俺が青春なんてして良いのだろうか   作:nasigorenn

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遅れてしまって申し訳ありません。
リアルで仕事が忙しすぎて毎日パソコンの前で寝落ちしていたので。

今回は沙希と雪乃に頑張ってもらいます。そして小町は弄り役ですよ。


第37話 俺は一緒にららぽに行く

 本人にバレぬようにサプライズパーティーを企画する雪乃。沙希はぶっきらぼうな印象があるが実際には世話を甲斐甲斐しく焼く性格なのでその案に賛成し、八幡もその案に反対はしない。

彼が嫌いなのは自分の誕生日であって他の人間の誕生日には嫌悪を示さない。何より奉仕部でそれなりの付き合いのある結衣となれば祝いたいという雪乃の気持ちも理解できる。

なので結衣には気付かれぬよう、その日の内にパーティーについて話し合いが行われた。

パーティーといっても彼女達は学生だ。やれることは限られており、身内で開くのだから規模は小規模になる。だから最初からある程度その方向性は決まっていた。

 

「会場はこの奉仕部の部室。そこでいつも通りに部活に来た由比ヶ浜さんを祝おうと思うの」

 

部室という勝手が効く空間を確保出来ているので会場を探す必要はない。

だから最初の問題はこれでクリア。そして誕生パーティーと言えば定番であるものに関しても雪乃は問題ないらしい。

 

「ケーキは私が焼いてくるわ。お店で買った方が良いのかもしれないけど、由比ヶ浜さんには感謝の気持ちを伝えたいから」

 

彼女は菓子が作れることはクッキーの依頼の際に知っていた八幡であったが、ケーキも作れるとは知らなかったので少し驚く。

そしてその意見に沙希もまた驚くと共に雪乃に話しかけた。

 

「あのさ………わ、私もそのケーキ焼くの、一緒にやっていい? その……ケーキとか焼けるのって凄いと思うから、一度やってみたかったんだ」

「別に良いけど、そんな難しい事ではないわよ」

「それでも。私、家だと料理は良くやるんだけど、お菓子とかはからっきしでさ。だからこの際に何か作れるようになれたらいいなって」

 

今までの張りつめた気が問題が解決して緩んだ事もあってか、沙希は最近年相応に綻んだ表情をすることが多くなった。だからなのか、雪乃にこうしてお願いしてる時の彼女は顔を赤らめながら少し慌てていた。それが見ていて可愛らしく面白いからなのか、八幡はそんな二人を見ていて顔を綻ばせていた。

ちなみに沙希がこのようなお願いをしたもっともな理由は妹の京華である。最愛の妹にお菓子を作ってあげたいというのは姉心なのだろう。それを察しているからこそ、八幡は沙希に感心する。

ただし……そこに八幡への恋心というものが入っていることに彼は気付いていない。

沙希は確かに妹のことも考えたが、その実八幡への想いを自覚して以来女子力について考えるようになった。ファッションなどは問題ない。ルックスに関しては自信はあまりないが、それでも磨こうと頑張っている。そして家庭力に関しては自信はある。何せ一家の台所の大体を掌握しているくらいなのだ。和食を中心に大まかな料理は出来る……のだが、お菓子に関してはまったく触れてこなかった。

ここで言葉を変えてみれば、和食がメインで料理が得意な世話焼き女子と、お菓子が作れる女子。どちらが『女の子っぽい』かを考えれば、明らかに答えは後半だろう。いや、前半が悪いわけではないのだが、前半を言いかえるなら『おバン臭い』『若そうじゃない』といった印象を受ける可能性があるのだ。

恋心を抱いている彼女にとってその印象は明らかにマイナスである。故にこうして『女の子らしい』ことを身につけようと頑張っているわけだ。

そんな乙女心に揺れる沙希の思惑も気付かずに皆の話し合いは続いていく。

場所の確保、ケーキの確保はこれで決まった。会場の装飾はサプライズなのでしないという方向になり、残るはもっとも重要な問題だけである。

それは……………。

 

 

 

 結衣の誕生日の少し前の日曜日、八幡はとある場所に来ていた。

辺りは人が多く賑わっており、実に活気に溢れている。その人々が向かう先にあるのは、大型商業施設『ららぽーと』……今回八幡達が行く予定の建物である。

そして当然その場に居るということは、買い物が目的だ。

結衣の誕生日を祝うにあたって必要な二つは揃った。ならば最後に必要な物は『誕生日プレゼント』だ。

それを買いに来たわけだが、八幡が一人で来たわけではない。

 

「お兄ちゃん、こういう所に来るのは久しぶりだね」

「あぁ、そうだな。小町と一緒に出かけられることが多くなかったからな」

 

八幡は隣で楽しそうに笑う小町にそう答える。

例の一件に関し、八幡は小町に一緒に手伝ってもらおうと協力を頼んだ。何せ年頃の女の子へのプレゼントだ。年相応の行動というものがイマイチ分からない八幡では何をプレゼントすればよいのか分からない。小町を祝うのとは違い、他人を祝うからにはそれ相応の物が必要だろう。それが分からない以上、八幡ではこの問題を解決する方法がないのだ。だからこその応援である。小町はまさに年相応の女子故にその感性も結衣に一番近いと判断してのことである。

まぁ、兄妹で久々に出かけるということに妹が喜んでいる姿を見られれば八幡はそれだけで満足である。

そんな風に小町と一緒に話し合いながら待つこと約10分。待ち人の一人がやってきた。

 

「ごめんなさいね、遅れてしまったかしら」

 

八幡と小町にそう声をかけたのは雪乃だった。その姿はいつもとは少し違っている。

髪の毛はいつものストレートと違いツインテールに結ってあり、服装は白いワンピースに薄手の水色のボレロを羽織っていた。胸の下あたりで結ばれている青色のリボンがポイントだろう。

その姿はいつもの静かな美貌を持つ彼女とは少し違って活発的な印象を彼女に与えていた。

そんな彼女を見て小町のテンションが上がる。

 

「わぁ、雪乃さん、可愛い~!」

「そ、そうかしら………」

 

小町に褒められて照れる雪乃。そして彼女は今度は八幡の方を伺うかのような上目遣いで見つめてきた。

 

「あ、あなたはどう思う?」

 

その問いかけに八幡は自分の頬が熱くなるのを感じつつ答える。

 

「その…………凄く似合ってると思う。いつもより活発的で可愛いと思うぞ」

 

そう答えると共に自分が何故こうも顔が熱いのか分からなくなる八幡。それを誤魔化したいが故に目を雪乃から逸らそうとするのだが、その目は彼女から離れない。

だから八幡ははっきりと見てしまっていた。

 

「そ、そう………それは良かったわ…………」

 

八幡の答えを聞いて顔を真っ赤に染める雪乃。耳まで真っ赤になり俯いてしまうその姿はいつも以上にいじらしく、更に可愛らしさを引き立てていた。

 

「あれ~、お兄ちゃんも雪乃さんも顔が真っ赤だよ? 良かったね、雪乃さん」

 

小町はそんな二人に茶々を入れ、余計に恥ずかしがる雪乃を見て楽しんでいるようだ。

そんな3人に後一人の待ち人が声をかけてきた。

 

「ごめん、遅れた」

 

少し息が荒いがそれでも謝罪をしてきたのは沙希であった。

薄手の青いジャケットに少し大胆に胸元が空いたシャツ、そして下は薄茶色のショートパンツにそこから延びる美脚にはニ―ソックスが纏われいてより足を美しく見せる。

歳相応でありながらも何処か大人っぽさを魅せるその姿は彼女によく似合っていた。

 

「沙希さんも綺麗~!」

「そ、そう?」

 

小町は沙希を見て更にテンションを上げる。小町のテンションに少し驚きつつも沙希もまんざらではないようで、顔が少し嬉しそうだ。

そんな中、雪乃は沙希のある部分を注目し、そして自分の部分を見て表情を暗くする。しかし、それに誰も気付かなかった。

そんな雪乃の反応などいざ知らず、沙希は八幡に顔を赤らめながら問いかける。

 

「ど、どう、比企谷? 似合ってるかな?」

 

先のその顔は服装とは真逆にあどけなく、幼さを垣間見せる可愛らしさを滲みだしている。

そのギャップさのある魅力に八幡は当てられてしまい、顔が更に赤くなっていた。

 

「あぁ、その……………似合ってる。だけどそれ以上に……」

「それ以上に?」

「お前ってそういう顔もするんだな。その…………可愛い」

「ッッッッッ!?!?」

 

八幡のその言葉に顔が一気に真っ赤になって蒸気を噴き出す沙希。

それはもう見事な赤面であり、見ていた小町はそれはもう楽しそうに笑う。

 

「あんたってそういうことをすぐにそう言うから………卑怯なのよ、ばか………」

 

そう独り言をつぶやく沙希。八幡には勿論聞こえているのだが、それを素直に捉えた八幡は何故自分が怒られたのか分からず考え込んでしまう。

 とりあえずこうして集合した八幡達。4人は揃ったことで一緒にららぽーとへと歩き出す。

その先頭を歩く八幡に気付かれぬよう、小町は雪乃と沙希の二人に話しかけていた。

 

「う~~ん、こんなにお兄ちゃんがモテるなんて思いませんでしたよ。だから余計に気になっちゃうんですよね~。どっちが………お義姉ちゃんになるのか。ね、雪乃さん、沙希さん♪」

 

その言葉に雪乃と沙希の顔はポストに負けないくらい真っ赤になった。

 

 

 


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