ダンジョンに施しの英雄がいるのは間違ってるだろうか   作:ザイグ

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第三十五話

カルナ・クラネル。

 Lv.7

 力:I 0→G 271

 耐久:I 0→H 132

 器用:I 0→G 224

 敏捷:I 0→F 349

 魔力:I 0→F 387

 幸運:D

 不死:E

 耐異常:G

 鍛治:G

 精癒:I

 

「全アビリティ熟練度、上昇値トータル1300オーバー………⁉︎」

 

ロキが驚愕の声を上げた。【ランクアップ】した最初の頃はアビリティの熟練度は上昇しやすい。だが、成長促進スキル【憧憬庇護】の効果を合わせたとしても、ここほどの成長速度はいままでなかった。

 

「なるほど、【憧憬庇護】の効果が向上したか」

 

カルナはこの上昇率に心当たりがあった。クー・フーリンの激戦もあるが、その戦闘場所が18階層だということも大きい。

【憧憬庇護】はベルが近くにいればいるほど効果が向上する。

現在、ベルはオラリオにおり、『上層』を活動領域にしている。そしてカルナが激戦を繰り広げたのは地上に近い『中層』。普段、活動領域にしている深層に比べてベルに近い場所で戦闘をしたため、これだけの上昇率になったのだ。

 

「よく考えれば相反するスキルだ」

 

Lv.7のカルナが良質な【経験値】を得るには深層に行かなければならず、ベルから離れる。

ベルの近くで戦う為には上層や中層に止まらなければならず、良質な【経験値】を獲得できない。

これが同じ成長促進スキルを持つカルナがベルより成長速度が遅い原因だった。

 

「ほな、もう一つの【経験値】も抽出するで」

「………ああ、頼む」

 

ロキが【魂の残滓】から【経験値】の抽出を始めた。すると体から何かが失われていくような感じた。

 

「………っ」

 

その感覚に自然と体が強張る。常に感じていた【英霊カルナ】という存在が遠のいていく。存在が失われて俺の糧となろうとしていた。

 

ーーーすまない。俺の都合の為に貴方を消すことを許してくれとは言わない。

 

俺が強くなれたのは【英霊カルナ】の力があってこそ。それなのに俺は更なる力を得る為に最後の残滓さえ消し去ろうとしている。それを自己嫌悪せずにはいられなかった。

すると聞こえるはずのない声が聞こえてきた。

 

ーーー構わない。それをお前が正しいと思うなら、迷うことはない。この体は既にお前のモノなのだから。

 

「ーーー!」

 

幻聴か、気のせいか、【英霊カルナ】の声が聞こえた。その言葉に俺の頬を一筋の雫が落ちた。

 

「………ありがとう」

 

もう存在を感じられない施しの英霊に俺は在り来たりな礼しか伝えられなかった。

 

「よし、カルナ。終わったで」

 

俺が【英霊カルナ】に別れを済ませている内にロキが【ステイタス】の写しを終えたらしい。

 

カルナ・クラネル。

 Lv.7

 力:G 271→D 533

 耐久:H 132→E 406

 器用:G 224→D 524

 敏捷:F 349→C 659

 魔力:F 387→C 671

 幸運:D

 不死:E→D

 耐異常:G

 鍛治:G

 精癒:I

《魔法》

【ブラフマーストラ】

・速攻魔法

・照準対象を自動追尾

【アグニ】

・付与魔法(エンチャント)

・炎属性

・詠唱式【我を呪え】

【ヴァサヴィ・シャクティ】

・階位昇華(レベル・ブースト)

・発動対象は術者装備限定

・行使条件は【日輪具足】使用解除

・発動後、一日の要間隔(インターバル)

・詠唱式【神々の王の慈悲を知れ。主神よ、刮目しろ。絶滅とは是、この一刺。焼き尽くせ】

《スキル》

【貧者見識(ヴァイシャ・ダルシャナ)】

・本質を見抜く眼力。

・相手の【ステイタス】を看破できる。

・人類、怪物問わず看破可能。

【憧憬庇護(リアリス・フレーゼ)】

・早熟する。

・懸想(ベル)を守る限り効果持続。

・懸想(ベル)が近いほど効果向上。

【日輪具足(カヴァーチャ・クンダーラ)】

・光鎧を装備する。

・この鎧は神々でさえ破壊困難。

・装備者は損傷(ダメージ)を九割削減。

【英雄宿命(アルゴノゥト)】

・強敵対峙に対するチャージ実行権。

・解放時における全アビリティ能力補正。

・能力補正はチャージ時間に比例。

 

Lv.7でありながら、全アビリティオールE以上の上昇率。これだけの【経験値】を蓄積していた【英霊カルナ】は流石としか言いようがない。

加えて新たなスキル、魔法も発現している。両方共、一番最初のスロットに表示されているのはこれが本来なら最初に発現していたはずのスキルと魔法だからだろうか?

スキル【貧者見識(ヴァイシャ・ダルシャナ)】は敵の情報を視認するだけでわかるというもの。情報が一切ない新種モンスターの情報を入手できるアドバンテージは大きい。だが、問答無用で【ステイタス】を看破するこのスキルは、情報秘匿のルールに違反している。なるべく秘密にした方が良さそうだ。

魔法【ブラフマーストラ】。ベルの【ファイアボルト】と同じ速攻魔法。詠唱を必要としないので連射が可能な稀有な魔法。それも追尾属性(ホーミング)なので【ファイヤボルト】の上位版と考えていいだろう。………というより、これってやっぱり、眼からビームか?

あ、後【不死】のアビリティも上昇しているが………これ以上高くなるとどうなるんだ? 頭吹き飛ばされても再生するとか? ………違うよな?

 

「ーーーありがとう、【英霊カルナ】。これでクー・フーリンに勝てる」

 

【英霊カルナ】の力を完全に得た自分ならクー・フーリンにも勝てると確信した。

しかし、カルナは知らない。敵もまたダンジョンの奥深くで、より強大な怪物になろうとしていることを。

 


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