Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争 作:放仮ごdz
誰か待っていた人はいたのか。こっそり投稿。2017/09/05以来となります。およそ三年ぶり。FGOの前のアカウントが消えて別のFate書き始めて完全に凍結してました。申し訳ない。
今回は士郎&アーチャーVSアルトリア・オルタ。久々に書き上げたせいか若干無理矢理な展開で拙いですが、愉しんでいただけたら幸いです。
それは、戦いと呼べる代物じゃ無かった。言うなれば蹂躙だ。
吹き飛ばされ、弾き飛ばされ、斬り飛ばされ、殴り飛ばされ、蹴り飛ばされ、そして俺達の攻撃は全ていなされる。
もう何度も、魔力が抜けて行く感覚と共に宝具を小刻みに連続発動しているアーチャーのArtemisが放たれているが、それら全てがただの直感によって撃墜される。俺の突進は、切り結ぶことなく魔力放出で指一本触れられないまま地べたに転がる事になる。
あちらの魔力はおよそ無限に近く、こちらの魔力は俺の分と遠坂の分だけ。あまりにもジリ貧。
「卑王鉄槌」
「ッ、アーチャー!」
「
掲げられた左手から放たれた赤黒い光線を、咄嗟に前に出たアーチャーが腕を交差して防ぐ。その隙にアーチャーの横を駆け抜け、跳躍と共に振り降し一閃。しかしそれは読まれていたかのように少し動くだけで躱され、再び黒き聖剣が振るわれ何とか防ぐもエクスカリバーを破壊され吹き飛ばされた。駄目だ、意味が無い。
筋力。直感。経験。魔力。宝具。
全てが全て、彼女の方が上を行く。いや、耐久と敏捷だけはアーチャーが上だ。だが、俺と言う足枷がそれをマイナスにしている。ならどうすればいい。・・・・・・・・・・・・答えなんて決まっている。
「アーチャー。俺を気にせず戦ってくれ」
「・・・イエス、
飛び立ち滑空したアーチャーの拳がアルトリア・オルタのバイザーを掠めて破壊した。空中戦になればトップクラスのスピードは、さしもの直感を持つアルトリア・オルタでも捉えられなかったらしく、驚愕の表情を浮かべていたが何が癪に障ったのか、何度も何度も滑空して拳を叩き込むアーチャーを迎撃しながら怒りの表情をこちらに向けてきた。
「そうか、やはり貴様は衛宮だ。衛宮切嗣と同じだ!」
「何が言いたい?!」
「サーヴァントとはマスターを守る者!だというのに貴様たち衛宮は、そんな我々サーヴァントの思いを無視し、踏みにじる!お前たちにとってサーヴァントは道具でしかないのだろう!ランスロットの言葉を受けて限界だったこの私に、最後の希望だった聖杯を破壊させたようにな!」
怒りのままに黒い魔力弾がアーチャーを迎撃しながらも俺に向けて連続で放たれ、咄嗟に投影した干将・莫邪で斬り弾いていく。俺はただ耐え続ければいい。アルトリア・オルタの注意を俺に惹きつけるんだ。アーチャーが、アルトリア・オルタの隙を突けるまで耐えるんだ…!
「ああ、そうだ。サーヴァントにだって意思はある。強制することは、命令することは間違っている。それは理解してるさ。爺さんがどうだったか、俺は知らない。でも俺は、アーチャーを道具だなんて思ったことは一度もない!」
「ほざくな、衛宮!!」
「くっ!?」
アーチャーの拳を無理やり押しのけたアルトリア・オルタが魔力放出を使い突進。その勢いのまま黒いエクスカリバーを振り下ろしてきて、俺は咄嗟に飛び退くも地面を大きく斬り裂いた余波で吹き飛ばされ、砕け散ってショットガンの様に飛び散った石畳の欠片に全身を刻まれ、無様に地面に転がった。
「マスター!」
「それが貴様ら、マスターを持つサーヴァントの弱点だ!」
俺に駆け寄ろうと急降下したアーチャーが、その背後に跳躍したアルトリア・オルタに斬りつけられて地に堕ちる。右翼が大きく裂かれて痛々しいことになっており、アルトリア・オルタは左翼にをエクスカリバーで貫いてアーチャーを地面に縫い付け、悦の入った笑みを浮かべる。
「くっ、あっ…」
「これでもう自由には飛べまい?さあどうする衛宮士郎。お前が衛宮切嗣と自分は同じだと認め、アーチャーを捨てて逃げ出すというのなら逃がしてやろう。アーチャーを嬲り殺しにしている間に少しでも生き永らえたいならそうしろ、もしかしたら逃げ延びられるかもしれないぞ?…それとも、アーチャーを救いたいというのなら無謀と知りながらも挑むがいい。騎士として、正々堂々戦ってやろう」
「駄目、マスター…逃げて…!」
苦しげに呻きながら俺に向けて叫ぶアーチャー。ニヤニヤと、高ぶった感情を表す様にアーチャーの翼を抉りながら嘲笑うアルトリア・オルタ。その言葉に、立ち向かおうとして、踏みとどまる。俺がここに来たのは何のためだ。桜を救うためだ、この聖杯戦争を終わらせるためだ。戦うのはなんのためだ。――――正義の味方になりたいからだ。戦えば俺は死ぬ。生きないと何もできない。でも、見捨てるなんてできるはずがない。
「悩むか?まあそれもいい、そのまま迷え。アーチャーが生きている間は手を出さないでやろう。誰だって自分の命が大事だ。自分が生きていなければ、誰も救えない。なあそうだろう?
迷う俺の様子がお気に召したのか、煽る様に俺の顔を見下すアルトリア・オルタ。爺さんと俺を重ねているのか、その口の端は笑っていた。
「迷うことはない。お前にとって…魔術師にとってサーヴァントは聖杯のシステムの一部の機能、ただの使い魔みたいなものだろう。迷うことはない、見捨てろ。逃げ出せ。一を切り捨てれば他を救える、それがお前の目指す正義の味方とやらだろう?私から希望を摘み取ったようにな!!」
「…取り消せ」
「なに?」
調子に乗って合理的であろう真実を伝えてくるアルトリア・オルタだったが、それには口を挟めずにはいられなかった。怪訝な顔のアルトリア・オルタを睨みつける。干将・莫邪を持つ手に力が宿る。爺さんとの間に何があったのかは知らない。だけど、それは、違うだろ。
「取り消せよ。アーチャーは、ライダーたちは…そんなんじゃあない!!アーチャー達には
許せない奴もいるけれど…瞬間瞬間を必死に生き抜いた、人として尊敬すべき人達だ!俺達の道を尊重し、共に戦ってくれる…アーチャーは大事な仲間だ、かけがえのない相棒だ!俺は、絶対に見捨てない!たとえ無謀だろうと、やるしかないなら俺はお前に勝つ!勝って見せる!!」
「そうか、私と戦う道を選ぶか。ならば見せろ衛宮士郎!あの、自分のサーヴァントも妻も娘も部下も切り捨てた衛宮切嗣と違うと言うのなら、証明して見せろ!!
―――
「マスター!」
激昂したアルトリア・オルタが魔力放出で一気に距離を詰め、エクスカリバーを振り上げたその刹那。俺は、手を伸ばす。やるしか、ない!投影するは己が内に眠る鞘。俺と彼女を結びつける、
「
「なんだと!?」
顕現された青と金に彩られた鞘が、結界を発生させて聖剣を受け止める。だが、これでも足りない。完全じゃない、ただの贋作。でも、それでも―――!俺は、本物を、知っている。
「貴様が…衛宮があ、剣までのみならずその鞘までもを使うか…!どこまで私を愚弄すれば気が済む?!」
「ッ…――――
咄嗟に口に出していた詠唱。クロ姉が言うには、もう一人の俺…英霊エミヤもまた、固有結界を有していたのだという。俺はついぞ見ることはなかったが、それでも俺だ。奴に使えて、俺に使えない道理はない。それに要は、心象風景の具現化なのだろう?思い描くは、この世の物とは思えない幻想的な花畑の光景。その中心に立つ、青いドレスと鎧を身に着けた金髪の少女。力を貸してくれ、アルトリア…!
「――――――――
「なに?があっ!?」
世界が塗り替えられる。俺を中心に、咲き乱れる幻想的な花畑。その天辺に黄金の剣が突き刺さった小高い丘に、俺は立っていた。傍らに立つは、不可視の得物を手にしてたった今、アルトリア・オルタを斬り払った少女。花畑に埋もれたアーチャーの傷が癒されていき、安心する。何とか成功した。遠坂の、魔力のおかげか。
「馬鹿な…ここは、
「士郎。私は、貴方の剣です。共に戦いましょう」
アルトリア・オルタが驚愕の表情を向けるのは、現実には決して召喚されない、騎士王のサーヴァント。俺の心象世界に召喚されていた彼女だからこそ、固有結界の中でなら共に戦える。俺じゃ勝てない、なら勝てるようにするしかない。丘にただ一本突き刺さる聖剣を握って抜き放ち、少女の傍らにて構える。
「アーチャーは休んでいてくれ!行くぞ、アルトリア!」
「ええ、マスター!」
アルトリアと共にエクスカリバーを手に突撃する。アルトリア・オルタは咄嗟にエクスカリバーを振り上げるも、明らかに狼狽していて対処が遅れていた。
「遅い!
「うおおおおおおっ!」
「馬鹿、な…!?」
突風の刺突がアルトリア・オルタのエクスカリバーを持つ手を跳ね上げ、がら空きの胴体に俺が渾身の力を持ってエクスカリバーを叩きつける。咄嗟に振り下ろされた剣身はアルトリアの斬り上げにより弾かれ、さらに袈裟斬り。ここで、アルトリア直々に習った剣技を連続攻撃で叩き続けていく。
「馬鹿な、何故だ。何故私が、衛宮に味方する!」
「私も切嗣の事は許せません。ですが、シロウと出会ったことで…私は、答えを得た。貴方は答えを得なかった私だ。士郎は殺させない!」
「黙れ、目障りだ!味方をするなら共に死ね!卑王鉄槌。極光は反転する。光を呑め!」
「させない!」
魔力放出で俺とアルトリアを吹き飛ばしたアルトリア・オルタが再び聖剣を掲げるも、それは背後から飛翔し突進してきたアーチャーにより、阻まれる。さらに羽交い絞めにされ暴れるアルトリア・オルタ。
「放せ、邪魔だ!人形風情が!!」
「そう、私はエンジェロイド。でも、こんな私でも人として扱ってくれる。優しいマスターには、手を出させない…!」
「があっ!?」
再び放たれた魔力放出でアーチャーも吹き飛ばされるも、アルトリア・オルタは首が絞められたかのように膝をつき悶え苦しむ。するとアーチャーと、俺の手に繋がれた鎖が実体化。アーチャーが上手く回して巻き付けたのか、アルトリア・オルタの首を鎖で締め付けていた。
「マスター、今です!」
「ありがとう、アーチャー。アルトリア!」
「ええ、決着を付けましょう」
アルトリアは両手で黄金の剣を顔の前に掲げ、俺はアルトリア・オルタの様に下段でエクスカリバーを構え、この心象風景を実体化させている魔力を吸収していく。固有結界が瓦解していく、その刹那に。
「「――――――――
二振りの星の聖剣は、その眩き極光を解き放った。
この作品の衛宮士郎は、どのルートの士郎とも異なり英霊エミヤの固有結界を目撃していません。そのため、「無限の剣が墓標の様に突き刺さる赤い空の荒野の丘」の無限の剣製とは究極の対比とも言える「たった一本の聖剣が立つ青空の下の花畑の丘」を心象風景として具現化しました。呪文は思いつかなかったので完全に省略。
効果は「アルトリアと共に戦える」ただそれだけ。アーチャーの回復は士郎の中の鞘と本人の再生能力のものです。まさに「遥か遠き勝利」をたった一本の剣製で目指す、理想の様に潔白な正義の味方のような固有結界です。つまり言っちゃあなんだけど綺麗な士郎。
アルトリア・オルタの敗因は自分たちがただの道具であると認識して諦めてしまっていたこと。衛宮切嗣に執心していて、士郎とアーチャーの関係を勝手に曲解して士郎の地雷を踏んでしまったこと。そしてなにより、輝いている自分とマスターが共に戦う姿を目にしてしまったから。ほぼ魔力無限だから火力ではほとんどの英霊は勝てない強敵でしたが、精神的に脆かった。何せZero終了直後から荒み続けたアルトリアですから。
次回はクロナのその後とイリヤ達side。あ、ちなみに拙作「東方ウィザード」最新話にて今作からクロナがゲスト出演しているコラボ回をお送りしているのでよければそちらもぜひ。そもそもこっちのクロナは生きているのか否や。感想や評価をいただけると励みになります。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。