三人が行く!   作:変なおっさん

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第35話

 復讐人形によるギガントバジリスクの殺戮が終わり、三人は警戒しながらもどうしようか悩んでいた。

 

「コレ、どうします?」

 

 依頼を達成した証としてギガントバジリスクから決められている部位を取る必要があるのだが損傷が酷く取りようがない。

 

「首か尻尾でも持って帰ればよさそうですが……重いですよね?」

 

「ウルベルトさんが持ってくださいよ。やり過ぎたんですから」

 

「馬鹿言うなよ。カース・オブ・ドールを使わなかったら勝てるか微妙だろ? 魔獣は体力が多過ぎて倒し切る前に俺の魔力が切れる可能性だってあんだから。せめて手伝ってくれよ」

 

「大丈夫ですよ、ウルベルトさん。ペロロンさんも意地悪しないでください」

 

 たっちは証として、頭部と尻尾の両方から最低限切り落とす。目玉だけでもいいところをコレだと他には何も持って帰れない。せっかく初めて来た場所なので薬草などを探してみたかったのだが。

 

「――ちょっと待て!? インプが石化された!?」

 

 ウルベルトが突然叫ぶ。警戒にあたらせていたインプの一体が何者かから石化を受けた。

 

「何処ですか?」

 

 すぐにたっちは剣を構え周囲を見渡し、安全を考えてペロロンは木の影に身を隠す。

 

「あっちの方角だ」

 

 ウルベルトは、魔力量を計算してインプを追加で二体だけ召喚しておく。いざとなればこの二体と残りを囮に逃げる。

 

「素晴らしい! お見事です!」

 

 ウルベルトが示した方向から場違いな男が現れる。優し気な面持ちで敵意などもない。綺麗な服を身にまとい、拍手をしながらこちらへと歩いてくる。此処が貴族の居る街の中なら何も不思議ではないが此処は先ほどまでギガントバジリスクが居た森だ。

 

「誰だお前?」

 

 ウルベルトが代表して問い掛ける。三人は、いつでも動けるように臨戦態勢をとる。

 

「名前……ですか。そうですね、ビーストテイマーとでも名乗っておきましょう」

 

「ビーストテイマー? まさかと思うが、そこのギガントバジリスクはお前のか?」

 

「残念ながら違います。ただ、私の後ろに居るのはそうですが」

 

 男の後ろからゆっくりと影が動くようにそれが現れる。先ほど倒したギガントバジリスクと違う新しい魔獣だ。

 

「こちらからもお聞きしてもよろしいでしょうか? 先ほどのインプもそうですがそこの人形は貴方のモノですか? インプはともかく初めて見ましたよ、そんなモンスター。それに面白い戦い方ですね」

 

「一人だけではないですね」

 

 たっちの言葉に男は少し驚いた表情を見せる。気のせいか好青年に見える笑顔が嫌なものに変わった気がした。

 

「お互いにという事で無礼をお許しください。それで、お答えして頂けますか?」

 

「答えなかったら戦うってか?」

 

「それも悪くはないですが、申し訳ない。これでも忙しい身ですので。此処には、別件で来たのです。その用事も終わりましたので帰るところなのですが面白そうな人達だなと思いまして、つい声を掛けてしまいました」

 

「あれは、カース・オブ・ドールって言う悪魔だ。呪いで力を増す、本来ならトラップモンスターと呼ばれる部類になる。見てたんなら方法は言わなくても分かるだろ?」

 

「トラップモンスター……。なるほど面白いですね」

 

「ちなみに言っておくがギガントバジリスクの石化とかは効かないぞ?」

 

 ウルベルトの警告の言葉に今度は表情を変えない。ただ、ジッとウルベルトの事を見ている。

 

「申し訳ありません。これ以上は」

 

 男の後ろから隠れていた別の男が現れる。身なりからして魔法詠唱者だろう。言葉遣いから判断すると、最初に現れた方が立場は上らしい。

 

「……そうですね。分かりました」

 

 表情も変わらず素直に言葉を聞いているように見えるが後から来た方は怯えているように見える。どうやら曲者のようだ。

 

「それでは、失礼します。またお会いできることを楽しみにしています」

 

 ギガントバジリスクを還し、元来た道を魔法詠唱者と共に帰っていく。

 

「早く、逃げよう。あれは、ヤバい奴だ」

 

「そうですね。あまりいい目をしていないように思えました」

 

 ウルベルトは、インプを再び召喚し再配備する。このままペロロンには隠れてもらい、たっちと二人でギガントバジリスクの部位を持って帰る事にする。

 

「勿体ないですね」

 

 見逃した者達を思うと少々後を引かれる。

 

「ですが、クインティア様。既に皆様は、お戻りになられています。これ以上はまずいかと思われます」

 

 クアイエッセ・ハゼイア・クインティアは、漆黒聖典の一人として亜人の殲滅任務を行っていた。その際にスレイン法国から帰還命令が届いた。以前に派遣した陽光聖典が全滅し、監視をしていた者達が原因不明の爆発に巻き込まれた。原因を確かめる為に漆黒聖典が派遣されたのだが途中で帰還命令が下った。理由は、ズーラーノーンの盟主の復活。詳細は不明だが何者かが大規模な魔法を行使した痕跡があるためにクインティアも含めて他の漆黒聖典の人間も帰還する事となった。

 

「法国領内にもアンデッドが現れ始めたと聞きます。早く戻るべきかと」

 

「仕方がないですね。隊長も戻られているようですから」

 

 そんな会話がたっち達が立ち去った後に行われていたのだが、そんな光景を見ている者が二人。三人の戦いを見ようといろいろと準備をしていたので声まで聞こえていたのだがアインズは頭を抱えていた。

 

「パンドラよ。なかなかに難しいものだな。ギガントバジリスクを発見し、その辺りの貴族を洗脳して依頼をさせたまではよかったが招かざる客が紛れた」

 

「そのようですね」

 

 いざとなれば手を打つが何事もなくて心から良かったと思う。

 

「どうなさいますか? 法国の者らしいですが?」

 

「そうだな……」

 

 なかなかに面白い事を言っていた。隊長という言葉から連想されるのは、漆黒聖典の第一席次だ。それが撤退した。おそらくだがカルネ村での一件を調べに来ていたのだろう。こちらに有益な情報は持っていそうだが――

 

「手に入れたいが何もしない。今の状況で何かあれば三人が疑われるからな。ここは、三人の名前を持ち帰ってもらおうじゃないか」

 

「スレイン法国でも有名になりますね」

 

「そうだな。だが、それは時間の問題だ。あの三人なら瞬く間に名声を手に入れるさ」

 

「その為にも次の計画ですね?」

 

「うむ。今回の不備を見直し、改めて計画を練り直すぞ。協力しろ、パンドラ」

 

「仰せのままに。それでは、こちらにまとめておいた資料集を御覧ください」

 

 アインズは、パンドラがまとめておいた資料を見ながら新しく計画を練り直す。今度は、もう少し安全を考慮したものにしたい。

 


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