今回は少し長めです、そしてあと少しで二回目の死に戻りですよね……うぅ〜、複雑です。そして、前の回で特別章をのける本編が30話へと達しました、パチパチ。記念すべき回があの回で良かったのか……と思うところですが、仕方ないですよね(笑)
今回の話は主にタイトルの通り、お仕置きとあの子犬がメインの話となっています。次の死に戻りがハルとスバルにいい結果をもたらすことに期待して、前書きを終わりにしようと思います。
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「兄様、何か考え事ですか?」
「んぅ?あぁ……」
黒髪を上へと持ち上げたような髪形をしている少年に、男性だとバレた俺はラムさんによるお仕置きよりもスバルの上へと浮かび続けるあの奇妙なフラグの方が心配……いや、気になって仕方がない。
“真ん中に2の文字。それを囲むように白い旗と黒い旗が変わりばんこに並び、其々を繋ぐように赤い矢印が繋ぎあっている……か…………”
それ以外にも変わったフラグを見たことがあるが、例えばーー。
俺は机の横に変わらぬ姿勢で立ち続ける青髪の少女・レムちゃんへと視線を向ける。
「兄様、どうされたのですか?」
突然、視線を向けられたレムちゃんは困惑しつつも嬉しそうに頬を染める。
「……」
「そんな凛々しい目で見つめられたら、困ってしまいますよ、兄様」
「……」
「にっ、兄様?本当にどうされたのですか……?
いえ、兄様に見つめられるのが嫌なわけではないんです。とても嬉しいことなのですが……突然、このように見つめられたら……お役目が果たせなく……しかし、お役目がどうでもよくなるほど…兄様の凛々しい瞳…とてもカッコいいです……」
俺の視線に耐えきれなくなったのか、レムちゃんがクネクネと恥ずかしそうに身体を動かし始めると同時に小声でブツブツと何かを言っていた。そんなレムちゃんの頭の上には、これまでに俺が見てきたフラグが並んでいる。
左側に立つのがーー【白地にデカデカとピンクのハートが書かれた旗の中央に赤い文字で済と大きく書かれている】
そして、右側に立つのがーー【黒いとんがり帽子に赤い×マークが付いている】
“左に立っているのが、多分攻略対象フラグだよな”
現れた時はどうしたものかと思ったけど、想像していたよりも早く攻略することができた。あれ程まで、俺のことを嫌っていたから、これからも嫌われたままなのかなぁ〜って思ったけど、本当に仲直りできて良かった。
“で、右に立つのが魔女や魔女教徒が嫌いといったフラグだったよな”
彼女ーーレムちゃんはどうやら、魔女の残り香を嗅ぎ取ることが出来るらしい。その魔女の残り香というのが俺からも漂ってくるらしく、前はそれを原因で追いかけ回されたり、あのモーニングスターとやらで撲殺されそうになったが今はそんな事がない。いや、あっても困るのだけど……。
苦笑すると心配そうに此方を見つめるレムちゃんを手招く。レムちゃんが近づいてくるとそのフワフワな感触が気持ちいい青髪へと右手をのけて撫で回す。
「ごめんね、レムちゃん。ボゥーとしてた」
気持ち良さそうに目を細めるレムちゃんは上目遣いで俺を見てくる。そんなレムちゃんに俺は笑いかけるとレムちゃんもつられて笑いだす。
「お疲れなんですか?あまり、ご無理をなさってはいけませんよ」
「あはは、それは俺じゃなくてレムちゃんに使うべき言葉だよ。レムちゃんこそ、無理しないでね」
「うふふ、心得ていますよ、レムが倒れたら兄様や姉様に負担が掛かってしまいますもんね」
「スバルにもだろ?」
「スバルくんはそれ程多く、仕事をこなしてませんもの」
「あはは、辛辣だね」
笑いに包まれながら、その日の勉強会は終わりを迎えた。
τ
「スバル、さっさと歩けよ。時間は有効なんだぞ」
俺はアーラム村へと続く山道をズンズンと歩いていく。その後ろを歩くのが、ビシッと執事服へと腕を通した黒髪を後ろへと持ち上げるような髪型をしている少年・スバルと肩や胸元が惜しげもなく晒されている露出度満載の改造メイド服を身につけている青髪の少女・レムちゃんで、二人とも心なしか口元が歪んでいる気がする…。しかしその理由は否応なく俺自身であろう。
スバルの焦げ茶色の瞳に映る俺自身の服装はーー簡単に言えば、レムちゃんの身につけている改造メイド服の色違いだ。しかし、その色違いというのが問題であったーー
俺は悔しげに唇を噛むと笑いをこらえるのが必死といったスバルに鋭い視線を向ける。
「ッ!なんで……、俺がこんな目に……っ」
ーー癖っ毛の多い赤髪に止められたフリルのついた薄桃色のカチューシャ。薄桃色のエプロンに撫子色の改造メイド服、そして終いが薄桃色のガーターベルト付きの靴下だ。何が悲しくて、異世界でこんなコスプレじみた事をしなくてはいけないのだろうか!
そんな姿を母さんや師匠が見たら、白目を向いて倒れかねない。
“あぁ、お母さん師匠、俺は元気でやってます……。精神的に辛く涙が出ることが多いけど……”
右斜め後ろから聞こえる忍び笑いに苛立ちながら、アーラム村へと到着。
「俺はあっち側から買い物してくるから、レムちゃんはそっちお願い」
「分かりました、兄様」
其々の持ち場へと向かう俺たちに取り残されたスバルは唖然とする。
「まっ、ハル。俺は?」
俺は振り向きざまに冷たく言い放つ。
「子供たちと遊んでいればいいじゃない?あぁ、そうだね……このまま、この村の子供になってしまえばいいよ。うん…いい提案だ」
「んなわけあるかー!ってちょっ、お前ら、やめ」
「ふ」
村の子供たちに揉みくちゃにされるスバルに俺は薄い笑みを浮かべる。その表情を見たわけではないけど、多分凄い悪い表情をしていたのではないかと思う。
俺はスバルの置き去りにして、買い出しへと精を出した……。
しばらく経ち、あの場所へと帰ってみると、スバルと子供たちの姿が見えなかった。それを不思議に思っているとズキンとあの感覚が現れた。
「ッ……」
久し振りに感じる心臓を握りしめるような感覚に、見慣れた白い旗が地面に現れた。
【白地に赤い矢印】が書かれたフラグは森へと続く小道を指差している。
“そっちに行けって事か”
俺は矢印の指差す方へ走り出すと見慣れた黒髪に執事服を身につけている少年にあった。橙のショートヘアーに、赤いリボンを付けている少女が抱っこしている子犬を撫でようと試みているようだった。しかし、その子犬はスバルに触られるのを嫌うようにグルルルと唸っている。
「おっ、ハル。お前もこの小動物の可愛さに駆けつけてきたのか?」
「はぁ……はぁ……。どこ行ったのかと思ったら、こんなところにいたのかよ、スバル」
「ハルイトもさわるー?」
「かわいいよー」
「あぁ、そうだね…」
子供たちの言葉に適当に答えながら、今だに心臓が握りしめられている理由を探ろうと子犬へと視線を向けると、ひょっこりと現れる謎めいたフラグ。
【白地に真っ黒に塗りつぶされた人の上半身。こちらを見つめる瞳は真っ赤でいかにも悪人っぽい】
“おいおい……こんな時に何のフラグだよ……”
「おっ、チャンス!」
「おい、スバル」
大人しくなった子犬に触れようとするスバルを俺が止めると、その音でスバルが触ろうとしたのが分かったのだろう。子犬がガブッと噛み付くのは、俺の右手でーー
「っあーーッ!?」
「あぁ〜無理矢理触ろうとするからだよ、ハルイト」
吹き出る血に涙を堪えながら、スバルの方へ振り返るとその手を掴み、強引に引っ張って 来た道を帰っていく。
「いや、俺が触ろうとしたわけじゃないからな!?スバルが触ろうとしただけで……って、クソいてぇ。バカスバル、ほら見たことか、こうなるから触るのはまた今度にしろ。レムちゃんが待ってる」
「いや、ハル。俺にも考えがあって、エミリアたんとのラブラブデートっていう野望がーー」
「ーーくだらん、帰るぞ」
「この鬼畜ぅーー!!悪魔ぁーー!!」
ただをこねるスバルを引きずりながら、レムちゃんが待つ集合場所へと辿り着いたのがそれから数分後のことだった……
この後の話を書こうか迷ってる。しかし、大事なシーンだと思うしなぁ…うーん
※レム章により少し内容を変えてます。
子犬を抱っこしている少女を青髪のお下げの子・メィリィ→橙のショートヘアーに、赤いリボンを付けた子・ペトラ
へと変化しております。