Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争   作:放仮ごdz

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前回、衛宮邸帰還と言ってましたがその前に書かないと行けない描写があったので書いたけど、かなりの問題回になってしまったため久々の.5話です。時系列的に前回と同じ。

クロナ達が戦っている間の王様sideのストーリー。エミヤの召喚された理由が分かる割と重要な回ですが.5話です。ついに『M』がやらかします。楽しんでいただけると幸いです。


♯35.5:勃発!第二次第四次聖杯戦争

今宵、祭が始まる。狂宴の時が。

 

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

 

crazynight・・・狂った闇夜のお祭り騒ぎが、クロナとアサシンの激突を余所にひっそり始まる。

 

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する―――――Anfang(セット)―――――告げる」

 

 

大聖杯と呼ばれる巨大な魔法陣の傍で、遠坂家から持ち出した宝石を溶かした物で六つの召喚陣を描いた白衣の男は詠唱する。

 

 

「――――告げる。汝等の身は我が下に、我が命運は汝等の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 

背後に転がるは、いくつもの煙草の吸殻や砕けた宝石類の山。これらは全て、凛やイフの保存していた物を留守中を狙って盗んできたものである。

 

 

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

 

 

常人のそれどころかイリヤのさえ上回る膨大な魔力を用いて、狂気の医者の異名で知られる聖杯戦争きっての部外者(イレギュラー)は、裁定者が描かれた金色のカードを手に不気味に笑んだ。

 

 

「汝等三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手達よ―――」

 

 

最初に出現した黒き鎧を身に纏った少女に連なる様に次々と姿を現していく六騎の英霊達。不服の奴もいるようではあるが、ちゃんと聖杯(取引)を持ちかければ問題ない。何せ、この男は聖杯を必要としないのだから。世界征服するために受肉する?いいだろう、むしろぜひともしてくれ。

 

 

「例え異世界がどんなに存在してもこのクラスカードを持っている奴なんて俺ぐらいだろうな。

 夢幻召喚(インストール)『ルーラー』」

 

 

白衣の上から聖骸布と呼ばれる十字があしらわれた白のマントを羽織った『M』は一見槍にも見える旗を肩にかけ、こちらに向かってくる黄金の王を見据えて心底楽しそうに、闇の中でぼんやりと魔力光に照らされながら口端を三日月の様に歪めて笑った。

 

 

「さあ、実験開始だ。この俺を愉しませてくれよ英雄王?言峰黒名や八神将アスラに負けないぐらいにな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数刻前

「クロナの奴め、存分に暴れているようだな。さすが我の見込んだ娘よ」

 

 

燃える赤い夜空を見上げながら、ギルギルマシーン二号を駆り無人の冬木大橋を渡る私服姿のギルガメッシュは心底楽しそうに笑う。予想外も予想外、彼女は王である自分の予想を脱し、アサシンと真っ向から対決している。自らの予想では、あのアサシンとはバーサーカーと二人で挑んでようやく互角に渡り合えると言う所だった。実際にバーサーカーが一撃で気絶させられているのだ、相性が悪い。それを打破して見せたクロナは、好い成長をしてくれた。

 

ならばこそ、それを邪魔しようとする不躾な白衣の男を早く見つけなければならない。そのためにギルガメッシュは日夜、冬木市を探索していた。しかし、一日かけても見つからないのはどういう事だ。

 

 

否、答えなど分かっている。「拒絶」している奴を見付けるなど、不可能に等しい。一瞬だけ見せる気配を辿るしか、見付ける事は出来ないのである。だからこそ、全てを見渡す英雄王であるギルガメッシュであっても探索は難航していた。

 

 

「・・・白野の奴ならば(オレ)にはない視点で奴を見付ける事はできたのであろうな」

 

 

ボソッと泣き言を言ってみる。最も、マスターの力を借りようにも言峰は冬木を留守にしているのでどうしようもないが。何か変わる筈もなく。途方に暮れていた時だった。

 

 

「・・・うん?」

 

 

ギルギルマシーン二号を止め、それに気付いたギルガメッシュは顔を上げる。見やるは深山町側、現在火事で赤く焼けている郊外に広がるアインツベルンの森、から穂群原学園を挟んだ円蔵山の柳洞寺。と、そこで気付いた。何故自分は、あの場所を候補から外していた?・・・答えなど簡単だ、認識する事を拒絶させられていたから。

 

 

「雑種が・・・やるではないか」

 

 

憤怒の表情を向け、アクセルを全開にして突き進むギルガメッシュ。今現在、アサシン陣営が留守にしている柳洞寺・・・否、そのさらに奥の大空洞【龍洞】にて、何かが起こっている、と。その答えは、赤いアーチャー(エミヤシロウ)から得ていた。

イリヤが聞いた『M』曰く、「奴は一騎目のサーヴァントにして、二人目のアーチャーだ」。・・・そこから得られるのはまだ一騎目だと言う事。そして二人目とは、この聖杯戦争で同クラスが二人存在する事になる。つまりは、残り六騎ものサーヴァントが控えている事に他ならないのだ。

 

 

 

「ええい、遅いわ!」

 

 

入り組んだ街並みを走るためにどうしても減速してしまうギルギルマシーン二号から跳び、取り出したヴィマーナに乗り込むと共にギルギルマシーン二号を宝物庫に収納。空を飛び立ち、音速で結界が張られた柳洞寺の空まで飛翔すると王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から結界破りの剣を射出して破壊と同時に突入し、大空洞へと繋がる洞窟へ直行するギルガメッシュ。

 

この奥に存在するのは、聖杯戦争の要とも言える聖杯の本体。大聖杯と呼ばれる巨大な魔法陣、超抜級の魔術炉心だ。

そして特筆すべきは、大聖杯にはもしも七騎のサーヴァントが一勢力に統一されてしまった場合に限り、七騎に対抗するために追加で七騎のサーヴァントを召喚する予備システムが組み込まれている事だ。あの男は、それを使うつもりなのだ。即ちそれは、聖杯大戦に他ならない。そして先程感じた魔力の奔流からして、手遅れなのは明らかであった。ならば、尋常に六騎を蹴散らすまで。

 

 

「―――あまりにも愚かではあるがよい開幕だ。死に物狂いで謳え雑念―――!第二次第四次聖杯戦争なぞクロナの手を煩わせることなく、この王ずからの手で一夜にて閉幕にしてくれる!」

 

 

ヴィマーナから飛び降り、着地と同時に王の財宝を展開する黄金の王の前には、召喚されたばかりと思われる六騎のサーヴァントと、その中央で不敵に佇む白衣の男。

 

 

「よう、遅かったな英雄王。まだ発動中の拒絶(ブライ)の違和感を看破しここに来るとは本当に恐れ入った。未だに他の連中は気付いてさえいないと言うのにな?一瞬の魔力漏洩を見破るとは完敗だ。

 だがな?本当に遅かったぞ、既に準備は万端だ。アンタの対策も完璧だ」

 

 

並び立つは六騎。冷徹な雰囲気を宿した黒き騎士王。赤と黄の槍を下げた輝く貌。大柄で筋骨隆々の征服王。漆黒の鎧に身を包んだ湖の騎士。カエル顔の元帥。百の貌持つ山の翁。即ち、ギルガメッシュと共に10年前この地に召喚された英霊達である。

 

 

「アサシン、お前は他のマスターの監視に行け。ランサーは言峰黒名を見張れ、殺させるな。キャスターは工房をここに作れ、材料は用意してやる。ライダーは手筈通り小聖杯を回収して来い。セイバーとバーサーカーは、俺と一緒に英雄王の始末だ」

 

 

言われるなり霊体化して姿を消すランサー、ライダー、アサシン。「最高のCOOLをお見せしましょう!」などとほざきながら奥に歩いて行くキャスター。ギルガメッシュは、『M』の両腕に赤い刺繍の様な物が見えた事で、察する。この男、どうやったかは知らないが裁定者(ルーラー)の力で全てのサーヴァントに対し二画ずつ、計12画もの令呪を得ていると。

 

 

 

「ふん、ヒトの領分を超えた悲願に手を伸ばす愚か者と狂犬風情で(オレ)の相手になるとでも?」

 

「黙れ。慢心は身を滅ぼすぞ、笑わせるな金色」

 

「Arrrrrrthurrrrrrrrr!」

 

 

『M』の両側に控える黒き騎士王・・・セイバーオルタとバーサーカーが黒き聖剣と『M』が渡したと思われる宝具と化した鉄パイプを構えるのを見て、ギルガメッシュは『原罪(メロダック)』と『絶世の名剣(デュランダル)』を取り出し、黄金の鎧を着込んで二刀流で構え、『M』に負けないくらい不敵に笑んだ。

 

 

「慢心せずして何が王か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『M』side

完璧だった。言峰黒名が予想以上に面白くしてくれたこの聖杯戦争。だが物足りない、と考え言峰黒名が固有結界に目覚める時を計算して、次の手を打った。協力者と共謀し、聖杯戦争をクライマックスへと激化させるのだ。

 

用意したのは自分で用意し世界を超えてトランクに入れて持ってきた魔力タンクであるイリヤスフィール・フォン・アインツベルンの亡骸と、この世界で調達した魔力のストック他、無人と化した冬木の数々の霊地に繋げた龍脈から魔力を引き出すためのライン。

 

まず英霊を召喚するために聖杯が溜めた物を使う訳には行かない魔力・・・大聖杯が60年かけて龍脈から引き出したマナの量と同等の量と、協力者から得た前回の第四次聖杯戦争の聖杯の欠片と接続し、保存された霊基から脱落した英霊達を召喚する。問題は令呪が一画しか残ってない俺でどうやって我の強い連中を指示するかだったが、前の世界で手に入れたルーラーのクラスカードが役に立った。これなら令呪が二画ずつ手に入るからな。

 

ただしアーチャーの霊基だけギルガメッシュが脱落して無いため存在しなかったからか、代わりに言峰黒名と縁深いエミヤシロウがアーチャー枠としてバゼット・フラガ・マクレミッツの願いに呼応してフライングで召喚されると言うアクシデントがあったが、それがデコイとなってこちらで残りの英霊を召喚する準備が整えた。アサシンの本拠地からストックを持ち出せなかったら六騎全員は召喚できなかっただろう。

 

留守中にストックを盗み出すついでに礼とばかりに、柳洞寺の奥でグーラ病にされて死に掛けていたバゼットを回収して胃を洗浄し、グーラ病の完治と腕や傷口の治療を施してやったんだから感謝の一つでも欲しい所だ。

邪魔になるからと衛宮邸の庭に放りこんで置いたから相手の戦力になる可能性はあるが、フラガラックは俺が所持しているから問題は無いだろう。まあ、ぶっちゃけこの女が屍兵にされたら勝てる気がしなかったためでもあるが。あのアサシンに言峰黒名が勝てると言う確信が無いからな。ランサーが間に合ってくれるといいが・・・

 

そして現在、キャスターは協力者の元で工房を作らせて置き、アサシン・ランサー・ライダーがここから離れ、セイバーとバーサーカーと共にルーラーのクラスカードを夢幻召喚(インストール)して、最強のEXランクの結界宝具たる旗を手に英雄王ギルガメッシュと再度戦っている訳だが、おかしい。

 

 

「卑王鉄槌。極光は反転する。光を呑め!約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!」

 

「ENEMYYYYYYYYYYYY!!」

 

「その程度か、雑種共!」

 

 

もう何度目か分からない黒い星光が暗闇を引き裂き、そして霧散する。赤い眼光が暗闇の中で何度も飛び掛かっているが、いなされる。馬鹿な、何故勝てない。俺の計算上では既にギルガメッシュを排除できているはずだ。

アーサー王・・・セイバーオルタの聖剣と、俺の鉄パイプを使った湖の騎士ランスロットの薙ぎ払い。それら全てが、防がれるか相殺される。あの英雄王が、無限に等しい宝物庫に納められた宝具の数で蹂躙するのではなく、必要最低限の宝具のみを使って戦闘していた。しかも、こちらにとっては格好の獲物でもあると分かっているのか宝具を射出してすら来ない。

どういう事だ?この布陣は、セイバーオルタが接近戦でギルガメッシュを圧倒しつつ、ランスロットで相手の宝具を奪い取りこちらの戦力を潤沢にしていく上でその援護、相手の放つエヌマエリシュやらは今の俺が使える結界宝具で防ぐ、と言う完璧なアンチAUOだったはずだ。むしろ、俺は参加したところで足手まといにしかならないことは明白なのでわざわざ後ろに陣取って唯一の弱点たる俺自身は後方で指示を出しているだけだと言うのにだ。

 

 

「おい英雄王・・・何故、慢心していない?」

 

「慢心はあるぞ?だがな。先日、貴様に敗れた挙句クロナに無様な姿を見られてしまった。その動揺のためかは知らぬが、フェイカーにやられる始末だ。こちらも手負いで手加減していたとはいえ、あの悪鬼羅刹にも敗北した。・・・もう二度と愚行は犯さん。クロナが勝手に敗れるのはその程度だったと諦めるが、(オレ)のせいで奴が負けるのだけは許さぬ。そのためならば、慢心も鳴りを潜めようぞ。今の(オレ)に貴様がどうこうできるとは思わんがな!これは(オレ)の為、極上の愉悦を得る為の戦いだ」

 

 

極上の愉悦、ね。娘に無様な姿を見られたくない、がメインに聞こえるがな。本人がそう言う事にしたいなら指摘はしないさ。そっちの方が面白い。こんな英雄王、俺は初めて見たからな。

 

 

「・・・ちっ。親で子が変われば子で親も変わるか。畜生め、英雄王様が変わるなんて想定外だ。あの女、思った以上に面白いな。この聖杯戦争をもっと面白くしてやるって言ってんだ、大人しく退きやがれ英雄王!」

 

「戯言を抜かすな雑種め。先日は油断から敗れはしたが、今の(オレ)に慢心はあまりない」

 

 

そう言い、セイバーオルタのエクスカリバー・モルガンを、原罪(メロダック)をしまって代わりに手に取ったエアで裂きながら(・・・・・)こちらに突進してくる英雄王。「あるんじゃねえか」とはツッコまない。ツッコんだ瞬間に殺されるビジョンが見えた。コイツ、今の台詞が地味に後から恥ずかしくなったらしい。

・・・・・・できればそのエアを今ここで使って欲しいんだがな。いや、切札使わなくても慢心しているこいつならセイバーオルタとランスロットで勝てるだろうとか思っていたけど無理そうだから切札使いたいんだが。何でそんな時に限って、必殺(・・)の武器を使わない?しょうがない、作戦変更だ。接近戦だと言うのならばこちらが連携しやすい場所の方がいい。というか流れ弾がキャスターにでも当たったら洒落にならない。

 

 

「・・・セイバー、バーサーカー。場所を変えるぞ、柳洞寺だ」

 

「黙れ」

 

「Arrrrrrthurrrrrrrrr!」

 

 

・・・・・・・・・・・・今更だが何故セイバー黒化してるし。ランスロットは再び王と一緒に戦えて興奮してるし。せめて俺の言うこと素直に聞いてくれるディルムッド残しとけばよかったなぁ(遠い目)

 

 

 

 

この時、俺が準備で引き籠っている間に言峰黒名が覚醒してランサーは別に助太刀には必要なく、さらにその覚醒で英雄王が無駄に機嫌がいい事を俺はまだ知らない。




そんな訳で召喚、第四次サーヴァント。絵面的には第四次サーヴァント六体VS第四次アーチャーなので第二次第四次聖杯戦争。もう訳が分からない。
エミヤシロウは、準備していた最中にバゼットがフライング召喚してしまったと言うのが理由。アーチャー枠のギルガメッシュが居なかったので、自動的に「クロナ」と因縁深いエミヤが選ばれ、バゼットが救いを求めた結果、正義の味方が来てしまった感じです。「一騎目のサーヴァントにして、二人目のアーチャー」と言うのはこういう理由。『M』も本当に想定外だったし、アサシンに敗れるのも計算外だった。本当なら嬉々とクロナにぶつけていました。

とにかく王様をかっこよく書こうとしたら何か色んな王様が混ざってしまった。慢心を捨てた王様もいいけど慢心をあまりしていない王様もいいと思うんだ。

本気で介入するために何処から調達したのかルーラー「ジャンヌ・ダルク」のクラスカード、イリヤの亡骸、パクッて来た魔力ストックと色々用意した『M』。夢幻召喚したりやりたい放題ですが何気にアサシンの魔の手からバゼットを助けてます。六騎の英霊を従えますが問題児ばかりで胃がヤバい。癒しはディルムッドだけ。

今回登場したセイバーオルタは以前登場したアルトリアとは別人です。というか別の世界線を記憶している同一人物です。セイバーオルタはこちらの第四次聖杯戦争で絶望に染まって士郎に出会わなかったルート(黒化しているのは別の理由)。士郎の中に召喚されたアルトリアは「衛宮黒名」の世界線で一応士郎に出会ってそのまま脱落したアルトリア。彼女らが出会う事は普通できませんが・・・?

次回こそクロナside。アスラの提案と、第四次サーヴァント参戦で急展開です。感想や評価をいただけると励みになります。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。

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