女子高生と七人のジョーカー   作:ふぁいと犬

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Act.78

 森の中で、穏やかな風が舞う。

 その風に乗せられるように黒い霧が舞う。

 

 穏やかな日差しの中にも拘わらず、凄惨な場が広がっていた。

 

 大きなクレーターが滅茶苦茶に幾つも存在し、木々達は薙ぎ倒され、切り刻まれ、無残な姿へと変わっていた。

 

 まるで、嵐でも通ったかのような世界。

 

 それ以上に姿が滅茶苦茶になっているダーカー達の、死骸の山。

 その量から霧に代わるのが遅れ、周りに黒い霧が漂っていた。

 

 大量の死骸の山の一部が動く。

 

 死骸を押しのけ、一匹の小さなクモの形をしたダーカーが飛び出していた。

 片足が吹き飛び、三本の足でヨタヨタとバランスを保っていた。

 そのクモが向かう先は洞窟の近く。

 

 一つの倒れている黒い影へと向かっていた。

 

 その影は。

 

 空ろな瞳のまま、今も血を地面に流し続け、一帯を血の海に変えていた。

 

「一緒、に………暮ら……」

 

 その少女は小さく口ずさんでいた。

 誰が居るわけでも無く、笑顔を浮かべながら楽しそうに。

 

 

「ほんと? うれ、し」

 少女は誰かに話しかけていた。彼女にしか見えない誰かに。

 

 身体の血の3割を無くすと幻覚が身体を襲いだす。

 

 それも、自身の身体の状態から現実逃避をするような、都合の良い夢のような物を。

 

 歩みの遅いダーカーはようやく少女の身体に行き着く。

 

 空いている一本の爪を少女の身体に勢いを付けて突き立てていた。

 肉へ食い込む音と共に、彼女の身体が揺れ、新たな穴から血が噴出す。

 

「美味し……パン屋が……あって……ね」 

 

 痛がる様子も無く、彼女は笑顔を浮かべながら空ろな瞳で言葉を紡ぎ続ける。

 

 数度突き刺したあと、ダーカーはヨタヨタと移動する。

 

「褒め……くれ……たぁ……ニヤ……ちゃう……なァ……」

 

 ダーカーの爪は、ファランの顔へと、眼の部分へと。

 

 突き立てられた。

 

 

「大好」

 そこで言葉は止まる。

 数度の痙攣が彼女の身体を襲う。

 

 その後、残った方の瞳から、完全に光が消えた。

 脳漿と血が入り混じったそれが、血の海にまた追加される。

 

 絶対回避とまで言われた彼女。

 ガーデンの一人。

 化け物の一人。

 最強で最悪で最害で最善のジョーカーの一人。

 

 触れる事すら叶わないと言われたハミングバードが、たった一匹のダーカーに命を断ち切られる。      

 

 

 夢を見る。

 

 

 都合の良い夢と共に、彼女は二度と目覚めぬ眠りへと付く。

 

 最後に彼女の脳裏に移ったのは。

 

 カナタの手を引いて、町を歩いている世界。

 困った顔をするカナタの事等気にせずに、ファランは大好きな人の手を引いて夢中で町を回る。

 

 そんな輝く未来。

 

 

 

 桃色の瞳に青空が反射するように光る。

 

 穏やかな光が世界を照らす。

 

 幸せそうな彼女の表情を。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 




挿絵担当に書いて頂いた二つのパターン。白黒の方も乗せさせて頂きます。


【挿絵表示】

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