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黒髪を上へと持ち上げたような髪型をしている少年・スバルはただただ驚いていた。それ程までに目の前に広がる光景は衝撃的であった。
一方、スバルと同様に、いやそれ以上に驚いていたのはスバルが視線を送り続けている癖っ毛が多い赤髪の少年・ハルイトであった。赤い大きな瞳をパチクリとした後、苦虫を噛んだような渋い顔を浮かべている。
そんな少年たちを微笑ましげに見守っているのが、長い藍色の髪を背中のところまで伸ばしている青年・ロズワールだった。興味深げに双方を眺めていたロズワールは呆然としているスバルに近づくと
「やぁ、ご一緒していーぃかい?ハルイトくんもそこにつったってないでおいで」
振り返り、手招きするロズワールにハルイトは我に返ったようでロズワールの横へと歩いてくる。
「えへ?あっ、はい。ロズワール様」
スバルはそんな二人を見つめる。しかし、見間違いではなく、本当に赤髪を揺らして歩いてくるハルイトの股間には聖剣がぶら下がっていた。それもここにいる者たちの中で一番大きいときた。
“なんか……負けた気がするな……”
スバルがガクッと肩を落とす姿にハルイトは眉を顰める。そのまま、スバルの横へと身体を割り込ませると湯船へと身体を沈めた。その横にはロズワールが入っている。
「しっかし、ハルって本当に男なんだよな。驚いたぜ」
スバルの声にもハルイトは苦笑いを浮かべる。癖っ毛の多い赤髪を撫でながら、言葉を発する。
「いやぁ〜、本当にごめんね、スバル。本当はもっと早く言うつもりだったんだよ。でもね、スバルが気付いてくれないし、ラムさんが面白いからこのままでって言うからね。本当、ごめん」
両手を合わせて謝ってくるハルイトにスバルは右手を上げて横に振るとロズワールへと視線を向ける。
「まぁ、いいさ。俺も気づかなかったんだし、それよりロズっち、風呂の時は流石にあの化粧落とすんだな」
スバルの質問にずっと黙っていたロズワールが答える。
「そうだね。おや、ひょっとすると私がスバルくんの前で素顔をさらすのはこれが初めてだったりするのかーぁな」
「まぁ、そうなるな。なんだ、普通にかっちょよくて何だよーって気分。隠す必要ねぇじゃん」
「あの化粧は趣味で、べーぇつに顔を隠したいってわけじーゃないからね。口が裂けてたり鼻が曲がっていたり、目つきが絶望的に悪いわけでも……おっと」
ロズワールがスバルを見て、言葉を止めたのを見たハルイトは忍び笑う。そんなハルイトを小突くスバル。
「ぷっ……ふふふふ、あはは……」
「ハルも笑ってんじゃねぇよっ!ロズっちもロズっちだよ!俺を見てそういうセリフを言うなよ。心の弱い三白眼なら死んでるぞ」
スバルのこの三白眼は母親から受け継いだものだ。文句を言いたくても何も言えない。
そこまで考えて、ふと横に座るハルイトへと視線を向ける。その視線にスバルの考えていることが分かったのだろう。ハルイトは自分の癖っ毛の多い赤髪を弄りながら言う。
「スバルのお察し通り。俺はお母さん似だな。お父さん曰く今の俺の姿は出会った頃のお母さんにそっくりらしい」
「なんだそれ、惚気か!」
「まぁ、うちの両親は格別仲良しだからな。いい歳なんだなら弁えろよと思うこと多々ならず。それ以上はいいお父さん、お母さんなんだけどな」
「あぁ……そうか……、ハルも大変だな……」
両親の仲睦まじい姿を思い出したのだろう苦い顔を浮かべるハルイトに、スバルもそれ以上は言えず黙る。そんな二人を見ていたロズワールが話を変えてくれた。
「そういえばスバルくん、ラムとレムとは仲良くやれそうかーぁな?あの二人はこの屋敷で働いて長いから、後輩との接し方も弁えているはずだーぁけどね」
ロズワールの質問にスバルは腕を組みながら、考える。
「んー。レムとはまだあんましだけど、ラムとは仲良くやってるよ。むしろ、ラムは少し馴れ馴れし過ぎる気が。先輩後輩以前に、俺がお客様の時点から態度変わらねぇよ、あの子」
スバルのその言葉にうんうんと懐かしそうに首を縦に振るハルイト。
「まぁ、それがラムさんのいいところだからね。スバルはもう少しさりげない優しさに気づくべきだね」
「あの毒舌のどこに優しさが!?ハルも大分、ラムに毒されてるな」
「ははは、本当に仲が良いね、スバルくんとハルイトくんは。いーぃとも、これからも仲良くしてくれたまーぁえ」
「はい、ロズワール様」
「へい、ロズっち」
二人の返事に頷いたロズワール。
「スバルくん達に負けず劣らず、ラムとレムはじーぃつに良くやってくれてるとも。ラムの足りないところをレムが補う。姉妹だから助け合わなくちゃね」
「まぁ、聞いて見た限りじゃレムがフォローするばっかで、ラムは妹の劣化版なんですけど」
スバルは瞼を閉じて、桃髪の少女・ラムと青髪の少女・レムを思い浮かべる。いま話題に上がっているこの姉妹はあらゆる家事技能での優劣をつけている。あらゆる技能で妹に一歩及び二歩及ばない姉。普通なら劣等感に苛まれそうな設定なんだが……
「なのに『姉だからラムの方が偉い』ときたもんだ。あの神経の太さにゃビビるよ」
「そんなこと言ったら、スバルも充分に太いと思うけどな」
「あはは、ハルイトくんのいうとーぉうりだね。でもそうか。そんな風に答えていたかい。ずけずけ踏み込んで遠慮のないことだ。実にいーぃことだよ」
「オノマトペ込みで褒められている気は全然しねぇなぁ」
「まぁ、スバルは空気読まないもんね。そのずけずけと他人のテリトリーに入っていってしまう癖はなんとかしないとね。フォローするの大変なんだから」
「悪かったな」
膨れるスバルにハルイトは謝っている。ロズワールは片目をつぶると、左の黄色い瞳だけで天井を仰ぐ。
「スバルのそういうところは実際、いーぃことだと私は思っているよ。あの子らは少し自分たちだけで完結しすぎてるからねーぇ。そのあたり、ちょこーぉっと他人か外から引っかき回す……それで変わるものも、きっとあるんじゃーぁないかな。もちろん、その他人にはハルイトくんも入っているよ」
ロズワールのその言葉にハルイトは眉を顰める。スバルも同じように?マークを頭の上に浮かべて、互いに顔を見合わせる。
「そういうものかなぁ」
「そういうもんですかねぇ」
「そんなもんですともーぉ」
ハルイト、スバルの二人の呟きに頷いてから、三人は肩まで湯船に浸かった……
すいません、マナで行けなかった……