Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争   作:放仮ごdz

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※今回新規されたサーヴァントのプロフィールは後日追記します。※追記しました。

今回は原作主人公である衛宮士郎sideでお送りいたします。前回と違い大半がシリアスです。原作とはかなり違う状況での衛宮家での戦闘ですが、楽しんでいただけると幸いです。


プロローグ#4:空の落し物と正義の味方

衛宮士郎の始まりは、あの10年前の大火災。だけど、正義の味方としての俺の始まりは…忘れもしない、あの日だ。

 

 

「……爺さん、こんなところにいたのかよ。ちゃんと布団で寝ないと風邪を引いても知らないぞ」

 

「あぁ、士郎か。済まない。少し月を見ていたんだ」

 

「月か……」

 

 

姉貴分であるクロ姉との遊びから帰宅し、縁側に爺さん(キリツグ)を見付けて一緒に月を見上げていると、俺の憧れた親父は穏やかな笑みを浮かべて口を開いた。

 

 

「僕はね、子供の頃、正義の味方になるのが夢だったんだ」

 

「だった…ってなんだよそれ。諦めたのかよ?」

 

「うん、残念ながらヒーローってのは期間限定なんだよ。大人になると名乗るのが難しくなるんだ。そんな事、もっと早くに気が付けばよかった」

 

 

当時から正義の味方に憧れていた俺にとって爺さんの言葉は、何とも言えない儚さがあった。自力で大火事を生き延びたクロ姉と違って、俺はこの人に救われた。切嗣は俺のヒーローだった。だからそう言って欲しくないと、そう思った。だから、そう約束したんだ。

 

 

「うん。しょうがないから俺が代わりになってやるよ」

 

「え…?」

 

「爺さんはオトナだからもう無理だけど、子供の俺なら大丈夫だろ。任せろって、爺さんの夢は俺が継いでやるよ」

 

 

子供なら誰でも思い浮かぶだろう、正義の味方になりたいって夢は、俺にとっては誓いの言葉で。

 

 

「そっか…安心した」

 

 

そう安心したように安らかな笑みを浮かべて息を引き取った切嗣との約束は、今でも俺の中に残り続けている。今度は俺が人々を救う正義の味方になる、それが10年前に切嗣に救われて決定した「正義の味方」衛宮士郎の在り方だ。

だが、現実は厳しい。あれから数年経っても一介の学生でしかない俺に出来る事と言えば、今せめて出来る事をやるだけだ。未来への布石であり、俺にとっては当たり前の毎日。ブラウニーとか言われているらしいが気にしないで俺は今日も人助けを続ける。

 

 

「士郎、お代わり!」

 

「こらライダー!先輩にあまり負担をかけないで!」

 

「別に俺はいいよ桜。ほら、よそってやるよ」

 

 

数日前からは、後輩の家がガス爆発かなんかで無くなったらしく、その兄である親友はホテル暮らししているらしいが、後輩…間桐桜は親戚を預かっていてそれが出来ず、やむを得ずうちに来たらしく居候している。

 

 

「ひゃっほうこのまったりとしたもったりとした何とも言えぬ味がおばあちゃんの料理を思い出すなー!」

 

 

その親戚だって言う高校生…桜があだ名で言うところの”ライダー”は大食漢で、それはもうよく食べる。今まで一番食べていた藤ねえ…藤村大河、穂群原学園の教師をしている俺の姉的存在であるあの人もドン引きして「ちょっと申し訳ないからこれからは一週間に一度にしておくわね」などと言わしめる程だ。あのタイガーが、である。

特にカレーうどんを作った際には軽く10人前を食べられ、それでもお替りを要求して来るので何時も大人しい桜が本気で殴って黙らせた程だった。おかげで食費がかなりピンチである。クロ姉が持ってくる食材が無いと完全に尽きていた。

 

 

そんな、平和な毎日を続けていた高校二年の冬のある日。

 

 

「―――体は剣で出来ている」

 

 

誰かが夢の中でそう言った気がして目覚めたその日、俺は運命(Fate)に邂逅した。

 

 

 

 

 

 

 

何時もの様に頼まれた、弓道場の掃除を終え、夜が更けた頃に帰宅しようと校門に向かっていた際に、聞こえた異質な音。金属同士がぶつかる様な不協和音に、何かが振るわれた様な風切り音。学校、それもこんな時間に聞こえるはずの無い音に、弓道場から見て校舎の裏側に広がる校庭を覗きこむ。

 

 

「なんだ、あいつら…一体…?」

 

 

そこでは、赤い鎧を纏い両手剣を握った大男と、朱い槍を握った蒼い装束の獣の様な男がそれぞれの得物を振るってぶつかり合い、この世の物とも思えない激闘が行われていた。その技量は、人間に出せるとは思えず。その力は、間違いなく「あちら」の物だと分かる。

 

非常識にも程がある、嘘みたいな光景に立ち去ろうとしたその時、焦ってしまったからか足元の枝を踏んでしまい男二人が反応する。その殺気に、思わず校舎に向けて逃げ出すと再び理解できない光景が目に入って来た。

 

赤い鎧の大男が、一瞬の後には銀髪の女性になってナイフを両手に構え追いかけて来たのだ。訳が分からなかったが、これだけは分かる。アレは見てはいけない物だ逃げなくては殺される。俺は全速力で廊下を疾走した。

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、逃げ切れたの…か…?」

 

 

ここがどこだか分からない、夢中で走り続けて数十分…とりあえず、一度もあの謎の女性に出くわさずに逃げれたと思う。そう思っていたのだが、甘かった。非常識はやはり非常識なのだ。

 

 

「アハハッ、割と遠くまで逃げたじゃない。おかげでゆっくりと甚振れるようで何よりだわ、今回の現界じゃ特殊部隊の連中呼べないから追い詰めるの面倒なのよね~」

 

「クッ、アッ…!?」

 

 

その声に反応するも時既に遅く、俺の両足を投げられた二本のナイフが斬り裂いていた。腱を切られ、崩れ落ちる俺の身体。何とか這って逃げようとするも、駄目だ。このままじゃ、殺られる。

目の前に居たのは、赤い鎧の大男でも無く、銀髪の女性でも無かった。たった今、銀髪の女性から姿が変わった、レイピアを握った赤い鎧の女剣士だった。…先程の大男と鎧が似ているので関係者なのだろうか?そんなどうでもいい事を考えるぐらい、絶望的な状況だった。

 

 

「うん、貴方を最初の屍兵にしてあげる。光栄に思いなさい、アンタは私の手駒になるの。この姿風に言えば…私と一緒に革命を起こしましょう?革命なんてして変わる様な時代でもないだろうけどね!アハハハハハッ!」

 

「ふざ…けんな…!」

 

 

狂っている女剣士の言動に、思わず否定の言葉が口から出る。手駒になるってのは恐らく魔術の一種だ。つまりこいつは…魔術師。爺さんが言っていた、魔術を使う人間達の一人。だけどこいつは爺さんとは違う、人が苦しむさまを見て嗤うのは悪だ。俺は正義の味方になるんだ、悪にだけは屈しない。

 

 

「お前の様な奴の手駒になんかされてたまるか…!」

 

「えー、拒むのー?まあいいや、どうせ死体はいくらでもあるし。でもね、アンタを見逃すってのは出来ない相談なのよ。…貴方、自分でも分かってたんじゃない?どうしても逃げられないって事を」

 

「…!」

 

 

図星だった。あの時、理解してしまった。とてもこの世の人間とは思えない、見た事も無い素材で出来た服、そして武器…何より、気配。こんなのに目を付けられたら終わりだと直感させる濃厚な殺気を一瞬で出してきた、この女剣士の姿をしているナニカ。逃げたのは、衝動的な事に過ぎない。頭では助からないと分かっていたのだ。

 

 

「私には分からないけどやられる側ってのはそういうものなんでしょ?こっちは貴方に恨みなんて何一つないんだけどさー、私が殺して来たのは大体そんな奴等だし、貴方が見てしまったんだからしょうがないわよね。大人しく死んでくれないかしら。でも安心して?貴方だけは屍兵にしないであげるわ」

 

 

彼女の言う「しへい」が何の事なのかは分からない。だけど、確実な死が迫り来るのは何となく察せた。ああ、明日は一週間ぶりに藤ねえが来て皆で、桜やライダーやクロ姉も交えてご飯を食べるはずだったのに。守れなくてごめんな、藤ねえ。ライダー、今日の飯は桜ので勘弁してくれ。俺には無理そうだ。そしてクロ姉……アンタからまた、弟を奪う事になって…悪いな…

 

 

「せいっ」

 

 

そんな軽い掛け声と共にレイピアが振るわれて俺の左胸を突き刺し、鮮血が噴出して女剣士をさらに赤く染め上げ、その光景を最期に目蓋が閉じられ俺の意識は闇に堕ちて行った…こんな様で正義の味方なんて、笑えるな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見た。切嗣と出会った、いや爺さんが俺に養子になってくれないかと言ってきて了承し、病院からの帰り道に「実を言うとね。僕は魔法使いなんだ」と告白して来たあの日。

 

数日後訪ねてきた、同じ火事を生き抜いたと言う少女は藤ねえを見て、「…タイガーさん頼りないから私が士郎の姉になる。…シロとクロでぴったりでしょ?」と笑って姉代わりになるのを進み出て、藤ねえと喧嘩になったっけ。

 

彼女経由で知り合ったクロ姉の養父、冬木教会の神父には麻婆豆腐をご馳走になったけどあまりに辛くて、それで険悪な雰囲気になったのを静観するクロ姉が可笑しくて、思わず神父と一緒に笑ったな。

 

そして切嗣の夢を継ぐと約束したあの日。…そうだ、俺は誓ったんだ。切嗣みたいな誰かの危機を救う正義の味方になるって!こんなところで死んで…たまるか!

 

 

 

意識が覚醒する、と同時に激痛が全身に走り、俺は左胸を押さえる。見てみると、血が流れた跡と刃物が刺さった穴が制服にあるのに傷が塞がっていた。確か胸を刺されたよな…俺、生きているのか…?

 

「…帰ろう、桜たちが心配しているだろうし…」

 

傍に居ないと言う事は、あの女剣士も、槍の男ももう立ち去ったのだろう。何で生きているのか分からないが、拾った命は大事にしないと。

 

 

 

 

 

血が流れたからか気怠い気分でよろよろと歩き、深山町の武家屋敷…衛宮家に辿り着くと鍵が開いている玄関を潜り、そのまま玄関先で倒れた。帰って来たことに気付いたのか駆け寄ってくる桜と、何故か拳銃を構えたライダー。…ああ、お前もあいつ等と同じなのか…何か納得した。

 

 

「先輩!そんな、何で…ライダー、何で先輩が…」

 

『落ち着いてマスター。彼の傷は何故だか知らないけど既に塞がってる。多分、さっきまでサーヴァント同士の戦闘が行われていた場所にいたんだよ。見つかって殺されそうになったけど、生き延びた』

 

「悪運が強くてよかったわ、またご飯を食べられるって事よね!」

 

「ライダー?」

 

「ごめんなさい。…っ!桜、下がって!」

 

 

桜とライダー、謎の少年の声が話し合っているとライダーがいきなり何かに気付き、ポーチの中に拳銃を入れると代わりに戦争とかで見る銃剣を取り出し構えた。そうだ…こうしている場合じゃない、失念していた。俺がこうして生きている以上、ヤツはまたきっと口止めに…来る…!

 

 

「ちんけな結界ね。侵入するのも簡単だなんて」

 

「サーヴァント…!」

 

「ライダー、お願い!」

 

「分かった!桜は士郎を!」

 

 

瞬間、玄関を蹴破り入ってくる黄色いフードの人物。直感する、こいつはあの女剣士と同一人物だ。ナイフを構え、俺に振り降ろして来たのをライダーの銃剣が防ぎ、桜が俺をリビングに連れていく。投げ飛ばされる音が聞こえたから、多分戦闘は玄関から庭に移ったんだろう。…こうしちゃいられない、俺の家族のピンチなんだ。

 

 

「さ、桜…」

 

「何ですか、先輩!今は説明は後で。ここはライダーに任せてどこか安全な所に…」

 

「アイツの狙いは俺だ…!その次は多分、ライダーだ。俺は見た、あいつと似た様な存在が殺し合っていたのを。だから逃げろ、俺なら一人で何とかするから…!」

 

「そんなの…逃げれる訳ないじゃないですか!大丈夫です、ライダーなら勝ってくれます!先輩は…」

 

 

桜がそう言った瞬間、リビングの窓を突き破ってライダーが目の前の机の上に叩き付けられる。それに俺達が驚愕する中、間髪入れずにチョコネロネの様な髪型をした赤い髪と鎧の少女が飛び込んできて強烈な腹パンをライダーに叩き込み、ライダーは呻いてそのままぐったりと動かなくなってしまった。

 

 

「マスターからサーヴァントとマスターは極力殺すなって言われているからこれでいいッスね。さあ次はアンタ達ッスよ?まったく、一日に同じ奴を二度も殺す事になるなんて興醒めッス。避けない方が痛くないッスよ?」

 

 

そう言って手の中に身の丈以上の大剣を顕現して構えるチョコネロネ。…こいつもさっきのフードと同一人物か。一体何なんだ?とか思っていてもしょうがないので、俺は桜を庇う様に前に立ち、咄嗟に足下に置かれていた新聞紙を丸めて棒の様にして構える。と同時に、大剣が横薙ぎに迫る。間に合え…!

 

 

「桜、下がっていろ!同調、開始(トレース・オン)!」

 

「むっ?」

 

 

ガキィンと響く金属音。それは、丸めた新聞紙が大剣を弾いた音だった。…俺は魔術師だ。未熟な身でできる唯一の魔術、強化。上手く行った…けど、これからどうする?チョコネロネは俺を刺したあの女剣士の姿に変わり、レイピアを構えながら獰猛そうに笑った。

 

 

「へぇ…変わった芸風ね?紙筒に魔力を通して強度を高めた『強化』…アンタ、魔術師だった訳ね」

 

「先輩…やっぱり、先輩も魔術師だったんですね」

 

「桜、話は後d…グッ!?」

 

「面白いわね!」

 

 

凄まじい速さで振るわれるレイピアを、何とか弾き返す。続けて突き出される突きは桜を庇うために横に弾き、効くとは思えないがライダーの手元に転がっていた銃剣を拾って牽制に投げ付ける。

 

 

「小癪な…じゃあこれで…どうだ!」

 

「がっ!?」

 

「先輩!」

 

 

やはりと言うか、簡単にレイピアで弾かれ、奴が後手に何かを持ったかと思うとその姿があの槍使いと戦っていた大男の姿に変わり、両手剣による重みのある斬撃が叩き込まれ、俺の手に持つ紙筒が大きく弾かれると同時に蹴り一閃。俺はライダーが突き破った窓から庭に蹴り飛ばされ、何とか受け身を取って体勢を直すと大男はジャンプ斬りを仕掛けて来て、俺は何とか前転でそれを逃れ立ち上がる。

 

 

「終わりだ…!」

 

「この…!」

 

 

両手剣の切っ先を突き出し突進を仕掛けてくる大男相手に、俺はフルスイングで対抗。先程よりも凄まじい金属音が響き渡り、大男の手から両手剣が弾かれ、離れた地面に突き刺さった。よし、これで相手に武器は…!?

 

 

「甘い!」

 

「が…はっ…!?」

 

 

甘かった。今度はあの、校庭で戦っていた槍使いの男の姿になり、その長い脚で強烈な蹴りが叩き込まれ咄嗟の防御も意味を成さず、数メートルも蹴り飛ばされて土蔵の扉に背中から叩き付けられた。崩れ落ちる俺を尻目にフードの人物に変わり、両手剣からナイフになっていた武器を回収して歩み寄って来る。万事休す、か。

 

 

「驚いたかしら?あの姿はリーチがいいからね。武器までは情報が無かったから再現できなかったけど、接近戦なら十分だったでしょ?アハハハッ、魔術師にしてはよく持った方よ自分を褒めなさい?でもこれで本当に最後。もしかすると貴方が七人目だったのかもね」

 

 

そう言ってナイフを構え妖しく嗤う少女。…俺は見た、フードを外し、にやにやと殺しを愉しむ様に嗤うその姿を。綺麗な金髪と黄色の目で、サイドテールに纏めた髪束をフードに納めていた様だ。そんな格好でなければどこかの王女にも見える美貌が月光の下で、何とか土蔵の中に逃れた俺を冷たく見下ろしていた。

 

 

「じゃあちゃんと死になさいよ?今度は迷い出るな、何度も同じ奴を殺すのは気分が悪いのよ」

 

 

迫り来る凶刃。視界の端で桜とライダーがこちらに駆け寄って来るのが見えるが、とても間に合わない。全てがスローに見える。死ぬ?俺はここで本当に死ぬのか?…冗談じゃない!

 

 

 

―――俺はまだ、誰一人救えていない。

 

 

 

このまま死んだら桜もライダーも殺される。

 

 

 

―――俺はまだ、正義の味方になれてない。

 

 

 

 

 

 

―――――――衛宮士郎(おれ)はまだ、死ぬ訳にはいかない…………!!

 

 

「な…に…!?」

 

 

その瞬間、俺と彼女の前で旋風の渦が発生し、ナイフを、さらにはフードの少女を弾き飛ばす。弾いた?あの人ならざる力の 凶刃を?

視界の端で、桜とライダーも驚いていた。信じられない者を見たかの様に。フードの少女もまた、目の前で起こったことが信じられない様な顔でジリジリと後退していた。

 

なんだ?一体何が……?そして、旋風の中から一人の少女が現れた。よく見ると、それは土蔵の中にあった何かの魔法陣の上に立っていた。

 

 

 

風に揺れる、緋色の髪。優しく穏やかな輝きを放つ翡翠の瞳。

 

月光の下で神秘的な輝きを放つ、露出の激しい近未来な感じのする白い衣装、背中から生える淡い桃色の巨大な翼。

 

耳に当たる部分には白い機械があり、巨大な翼も含めて人じゃないと誇示している様だ。

 

 

 

「馬鹿な…七人目の…サーヴァント…!?」

 

 

まるで天使の様な美少女が俺とフードの少女の前に現れ、そして一瞬でフードの少女に肉薄すると表情も変えずに拳を一閃。反応できず姿も変えられなかったフードの少女はもろにもらい、大きく殴り飛ばされた。華奢な身体に見合わない怪力。彼女も、人ならざる者なのだろう。

 

振り返る彼女。その顔は、どこかこの出会いを喜んでいるように見え…土蔵の中で、外で桜とライダーが呆然と立ち尽くす中、俺と彼女は邂逅した。

 

 

「―――インプリンティング開始」

 

 

その言葉と共に、彼女の首に付けられた首輪から伸びた鎖が俺の左手に巻き付き、そして姿を消すと代わりに俺の左手の甲に赤い紋様の様な物が現れる。それが何なのかは分からない。だが、次の言葉だけは印象に残った。

 

 

「サーヴァント・アーチャー。召喚に応じ参上しました。初めまして、私の鳥籠(マイマスター)

 

「マスター…サーヴァント、だって…?」

 

「はい。その令呪が貴方がマスターである何よりの証。これより我が身はマスターと共にあり…貴方の運命は私と共にあります。…契約完了、これより戦闘に移行します」

 

 

キュイッと音を立てて目が紅く染まり、少女…アーチャーは外を睨む。そこには、殴られた胸部を抑えて立ち上がり、大剣を構えて突進してくるチョコネロネ…フードの少女の姿が。

 

 

「マスター、この聖杯戦争…必ず私が勝利に導きます」

 

 

その言葉と共に、アーチャーは拳を構えて翼を広げて突進し…チョコネロネの持つ大剣と激突した。

 

 

 

…それが俺と彼女との出会いであり、聖杯により人生を狂わされた俺達が挑む聖杯戦争の始まりだった。

 

 

 




アサシン/キーワード追加【屍兵】【特殊部隊】
アーチャー/キーワード追加【インプリンティング】【私の鳥籠】

EXTRA風にするとこんな感じ。まあアーチャーの正体は簡単に分かると思いますが。時系列だとバーサーカーが召喚された直後になります。

衛宮家に居候するライダー陣営。ホテル暮らしのワカメ。士郎を追い詰めるアサシン。腹パンされてダウンするライダー。ヒロインしている桜。召喚と同時にアサシンを殴り飛ばしてしまうアーチャー。…シリアスの落差よ。


次回、ついに主人公が動く第一話「怒れる拳に火を点けろ」アサシンオワタの巻。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。

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