Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争   作:放仮ごdz

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4月1日なので番外編、特別回。オールスター回です。ちょっと今後のネタバレもありますがスルーしてくださると嬉しいです。

何一つ変わらない日常を過ごすクロナ達の中に潜む違和感の正体とは。楽しんでいただけると幸いです。


♯ha:さあ、聖杯戦争(ふくしゅうげき)を続けよう

聖杯戦争が始まって半年後・・・衛宮邸はやっぱり賑やかだった。

 

 

「私が士郎の姉だ!」

 

「戸籍上は私が姉よ!」

 

「はん、殺そうとしていた人形が何言ってんだか。妹でしょ、可愛がってあげるよ?」

 

「そっちこそ、強化系統しか使えないなんて士郎も真面に魔術を使えないはずだわ。放任主義なのかしら?」

 

「うるせえチビ、燃やすぞ」

 

「黙りなさい脳筋、風穴開けられたい?」

 

「「・・・よし、殺す」」

 

「ちょっと待ってください!?」

 

 

慌てて論争を止める桜。その横ではライダーが美味しそうにカレーうどんをすすり、その向かいではアーチャーがすっかり季節になったスイカを愛でていて、その横に座っている士郎は机の両端で論争していたクロナとイリヤの間で急須で人数分のお茶を淹れていて、一言。

 

 

「あー、平和だなー」

 

「その通りだな、少年」

 

「先輩!?気持ちは分かりますが現実逃避しないでください!そして言峰神父!貴方はなに、厨房でさも当然の様に麻婆豆腐を作っているのですか!?」

 

 

続けて台所から如何にも危険な香りを漂わせる元凶である神父に糾弾する桜。しかし、できる後輩の受難は止まらない。

 

 

「オラ動けよ、刺すぞ?」

 

「そっちこそ、撃つわよ?」

 

「「・・・!」」

 

「あーもう!お二人共、黒鍵と拳銃を納めてください!?」

 

「帰ったよイリヤ。・・・って、またやっているのか」

 

「今日の夕飯はなんだクロナよ?・・・ってなにっ、綺礼貴様何をしている!?」

 

「はいお帰りなさいセイバーさんにギルガメッシュさん!」

 

 

もうやけくそと言わんばかりに、ミルク瓶とワイン樽、つまみの入ったレジ袋を手に帰宅した私服姿の英霊二人に叫ぶ桜。剣片手に台所に飛び込んで行く英雄王を横目に、胃に穴が開きそうな毎日である。

 

 

聖杯戦争で教会を失い、そのままなし崩し的に衛宮邸に居候している言峰一家。居候を続ける桜とライダー。するとそこに、縁側から大勢引き連れたタイガーが現れる。

 

 

「こんばんわ~!商店街でハンさんとランサーさんを捕まえて来たから一緒に飲みましょうギルさん、セイバーさん!」

 

「ふん、酒はあるんだろうな?」

 

「よう、何時も楽しそうだなアンタ等」

 

「あ、お邪魔しまーす。うちのランサーが行くって言うから、ねえ?」

 

「邪魔するぞ、衛宮。桜」

 

「あ、いらっしゃい遠坂、慎二。クロ姉が五月蠅いだろうけどゆっくりして行ってくれ」

 

 

タイガーが連れて入って来たのはキャスター、ランサー、凛、慎二と言った顔ぶれ。桜が露骨に顔をしかめたが気にせず、ずかずか入ってくる優等生二人。すると、ランサーに机を運ばせていたタイガーが何かに気付き、得物をしまって取っ組み合いしている士郎の姉二人のうち、黒い方を捕まえて問いかけた。

 

 

「ねえ、クロナ」

 

「ん、なにタイガー」

 

「タイガー言うな!・・・それであの人は?いないの?」

 

「・・・そういや居ないね。ちょっと捜してくるから士郎達は先に宴会でもなんでもやっといて」

 

「おう、気を付けろよクロ姉」

 

 

身支度を整え、衛宮邸を後にするクロナ。心当たりである新都の喫茶店に向かいながら、ふと思考する。何かがおかしい、と。

 

 

「・・・みんな幸せそうだし、別にいっか」

 

 

まるで夢みたいだな、とか何故か思う。・・・何かに途轍もない怒りを覚えていた気がする、泣きながら誰かに謝った気がする、怒号を浴びせて誰かを殴り続けた気がする、こんなところで油売っている暇はない気もする。

でも心地いいのだから、気にするだけ無駄だ。

 

 

「ん?」

 

 

冬木大橋に差し掛かると視界に、今時珍しい焼き鳥屋台を見かけた。覗いてみると、そこにいたのは緑のスーツを着た眼鏡の男と金髪をサイドテールに纏めた「BASTAR」と書かれた赤いTシャツを着た少女、そして黒い私服を身に着けた白髪褐色肌の男とラフな服を着た赤髪の女性だ。屋台の店主はフードで顔を隠した黒服の男だった。

 

 

「お替りはいいか、大将」

 

「おうよ。アサシンはどうする?」

 

「とりあえず豚バラちょうだい豚バラ。あとビール」

 

「君の体は一応未成年だろう?酒は控えたまえ」

 

「えー、じゃあこれでいいでしょ。ほらイフ、早く寄越しなさい」

 

 

注意されるや否や腰にレイピアを携え赤い服を着た茶髪の女性になるアサシンに、一瞬驚き溜め息を吐くエミヤ。それに絡む様に酔っぱらったバゼットがビールの入ったグラスを突き出した。

 

 

「えへへー、あーちゃー、もういっぱーい!さけでものまないとやってらんねーですよー!」

 

「正気に戻れバゼット。ああもう立ち上がるな、はしたない。だから外食は止そうと言ったんだ」

 

「屋台は外食って言うのか?日本語は分からねーなあ」

 

「なにしてるの、シロウ?」

 

「うわっ、クロ姉!?」

 

 

思わず気になったので聞いてしまった。本当に何してるんだろこの正義の味方。

 

 

「・・・いやなに。バゼットが財布を無くしてしまってね、探しても見つからず途方に暮れていたところ葛木教師に誘われたまでだ。いや、冷蔵庫に残っている品で簡単な物は作れたんだが」

 

「あーちゃー、おしゃけー!」

 

「言峰が見たら愉悦で嗤うぞ、まったく…」

 

「うん?言峰黒名、こんな時間に何をしている?」

 

「まだ夕方ですけど葛木先生」

 

 

思わず、学校モードの丁寧語で応えてしまう。・・・まあもう既に私は卒業しているのだが。先生は先生だ。

 

 

「ちょっとバーサーカーを捜しに新都まで」

 

「・・・お互い大変だな、クロ姉」

 

「少なくともうちの相棒は飲んだくれじゃないから。じゃあね」

 

 

そのまま再び歩くのを再開する。歩いて新都まではさすがに遠いか。まあしょうがない。そう考えながら歩き続け、教会跡地の前を横切る。・・・うーん、新しい教会建てるんだろうけどどうするのかな。

 

 

「そりゃここはまあまあの霊地だからな。放っとく訳にはいかんだろ」

 

「うわっ、びっくりした」

 

 

声が聞こえ振り向いた先にいるのは、何か「EXTRA」って書かれた白のTシャツ姿なのに頭に黒い兜を付けた見るからに変人な長身の男と、何故かぼたん肉が入った紙袋を泣きながら持っている「Quick」と書かれた緑のTシャツ姿の泣き黒子が何かムカつくイケメン、「大戦略」とかかれたピッチピチのシャツを着た酒樽を担いだ赤髪の偉丈夫に、両手に食材の入ったレジ袋を抱えた「ARTS」と書かれた青いTシャツを着た青髪と黒い肌の女性に、ハンバーガーが沢山入った紙袋片手にチーズバーガーを食べている黒い私服姿の金髪美少女を引き連れた白衣姿の髭の男がいた。

・・・死んだ魚みたいなギョロ目の男が居たらガチで私、殺人鬼になっていた所だ。・・・もう一人のところで留守番でもしてそうだな。

 

 

「こんなところで何してるんだ?忘れ物でも取りに来たか?」

 

「半年前に取りに来てるわ。そっちこそなに、宴会でもするの?」

 

「いや、普通に買い出しだ。こいつら一人一人が求めるのが違っててよ、面白いんだわこれがw」

 

「楽しそうでなによりです。こっちは相棒捜し。見なかった?」

 

「Arrrthurrrrrr!!」

 

「ん?・・・こいつがアーネンエルベで見たってよ」

 

「そう。ありがとう、穀潰し」

 

「!?」

 

 

何か抗議していたけど気にせず前に進む。・・・うーん、またなんか違和感があったけど気にしない気にしない。考えるだけ無駄無駄、あのギョロ目を殺さずにいられてラッキーじゃん♪

 

 

「やっぱりここか」

 

 

辿り着いたのは喫茶店アーネンエルベ。そのカウンター席に、私の相棒()は居た。何かトランプで遊んでいた。

 

 

「・・・なんでトランプ?夕飯だから帰るよ、バーサーカー。アヴェンジャー」

 

「・・・おう、今行く」

 

「お、逃げるのかバーサーカー。それよりマスター。アンタもどうだ、ババ抜き。このバーサーカー、異常に弱いからな。楽しいぜ?」

 

「店員と共謀してうちの相棒いじめるのやめてくれる?隠し事できないんだから」

 

「俺もアンタのサーヴァントだ、別にいいじゃん?」

 

「よくない。ほら、帰るよ」

 

 

バーサーカーが怒って暴れ出したらしたらどうするの。責任取るの私なんだよ?こんなナマモノばかりの場所でアルバイトとかしたくないわ。

 

 

「へいへい。今片付けますよ」

 

「・・・助かった、クロナ。これ以上は我慢できん」

 

「よく我慢した、偉い」

 

 

むしろ、人を煽るのが得意なアヴェンジャー相手によく耐えた。だからそんな悲しそうな顔をしないでください。私の事を考えての事だろうから嬉しいけど。

 

 

「それで、今夜はどうするんだマスター?」

 

「・・・うん。士郎達が寝たら行くよ、狙いはアフリカで先住民を死徒にして何か実験を企んでいる魔術師だ。協会に追われているみたいだけど、私達でやる。やらないと」

 

「ああ、復讐は終わらない、だ」

 

 

今は夢の様に幸福なんだ。だから、それを壊さないように私は魔術師を殺す。この平穏を壊すであろう魔術師を殺し尽くす。

もう戦う必要はないんだから・・・半年も続いている戦いの末に残った「皆」の居る毎日を守るためだ、これぐらい赦してくれ。・・・誰に赦されたいかは分からないけど。

何故か発散できないこの怒りを、10年前から"何故か”赦せない魔術師にぶつけて晴らすんだ。これからも続くこの至福の日々を守るために。

 

 

「―――聖杯戦争を続けよう」

 

「了解だ、(マスター)

 

「それが俺達のやることだ」

 

 

狂った歯車が軋むのを感じる。矛盾を感じる。・・・それでも、虚ろな楽園は回り続ける。

 




これは可能性の物語。怒りの理由を失えばクロナはこうなる。・・・はい、hollow ataraxiaです。バゼットさんを出してるくせに実はちゃんと知らないネタですが、ちょうどよかったので。カレンはいるのかいないのか、それは謎にしておきます。

タイガーに懐柔されているキャスターとランサー、普通にやって来た慎二。何か屋台をやっているイフにその客のアサシン、他の客は生きている葛木とエミヤ、現在アサシンに連れ去られているバゼット。そして何か大勢引き連れた『M』さん。極めつけは何故かバーサーカーと共にクロナの相棒している「アヴェンジャー」。この意味は終盤になれば分かります。

カニファンのネタから書きたかったんですが、こっちの方がしっかり頭に浮かんだんですごめんなさい。次の番外編は多分レース回。もしくはFGO編。

それと、今回と違ってシリアス風味な現在執筆中の次回ですが、多分また「クロナside」と「士郎side」に分けて投稿すると思いますがご了承ください。
感想や評価をいただけると励みになります。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。

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