Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争   作:放仮ごdz

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今回は戦闘無しです。士郎への聖杯戦争の説明となります。
ちょっと前回よりもぐだってますが、楽しんでいただけると幸いです。


#2:必要なのは二割の嘘と八割の真実

数刻後、衛宮邸

普通にバイクに乗ってここまで来た。来たのはいいのだが…私には理解が追い付かないね、うん。

 

「で、衛宮君に聖杯戦争のシステムを詳しく教える事になったのはいいけど…何で、桜・・・じゃなくて間桐さんまでここにいるのよ!」

 

「それはこちらの台詞です、遠坂先輩!」

 

「落ち着いてくれって桜・・・それに遠坂も」

 

「「衛宮君(先輩)は黙ってなさい(いてください)!」」

 

「…なんでさ」

 

「ドンマイ、士郎」

 

「マスター、人数分のお茶を淹れてきました」

 

「おう、礼を言うぜ姉ちゃん。すまねぇな、俺のマスターが」

 

『それはこっちの台詞でもあるよ、ランサー』

 

 

「…何だこのカオス」

 

 

いや、不法侵入したのも悪いけどさ…凛と桜が睨み合って、士郎が理由も分からず怒られて困った顔で、無表情のアーチャーが持ってきたお茶をライダーとランサーが受け取ってマイペースに飲んでいて…何だろ、これ。

 

 

「おーい・・・士郎?」

 

「ん?あ、クロ姉!どうしたんだ?皆で食べるの明日だったよな?」

 

「…マスター、こちらは?」

 

「初めまして、アーチャー。それにランサー…でいい?私は言峰黒名、この聖杯戦争に参加しているマスターです」

 

「「「「「『なにぃ!?』」」」」」

 

 

私が令呪を見せながらそう言うと面白いぐらいに驚いてくれるアーチャー以外の面々。あのストラップまでって、そんなに驚く事?…あ、敵の本拠地に敵マスターが乗り込んできたんだから驚く事か。

 

 

「…敵、ですか?」

 

「そう構えないでアーチャー、むしろ味方。さっき、バーサーカーから貴方達を助けたのは私」

 

「「「「「『!?』」」」」」

 

 

どうでもいいけど仲いいね。一応敵同士じゃね?てかアーチャー怖いよ、睨まんといて。…バレテナイヨネ?

 

 

「えっと…クロ?」

 

「はい、なにかな凛?」

 

「さっきバーサーカーから助けたのは貴方だって言ったわね。証拠は?」

 

「これ」

 

 

そう言って取り出したのは黒鍵。凛なら分かるはずだ、この冬木で黒鍵を所有しているのは、今外から来ている魔術師は除外して我が養父、言峰綺礼だけだ。…まあ、魔術を使えるってのは隠していた訳だが。

 

 

「なるほど…貴方、魔術師だったのね。あの綺礼が何もしてないはず無い物ね」

 

「「えっ。クロ姉(クロナさん)、魔術師だったの(んです)か!?」」

 

「魔術師じゃない、魔術使い。冗談でも魔術師て呼ぶな」

 

 

絶対言うな。殴るぞ、強化したグーで。何か凛に怪訝な目で見られてるんだが何なんだろうね。魔術師じゃなくて魔術使いってのが気に入らんのかそうなのか。知るか、魔術師なんて死ね。

 

 

「…それで、どこまで士郎に説明したの?」

 

「アンタこそ、何処まで知ってるのよ」

 

「…士郎と桜と凛がマスターで、士郎が偶然サーヴァントを召喚してフードのサーヴァントを退けてバーサーカーに襲われたって事ぐらい?」

 

「何だ、じゃあクロナにはバレてたんだ。私がサーヴァントだって」

 

「…最初は驚いたけど。ライダーって名前でばれない方が可笑しい」

 

「「「『確かに』」」」

 

 

ほら、ランサー陣営だけじゃなくて桜と・・・えっと、ストラップ君も頷いてるじゃない。ライダーも何故ばれないと思ったのか。

 

 

「それで、士郎?」

 

「え、ああ。聖杯戦争が、聖杯を求める七人の魔術師がサーヴァントを召喚して殺し合う儀式だって事と、聖杯が何でも願いを叶える代物だって事と、あとサーヴァントがマスターの手足となり戦う下僕ってのはアーチャーと遠坂に聞かされたぞ。あと遠坂が、サーヴァントの対決を目撃した俺をわざわざ守りにここに来てくれたって事も」

 

「それで、正式なマスターじゃない衛宮君にさらに詳しく聖杯戦争のシステムを説明しようって所で、桜に事情を聞こうとしていたのよ。後で貴方にも聞くけど、異論はないわね?」

 

「あるわ。私は生粋の魔術師に協力だけは絶対にしない。それが例え凛、貴方でも」

 

 

私がそう言うと凛はハッと何かに気付いたように目を見開かせた。ランサーもこちらを睨んでる、警戒されてるって事か。

 

 

「・・・あらそう。なら私は一先ず帰らせてもらうわ。…桜・・・間桐さんもいるし、綺礼の娘の貴方なら教会の者として教える義務があるでしょう?」

 

「…元よりそのつもりだけど、私がこの二人を殺す可能性は考えないの?」

 

「貴方が生粋の魔術師に協力はしないって言った時点でシロよ。衛宮君と間桐さんに手を出す気はないんでしょ?長い付き合いなんだからそれぐらい分かるわ。…じゃあね衛宮君、間桐さん。また今度客としてお邪魔させてもらうわ」

 

「お、おう?遠坂もありがとな、気を付けて帰れよ」

 

「敵に対して言う台詞じゃないわよ、衛宮君。…じゃあねクロ、バーサーカーからうちのランサーを守ってくれてありがとう」

 

「礼を言われる筋合いはないよ」

 

 

ランサーを連れて玄関から出て行く凛。もう少し残るかと思ったけど稀有だったかな。・・・とりあえずこれで私がバーサーカーのマスターだってことは凛には隠せたと考えていいか。さて、と。

 

 

「…士郎、桜」

 

 

私は二人の座っている向かい側に座る。結果的にアーチャーとライダーに挟まれる場所だけど…問題ない、むしろこの二人から警戒心を失くすにはこれぐらいしないと行けない。

 

 

「まずは士郎から、聖杯戦争のシステムについて教える。それを聞いた上で、二人共一緒に教会に来てくれないかな?」

 

「…ああ、でもクロ姉についても教えてくれ。ずっと、魔術師だったのか?」

 

「だから魔術使いだって。…そうだね、切嗣さんが亡くなるずっと前から魔術を習ってた。桜、間桐の事情については知ってるから貴方は後で。…桜も、いい?」

 

「はい。クロナさんが悪い人じゃないのは知ってますから」

 

「ありがと。それじゃ本題から。桜は復習のつもりで聞いてね」

 

 

さて、何から話すか。…とりあえずは一番大事なアレかな。士郎だったら何も知らないでアーチャーを止める事に使いそうだし。

 

 

「まずは士郎、その左手の痣からね。それは令呪、マスターの証にしてサーヴァント…貴方にとってのアーチャーに対する3度限りの絶対命令権でマスターにとっての切札。そうだよね、アーチャー?」

 

「…はい。それを使う事でマスターは私を、例え不本意な命令にも従わせることが可能です。その強制力は無限とも言える力を有する聖杯に起因するものであるため、奇跡に近い命令ですら可能となります。例えばマスターの身に危機が迫った際、瞬時に空間を移転させ私を呼び出すなども可能です」

 

「それで切札って訳か。これが…」

 

 

令呪を感慨深げに見つめる士郎。ちょっと可愛いね。まあ、私のバーサーカーは令呪無しで普通に跳んで来れるのだけど。令呪を使うのは…バーサーカーの言う暴走が起こった時だけかな?すると桜がおずおずと手を上げる。

 

 

「付け加えて言うならば…いいですか、クロナさん?」

 

「ん。いいよ、桜」

 

「はい。付け加えて言えば、令呪無しでサーヴァントを従える事は出来ません。何故ならライダー達は、物凄く強大で人の手に余る存在だからです」

 

「どういう事だ?」

 

「サーヴァントって言うのは実在した英雄達の魂の事だからだよ」

 

「え…?」

 

 

分かりやすい様に驚く士郎。アーチャーやライダーを見て首を捻っているが、私のバーサーカーを見せれば一発で納得するかも。

 

 

「英雄ってアレか?昔話とかに出て来る・・・ヘラクレスとか、桃太郎とか…?」

 

「…そう、神話や伝説、お伽噺に童話etc.数え上げれば限がないそれ。生前の偉業で英雄と認められた人物は死後「英霊の座」に迎え入れられ、聖杯は彼等に7つの(クラス)に当てはめる事でこの世に召喚する事を可能とした。その7つが」

 

弓使い(アーチャー)騎乗兵(ライダー)槍使い(ランサー)狂戦士(バーサーカー)。それに剣使い(セイバー)暗殺者(アサシン)魔法使い(キャスター)です、マスター」

 

 

台詞が盗られた。やるなこのサーヴァント。しかし負けない、説明役は私だ。何かバーサーカーに呆れられた気がするけど気にしない。

 

 

「…で、聖杯は召喚された英霊達にふさわしいクラスを割り当ててマスターに与える。そしてマスター同士を戦わせ最後に生き残った者を自らの主と認め、その望みを万能の願望器として叶える。これがこの聖杯戦争のあらまし」

 

「そんな…人の命をまるで、ゲームみたいにやり取りするなんて可笑しいだろ!クロ姉も桜も、遠坂もそんな物に参加しているのか!?」

 

「先輩・・・私は」

 

「桜、言わなくていい。…士郎、その表現は正しいよ。さらに言えば、200年前に第三魔法とか言う戯言を再現しようとした遠坂・間桐・アインツベルンの「始まりの御三家」によって開始されたクソッたれな最悪の儀式。それが聖杯戦争。士郎はそのクソッたれなゲームに巻き込まれたの。

私だって参加するのは嫌だけど貴方と同じ、巻き込まれた。本気で聖杯を取ろうと考えているのは遠坂、アインツベルン、間桐の爺、あとは外からの魔術師ぐらい。…あと桜も、かな?」

 

「…今はいりません。先輩やクロナさんと殺し合うのは、嫌ですから…」

 

「…だよね、安心した」

 

 

桜は多分、間桐から解放されるために聖杯を獲ろうとしていた。バーサーカーを召喚したらあのジジイぶっ殺しに行こうと思ったけど…ライダーがやったのかな、じゃないとここに居候するなんてできないだろうし。

 

 

「あ、訂正いい?クロナの言う間桐の爺・・・間桐臓硯は死んだわよ」

 

『桜を守るために僕とライダーでやったよ』

 

「…やっぱり。ありがとうライダー、えっと…ストラップ君?桜を助けてくれて」

 

「私のマスターだから当り前よ。おかげでここで美味しいご飯をもらえてるしね」

 

『申し遅れたのは悪いけど僕はエルメスだからね!ストラップ君とか呼ばないでね!』

 

 

ストラップ・・・エルメスの言葉は取り敢えず無視する。士郎は桜を助けたとか言う会話がよく分からない様で疑問しかないと言った顔だ。アーチャーは…無表情だ。これがデフォなのかそれとも私を警戒しているのか…後者じゃない事を祈ろう。

 

 

「…それじゃあ話すべきことは話したし教会に行くよ、二人共」

 

「待ってくれ!一つ聞かせてくれ…クロ姉もマスターなんだよな?…サーヴァントはどうしたんだ?」

 

「…………バーサーカーにちょっと、ね」

 

 

嘘は吐いてないぞ。バーサーカーにちょっと問題があって今ここに居れないんだから。一応バーサーカー、ボロマントを出して顔を隠す事は出来るけどあの特徴的な白髪と肉体だけは隠せないからね。アレは初見相手にしか意味が無い。もし連れて来てたらアーチャーかライダーにバーサーカーのマスターだってばれてしまう。士郎には悪いけど嘘を吐かせてもらおう。

 

 

「じゃ、行こうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

冬木市の象徴ともいえる未遠川にかけられた冬木大橋を抜け、新都の街並みを歩く私達。何時もは賑やかしい場所だが夜も遅い為人通りは少なく、セーラー服のライダーと制服姿の士郎が歩いていても補導される心配は無い。すぐ傍の道路を走る救急車に、士郎は反応した。

 

 

「クロ姉、今の・・・」

 

「またガス漏れ事件みたいね」

 

「物騒ですね…今度は何人病院送りにされたんでしょうか…」

 

 

士郎は気付いてないけど桜は感づいてる、か。これはやっぱり独自で魔術を鍛えていたのと一応優秀な魔術師に教えられていたのとの差かな。それよりも…

 

 

「…それより士郎、・・・アレはどうにかならなかったの?」

 

「え、だってしょうがないじゃないか。あの格好じゃ目立ちすぎるしちょうど桜の着替えも洗濯していたし…」

 

「…マスター。ですから私は霊体化しますので」

 

 

そう言うアーチャーの格好は…士郎の普段着。胸が大きいので逆に目立っているんですがこれは。私よりちょっと大きいし…桜と同じくらいじゃないかな?

 

 

「…霊体化って何だ?」

 

「…さっき出る時、士郎が服を探している時に説明した。霊体化はそのままの意味で、姿を消して緊急避難できる事。霊体になれば現界時に魔力を消費しないし、自己回復もできる。ただしマスターにしか感知できないし、攻撃もできない。でも気配を悟られにくいって利点はある。ちなみに私のサーヴァントは本拠地で療養中」

 

 

これは嘘じゃない。うちの教会は冬木でも有数の龍脈で大地から魔力を吸収できるから私も魔力を使わなくていいし、バーサーカーにはスキル「怒のマントラ」がある。早い内に、上手く行けば一時間以内に左腕を回復できるだろう。…そういやライダーは何で霊体化しないんだろうか?

 

 

「あ、ライダーは「食い意地」って言うスキルのおかげで満足に食べているだけで単独行動が可能な程の魔力を溜めれるのでいくらでも現界できるんです」

 

「…マスター。最初に言っておきますが私も「鳥籠の契約」というスキルで常時現界可能です。マスターに問題が無ければこのまま現界しますがどうしますか?」

 

「あ、うん…とりあえずアーチャーのしたい様にでいいや」

 

「分かりました」

 

 

そのまま霊体化しないで着いて来るアーチャー。士郎はちょっと困った顔だ。…なるほど、色んなスキルがあるのか。しかもどちらとも常時現界可能か、敵にしたらちょっと怖いな。

 

 

「…ところでクロ姉、桜。何で教会に行くんだ?」

 

「うちの父親がこの戦いの「監督役」だから。聖杯戦争を取り仕切るのが役目で、士郎が何を思ってこれからどうするにせよ会いに行って損は無い。…士郎がマスターになったって報告もしないと行けないし」

 

 

・・・絶対父さんは衛宮切嗣の後継者である士郎がマスターになったって聞いたら悪い興味を持ちそうなんだけどね。でも、聖杯戦争をリタイアさせるには教会に行かせるしかないからしょうがない。

 

 

「…一応言っておくけど、もしかしたら遠坂凛も貴方がマスターとして立ち塞がったら迷わず殺すかもしれない。だから、本当なら私や桜も味方だって思わない方がいい。これは紛れもない殺し合い、この不条理な戦いに納得できないとしても戦うと言うのなら今のうちに甘い考えを捨てた方がいい」

 

「…」

 

 

私と桜も敵だって事に気付いたのか思いつめた顔をする士郎。…私としては、リタイアしてくれたら嬉しいんだけど…この正義の味方は逃げないんだろうな、きっと。

 

 

「…着いた。ここが冬木の教会、通称言峰教会。士郎が来るのは中学以来だっけ?」

 

「…ああ。桜は?」

 

「私は来た事さえもありませんでした…」

 

「マスター」

 

 

教会の前で話していると、アーチャー・・・そしてライダーが教会の敷地前に佇んで話しかけてきた。

 

 

「私達はここで共に外敵に備えます」

 

「士郎、桜は頼んだわ。ここ、良くない空気だから士郎も油断しないでね」

 

「ああ、分かった」

 

「お願いね、ライダー。エルメスさん」

 

『そちらこそね』

 

 

この二組はいいな、いい信頼関係だ。私とバーサーカーも負けない様にしないと。…バーサーカーはぶっきらぼうだから無理かな?アーチャーとライダーと別れ、教会の中に入る私達。扉を開けて私は口を開く。…バーサーカーを召喚してから初めての邂逅だからちょっと緊張するかな。

件の人物はいつも通り、死んだ目と端正な顔をこちらに向け神父服を着こなしその手に聖書を持って中央に立っていた。

 

 

「…父さん。ライダーのマスターと七人目のマスターを連れて来たわ、間桐桜と・・・衛宮士郎よ」

 

「おお、そうか。…ようこそ少年、久しくだな。初めましての少女もいるようだから改めて自己紹介しよう。――――私は言峰綺礼と言う」

 

 




凛が士郎と行動を共にしないけど是非もナイヨネ!いやだって主人公魔術師許さん思考ですからね…

価値観の違い、それだけで戦争は起こる物。それがないと人間ではないのでしょうが。

次回は言峰神父との会話と、VSセイバー戦です。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。

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