Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争   作:放仮ごdz

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※今回新規されたサーヴァントのプロフィールは後日追記します。※追記しました。

まず最初に…プロローグと設定だけだと言うのにお気に入り登録して下さった数名の皆さま、そして高評価してくださったコレクトマンさん、まことにありがとうございます!頑張らせていただきます!


今回は主人公side出番なしで凛さんのターン。しかし相手は得体の知れないサーヴァント…正直自分で思いついてこいつほど反則は居ないんじゃないかと思いました。
楽しんでいただけると幸いです。


プロローグ#2:姫君と勇者、真夜中の死闘

半年前…ドイツの郊外にある、聖杯戦争を始めた御三家の一つ…アインツベルンの領土であるアインツベルン城。その、10年前彼女の両親が召喚を行なった礼拝堂で、年端もいかない10歳前後に見える、雪の様な銀髪と紅玉の様な瞳を持つ少女が一人で召喚を行なっていた。

 

魔法陣の真ん中には、失われたとされる「時の神殿」内部に在った聖剣の台座の欠片。海に沈んだハイラルから流れた、唯一とも言える「あの勇者」の聖遺物。それを見て、少女はよく準備した物だと思った。

 

前回、第四次聖杯戦争の失敗から学んだアインツベルンは、アーサー王よりも知名度を持つ英雄を、命令に逆らわない狂戦士(バーサーカー)で呼ぼうとしたのだ。最初は彼のギリシャ神話の大英雄…ヘラクレスを呼ぼうとしたのだが、そこで当のマスターである少女…イリヤスフィール・フォン・アインツベルン…通称イリヤが提案したのだ。

 

舞台は日本なのだから、ヘラクレスだと知名度に一歩心許無い。代わりに日本でその数々の冒険譚がゲームになる程知られている勇者を召喚すればいいのではないか。また、裏切らないにしてもバーサーカーでは実力を発揮できない可能性があるので再び最優のクラスで呼べばいいのではないか、と。そもそも令呪があるのでそう簡単に裏切りなどはできないのだ。前回のアレは、マスターの方に問題があった。

 

子供の頃、今は憎みながらも大好きだった父親の持ってきて共に遊んだ日本のゲーム…それを思い出して彼女は進言した。そしてその願いは叶えられることになった、元より、前回の聖杯戦争で失ったアーサー王の鞘を始めとした世界中の聖遺物を保有する一族だ。ただ、あまりにも貴重な物件だとの事で、無駄にするのは許さないとの事らしい。少女は思った、上等だと。

 

 

「汝三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 

響き渡る最後の呪文。そして魔法陣が輝き、姿を現したのは…

 

 

召喚時に発せられた風に吹かれ靡く金麦畑の様な金髪。子供の様な優しげに光る輝きを持つ蒼い瞳。尖った耳。

 

一見センスを疑ってしまうも不思議と似合っている緑の帽子と、緑の衣。両手に付けられた金色の装甲が付いた茶色のグローブ。

 

腰に付けたいくつもの茶色いポーチ。背中に背負っている青い盾と鞘。両手で持ち床に突き刺している、蒼い翼を模した鍔と白銀に輝き三つの聖三角が刻まれた剣身は、紛れもなく伝説の聖剣。

 

 

穏やかな笑みを浮かべていたその青年は深く息を吐き、イリヤの存在を見付けると聖剣を床から引き抜き、背中の鞘に納めてきりっと真面目な顔を作り、問いかけた。

 

 

「サーヴァント・セイバー。真名、時の勇者リンク。…問おう。君が俺のマスターかい?」

 

「…ええ!私の名はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。貴方のマスターよ。これからよろしくね、セイバー!」

 

 

ここに、時を超え二つの時代で戦った緑の衣の勇者と、雪の姫君は邂逅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

冬木市、穂群原学園:クロナがバーサーカーを呼び出したのと同じ時間。

クロナの友人であり、この冬木の地を管理するセカンドオーナーでもある名家、遠坂家の当主である黒髪と翡翠の目を持つ少女…遠坂凛は赤いコートを羽織り、先日召喚したサーヴァント…ランサーと共に屋上に佇んでいた。ランサーは逆立てた青髪赤眼で整った顔を持つ気さくな青年なのだが、一見青タイツにしか見えない群青色の戦闘服を身に纏っている為変人にも見える。しかし、醸し出す英雄としての闘気は誇り高き獣の様で、聖杯戦争に挑む意気込みは本物だった。

 

 

「…ざっとこんなところよ、川の向こうが市街地の並ぶ新都。そしてこっち側の住宅街が私たちのいる深山町よ」

 

「おうよ。戦略上有利な地形は把握したぜ。特にあの橋だな」

 

「橋って二つの街を繋ぐあの冬木大橋?」

 

「ああ。あそこは直線で攻撃できるから有利でもあるが、アーチャー辺りに狙われたら遮蔽物の少ないあの場所じゃ勝ち目は薄いな。ま、そう簡単に当たる気もねーけどよ!」

 

「…あのめちゃくちゃ遠い新都のビル屋上から放たれた矢でも避けられるって言うの?」

 

「当たり前だろ、嬢ちゃん。俺達英霊を嘗めてんのか?」

 

 

興味深そうに問いかけくるマスターに面白くなさそうに答えるランサー。凛は英霊の凄さを改めて実感し、一息吐いた。

 

 

「ふぅ。やっぱりサーヴァントってのは凄いわね。貴方でさえそうなんだもの、これが最優のクラスであるセイバーだったらどんなに凄い能力があったのかしら?」

 

「おいおい。ランサーじゃ不服だと言うのか?」

 

「いいえ、そんな訳ないじゃない。最速のクラス、ランサー。前衛としては申し分ないし、何より私は魔術師だから前に出て戦うタイプじゃないし、貴方と言う存在が頼もしい。それに、触媒も無しに召喚した私に応えてくれたんだもの。それを不服と思うなんて心の贅肉よ」

 

 

当初は最優のクラスであるセイバーを狙っていた凛だが、今はランサーが召喚されて満足している。全ての準備は整った、いよいよ私の聖杯戦争が始まるんだ…と。そんな、戦士の風格を見せている己がマスターを見て、ランサーは満足気に満面の笑みを浮かべる。

 

 

「中々いいことを言うじゃねーか。俺は嫌いじゃないぜ、そう言うの」

 

「貴方も言うわね。…さあ、戦場の視察は終わったし今日は帰るわよ。まだサーヴァントが出揃ってないとはいえ、ルールを破って襲い掛かる様な奴が居ないとも限らないしね」

 

「そいつもそうだな、無駄に戦わないってのも戦略の一つだ。まあ俺個人としては、今日からでも強い英霊と戦いたいんだがよ」

 

 

そう言い、凛を先頭に二人が屋上を出払おうとした、その時だった。

 

 

「そんなに戦いたいと言うのなら、相手になってやろうか?槍の英霊」

 

「ッ、嬢ちゃん!」

 

「!?」

 

屋上の出入り口の上、そこにそのサーヴァントは居た。まず、フード付きの黄色いコートで素顔を隠し、その下に着られているのは全体的に黒く動きやすそうな軽装の衣装。腰には黒い鞘に入れられた短刀が下がった革ベルトが巻かれ、柔らかい革製に見える茶色いブーツは足音を立てにくくするための物だろう。体型から見て少女だろうか?いや、声は中世的で少女にも少年にも大人の男性にも女性にも老人にも聞こえる。

以上の特徴から、サーヴァントの正体が暗殺者…聖杯戦争に置いてその特性から外れと称される事も多いアサシンだとは概ね予想できる。

しかし、姿を現したのは本来ありえない事だ。アサシンの本領発揮は情報収集と潜入、マスターの暗殺だ。姿を現すメリットが無い。しかし、口角を吊り上げ笑みを浮かべている事から好戦的にも見える。そもそもアサシンは余程の事が無い限り「ハサン・サーバッハ」のいずれかが喚ばれるはず。ではこの相手は何だ?

 

 

(敵!?しまった、油断した…)

 

 

凛は思考する、言ってる先からこれである。しかし後悔している暇はない。ランサーは問題ないのだろうが、この狭い空間だと自分が邪魔だ。どこか、自分が邪魔にならない広い場所に…そう思考しながら後ずさった凛は自殺防止用のフェンスにぶつかり、視界の端に遥か下に広がる校庭を入れる。

 

 

「アハハッ…下拵えに来てここらで妖しい気配がするから来てみたらとんだ拾い物だな。遊び相手にちょうどいいか」

 

「あ?俺を相手に遊びと来たか。嬢ちゃん、どうする?やっこさんはやる気満々だぜ?」

 

Es ist gros(軽量), Es ist klein.(重圧)…! ランサー、着地任せた!」

 

 

アサシンが後手に何かを構えたのを見て好戦的に応えるランサーの問いに答える前に、凛は魔術で己の身体を軽くしてフェンスを軽々と飛び越え地上に落下。

それを、命令の意図を感じとっていち早く校庭に降り立ったランサーが受け止め、同時に凛を抱えたまま、跳ねた。巨大な剣を構えた何かが着地した場所目掛けて降下して来たからだ。轟音と共に校庭の一角はクレーターを作ってめちゃくちゃになり…姿を現したのは、アサシン(?)では無かった。

 

 

「上手くいかないものッスね…やっぱり大剣は慣れないッス」

 

「なに…?」

 

「…セイバーのサーヴァント?」

 

 

出て来たのは、赤い軽装の鎧を身に包んだ赤髪をツインテールにして縦ロール状に纏めた変な髪型の少女。しかしその手には身の丈に合わない身長よりも大きい大剣を握っており、異常だと言う事は分かる。剣に鎧、ここから導き出される答えはセイバーのサーヴァントだった。だがしかし、では先程のアサシンは?初戦からして訳が分からないサーヴァントを相手に、凛は少し不安になった。

 

 

「…嬢ちゃん、いや。マスター」

 

「ランサー、何かしら?」

 

「せっかくやっこさんがやる気なんだ、少しでも情報を探るために戦った方が得策だと俺は思うぜ?」

 

「…そうね、私もそう思う。ランサー!私が呼びだしたんだから貴方は最強よ!その武勲、私に見せなさい!」

 

 

凛の叫びに、満足気に頷いたランサーはその手に朱い長槍を出現させ構えた。

 

 

「おうとも、そうこなくちゃな。見せてやるぜマスター…俺の槍捌きをな!さて大剣のサーヴァント…そんなら一つ手合せ願おうか!」

 

 

そして喜びに満ちた笑みと共に、最速のサーヴァントとしての俊足で正体不明のサーヴァントとの距離を一気に詰める。

 

 

「ッス!」

 

 

放たれた突きを、大剣を盾代わりに防ぐセイバー(?)はそのまま大剣を軽々と振り上げランサーに攻撃するも、その時には既に数メートル後方に下がっており、再度踏み込み突きを繰り出すランサー。セイバーは大剣をまるで自身の一部の様に振り回し、懐に踏み込まれた際には蹴られただけで一般人は重傷となるであろう重量のブーツによる蹴りを入れてそれを妨害しようとするが、ランサーの速さに着いて来れず防戦一方となる。それでも、突きが当たる範囲は鎧だけで致命傷には至らない。

対してランサーも大剣の破壊力を直感で感じ取り、攻撃範囲の広い大剣の一撃だけは浴びない様にと細心の注意を払いヒット&アウェイを心掛けている。何せ自身は最速のサーヴァント、大してあちらは怪力のサーヴァント。一撃の威力の差が開きすぎている。攻めきれない。

 

そんな数秒間の激突。それだけで、凛はサーヴァントがどれだけ規格外なのかを思い知る。

 

 

「これが英霊同士の対決…やっぱり、凄い。それにしてもあのサーヴァント…一体何者なの…?」

 

 

そう凛が思考した時だった。セイバー(?)の強烈な薙ぎ払いで強制的に距離を離され、その瞬間彼女の手甲が火を吹いたのは。

 

 

「宴会用必殺兵器、ロケット手甲ッス!」

 

「あぶねぇ!?」

 

 

飛んで来た手甲はランサーの腹部を捉える…が、ランサーの槍がそれを弾き飛ばす。弾き飛ばされた手甲は勢いを殺さず校舎の壁にぶち当たり、大きく抉った。

 

 

「おおう、やっぱり効かないッスかー…しかし最速の英霊に大剣(コレ)じゃ分が悪いっすね…なら…これでどうだ!」

 

「「なっ!?」」

 

 

セイバー(?)が後手に何かを構えた途端、その姿が全く違う男の姿に移り変わった。文字通りだ、スイッチを切り替える様に、一瞬のうちに姿を変えた。今度の姿はランサーより背が高く、縁が黄色い赤いマントを付けたがっちりとした重装備の赤い鎧を身に着けた茶髪の騎士。セイバー(?)は腰に携えた両手剣を握り、「牡牛の構え」を取ると笑みを浮かべた。

 

「三英雄の一人の力、思い知れ。ガキんちょども」

 

「なんだと…っ!」

 

「ランサー!」

 

 

今度は、ランサーが防戦一方。セイバー(?)の突進に虚を突かれ、至近距離で強烈な斬撃が次々と叩き込まれる。距離を取らせないつもりだ。先程の少女と違い、こちらは完全な技量のみで脅威となりえる。力強いその一撃は、人々を導く英雄の物だった。

 

 

「何だコイツ…さっきまでの動きと全然違いやがる!嬢ちゃん、相手の情報見れんだろ?どうなっている!」

 

「それが分からない…ステータス自体は何も変わってない、ただ、単純に、まるで人格そのものを切り替えたみたいな…」

 

 

マスターはある程度ではあるが敵サーヴァントのステータスを視る事が出来る。しかし、相手のサーヴァントは依然として、アサシンと思われたあのサーヴァントとまるで同じ。同じサーヴァントではあるのだが、何かが決定的に違うのだ。

 

 

「へっ、なんだそりゃ。得体の知れない野郎だぜ、とりあえずは…押し通るとするか!」

 

「ぬっ!?」

 

 

しかしランサーとて負けてはいない。剣の一撃を受け止めた所で槍の穂先ではない方の柄でセイバー(?)の脛に打撃、隙が無かった騎士が見せた一瞬の隙を突いて怒涛の突きの嵐を叩き込む。しかしセイバー(?)も剣を振るってそれを弾き返して行く。

 

技量としてはほぼ互角。しかしランサーの方がリーチと言う差で押している。勢いのままに押し切れば、或いは勝てていただろう。…その決闘に、邪魔者が乱入しなければ。

 

 

パキッ

 

 

僅かに聞こえた、枝を誰かが踏み締める音。その音に、戦闘中であった二騎のサーヴァントと、凛は気をとられそちらに振り向く。そこには、戸惑いの表情を浮かべている赤銅色の髪と琥珀色の瞳が印象的な学生服の少年が立っていた。

 

 

それは、魔術師でなくとも誰もが目を奪われるであろう、かつての英雄達による人智を超えた死闘であり、凛も目の前で繰り広げられる戦いに、自分のサーヴァントの雄姿に見惚れていた。そう例えば、誰かがそこに居合わせる可能性すら忘れてしまう程に。

 

魔術師同士の戦いを第三者に見られた場合、口封じのために抹殺するのが魔術師の鉄則。…その事がとある少女の怒りの要因の一つでもあるのだが一先ずそれは置いといて。即座に、二騎の英霊は動いた。

 

 

再び後手に何かを構えて姿を切り替えるセイバー(?)。今度は美しい銀髪と白い肌で侍女の様な衣装を着た長身の女性の姿で、両手にナイフを構え、危険を感じ取ったのか逃げ出す少年を圧倒的な素早さで地を駆け追い掛けた。

 

 

「ランサー、逃げた奴を追って彼奴から守って!」

 

「ちっ…マスターの命とあればしかたねぇか!」

 

 

凛の命令を受け、それを同等の速度で追跡するランサー。最速の英霊だ、自分の不注意で巻き込んでしまった彼を…顔見知りである少年、衛宮士郎をあの得体の知れない英霊から守れる筈。凛はそう思いながら彼らの後を追い掛けたが、現実は非情であった。

 

 

追い付いた先で彼女が見たのは、心臓部を刺し貫かれて倒れた同級生と、その前で悔しげに佇む己がサーヴァントの姿だった。




…ランサーの口調が微妙に間違っている気がしてならない…サーヴァント二体の強者感が伝わったのか否かも心許無いですね、はい。


さて、まず前提の話ですが…この世界では、「ゼルダの伝説」がアーサー王伝説以上の冒険譚として知られ、日本でその冒険譚を元にゲーム化された設定となっています。時系列上は風タクの世界に当たり、ハイラル王国は太平洋に沈んだ設定です。…地球であの伝説を再現するならあの海しかなかった。世界的な知名度ならヘラクレスに並びます。

あと個人的に三次~五次のアインツベルンは馬鹿じゃなかろうかと思ってしまったので(主にルール違反したとかマスターとの相性を考えないで最良のクラスで召喚したりとかアーチャーなら確実に勝てるヘラクレスを裏切らせないためとはいえわざわざバーサーカーとして呼び出すとか)、イリヤとは相性ピッタリであろうセイバーで時の勇者リンクを召喚しました。アサシンと違ってすぐ正体割れるから気が楽ですねー。ただしこの勇者、色々チートだからなぁ…(汗)

多くの姿に切り替えられる得体の知れないサーヴァント、アサシン。その正体は…?分かる人には分かると思います。ただ自己解釈もあるので…これは正直ぶっ壊れ性能だと思う。ちなみに多重人格とかじゃありません。

そんな訳で原作と同じく刺されてもらいました士郎さん。こうしなくても始まる気はしたけど士郎を聖杯戦争に巻き込むためにはこうするしかないからしょうがない事。次回は同じ時間帯を士郎sideでお送りします。+間桐も入れる予定ですが長くなったら分けるかも…

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。

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