どうも最近ラブコメ不足を感じ俺ガイルのSSを読ませてもらったら、面白くて止まらなくなってしまい書きたくなってついやってしまいました。
辺り一面を闇夜が覆い、さざ波の音がこぎみ良く響き渡る。
そこは所謂港だった。貨物などを集積し蓄積、排出する役割をもつ貿易における重要施設。そんな所には、得てして『良くないもの』が集まるもの。
世の中の汚い部分を担う者たちが悪だくみをして行うのは、こういった『人目に付かない』場所だ。
この日も、何やらそのような輩が集まり何かを行っているようだ。
その様子を物陰に隠れながら見ている者がいた。
それは男だった。いや、男というにはまだ年若い。顔立ちからすればまだ少年とも見えるだろう。しかし、彼を見た者は絶対に年相応には見ないだろう。何せその瞳はあまりにも空虚で、それでいて濁り切っているのだから。
そんな彼は通信機を片手にその場から動かずにいる。まるで何かを待っているように。
その手に持つ通信機が周りに聞こえないように音が鳴り始めたのはすぐのことだった。
『こちらレイス7、準備OK。エイトマンはどうだ?』
通信機から聞こえた少し軽そうな声に彼は顔を曇らせながら通信機に返答する。
「こっちも準備は完了だが……前から言っているが、ちゃんとコールサインで呼べよ。いや、その前に何その呼び名。俺の名前まんまじゃん」
『結構格好いいだろ。昔のアニメの主人公の名前なんだよなぁ』
「それは前も聞いた。それよりも今は仕事中なんだから真面目に仕事しろよ」
『はいはい分かってるって。んじゃバックアップは任せな。俺はお前さんが好きなように動けるようにするだけだ。だからお好きに暴れな……レイス8』
「了解……いくぜ」
通信機を切ると共に、彼………コールサイン『レイス8』は前へと駈け出した。
駈け出したはずなのに足音は一切せず、進んでいくその背はどんどん闇夜に溶け込むように消えていく。
「これだけのコカイン、捌ければかなりの額になるぜ」
目の前に広がるケースの数男たちは欲望に染まった目を輝かせる。
これは男達にとってかなり大きい商談だった。上手くいけば莫大な富が手に入り、千葉に大量のコカインをばらまければ更に金の成る木になる。これはそういう商談だった。
だからこそ、その目は目の前にある莫大な量のコカインに首ったけだった。
勿論警戒は厳重にしているが、それでも浮ついた気持ちは抑えきれない。
だから気付けなかった……………。
すぐ目の前に敵がいることに。
「ギァッァアァアァァアアアアアァアアァッッッッッ!?!?」
突如上がる悲鳴に騒然とする周り。
その場にいた者達が声がした方を向けば、そこにいるのは胸と首の頸動脈から血を噴き出している男が地面で悶え苦しんでいた。
突如として襲撃された事実に周りの者達も気付き、戸惑いと怒りを顕わにして辺りを警戒する。
「一体誰がしやがったッ!」
「近くにいるぞ! 絶対に逃がすな!」
「殺せ、殺せぇぇえぇえええええええええええええええええ!!」
周りはあっという間に警戒態勢へと移行し、男達は懐から拳銃を引き抜き構え始めた。
しかし、そんな彼らを嘲笑うかのように被害者は更に出た。
悲鳴が上がりそちらを向けば、先程と同じように致命傷を受けた者が痛みに悶え苦しみながら死んでいく。心臓と頸動脈を一突き。やられ方からして刃物による攻撃だと判断出来るが、その犯人の姿は一切捉える事ができない。
それが二人や三人ならまだ良い。
次第に数が増え、あっという間に半分以上が地面に血の花を咲かせる。
なのに一向にその姿はなく、それまで憤っていた者達は次第に恐怖に心を浸食された。
自分達は一体何を相手にしているのかわからない。姿は一切見えず感じず、なのにその牙は確かに自分達に襲いかかっている。
それはもう現実的とはいえない。性質の悪い悪夢にしか思えないだろう。
だからこそ、
「も、もう俺は嫌だ! 逃げる!」
「待て、貴様等! 逃げるなぁ!」
統率の取れていない輩は崩れる。
皆畏れのあまりこの場から逃げ出し始めたのだ。姿が見えない襲撃者に怯え、もう殺意を抱くどころではない。
しかし、それに対し彼は………『レイス8』は容赦しない。
一言も漏らすことなく無言のまま、着々とその手に持った刃でターゲットの心臓を突き刺し首を掻き切る。
まるで作業のように、淡々と彼は濁った眼で行う。不思議な事に、彼はそれを堂々と行っていた。忍び寄るようなことはせず、普通に近づき、そしてナイフを振るう。
それに誰一人として気付かない。彼の姿は普通に見えるはずなのに、その身はまるで空気と一体化しているかのように希薄で虚ろ気だ。まるでそこに存在していないかのように。だからなのか、誰一人として彼に気付かないし、気付けない。まるで世界に一人取り残されたかのように、彼は一人だけの世界で限りを尽くす。その結果が地面に倒れる死体達。
だが、そんな彼でも逃してしまう者もある。
そんな者達は彼の目の前で瞬時に頭を弾けさせ、その生命を終わらせていた。
おかしな光景は彼等がすべて動かなくなるまで続き、その躯達の中に一人だけが立っていた。
「こちらレイス8、対象の殲滅を確認」
『こちらレイス7、こっちも終わった。しっかし相変わらずだな、お前さんのそれ。(レイスバンガード《亡霊強襲》)……こっちも敵が刺されてねぇと居場所が分からなかったよ』
「別に大したことじゃない。いつも通りに気配を消してやってるだけだ。そう言う割には絶妙な狙撃だけどな」
『まぁね。でなけりゃレイスのコードは名乗れねぇよ』
通信機越しに軽く会話をする彼。その様子は先程まで何人も殺していたようには思えないくらいリラックスしている。
そして撤収しようと話し合い、自分達の本部へと連絡を入れる。
それが終われば帰るだけであり、彼は代えの衣服へと着替えると来ていた服を『同じ組織の人間へと手渡した』。
後は帰るだけだが、その前に姿を現した青年に声をかけられる。
「仕事も終わったし飯でも食いにいかねぇか。確かこの辺に上手いラーメン屋があるんだよ」
陽気な声に対し、彼はしらっとした声で返事を返す。
「いいや、やめとく。小町が心配するといけないからな。それに明日は学校だ。遅刻すると色々と面倒だ」
その答えを聞いて青年は呆れかえり、彼をシスコンだと言う。
その言葉に対し、彼は堂々とした顔で青年に答える。
「当たり前だ。小町は俺にとって世界で一番大事な存在だからな。俺の存在意義そのものだ」
そう答えながら彼は帰って行った。
彼、とある組織の極秘のチーム『レイス』のナンバー8。
その本名は『比企谷八幡』。千葉在住の高校二年生である。
やっちまったと思っていますが反省はしません。
これからちょっとアレな八幡で頑張りたいかもです。