※お気に入り登録 94人、ありがとうございます!!
仕事も一通り終わり、一日の疲れを癒すために湯船へと浸かる。
「いぃーやぁー。ハルイトくんじゃないかぁー、仕事の方はどうだね?」
チャプンと水音を立てて、隣に入ってきた雇い主に俺は視線を向ける。流石にあの趣味の悪いメイクはとっているらしく、そのメイクの下には美男子と言わざるおえない素顔が広がっていた。左右で違う青と黄色の瞳に見つめられながら、俺はさっきの問いに答える。
「はい、何とかやってます。レムさんもラムさんも丁寧に教えてくれますし、何よりもやり遂げた後の達成感が凄いですね、ここまで広いと。それよりもラムさんが俺に対して特別厳しいんですけど、あれは何なんですかね?レムさんも最近ちょくちょく、俺を刺してくるし……」
「ハルイトくんを気に入っているのだぁーよ。いぃーや、仲が良きことはいいことだぁーね」
「そういうものですか?俺にはさっぱり……」
「分からなくても結構だぁーよ、これからも二人と仲良くしてくれたまえ」
「は、はぁ」
“仲良くしたいのはやまやまだけど……、あの二人がね……”
心を開いてくれないことには仲良くするにも出来ない。ラムさん攻略も全然進んでないし……。
「はぁ……」
溜息をつき、丁度いい湯加減に設定されている湯船の中でパタパタと脚を動かす。そんな俺を片目をつぶってみていたロズワール様が意味深な笑みを浮かべる。
「ハルイトくんは不思議な子だぁーね」
「俺が不思議ならロズワール様は特殊ですね」
「手厳しいぃーね、ハルイトくんは。しぃーかし、そういうところも私は評価しているんだぁーよ」
「そうなんですか?ラムさんに聞かれたから怒られそうな内容ですね」
「ふふふ、そうだぁーね。でも、ラムも分かってくれるだぁーろうさ。事実、ハルイトくんを評価しているのも本当のことだしぃーね。………私の果たそうとしている願いに君はもう不可欠な存在となってしまったよ……」
「?」
小声で呟かれる独り言に何故か、背中に悪寒が走る。しかし、俺はもうこの人に忠誠を誓うと言ったんだ。誓いをそう簡単に破るわけにはいかない。
俺は折角なので、色々と質問してみることにした。ロズワール様とこうやって裸の付き合いは稀であるだろうから。
「ロズワール様、質問宜しいですか?」
「いいぃーよ、ハルイトくん。ハルイトくんになら私の全てをさらけだぁーそう」
「いや、ロズワール様の赤裸々話はあまり聞きたくないですね……」
「本当、君は裏表がなぁーいね。少しは裏も用意しておいた方がいぃーいと思うよ?この世界を生き抜くにはね」
「はい、肝に命じときます」
俺はうなづくとロズワール様へと向き直る。
「ロズワール様。金髪の巻き毛の幼女とエミリアさんとパックさんのことなんですけど、あのお三方はこの屋敷でもかなり上に位置する方々で?」
「そぉーだね、エミリア様はこのルグニカ王国四十二代目〈王候補〉の一人だからね。そして、君がさっきからパックさんといっているのぉーは大精霊様だぁーね」
「つまり、ものすごい偉い方々ということで……?」
「そぉーだね」
「うわぁあああ!?俺、お偉いさん方になってことをォ!!」
「あははっ、ハルイトくんも大胆な事をしたものだぁーね。失礼は無かったようだぁーし、私からハルイトくんにお咎めはなぁーいよ。そして、もう一人は多分 ベアトリスではないかぁーな?」
「ベアトリス?」
俺が小首をかしげるとロズワール様はうんうんと首を縦に振るとえっへんと胸を張る。
「ベアトリスは私が所有する本を管理しているのだぁーよ。簡単に言うと司書さんだぁーね」
「司書さん?あの全ての本を管理してるって事ですか?あんな小さい子が……」
「それが契約って言うものだぁーからね。ハルイトくんもするかい?」
「いえ、お構いなく」
「それはしないということかぁーな?残念だね、ハルイトくんとなら素晴らしい契約を結べると思ったなのぉーに」
「素晴らしい契約ってどんなやつですかっ。絶対に嫌ですよ!」
「あははっ。本当に面白い子だぁーね、君は」
その後も雑談等を交わし、貴重な時間を過ごすことが出来た……