ダンジョンに施しの英雄がいるのは間違ってるだろうか   作:ザイグ

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第五十三話

 

「魔法は使うな! ヴィオラスは魔力に反応するぞ!」

「打撃も効かない! 剣で戦って!」

 

襲ってきたヴィオラスを迎撃しながら、カルナとアイズは全員にアドバイスを飛ばす。

ヴィオラス本体が体当たりを繰り出し、無数の触手を振るうが、アイズに触手は斬り刻まれ、カルナが本体に風穴を穿つ。ヴィオラスは彼等の敵ではなかった。

 

「ぐあっ!」

「ポック!」

 

しかし、第一級冒険者ならまだしもLv.2の第三級冒険者には荷が重かったようだ。ポックが触手に弾き飛ばされる。

 

「ちっ、面倒掛けやがる!」

 

文句を言いながらもベートが真っ先に駆け寄ろうとするが、

 

「来るな!」

 

ポックは助けなんていらないというようにベートを睨み付けた。

 

「何意地張ってやがる………!」

「ベート、他を援護するぞ」

「カルナ、てめぇはーーー」

「本人が助けはいらないと言っている。これ以上は彼の覚悟を侮辱することになる」

「ーーーちっ」

 

ベートは舌打ちしながらも納得したのか、別の者の援護に向かった。

 

「………根は優しいが素直になれないのが、ベートの欠点だな」

 

駆けるベートを見送りながら、カルナは襲いかかったヴィオラスを撃破する。

 

「カルナ、相手の『魔石』はどこですか⁉︎」

「口の中上顎の奥だ!」

 

カルナの返答を聞いたアスフィはヴィオラスを睨み付け、ベルトのホルスターから緋色の液が詰まった小瓶を取り出した。

アスフィがヴィオラスの口腔に小瓶に投げ入れるとーーー爆発した。

 

『ーーーーーーッッ⁉︎』

 

ヴィオラスは口腔の爆撃に悲鳴を上げ、『魔石』を破壊されて灰となった。

爆裂薬(バースト・オイル)。アイテムメイカー謹製の手投げ弾。都市外の資源、大陸北部の火口近辺な発芽する火山花を原料にアスフィが手を加えて生成した液状の爆薬。

彼女しか作製できない緋色の爆薬は小瓶一つ分で中層出身のモンスターを絶命させる威力を備える。

 

「一体につき三人以上で対処しなさい! カルナ達はそのまま遊撃をお願いします!」

「承知した! レフィーヤはフィルヴィスから離れるな!」

「は、はい!」

「ウィリディス、私の後ろに!」

 

【ロキ・ファミリア】の中で最も危ないのは後衛魔導士であるレフィーヤだ。彼女は接近戦では格下のミノタウルスにも苦戦するため、魔法を封じられたては戦力にならない。

カルナが派手に立ち回ることでヴィオラスの注意を引き、フィルヴィスに守られることでレフィーヤの安全を確保していた。

 

「あははははっ、こっちだよ〜!」

 

戦いの最中、場違いな間延びした声が響く。声の方に目を向ければ、飛行するヒポグリフに騎乗したアストルフォが追いかけてくるヴィオラスを掻き回していた。

『魔石』を求める性質を持つ故に多数のヴィオラスがヒポグリフに群がるが、ヒポグリフは襲いかかるヴィオラスを難なく避け、アストルフォが馬上槍のカウンターを的確に『魔石』に当て、撃破していく。

 

「あちらは問題なさそうだな。他の者達も持ち直し始めている」

 

ファルガーがヴィオラスの体当たりを受け止め、ルルネが触手を捌き、キークスが正解に『魔石』を破壊していた。別の場所でも上手く連携し、ヴィオラスを倒していく。しかし、

 

「ちょっ⁉︎」

「ポック⁉︎」

 

エリリー、ポットと共に戦っていたポックがいきなりヴィオラスの前に飛び出した。

ヴィオラスは飛び込んできた獲物を食らおうと大口を開け、ポックを咥え込む。

 

「死にてぇのか、あの馬鹿は!」

「行くな、ベート」

「カルナ、まだそんな事言ってんのかッ!」

「漢を見せてるんだ、邪魔するな。彼は証明しようとしている、見返すと言ったのが妄言でないと」

「…………そうかよ」

「不満もわかる。だが、それよりも集中しろ。新手だ」

「あぁ? ーーーこの匂いは、糞花じゃねぇな」

「羽ばたく音も聞こえる。飛行モンスターのようだ」

 

カルナとベートが見据えた先、通路の奥からモンスターの群れが姿を現した。

尾を入れれば三Mの体長を誇り、巨大な翼で自在に飛行する竜種。

 

「『イル・ワイヴィーン』⁉︎ どうして深層種が此処に!」

 

その正体を看破したの【ロキ・ファミリア】に所属するレフィーヤ。この場にいる中でトップの到達階層を誇る【ロキ・ファミリア】だからこそ、『深層』に生息するその飛竜を知っていた。

56、57階層から出現する飛竜『イル・ワイヴィーン』。深層に生息するだけあり、高速飛行に牙、爪、尾による攻撃は竜種だけあり強力。更に火炎弾による遠距離攻撃までしてくる厄介なモンスターだ。

 

「驚く事でもない、レフィーヤ。ヴィオラスも深層のモンスター。別の深層のモンスターがいるということはイル・ワイヴィーンもテイムされていると考えればいい」

「食人花と飛竜じゃあ明らかに違います!」

 

レフィーヤが叫ぶが、カルナも内心では動揺していた。何せ原作ではここではイル・ワイヴィーンが現れる展開などなかった。またもイレギュラーな事態が発生していたのだから。

 

「どちらも敵という点では同じだ。アスフィ! イル・ワイヴィーンは俺とアイズ、それからアストルフォで迎撃する!」

「適切な判断です! それではイル・ワイヴィーンは任せます!」

 

対空戦に対応できるのは魔法で飛行できるカルナとアイズ、そして飛行モンスターに騎乗するアストルフォだ。アスフィもマジックアイテムを使えば抜群の飛行能力を発揮できるが、彼女は全体の指揮を取らなければならないので候補から外れる。結果、この三人が迎撃に最適なメンバーになる。

 

「いくぞ、アイズ、アストルフォ!」

「うん!」

「任せて!」

 

新手のイル・ワイヴィーンが加わったことで戦闘は更に激化していった。

 


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