ダンジョンに施しの英雄がいるのは間違ってるだろうか   作:ザイグ

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第四十四話

「それにしても珍しいな。アスフィがこんな厄介な依頼を受けるとは」

「………黒ローブの人物にLv.を偽っていることをバラす、と脅されました」

「フェルズは何をやっている………」

 

【ヘルメス・ファミリア】は主神ヘルメスが中立の立場を保つ為に多数の団員が本来のLv.を偽っている【ファミリア】だ。

更に派閥の戦力が明るみに出れば【ファミリア】のランクが一気に上がる。

ギルドはオラリオに属する全ての【ファミリア】からランクに合わせて税金を徴収している。

Lv.を偽っていることがバレれば納税額の激増、これまでの脱税に対する相当な罰金・罰則を課せられる。

弱みを握られた【ヘルメス・ファミリア】はフェルズに協力するしかなかった。

 

「まぁ、後ろ暗いことがあるとそこに付け込まれる。諦めるしかないな」

「カルナ……貴方はそれで慰めているつもりでしょうが、全然慰めになっていません。ヘルメス様の我儘だけでも面倒は十分だと言うのに、こんな厄介事まで………!」

「すまない、俺は言葉を紡ぐのが下手らしい。ーーーだから、また飲みに行こう。俺などでも溜め込んだ物を受け止めることくらいはできる」

 

アスフィは【ヘルメス・ファミリア】団長。団長故にヘルメスの我儘を一身に受ける羽目になり、団員に弱っている姿を見せられず、愚痴などできるはずもない。

だから、アスフィにとって【ファミリア】の事情を知っており、どれだけ愚痴ろうと文句も言わず、それを決して口外しないカルナは有り難かった。

 

「………そうですね。その時はお願いします」

 

だから、普段は断るような誘いも、カルナが相手だとつい甘えてしまった。

 

「なら、いまは依頼の話をしよう」

「ええ。依頼内容の確認をしますが、目的地は24階層の食料庫(パントリー)。モンスター大量発生の原因を探り、それを排除する。間違いありませんか?」

「いや、モンスター大量発生の原因はわかっている。原因は食料庫(パントリー)を封鎖されたモンスター達が別の食料庫(パントリー)を目指した大移動だ」

「何故、それを知っているんです?」

「実は30階層でも同じ事が起きていた。あの時は食料庫(パントリー)を超大型植物モンスターが占領していた。今回も同種のモンスターがいるはずだ」

「なるほど、ならばそのモンスターを排除すればいいのですね?」

「そううまくはいかないだろう。あの時は番人がいなかったが、敵も同じ失敗を繰り返しはしないだろう。簡単には勝たしてくれまい」

「………それは貴方でも、ですか?」

「ああ、俺でもだ」

 

カルナが思い浮かべるのはクー・フーリン。24階層であの強敵は待っているとカルナは直感していた。

 

「だが、負ける気はない。そこは安心しろ」

「このメンバーで最も強いのはカルナです。貴方に全てを託すしかありません」

「ああ。アスフィ達の命運は俺が預かろう」

 

アスフィは団員の命をカルナに託した責任を、カルナは全員の命は自分にかかっているという重圧を背負った。

他派閥同士でここまですんなり互いに任せられるのは二人の信頼があってこそだ。

 

「では、こちらの団員を紹介します。私を合わせ総勢十六名、全て【ヘルメス・ファミリア】の人間です。ステイタスは大半がLv.3。そして私が中衛から全体の指揮を執ります。アスフィ・アル・アンドロメダ。武器は短剣とアイテムを少々」

「十六人?」

「何か?」

「いや、なんでもない」

 

原作では十五人だった気がするが、流石に十数年以上も昔、それも前世の記憶など曖昧になるものだとカルナは考え、自身の思い違いと判断した。

それよりも重要なのは自己紹介だ。今回限りとはいえカルナ達とアスフィ達は背中を預けるパーティー。互いの使用武器、前衛や後衛などの役割。一緒に戦う為に必要な情報交換を行っていく。

 

『前衛組』。

 

「フンッフンッ」

 

何故かジャンプを繰り返すずんぐりした男性ヒューマン、ゴルメス。武器は大包丁。

 

「何でそんなにスタイルいいのよ」

 

アイズを睨む筋肉質な女性ドワーフ、エリリー。武器は双楯。

 

「へー、あんたらが【剣姫】と【施しの英雄】か。何で【剣姫】はエロいカッコしてんのさ? 【施しの英雄】は金ピカな鎧で成金なの?」

「ダメよ、そんな事聞いちゃ。誰にでも恥ずかしい趣味の一つ二つあるんだから」

 

毒舌な小人族(パルゥム)の双子、ポックとポット。武器はポックがメイス、ポットがハンマー。

 

「よろしく。あいつらはその………無視してくれ」

 

気苦労そうな前衛リーダーの男性獣人、ファルガー。武器は大剣。

 

………賑やかなメンバーだな。

 

『後衛組』。

 

「【剣姫】、【施しの英雄】とご一緒できるなんて光栄です。ほらメリルも隠れてないでご挨拶」

 

礼儀正しい後衛リーダーの女性ヒューマン、ネリー。武器は魔剣。

 

「こ………こんにちは」

 

仲間の背後に隠れた人見知りの小人族(パルゥム)、メリル。武器は杖。

 

「………」

 

一言も話さず覆面で素顔も種族も不明な人物、ドドン。武器は角。

 

………個性的なメンバーだな。

 

『中衛組』。

 

「あらぁ、貴女とっても綺麗なお肌、それに貴方もカッコいいわぁ」

 

妖艶な女性獣人、タバサ。武器はムチ。

 

「よろしくな!」

 

活発そうな女性獣人、ルルネ。武器はナイフ。

因みに彼女はカルナが居なければフェルズに『宝玉』の運び屋を頼まれ、事件に巻き込まれていた。

 

「おい英雄様よ、アスフィさんと随分仲良さそうだなぁ? どういう関係だ、俺は何百回誘っても振り向いてもくれないんだぞ⁉︎」

 

何故か喧嘩腰な男性ヒューマン、キークス。武器は投石。

 

「気楽に行こうじゃないか」

 

ギターを弾く男性エルフ、セイン。武器は手斧・短弓。

 

「………」

 

こちらに関心がないのか視線さえ向けない女性エルフ、スィーシア。武器は双長剣。

 

「貴殿等の詩歌作っていい?」

 

自分を詩人だという男性獣人、ホセ。武器は双極剣。

 

ここまでのメンバーの自己紹介は問題なかった。カルナも原作知識で知っているメンバーだ。

しかし、最後に前に出てきた人物、原作には存在しなかった【ヘルメス・ファミリア】十六人目のメンバーを見てカルナは驚愕することになる。

派手に着飾った衣装を身に付け、ピンク髪に華奢な体格をした美少女ーーーではなく美少年。

二度目なのでカルナも驚愕を顔に出すことはなかったが、呆然と少年の自己紹介に耳を傾けた。

 

「よろしくね! 君達みたいな英雄と冒険できるなんて、ドキドキするよ!」

 

美少女と見紛う小人族(パルゥム)の男の娘、アストルフォ。武器は馬上槍。

クー・フーリンに続く、二人目のサーヴァントの邂逅だった。

 




サーヴァント参戦第二弾はアストルフォです。
【ヘルメス・ファミリア】副団長で、アスフィと双璧を成す実力者。
この世界のアストルフォは小人族(パルゥム)という設定にしています。
これからもちょくちょくカルナに何らかの関わりがあるサーヴァントを参戦させる予定です。
ただし、物語の流れでは無関係のサーヴァントやカルナに関わっていても登場させない場合もあります。

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