Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争 作:放仮ごdz
今回は思う様に上手く書けなかったVS否天の終演。もっとアスラズラースの様な熱い展開にするつもりだったのになぁ…
長くなったので「クロナ視点」と「士郎視点」に分けましたので何時もより短いです。
個人的にすっきりしないできですが、楽しんでいただけると幸いです。
「…私の勝ちだ、エミヤシロウ」
「ああ、そして俺の敗北だ…」
心から、敬服する。半身を消し飛ばされ尚、佇むその姿は英雄のそれだ。…私の知る士郎には、こうなって欲しくないな。やっぱり、止めなくちゃいけない。私が言うな、って言われそうだけど。
「…あーその、なんだっけ。あの方法じゃないと勝てなかった、騙してごめん。そっちは大真面目にやってくれたのにね」
「なに。私もまさか英霊でも無い君が、衛宮黒名にも匹敵する火力を有していないと侮っていた。非礼を詫びよう。しかし、どうやって宝具の合体を?改造ならば私もするが、エクスカリバー程にもなると自壊待ったなしだぞ?」
「…私の魔術は「基本骨子は残しながら根本から書き換えて異なる物質にする」物だから、アレはもう贋作とはいえ宝具じゃない。ただ効果を付与させただけだから、既に完成されている宝具を改造しても大丈夫って訳。そっちこそ、士郎は剣以外を投影しようとしたら魔力消費が激しいって言ってたのによくあんなにローアイアスを乱用できたね?」
「元よりやりくりは得意でね?衛宮黒名相手には、乱用するしかなかったのもある。経験が物を言う、あんな若造には出来んさ」
「それは…なんか、ごめん」
私が謝ると、不敵に笑むエミヤ。何か憑き物が落ちた笑みだった。私に負けた事で何か認識が変わったのかな。
「気にするな。クロ姉の言う通り、アンタの事じゃない。ただ、俺の知るクロ姉じゃないアンタでも…やっぱり、
「なる気は無いよ。『M』から聞いてるからね、同じ事にはならない様にする」
「…それでも、最期は死ぬ気なんだろう?」
「私に生きている価値なんてないからね。魔術師に復讐すれば、そうするつもり」
「そうなったらきっと、衛宮士郎は私と同じ道を辿る事になるぞ」
そう言われて口を噤んでしまう。…薄々そんな気はしていたよ。でも、私は止まる訳にはいかないんだし。
「…人知れず消えれば、そうはならないんじゃない?」
「…だといいがな」
すると次の瞬間、エミヤの姿が令呪による光に包まれる。…バゼットさんに呼ばれたらしい。多分あっちでも士郎達が勝利したんだろう。後一分遅れていたら危なかった。ギリギリ、間に合った様だ。
「…ああバゼット、君は何時も間に悪いらしい。消える前にそこだけは直さなくてはな」
「…シロウ、バーサーカーは」
「安心しろ、令呪の宿った左腕を消し飛ばされた時点で契約は切れた。再契約すれば令呪は戻る。…が、抑制が切れた狂戦士をどうやって止める?今の奴は、クロ姉だって殺しかねんぞ?」
「私の油断が招いた結果だもの。私はバーサーカーの所に向かうよ。…シロウも、心配していないけど…まだ何かしないよね?」
「ふっ、それはどうかな。バーサーカーの令呪は失ったが、私にはまだマスターがいるのでね」
「…っ!」
しまった、失念していた!令呪を使われても戦闘不能に出来ていたらいいと思っていたけど、まだ令呪を一画も使ってないならもう一画余分がある!あっちに召喚されて全快されでもしたらヤバい…!
「待って・・・!」
「すまんな、どうにもならん」
飛び掛かるが、その瞬間に完全に姿を消して私は地面に転がった。……どうする?士郎の元に向かいたいが、今はバーサーカーを任せている王様の方が心配だ。元々魔力切れ寸前なんだ、誰かが魔力供給しないと本当に消えかねない。でも、今はサモエド仮面しかサーヴァントが居ない士郎達を放っとく訳にも・・・
「クロナ!」
「っ、ライダー?それにアーチャーも…」
そこにやって来たのは、バイクモードのエルメスに跨り後部座席にアーチャーを乗せたライダー。焦っている私の様子に何があったのか察したのか、ライダーはそのままアクセルをフルスロットルで回した。
「士郎達は私達に任せて、クロナはさっさとバーサーカーの所に行きなさい!」
「…でも、手負いな上にあの距離じゃ・・・」
「桜なら何かあれば令呪で私を呼び出すし、エルメスもオンボロだけど大丈夫。何のためにここまでボロボロになりながら手伝ったと思ってんのよ」
「…クロナさん、グッドラックです」
「…分かった、そっちは任せた!」
放置していたゴルフバッグを担ぎ、近くに投げ出して置いたバイクに搭乗し、反対方向に走り出したライダーと同時に全速力で倉庫街に向かう。…王様、無事でいて…!
途中、流れ弾かと思われる光線やら金色の武具やらを避けてやっとの事で辿り着いた倉庫街。そこでは
「どうした、悪鬼羅刹よ!手も足も出ぬではないか!」
「ウゥォアァアッ!」
四方八方。いや、全方位に展開された王の財宝から次々と射出される
「…王様、凄い」
「む?ようやく来たか、クロナよ。その様子からして、贋作者には勝てたようだな」
「う、うん…王様、傷は大丈夫なの?」
「誰の心配をしている?
「さすが。…っ、王様!」
「むっ!?」
話をしていて気が緩んでいたその時に飛んで来たのは、バーサーカーの二倍はあるだろう巨岩。見れば、足元の地面が大きく刳り抜かれている。何でもありか…!?
「そんな足掻きが…!」
「違う、避けて!」
ひらりとヴィマーナが旋回して避けた所に、挟み込むかのように伸びる四つの巨腕。完全におびき寄せられた、逃げられない…!
「そうくるであろうな。
「…!?」
咄嗟にゴルフバッグに手を突っ込んだ瞬間、ポロロン♪と音が鳴ったかと思えばバーサーカーの巨腕すべてが細切れとなって消滅した。何事かと見てみれば、王様の手に握られていたのは、円卓の騎士トリスタン卿が有したと言われるまるで琴の様な弓だった。…さすが、あえて隙を見せることで最大の武器を無力化した。
「援護は任せよ。さっさと取り返してくるがいい、クロナ」
「…ありがとう、王様」
その手に改造して軽くしてある
「ウゥァアアアアッ!」
「いい加減、正気に戻れ!」
契約が切れて尚、サーヴァントであるエミヤが彼と契約できた由縁でもあるスキル、「憤怒EX」の恩恵でいくらでも湧き上がる魔力で再生した巨腕を揺るがし、無数のレーザーを放つバーサーカーの攻撃を、王様が次々と展開する王の財宝から射出された剣類が盾の役割を為し、一瞬だけの隙を縫って走る。
今、彼の眼は私に向いている。つまり、関心が私に向いているのだ。私はただ彼に近付き、そして一撃叩き込めばいい。それだけで条件は完成する。安心しろ、私には誰よりも頼れる王様が付いている。…失敗したらどやされるんだ、なら精一杯やってやる!
「ウルァアアアアッ!」
突如バーサーカーが巨腕を消したかと思うと今度は私に向け、一直線に突進してきた。それに一瞬反応が遅れた王様の宝具類が次々と通り過ぎた地面に突き刺さって粉塵を巻き上げる。…粉塵?そうだ、ならば…!
「王様!私とバーサーカーのど真ん中に一発でかいの打ち込んで!」
「なに!?…よかろう、だがしくじるのは赦さんぞ!」
短い問答の後、音速で射出される名前も知らない黄金の槍。それは見事、私とバーサーカーのど真ん前に打ち込まれ、粉塵が巻き上がりバーサーカーはその中に突っ込んだ。今しかない、力を貸せローマの暴君!
「夜を彩れ、
間髪入れず、渾身の力で両手で構えた奇妙なれど美しい形状の大剣を振り上げる。瞬間、着火。炎を纏った大剣を手放し、私は両足に強化をかけて全力で背後に飛び退いた。
「ヴァァ…!?」
瞬間、大爆発が起きてバーサーカーの両腕をもぎ、さらにはその巨体を大きく空に吹き飛ばした。粉塵爆発だ、真面に受けたらサーヴァントと言えどただじゃすまない。
…元々王様との戦闘でダメージは蓄積していた、私はそれに衝撃を与えてやっただけに過ぎない。…恐らくはバーサーカーの怒りが沈静化しかかっているのだろう。そりゃ回復も遅れる。
「…でも、バーサーカーの怒りが収まっても意味が無い」
私は知っている。否天がどうやって、目を覚ましたのかを。まだ、パスが繋がっていたあの一瞬の気絶の中で知り得た。
大きく地面に叩き付けられ、それでも回復し立ち上がろうとしているバーサーカーに私は歩み寄る。王様は止めようともしない。…非力な私をなめんなよ?
「
改造するのは、何時だって私と共に戦ってくれた愛用のマフラー。教会が吹っ飛んだから、多分無事なのはこれだけだ。また編まないとな。残った魔力を絞りだし、
イメージしたのは、バーサーカーの機械的な右腕。マフラーを鎧の様に纏い、改造を終える。
「
「ウゥゥアァアアッ!」
「・・・いい加減、自分で目覚めようとしない馬鹿に頭に来た。私のために怒ってくれたのはいいけど、だったらちゃんと顔を上げて目の前を見ろ!目先の事だけに囚われるな!貴方はただ、私を守れなかった怒りを理由に鬱憤を晴らしているだけだ!それで私の守りたい街を壊すな馬鹿ァ!」
「ウゥォアァアアアアアッ!」
・・・声は届かない、か。なら荒療治だ。かつて、アスラを否天から解放した
「ああそうか、私を知覚しているのに止まろうとしないんだ。だったら…前が見えないのなら、せめて私の拳の声を聞け…!」
強化した脚で地面を蹴り、飛び出す。同時にバーサーカーも怒りが再燃し瞬く間に再生した拳を振り上げる。防御手段はもうない。だけど、私を一撃で消し飛ばせるその拳は王様の射出した剣が的確に射抜き、弾き飛ばした。感謝してもし足りないな王様は!
「アスラァアアアアアアアッ!」
そして、一閃。なんてことない、ただ改造したマフラーを武装しただけと言う何ともお粗末な私の拳が、バーサーカーの胸に炸裂、私の何倍はあろうかと言う重さの巨体を殴り飛ばした。転倒するバーサーカー、マフラーが元に戻り、息絶え絶えな私。魔力切れだ、これ以上は…後は、伝えたいことを伝えるのみ。
「――――何時まで寝ている。「お前がこの世界に怒ると言うのなら、力を貸そう」そう言ったよね?だったら起きろ、バーサーカー。そしてまた、私に従え」
「…ァ」
私の言葉に、小さく声を上げるバーサーカー。止まった・・・王様を見る、満足気に頷いていた。よし・・・凛に教えられた詠唱を・・・!
「“―――告げる!汝の身は我の下に、我が命運は汝の剣に!聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うのなら我に従え!ならばこの命運、汝が剣に預けよう”……!」
唱えるは、再契約の文呪。さっきまでは応えなかっただろうけど、今なら!
「…お前を主として認める、クロナ―――!」
「よし来た!令呪を以て命じる…!」
声を上げたバーサーカーと共に魔法陣が私達の下に浮かび、私の右手に復活し、赤く光り輝いて存在を主張したのは蜘蛛の様な三画の令呪。その一画を消費し、私は唱え上げる。
「“否天の怒りから解放されよ”、バーサーカー!」
瞬間、絶対命令が発動され、バーサーカーを覆っていた黒い表皮が吹き飛んだ。中から現れたのは、久しぶりに見たあの日の姿のバーサーカー。腕も戻っていた。その顔には、申し訳なさそうなシュンとした顔。ああ、その顔は…初めて見たな。
「…すまん、クロナ。俺は…」
「いいよ。また、私に従ってくれるんでしょ?」
「ああ。今度こそ、最後までお前に従おう」
帰って来た相棒に抱かれ、私は眠りについた。…まさか、士郎達の所で最悪の事態が起きているとも知らずに。
「や。二日ぶりね、衛宮士郎。そして皆々様」
最狂の暗殺者が、私にとって倒さないと行けない最悪の英霊が今夜、動き出したのだ。
ヤシャの時は燃えたのに、クロナにするとしょぼくなる。何でだ…そんな訳でバーサーカーとクロナのコンビ、復活です。クロナは魔力切れで、ギルガメッシュは同じく疲労で今夜は動けません。
否天の戻り方については原作のヤシャが行なったのと同じです。マフラー武装については、FGO編を読んでくれている方々は察したとは思いますが、監獄塔で英霊クロナが使っていたのはこれが始まり。これからマフラー弓と同じくらい主力武器になります。
王様も否天にクロナを近付かせるためにファインプレー。うちの王様は賢王じゃないかと感想だかで言われてましたが違います。士郎と同じでクロナの影響で「思考が速くなっている」だけです。元々頭はいいからね王様。
次回、最狂の英霊アサシン始動。バゼットが可哀相すぎる回になるかと思います。エミヤも多分最後の登場かな…感想をいただけると励みになります。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。