったから。

 

「落ち着いたかね?」

 

「・・・はい。ありがとうございます」

 

「そうだ。比企谷、ちょっと着いてきたまえ」

 

平塚先生に言われ着いていくと以前は何かの部活で使われていたのか、今では綺麗に並べられて後ろに整頓されていた。教室の真ん中にだけ置かれた、椅子と机。そしてその椅子に座る少女。友達を作らず人との接触を避けてきた、俺でも知っているこの学校の有名人がそこにいた。

 

 

「平塚先生。入るときはノックをお願いしたはずですが」

 

「君はノックをしても返事をした試しがないじゃないか」

 

「返事をするまもなく先生が入ってくるんですよ。それで、そのヌボーっとした人は?」

 

この少女は国際教養科J組。女子が9割りをしめる、そのクラスは偏差値が高く派手なクラスとして知られている。その中でも異彩を放っているのが雪ノ下雪乃。学内誰もが知る有名人だ。

 

「彼は入部希望者だ」

 

「え、えと2年F組比企谷八幡です...入部って何ですか?」

 

「君には舐めくさったレポートの罰としてここでの部活動を命じる。異論反論抗議質問口答えは一切認めない。と言うわけで彼はかなり根性が腐っていてな、そのせいで孤独な哀れむべきやつだ。この部で彼のひねくれた孤独体質を構成する。これが私の依頼だ」

 

「お断りします」

 

おお。なんと頼りになるまでの即答。俺もう帰っていいかな?いいよね?

 

「そこの男のその目の色...カラーコンタクトですよね?何故許しているんですか?」

 

「ああーこれはな...」

 

そう。この学園ではカラーコンタクトは禁止なのだ。勿論俺以外にもカラーコンタクトを付けているやつはいるだろう。だが赤は目立ちすぎている、隠す気が無いと思われても仕方がないだろう。だが俺の過去を少し変えて校長に頼みに行ったところ特別に許可がおりたのだ。だから俺は悪くない。

 

「別にお前には関係ないだろ?」

 

「いい度胸ね。依頼をしにきたのにそのものの良いよう」

 

「俺が頼みにきたわけじゃない」

 

「成る程。平塚先生が心配してる理由が少し分かった気がするわ」

 

「止めたまえ。君達、比企谷が何故カラーコンタクトを許されているか、それは中学の時に虐めにあっていたからだ」  

 

え?言っちゃうんですか?そこは教師として絶対に喋ってはいけないところではないですかね?例え嘘の話ですけど半分嘘じゃないからね?実際に見せる的なことになったらどうするの?

 

 

「虐めですか?」

 

「そうだ。比企谷、ちょうどいい。お前の目、雪ノ下にも見せてやってくれないか?」

 

「嫌です」

 

絶対に嫌だ。そんなことしたら聞きたくないことまでまた、聞いてしまうことになる。

 

「フンッ!!取れ」

 

「・・・はい」

 

平塚先生に俺は寸止めをされあまりの恐怖に頷いてしまった。

俺はカラーコンタクトを外しながら人前でこれ外すの2年ぶりだなとか考えながらカラーコンタクトを外した。

 

「こ、これは...予想以上に酷いわね」

 

人の目を見て第一声がこれである。訴えれば告訴出来るのではないだろうか。

それと同時に雪ノ下の心の声も入ってきた。

 

[ど、どうすればいいのかしら.....。想像以上だったわ、でも彼は嫌がっていたのだし謝罪をした方がいいのかしら...]

 

いままで何回も相手の心を聞いてきた俺だったがこんな風に俺のことを思ってくれる言葉を聞いたのは初めてだった。

 

「そ、想像以上に気持ち悪い目ね。そんな下心に満ちた下卑た目を見ていると身の危険を感じるわ。早くコンタクトを付けなさい」

 

「フッ、そうですか」

 

「何を笑っているの?」

 

「いや。初対面でここまで非難されたのも初めてだったんでね」

 

「そ、それは」

 

「それで」

 

「え?」

 

「俺は入部してもいいのか?」

 

「ほう。どうした比企谷、まさかお前M」

 

「それはないです」

 

「・・・少し抵抗はありますが、先生からの頼みを無下には出来ませんし承りました」

 

「そうか。なら頼んだぞ、雪ノ下」

 

平塚先生はそのまま教室を出ていってしまった。女の子とろくに会話をしたことがない俺にはこの空気は重すぎるので動くことも出来ずその場に立ち尽くしていると、雪ノ下から「座ったら?」と言われたので椅子を1つ後ろから持ってくる。

 

「なあ」

 

「何?」

 

「ここって何部なんだ?」

 

「当ててみたら?」

 

ここで能力を使えば簡単に分かるが思っていることも分かってしまう...。俺は必死に周りを見渡して考える。

 

「文芸部だろ?」

 

「へえ。その心は」

 

「この部屋の中に特殊な環境、特別な機器が存在していない。加えてあんたは、ずっと本を読んでいる」

 

「はずれ」

 

「じゃあ何部なんだよ」

 

「今私がこうしていることが部活動よ」

 

「さっぱり分からん」

 

「比企谷君。女の子と話したのは何年ぶり?」

 

どうしよう。俺が避けているだけであって話しかけられたりするんだけど。告白も何回かあるけどあれは完全に俺を罰ゲームか何かにしてやっているんだろう。中学の時に告白してきたやつ、聞いたときまじで死ぬかと思ったわ。もう二度とあんな気持ちになるのはごめんだ。

 

「先日話したばかりだが」

 

「なら何故あなたはここにいるの?」

 

「だから、俺が知るわけないだろ」

 

「告白された経験は?」

 

「嘘なら40回を越えたくらいか」

 

「嘘なら?」

 

「ああ。まぁ中学の時にあったんだ、俺に罰ゲームとして告白するみたいなやつ」

 

俺は何でこんなこと、こいつに話しているんだ?

 

「そう...。そういうこと。これは思った以上に大変な依頼になりそうね」

 

「どういう意味だ?」

 

 

ガラッ。

 

平塚先生が教室に入ってきた。

 

「雪ノ下。邪魔するぞ」

 

「先生ノックを」

 

「悪い、悪い。どうやら比企谷の更正に手間取っているようだな」

 

「予想より大変な内容でしたので」

 

「ほう。そこまでは理解したのか」

 

「先生は知っていたんですか?」

 

「ああ。だからお前に任せたんだ」

 

「はぁ。まずは彼の性格から変えなければいけないかもしれませんね」

 

「俺は俺自身が変わったほうがいいとは思っていない」

 

「あなたは変わらないといずれ後悔するわよ」

 

「だけど変われだのそんなことお前等に言われる筋合いはないし。これは俺がいままで生きてきて身に付いた、謂わば経験だ。それを否定されるなんざごめんだ」

 

「それは只の逃げの言い訳よ」

 

「変わるってのも現状からの逃げだろ?何故今の自分を過去から得た今の自分を受け入れてやれないんだよ」

 

「それじゃあ、悩みは解決しないし。誰も救われないじゃない!」

 

「二人とも落ち着きたまえ。古来より互いの正義がぶつかった時は勝負で雌雄を決するのが少年漫画の習わしだ」

 

「何言ってるんですか?」

 

「つまりこの部でどちらが人に奉仕できるか勝負だ」

 

「強引すぎる...」

 

「勝ったほうが負けたほうに何でも命令出来る。というのはどうだ?」

 

 

何でもか。一生カラーコンタクト付けるなとかだったら俺の人生終わりなんですけどそのルール大丈夫ですか?

 

「お断りします。この男が相手だと身の危険を感じます」

 

何だろう。全くそういう方面を考えていなかったのにそういうことを言われると、むしろそういう方面じゃないといけないのかとも思ってくる。

 

「さしもの雪ノ下雪乃にも恐れるものがあったか。そんなに負けるのが怖いか?」

 

「いいでしょう。その安い挑発に乗るのは少しばかりシャクですが、その勝負受けてたちます」

 

「決まりだな」

 

俺の意志はないんですよね?そうですね。

 

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン。

 

放課後になり、俺はどこぞのサラリーマンのごとく奉仕部の前まで来ていた。勿論帰ろうとしたが平塚先生の鉄拳制裁に倒れ今ここにいるのだ。

 

 

「こんにちわ。もう来ないかと思ったわ。もしかしてマゾヒスト?」

 

別に俺は来たくて来たのではない。平塚先生に無理矢理来させられたのだ。

 

「違う」

 

「だったらストーカー?」

 

何なのこいつ?俺能力使ってこいつの心の声とか聞いてないよね?なんでこいつこんなに本来は心の中に隠しておいてある言葉を平然と言えるの?でも何故か隠れて言わないよりこうして言ってくる方が楽だと俺は思った。 

 

「俺は別にお前に好意とかないぞ?」

 

「あら?違うの?」

 

「違えよ。その自信過剰ぷりには流石の俺も引くぞ。俺のことよりさ、お前友達いんの?」 

 

「そうね。まずどこからどこまでが友達なのか定義してもらってから」

 

「ああ。もういいわ、それ友達いないやつの台詞だわ。ソースは俺。お前人に好かれそうなくせに友達いないとかどういうことだよ」

 

「あなただってその性格直せば出来るでしょ?女の友達なら」

 

「いや何でだよ。男の友達すら出来てないのにおかしいだろ」

 

「ああでも、コンタクトは外しちゃダメよ。絶対に」

 

「おい。少し分かったことで尚更ムカつくんですが?」

 

「まぁいいじゃない。その程度なら」

 

「どういう意味だよ?」

 

「私って昔から可愛かったから。近付いてくる男子は大抵私に好意を寄せていたわ」

 

「人に好かれてるくせにボッチ名乗るとかボッチの風上にもおけねえな」

 

「本当に誰からも好かれるならそれも良かったかもしれないわね」

 

「どういう意味だ?」 

 

「小学校の頃。60回ほど上履きを隠されたことがあったのだけれど内50回は女子にやられたわ。おかげで私は毎日上履きとリコーダーを持って帰る羽目になったわ。はぁ....」

 

「大変だったんだな」

 

「ええ大変よ。私可愛いから。でも仕方ないと思うわ。人は皆完璧ではないから、弱くて醜くてすぐに嫉妬し蹴落とそうとする。不思議なことに優秀な人間ほど生きにくいのよ。そんなのおかしいじゃない。だから変えるのよ、人ごとこの世界を」

 

 

雪ノ下の話を聞いていて俺も共感することがあった。人は弱くて醜くい。そして嫉妬しすぐに蹴落とそうとする。俺はこの不思議な能力によっていままで経験するまえに分かって回避してきた。でも他の人にこんな能力はない。恐らく雪ノ下は、全てをぶつけられて生きてきたのだろう。辛く苦しい日々を誰からも助けられず誰にも頼ることは出来ず。そして誰も信用できなくなり...でもそれじゃあ、まるで雪ノ下は俺と、俺と同じなんじゃ....。

でも俺には人を変えるなんて思うほど余裕はなかった。諦めてしまったから、見離してしまったから、自分を守るために。

 

「が、頑張れよ」

 

不思議とその一言が出ていた。

 

「・・・驚いたわ。この話をしたのもあなたが初めてなのだけれど、応援されるとは思ってもいなかったから」

 

「別におかしいと思わないしな」

 

「そ、そう」

 

トントン。と部室の扉を叩く音がして最初の依頼者が来る。こうして俺の奉仕部としての初仕事が始まる。

 




由比ヶ浜は次回に回すことにしました。

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