ダンジョンに施しの英雄がいるのは間違ってるだろうか   作:ザイグ

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第二十九話

クー・フーリン・オルタ。Fate/Grand Orderにおいて

女王メイヴの願望によって邪悪な王と化した本来のクー・フーリンとは異なる存在。

その戦闘能力は凄まじく、作中では多くのサーヴァントを戦闘不能に追いやり、師匠スカハサも勝てないと言わしめたほど。

そして、その魔槍は神々ですら破壊困難な黄金の鎧を貫通し、カルナに致命傷を与えた天敵と呼べる代物だ。

 

………目の前のクー・フーリンが持つ槍は宝具ではないだろうから、その心配はないと思うがーーー並の武器ではなさそうだな。

 

カルナはクー・フーリンを観察しながら、考える。あれが本物の《ゲイ・ボルク》なら脅威だが、それほどの力は感じない。鑑定した感じでは第一等級、それも特殊武装(スペリオルズ)と推測できる。

 

「……槍を交えればそれも分かるか」

 

カルナはシャクティ・スピアを構える。

 

「アイズ、奴は俺が相手をする。レヴィスは任せた」

「分かった」

 

任せた、と言ったがアイズではレヴィスに勝てないとカルナは確信していた。昨晩の戦闘で戦闘技術はアイズと同等と分かった。ならば勝敗を分けるのは単純なステイタスの差だ。アイズはLv.5だがレヴィスはLv.6相当。【エアリアル】による強化さえ上回る能力がレヴィスにはある。

かといってクー・フーリンが相手ではアイズに勝ち目は欠片も無い。クー・フーリンの実力はLv.7相当。しかも戦闘技術はカルナと同等か、それ以上。カルナが全力でも勝てぬかもしれないほど、クー・フーリンは強大だ。

だから、クー・フーリンはカルナが、レヴィスはアイズが相手するしかなった。

 

「行くぞ!」

「死ぬ準備はできたか?」

 

カルナは一気に間合いを詰め、槍撃を放つ。

 

「甘えっ!」

 

大型級モンスターさえ貫通する一撃必殺をクー・フーリンは打ち払い、反撃する。

槍を持った者同士の戦い。異形のモンスターと違い、同じ武器、体格。戦闘能力、戦闘技術も拮抗しているなら勝敗を分ける要因は何か?

 

「はぁッ‼︎」

「ちっ、馬鹿力が!」

 

カルナはクー・フーリンの反撃を力任せに弾き飛ばし、あまりの力にクー・フーリンを強制的に後退させる。

要因①。『攻撃力』。

これは超大型武器《シャクティ・スピア》の威力と『力』のアビリティで勝るカルナが有利。

 

「逃がさん!」

「くっ……!」

 

開いた距離が無いかのごとく、規格外のリーチを誇る《シャクティ・スピア》がクー・フーリンを襲う。

要因②。『間合い』。

これもクー・フーリンの長槍を上回るほど巨大な槍を扱うカルナが有利。

 

「今度はこっちの番だ!」

「ーーーっ、速いな!」

 

クー・フーリンは《シャクティ・スピア》を避け、超高速の連続突きを放つ。

要因③。『槍を振り回す戦い』。

これは超重量の大槍を振り、『敏捷』のアビリティで劣るカルナが不利。

 

「ふんッ!」

「硬てぇな」

 

カルナは鎧の隙間や顔を正確に狙った突きを、顔を逸し体をずらす事で鎧に当てた。頬を掠り、一筋の傷ができるがそれも瞬時に回復する。

要因④。『防御力』。

これは神々でさえ破壊困難な鎧を纏い、どんな傷でも再生するカルナが有利。

 

「ーーーだが、当たりだ」

「! 狙いはこちらか!」

 

連続突きの一撃がカルナのポーチを掠めたのか、穴が開き、中から『宝玉』が落ちた。

要因⑤。『勝利条件』。

これはカルナが『宝玉』の死守及び敵の制圧しなければないのに対して『宝玉』を奪還すればいいクー・フーリンが有利。

 

様々な要因が絡み合う攻防が繰り広げられ、未だに勝敗の決定打とはならない。

敵が強者ゆえに互いを最大級まで警戒し、切り札を使用する隙を伺う為、千日手じみた戦いになっていた。

 

 

ーーーしかし、何事にも異常事態(イレギュラー)は起こりうる。

 

 

「【目覚めよ(テンペスト)】‼︎」

「っ、待て、アイズ! 魔法を使うな!」

 

レヴィスの猛攻に劣勢だったアイズが逆転する為に風の力を付与し、レヴィスを大風で吹き飛ばした。

だが、それは悪手だ。風を使えばレヴィスにアイズが『アリア』の関係者だと知られる。

 

「今の風……そうか、お前が『アリア』か」

 

レヴィスが呟いた名前に、アイズの変化は劇的だった。金の双眸を見張り、動揺した。何故その秘密を知っているのかと。

カルナの危惧した通り、これでアイズは冷静に戦う事は不可能になった。ーーー何より、側に『宝玉』が無防備に転がっているのだ不味かった。

 

『ーーーァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ‼︎』

 

予想通り、アイズの風に反応した宝玉の胎児が叫喚を上げる。

 

『アァァァァァァ‼︎』

「避けろ、アイズ!」

 

胎児はアイズ目掛けて跳んだ。アイズは迫る胎児を回避すると、胎児はそのまま宙を飛び、アイズに倒されたヴィオラスへ接触、寄生した。

ヴィオラスに張り付いた胎児は同化し、ヴィオラスは悲鳴を吐き出し体全体が膨れ上がった。

別のヴィオラスを取り込み、より大きくなり、人の形を成していく。

 

『ーーーーーーーーーーーーーーー‼︎』

 

50階層の女性型ヴィルガに酷似した女性型ヴィオラスが産声を上げた。

 

 


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