Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争   作:放仮ごdz

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本日7月23日は私こと放仮ごのハーメルン4周年となるので特別回です。サーヴァントではなく、マスターとしてクロナがカルデアに参戦します。

第四次聖杯戦争の災厄が起こらず、しかし家族を失い結局魔術師を嫌悪し、王様もいない綺礼に引き取られ、アスラを召喚せずFGO世界の第五次聖杯戦争を生き残り10年後にカルデアにやってきたクロナの話。

サーヴァントの方はゲームでしたが今回の原作はアニメの方です。ちょっとネタバレがあります。楽しんでいただけると幸いです。


♯IF:魔術師絶許の少女がカルデアに着任したら

「マスター不足とやらで本日ここ、人理継続保証機関フィニス・カルデアに着任しました、言峰黒名です。とりあえず一言言って置くけど、ここの所長以外の魔術師が話しかけたら殺すから」

 

 

着任してそうそう、カルデア礼装の上から黒よりの灰色のコートを羽織り血に塗れた白のマフラーを巻いた出で立ちでふんぞり返り、此処まで登山して来た際に付けた怪我を治そうと歩み寄った医療部門のトップを務めるドクター、ロマニ・アーキマンでさえも威嚇して遠ざけた少女に、この施設の最高責任者であるオルガマリー・アニムスフィアは傍に控える顧問魔術師、レフ・ライノールに怒鳴り散らした。

 

 

「レフ!何でこんな危険人物を49人目に呼んだのよ!48人目なんてただのマスター適正持っただけの一般人だし!」

 

「しょうがないだろうオルガ。彼女は時計塔に名を馳せる遠坂凛と同じく第五次聖杯戦争を経験した貴重な唯一のマスターなのだから。・・・むしろ、交渉できただけ係の者は偉いと思うがね」

 

 

端末に映し出された彼女の情報を見て溜め息を吐くレフ。10年ほど前に冬木市で起きた聖杯戦争の生き残りにして、アインツベルンのマスターと最強のサーヴァントを打ち破った"最強のマスター”。聖杯こそキャスター陣営に奪われた物の、自身の知人である遠坂凛含めた三人のマスターと共に生き残った魔術使い。

10数年前の聖杯戦争で死亡した冬木市で神父を務めていた元代行者である言峰綺礼の娘ではあるが、魔術使いを名乗る程に魔術師を憎悪し実際に何人も殺害した実績を持ち、根っからの魔術師から疎まれながらもその実力と封印指定されても可笑しくない魔術は評価されている問題児。正直、オルガマリーが最も毛嫌いする人物だろう。

 

しかし49人のマスターの中で唯一マスター経験を持ち、さらには問題児の英霊を難なく従えたと言う、カルデアとしてはどうしても欲しい人材だったのだ。交渉役の魔術師が一人死んだが、それだけの犠牲でここまで連れて来れたのはとんでもない功績である。

 

 

「・・・はあ、取り敢えず分かったわ。ところで、そんな魔術師嫌いの貴方が何でここに来てくれたの?」

 

「魔術だけなら絶対来なかったけど科学も融合しているって聞いたのと、48人目のマスターとやらがただの一般人だと聞いて。・・・ただの一般人を魔術の世界に引き込むなんて、放っておける訳がない。あ、あと。もし魔術師が繁栄する未来とかあったらそれをぶっ壊そうと思って」

 

「正直なのはいい事ね!」

 

 

半ギレ気味にそう叫ぶオルガマリーに思わず苦笑するレフ。しかし理由はどうあれ貴重な真面な戦力だ。彼の思考は、彼女をどうやって排除するか。ただそれだけに絞られていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、人為的な事故による爆発を受け地獄と化した管制室で、一人の少年と少女が手を繋いでいた。少女は死に掛けで、少年は安心できるようにその手を握っている。そこに、瓦礫を押し退けながら頭から血を流したマフラーの少女・・・クロナがズルズルとボロボロで気絶したオルガマリーを引き摺りながら現れ、二人の意識はそちらに移った。クロナはそれを見て、10年程前と変わらぬ容姿で溜め息を吐く。

 

 

「はあ。・・・なんでこう、地獄ってのは唐突に現れるかね。それで死ぬの、少女?生きるのを、諦めちゃうんだ」

 

「・・・貴方は・・・確か、クロナ・・・先輩・・・?」

 

「おう、先輩だとも。そっちの少年が一般人の子か。まあ、巻き込まれちゃうよね。私と違って英雄になりうる人間ってのはそう言う物だ。君は凄い奴だね。怪我が無い所から見ると外にいたんでしょ?少女のために来たなんて。普通、逃げるよ?」

 

「は、はあ・・・どうも・・・?」

 

「それで少女。生きるのを諦めるのか、理不尽に屈してそのまま死を待つのか。貴女のせいで大事な先輩は死んじゃうよ?」

 

「そ、それは・・・」

 

「私なら救える。そう言ったら、どうする?」

 

 

まるで試す様にそう嗤うクロナに、はっと顔を上げる48人目のマスター、藤丸立香。しかしてクロナは呆れたように溜め息を吐いた。

 

 

「はい、駄目。現実を直視しなさい。奇跡でも起きない限りその子は助からない」

 

「で、でも・・・俺と違って魔術師の貴方なら・・・!」

 

「残念。私、魔術師じゃ無くて魔術使いなの。サーヴァントや無機物なら好きに出来るんだけどね、生物まではお手上げ。死んでからそれを人形にするぐらいはできるけど、それじゃ嫌でしょ?」

 

「・・・」

 

「で、女の子のためにここまで来れる君と少女に、矛盾しているけど言わせてもらうね。・・・諦めるな。それだけは断言できる、諦めたらそこで全てが終わる。逆に言えば、諦めなければ絶対に終わらない」

 

 

そう言って少女・・・マシュ・キリエライトを潰している瓦礫に手を付け、軽くしてポイッと背後に投げ捨てるクロナ。そして泣きそうな顔でこちらを見上げて来る両者を安心させるように、パッパッと手を払い頭から流れる血を拭い取ったクロナは満面の笑みを浮かべる。

 

 

「さ、此処から出ようか。理不尽を前にしても諦めない若人たちに祝福を。まあ、これしか方法は無さそうだ。奇跡に頼ろうか。――――強制起動。特異点に私達を飛ばせ、カルデアス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロナの魔術によって主導権を握れるように改造されたカルデアスにより、特異点F・・・2004年の冬木に転移(レイシフト)してやってきたクロナと、その側で気絶しているオルガマリー。どうやら立香とマシュは別のところに転移したらしい。

 

クロナが見覚えがあるありえない光景に目を細めていると、オルガマリーが目を覚まして辺りの光景に驚愕した。

 

 

「ここは・・・まさか、特異点F!?・・・それに、レイシフト適正の無い私が何でレイシフトして・・・」

 

「ああごめん。咄嗟に守る事が出来たけど所長の足下で爆発して、出血多量で死にそうだったから私の血を輸血するついでに軽く改造を加えたから適正(?)を手に入れたんだと思うよ」

 

「改造!?」

 

「うん。私、無機物と自分の体を自由に改造できるんだ。英霊化したら自己改造のスキル持てると思う」

 

 

ビクッと体を庇うように抱えるオルガマリーに含み笑いを浮かべるクロナ。改造と言っても、単純に自分と同じにしただけなのだが、やはり他人に魔術で体を弄繰り回せるのは嫌だと思えるこの所長は、気に入った。

 

 

「そんな事よりどうする?カルデアからの通信を待つか、それとも生存者を捜すか。異変の原因を探るのもありだね。僭越ながら、ボディーガードはさせてもらうよ」

 

「・・・ええ。じゃあよろしくお願いね、言峰さん」

 

「クロナって呼び捨てでいいよ。その名は嫌だ」

 

「分かったわクロナ。・・・では早速だけど生存者を捜しましょう。できる?」

 

「ん。耳を改造して強化すれば・・・この声は、48人目のマスターとあの眼鏡の後輩かな。戦闘音と一緒に聞こえる」

 

「藤丸とマシュですって!?急ぐわよ、クロナ!」

 

「りょーかい」

 

 

一回り年下から命令されるのも新鮮だなーと思いながら、かつて令呪の宿っていた右手を見てからオルガマリーを抱き抱えて焼けたアスファルトを駆けるクロナ。オルガマリーは暫し文句を言っていたが無視して先を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

クロナside

そんなこんなで立香とデミ・サーヴァントになっていたマシュと合流、そこに襲撃して来た女性のランサーのサーヴァントを、かつてライダーのサーヴァントとして戦った英霊メデューサだと看破した私が地盤ごと大爆発を起こして撃破、したところで出くわしたキャスターのサーヴァントを名乗るクー・フーリンと共闘する事になった後。

キャスターから聞いた異変の原因である柳洞寺に向かっている道中、キャスターから色々聞いて確信を持って頷き、私の傍を歩く所長に口を開く。

 

 

「所長。悪いお知らせ、この聖杯戦争は私の知る聖杯戦争じゃない」

 

「え?どうして?」

 

「ほとんどはあっているんだけど、キャスターはランサーだったしランサーはライダーだった」

 

「?」

 

「つまり、サーヴァントがまるまる違うって事。話に聞くところ、無銘のアーチャーと大英雄のバーサーカー、あと騎士王は変わってないみたいだけど」

 

「ならそれだけでいいから情報を教えなさい。貴方はその為にカルデアに呼んだんだから」

 

「アサシン・・・つまり騎士王のセイバーは飯さえ出しとけば懐柔可能。アーチャーはセイバーに頭が上がらない、バーサーカーは12回殺さないと倒せない。おk?」

 

「「「最後だけおかしい・・・!」」」

 

 

気にするな。そのバーサーカーもキャスターには手も足も出なかったから。

 

 

「いやまあ、大体合っているのがこえーよ」

 

「ちなみにランサー・・・ここではキャスターだけどクー・フーリンは何とか騙してホットドッグ喰わせれば後は楽勝」

 

「てめっ、外道か!」

 

「魔術師程じゃないけど外道だよ」

 

「貴女が魔術師をどう思っているのかよーく分かったわ」

 

 

何か冷めた目で見られてるけどしょうがないよね。私、セイバーのマスターだったし。え、騎士王のマスターかって?まさか。あんな使い勝手悪い英霊召喚しても使えない。私が呼んだのはセイバークラスの反逆者だとも。ちなみに騎士王はアサシンだった。何故かアサシン要素無いのにアサシンだった。アサシンしか枠が空いてないのに士郎の中の鞘と反応して呼ばれちゃったんだと。グェンとか言う不可視の衣持ってたから面倒だった。

何故か謎のヒロインXと言う名の自称セイバーを名乗っていて真名看破が大変だったけど宝具見せた瞬間王だってバレてうちのサーヴァントが反逆して士郎に迷惑かけたなぁ(遠い目)

 

 

「それで。アーサー王はどうやって攻略すればいいの?」

 

「だから飯で釣れば・・・」

 

「問答無用で攻撃して来た時、どうすればいいの?」

 

「魔力放出によるパワーと直感による回避、あと宝具さえどうにかすれば何とか勝てると思う。・・・まあ、まずは戦力を確保しよう。ここにカルデアの倉庫からパクッて来た聖晶石が六つある」

 

「よく所長の私の前で正々堂々言えるわね・・・」

 

「ま、まあまあ所長!戦力を得られるのはいい事です。先輩とクロナさんに召喚してもらいましょう!」

 

 

そんな訳でマシュの説得もあり、見覚えのある屋敷跡で英霊召喚。呪文を知っている私の詠唱に続けて立香も詠唱し、連なる様にして二体のサーヴァントが降臨する。さて、かつての相棒の様な使い勝手の悪い問題児じゃないといいけど・・・

 

 

「サーヴァント、アーチャー。アルジュナと申します。マスター、私を存分にお使い下さい」

 

「セイバー、スパルタクス。さっそくで悪いが、君は圧制者かな?・・・おお、我が同士!また共に戦おうぞ、理不尽に対する叛逆者よ!」

 

 

現れたのは、純白の衣を纏った黒人と、兜と鎧で覆われた全身に数え切れないほどの傷跡を持つ筋骨稜々とした青白い肌の筋肉(マッスル)が懐かしい、輝く微笑み(スマイル)を浮かべた大男。ああ、来たか。そして立香め、幸運Aじゃなかろうか。

 

 

「・・・まあ、来るわな。またセイバーだったことを喜ぶべきか否か。うん、また共に圧政者に挑もうスパルタクス」

 

「インドの大英雄アルジュナに、ローマの剣闘士スパルタクスですって!?大金星じゃない、よくやったわ!」

 

「こいつぁ頼もしいな。よろしく頼むぜ」

 

「先輩、凄いです!」

 

 

やんややんやと喜ぶ所長とマシュ(+キャスター)だが、私達マスター二人はちょっと居心地が悪い。いや、私は顔見知りだからいいのだけど、アルジュナは完全に沈黙しているし、スパルタクスはアルジュナから圧政者の血を感じ取ったのかジロジロ見てるし、そして立香はアルジュナの眼光に完全に心が押し潰されている。・・・はあ、前途多難だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、道中現れるエネミーをアルジュナとスパルタクス、+私とマシュで蹴散らし、道中出くわしてしまったバーサーカーのヘラクレスも、かつての戦いと同じようにスパルタクスの宝具で圧倒し、アルジュナの宝具で止めを刺す事で撃破。いやまあ、どっちも爆発だったけど。

無銘のアーチャーをアルジュナに任せ、私達は柳洞寺の奥から円蔵山の地下空洞へと降りて行き、かつてのアサシンとは比べ物にならない殺気と覇気を放つ、漆黒の騎士王と対峙した私達。マシュが宝具を防ぎ、キャスターとスパルタクスが果敢に攻める。

 

キャスターの魔術は対魔力で通用しないし、スパルタクスをまたセイバーで呼べたのは僥倖だった。技術は無いけれど、圧倒的パワーと理性も伴う洗練された一撃が確実にアーサー王の鎧を砕いて行く。

 

 

「極光は反転する。光を呑め!・・・約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガ)ァアアアアアアアアアアアアアンッ!」

 

「マシュ、宝具を・・・!」

 

「スパルタクスはいい、私達だけを!」

 

「え!?は、はい!疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)!」

 

 

立香の指示でスパルタクスの前に行こうとするマシュを止め、スパルタクス以外の私達を聖剣の極光から防ぎ切るマシュ。そして、残ったスパルタクスは消滅はしていなかったけど、満身創痍だった。戦闘続行のスキルだ。これで決める。

 

 

「ははははは。これはいい、これは素晴らしい。強大な力を持つ圧政者、そして我が身は満身創痍。ああ、これでこそ勝利するときの凱歌はさぞや叫び甲斐があるだろう!」

 

「スパルタクス、宝具!」

 

「いざ!我が愛は爆発するッ!」

 

「もう一発・・・!」

 

 

宝具により傷を癒し、突進してくるスパルタクスに向けまた聖剣を構えるアーサー王だったが、スパルタクスは止まらない。否、圧政者がそこに居る限り、叛逆者が止まる事はありえない。

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガ)ァアアアアアアアアアアアアアンッ!」

 

疵獣の咆吼(クライング・ウォーモンガー)!」

 

「なっ・・・!?」

 

 

瞬間、極光がスパルタクスに差し掛かった瞬間反射(・・)され、今まで常に勝利を与え続けてきた騎士王に直撃。咄嗟に魔力放出で防いで消滅を免れたアーサー王を、スパルタクスのグラディウスが胸元を大きく斬り裂いた。しかし、倒れない。スパルタクスを魔力放出で吹き飛ばし、執念を持ってこちらを睨みつける騎士王。

 

 

「まだだ・・・!」

 

「マスター、遅れました・・・!」

 

「さあ、愛を受け取り給え!」

 

 

瞬間、背後から飛んで来た光の矢の束がアーサー王の全身をスパルタクスごと貫き、そのまま突進したスパルタクスが拳で殴り飛ばす。壁に叩き付けられ、落ちてきたところに、背後から駆けて来て立香の傍に立ち止ったアルジュナの引き絞った光の矢がアーサー王の腹部を貫き、スパルタクスが一閃。

 

 

「やあぁあああっ!」

 

「ッ!?」

 

 

最後に飛び込んだマシュのシールドバッシュを受けて今度こそ、常勝の王は膝をついた。何とか、勝てたらしい、

 

 

「見事だ・・・聖杯を守り通す気でいたが、己が執着に傾いたあげく敗北してしまった」

 

 

本当にね。まさか本当にドライフルーツ(香ばしい)で釣られるとは思わなかった。反転してたし。・・・しかしアルジュナの援護が無かったら、ちょっと不味かったかもしれない。例えスパルタクスの宝具で一度耐え切った攻撃を無効化して反射する事が出来ても、零距離エクスカリバーとか受けていたら今度こそ消滅していた。・・・スパルタクスの特性を理解して、念話でアルジュナに伝えていたのかな。だとしたら、マスターとしての腕は私より上かも知れない。いや、私の場合念話だろうが言う事をあんまり聞いてくれないんだけども。

 

 

「結局、どう運命が変わろうと、私ひとりでは同じ末路を迎えるということか」

 

 

・・・士郎の事を言っているのか、それとも外で守っていたアーチャーのことか。この聖杯戦争で士郎はどうなったんだろう。考えたくもないな。

 

 

「あ?どう言う意味だそりゃぁ。テメェ、なにを知ってやがる?」

 

「いずれ貴様も知ることになる、アイルランドの光の御子よ。―――グランドオーダー。聖杯をめぐる戦いは、まだ始まったばかりだと言うことをな」

 

 

訝しげに問うキャスターと私達にそう返し、消滅するアーサー王。・・・まだ、終わりじゃないらしい。カルデア的に私が役立てそうなのは冬木市の事のみだが。・・・まあいいや、理不尽は慣れっこだ。

 

 

「おい待てって、ここで強制送還かよ………おい坊主、あとの話は任せた!次があるなら、ランサーで呼んでくれよな!」

 

 

そんな言葉と共に、キャスターも座に送還されて行き、そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達はカルデアに帰還した。レフに殺されかけたと知って狂乱した所長も気絶させて連れて来た。ちなみに今回の首謀者であり、カルデア以外の人理を焼き尽くしたと言いのけたレフ・ライノールは、士郎達まで焼き尽くされたと知ってキレた私が、丁重に令呪三画使って瞬間移動させたスパルタクスの全力の一撃でミンチと化した勢いのままカルデアスに吹き飛ばしておいた。スパルタクスは「圧政者よ!汝を抱擁せん!」とノリノリだった。アレは圧政者とは違う気がする。

 

 

何で気付いたのかとどこかで見た事があるような気がしないでもないドクターが聞いて来たけど、不本意ながらクソ魔術師に何度も何度も出くわしてきた私から言わせてみれば、あそこまで違和感だらけなのも可笑しい。まず、一般人(立香)に対して普通は嫌な顔の一つでも浮かべるはずだ。でもそれがなかった。それは、今からどうせ死ぬからだと考えていたからだろう。

あと、魔術と科学が合わさるここだからこそ、普通の魔術師ならば自身の魔術の秘匿を強化するなど、ある程度秘密を抱えた目や気配をする物だ。だが、レフにはそれが無かった。

所長も言っていたが、普通は秘密を抱えていないから信用できる。・・・いや、そうだろうか?むしろ秘密を抱えていない奴の方が信用ならない。打算があってこその魔術師だ。実績こそが信頼だ。

 

違和感だらけのアイツを警戒しないはずもない。私には決して近づけず、その行動も目を光らせて置いた。そしたら所長の足元で爆発だ。それに気を取られていたらいつの間にか姿を消していた上に、爆発から離れた所に居た為犯人だと確信した。・・・まあ、目的も分からなかったし奴の背後に居る「王」とやらの存在も検討は付いたが腑に落ちないところもある。

 

一つ確定したのは、士郎達と、桜とまた会うために「王」とやらにまた叛逆しないと行けないと言う事だ。

 

 

「クロナ殿、スパルタクス殿。マスターとドクターが呼んでおられます」

 

「ん。わざわざありがとうアルジュナ。・・・どうしたわざわざ?」

 

「いえ。・・・貴方は自身の「黒」が恐ろしくは無いのですか?」

 

 

なんのこっちゃ。・・・ああ、魔術師を駆逐したいと言う衝動の事か。この男は私と同じで黒い物を抱えている、でもそれは英雄らしくない、と嫌悪または恐怖しているのかな。・・・高潔な英雄様の考えは分からないな。やっぱり私はスパルタクスの方が性に合っている。妥協しない考え方は大好きだ。

 

 

 

「怖くないよ。人間だったらあって当然。例え英雄様だって、黒い物はいくらでもある。・・・アーサー王だって、ヘラクレスだって。・・・認めたくないなら、私じゃ無くてマスターに相談すれば?」

 

「いえ・・・ありがとうございました。では参りましょう」

 

「いざ、叛逆の時だ!」

 

 

スパルタクスの言う通り。私の考えが正しければ・・・魔術王よ、私から聖杯をかっさらって行ったキャスターよ。何の目的があって理不尽に人理を焼却したのかは知らない。だけど、理不尽を与えて来るならば叛逆あるのみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はお前達などどうでもいい。ここで殺すか生かすもどうでもいい。わかるか? 私はおまえたちを見逃すのではない。おまえたちなど、始めから見るに値しないのだ」

 

「・・・!」

 

 

霧の都で、ついに相対した魔術王から圧倒的な敗北を受けた立香が歯噛みする。叛逆の騎士が怒りに震え剣を持つ手に力がこもる。余波で全身を打ちのめされた私は、何とか立ち上がる。ああこれだ、絶対的な理不尽だ。圧倒的な絶望だ。

 

 

「だが―――ふむ。だが、もしも七つの特異点を全て消去したのなら。その時こそ、おまえたちを、“私が解決すべき案件”として考えてやろう」

 

「見るに値しないだ?スパルタクスたちを倒したぐらいで勝ち誇ってるんじゃない。解決するべき案件、じゃない。"絶対に解決しなければいけない”案件として見させてやる」

 

「ほう。女の魔術使い、碌な魔術も使えない、英雄ですらない貴様が何ができると?」

 

 

此方を見下し、嗤う魔術王。その顔、絶対に歪ませてやる。何ができるかって?英雄でもない私ができる事なんでたかが知れている。お前の思い通りにはさせない。

 

 

「叛逆する。それだけだ」

 

 

魔術師全員を殺す事が出来ないならせめて、魔術王を名乗ったこいつを殺し尽くしてやる。




魔術王に喧嘩売る魔術師嫌いな49人目のマスター、妥協しまくりクロナさん(31歳)。
2004年の第五次聖杯戦争に参加した言峰の方で、第五次聖杯戦争の生き残り。「とある理由」で慎二から桜を引き取り、桜や自分を付け狙う魔術師や、一般人を巻き込もうとする魔術師やらを殺しながら10数年間世界中を巡り、魔術界のお尋ね者になっていたところを交渉によりカルデアにやって来た問題児。そして自己改造により見た目は高校生のまま。
生きるのを諦めた奴には凄く厳しい、答えを得る事が出来なかったクロナ。それでも在り方は変わらない。暴走とかはしなくなって大人びているので英霊のクロナより大人しいかもしれない。

「彼」が第五次で聖杯を獲得していたのを知っている生き証人ですが、まるで別人なので何かイラつく程度。レフは犠牲になったのだ・・・所長は、父親的な理由で助けました。決して善意ではありません。輸血したところでマスター適正が出かは分からないので一応改造しました。


スパルタクス(セイバー)
バーサーカーとして先にヘラクレスが召喚されていたためダブルクラスとして召喚された叛逆者。魔術師に叛逆(?)するクロナと相性がいい。宝具は割とチート。マスタークロナの持つ「霊基改造」と合わせればほぼ無敵。彼が召喚された事で、士郎はよりにもよって暗殺者な騎士王を喚ぶ事に。そしてクロナは立派な叛逆者に。

アルジュナ
藤丸立香のサーヴァント。クロナとは胸の内に「黒」がある者同士。エミヤを単騎で撃破した。

藤丸立香
アニメ時空の彼。クロナとの色んな差に絶望しているけど元気に生きている主人公君。マシュと共にクロナの言動に若干引き気味。ぐだ子みたいにクロナの力を借りた肉体言語はしない。

ドクターロマン
オルガマリーが生き残っている為サブリーダーポジ。色んな意味でビクビクしている。クロナに嫌われているが、それは彼しか理由を知らない。

オルガマリー
レフの代わりにクロナを頼るチキン。クロナの血が混ざっている為改造魔術を使おうと思えば使える。


マスターかサーヴァントかってだけでこうも変わります。クロナのサーヴァントはやっぱりバーサーカー組と気が合う。その中でも相性良かったのがスパさんでした。セイバー時の宝具、強過ぎない?
次回、クロナVSランスロットの似た者対決。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。

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