Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争   作:放仮ごdz

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今回は前回の直後の時系列。アーチャーの異変に気付き双子館から出たバゼットさんへの襲撃から始まります。

次回にクロナVSアーチャーを集中させたいがために今回はVSバゼットとセイバー陣営の動向を一気に描いているため今作では珍しいバゼット、桜、イリヤ視点でお送りします。
楽しんでいただけると幸いです。


♯22:動く戦局、ありえない物

弾く、弾く、弾く。宝石を、弾丸を、そして投擲された剣を。

 

アーチャーの危機。それを察知していても経っても居られず双子館を跳び出した矢先、襲撃を受けた。遠坂凛、間桐桜、衛宮士郎。咄嗟に硬化のルーンを刻んだ手袋を付けた拳で弾き飛ばすと、信じられないような物を見た様な表情で固まった。

 

 

「…アンタ、本当に人間?サーヴァントじゃなくて?」

 

 

失礼な、私は人間ですよ。斬り抉る戦神の剣(フラガラック)が無いのでサーヴァントには対抗できませんが。

 

 

「でも、負けられるか!」

 

「覚悟しなさい!」

 

 

突進する衛宮士郎と遠坂凛を、援護する形で間桐桜が手に持った確かM16と言う名のアサルトライフルを構えて的確に私の足を狙ってくる。…なるほど、弾薬を選んだりメンテナンスの手間があるけど命中精度が高く軽量で全体的に扱いやすい構造で反動も極めて小さい銃を選んでいるところから、彼女は完全に援護射撃係ですか。いえ、護身用なのかグロック17も携帯していますか。ですが、間違いなく戦闘経験が少ない。そこを突くのが最適でしょうか。

 

 

「手加減はしませんよ!」

 

 

衛宮士郎の振るった、アーチャーも使う干将・莫邪をそれぞれ一撃で粉々に破壊。そのまま足払いで宝石を握った拳を繰り出そうとしていた遠坂凛を転倒させ、瞬時に新たな干将・莫邪を投影して突進してきた衛宮士郎の胸部に掌底を浴びせ、塀に叩き付ける。

 

 

「いいのが入りましたね。さて、次は貴方です、間桐桜!」

 

「くっ…負けません!」

 

 

連続して放たれる弾丸。それら全てを見切り、紙一重で避けたり、避けきれないのは弾いて、接近して行く。走ったら駄目だ、あの手のタイプは油断し突っ込んだところにドデカい一撃を叩き込んでくる物。大した魔術が使えないにしても、油断したところで勝負は決する。…私が一週間前まで有していた斬り抉る戦神の剣(フラガラック)の様に。

 

 

「このっ…!」

 

「っ、シッ、ハァッ!!」

 

 

追い詰められM16を鈍器として殴りかかってくる間桐桜の一撃を、一歩下がる事で回避。M16を投げ捨て、グロック17を取り出してこちらに向ける彼女に対し、拳を一閃してグロック17を破壊。そのまま拳を胸に打ち付け、吹き飛んだ間桐桜は電柱に叩き付けられて崩れ落ちた。あ、やりすぎた。

 

 

「あ、すみません。強すぎましたか……?……悪いクセだ……夢中になってくるとどうしても手加減ができなくなる……ですが、私も病み上がりな物でして。これぐらいは勘弁してもらいt…!?」

 

「ピンチだな!」

 

 

瞬間、間桐桜の傍らに出現した白装束の男が振るった日本刀を、バックステップで回避。その際何故か白いハトがスローで視界の端を横切り、白いマントが踊り、にこっと笑んだ口元で白い歯がきらりと光った。新手、サーヴァントか…!?

 

そう思い、確認するとそこにいたのは見るからに変な格好で日本刀を握っているマスクの男。…サーヴァントかと思いましたがただの変態ですね。振るってきた日本刀を手甲で逸らし、蹴りを入れて吹き飛ばすと変態はクルリと一回転し、間桐桜の傍の電柱の天辺に着地。バサッとマントを翻し、高らかに叫んだ。

 

 

「正義の少女がピンチの時…今、一人の騎士が天空の彼方より舞い降りる!」

 

「貴方の様な変態が騎士なはずないでしょうに!」

 

「私の名は、純白の正義の騎士・サモエド仮面!」

 

 

その言葉にキレて、拳で電柱の根元を叩き折ると、サモエド仮面と名乗った変態はすぐさま華麗に着地。間桐桜をお姫様抱っこしてダッシュで衛宮士郎と遠坂凛の元に駆け寄った。

 

 

「無事か、少年少女よ!」

 

「桜を助けてくれてありがとうな、サモエド仮面」

 

「悔しいけど、礼を言うわ。…しっかし何度も聞く様で悪いけどバゼット・フラガ・マクレミッツ。貴方、本当に人間?サーヴァントじゃなくて?」

 

「失敬な。私だって宝具使わないとサーヴァントとは到底戦えません」

 

 

見れば見る程騎士と名乗ったこの変態に怒りを覚える。騎士とはケルトの勇士達の様な者達の事!こんな変態が騎士など、ましてやサーヴァントに選ばれる英雄などとは…

 

 

「いや、この変態一応サーヴァントなんだけど」

 

「あと、正義の味方…だよな?」

 

「如何にも!」

 

「…か、刀なら楽勝ですし?」

 

 

…まさかサーヴァントの剣戟を逸らしてしまうとは。私、自分でも本当に人間なのか疑ってしまいますよ。

 

 

「美人の君には悪いが謎のライダーから頼まれたのでね。この彼女、間桐桜に手を出そうと言うのなら…いざ尋常に、参る!」

 

 

…これが私を救ってくれたアーチャーを助けるための試練だと言うのなら…望むところだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ますと、そこでは神話と見紛う光景があった。ぶつかる刀と拳、火花と粉塵が舞う戦場に成り果てた住宅街であった場所。恐らく、私が気絶した事でサモエド仮面が現れた為だろう。

 

バゼットさんがサモエド仮面の刀と拳をぶつけ合っている中、姉さんが手持ちの宝石を投擲するが、視線をサモエド仮面に合わせたまま空いている左手で目にも止まらぬ拳の連撃を放ち弾き飛ばすバゼットさん。

 

…うん、可笑しい。不意打ちも全て打ち落とされましたし、試しにM16を撃ってみるも強化の魔術でも使っているのか全部掌で受け止められ地面にカランカランと弾丸が転がる。先輩の投擲した剣も砕かれてしまいましたし、何より、あのサモエド仮面の神速の剣戟を全て右拳だけで弾き返している。…まるで、左腕を失いたくないかの様に。

しかし、サモエド仮面も負けていない。家屋やら塀やら電柱やらは真っ二つにしているくせに、バゼットさんに向ける刃は何時だって峰打ちだ。技量の差が見て取れる。私的には、強化した目で追うのがやっとだが。

 

 

「あーもう、何なのよこの人間バーサーカー!クロのバーサーカーとやっていること殆んど同じじゃない!綺礼の知り合いって言う時点で嫌な予感はしていたけど!」

 

 

そう叫びながら隙を窺う姉さん。踏み込もうとしながらも動けない先輩。…二人共凄いなぁ、私は…もう、あまり関わりたくないとすら思えてくる。現実逃避したい。割と切実に。私も色々されて人間やめてるんだろうなあって自覚はあるけどアレは絶対可笑しい。

 

 

「ふっ!はっ!少年少女よ!君達は私の可憐な剣さばきに見とれていてくれたまえ。ケーキとお茶を用意しながらな!」

 

「余裕たっぷりですね!」

 

「彼女を怪我させてしまうと謎のライダーに怒られるので…ね!」

 

 

ちゃんと当てる時は峰で攻撃しているサモエド仮面は紳士なんだとは思う。でも周囲の塀やら建物やらは一切合財真っ二つにしているので、姉さんと先輩共々私もちょっとお冠だ。…言峰さん、これが終わったらもう過労死してるんじゃないでしょうか…

 

 

「しかし君もなんだ、しぶといな!こっちだって斬らない様にしているけど本気で倒そうとしているんだけどなあ!」

 

「だったら本気で斬りに来た方がいいですよ…その程度のナマクラに斬られる程軟いつもりはありませんから!」

 

「…ほう?ならば、リクエストにお応えしよう!」

 

「!」

 

 

スパンッと、それはもう軽快な音と共に、咄嗟に屈んだバゼットさんの背後にあった電柱が一瞬で三分割にされ、倒れて来る。前転してそれを避けるバゼットさんは再び突進し拳を突き出すも、それを優雅に空中を舞って回避したサモエド仮面がその背後でにっこりと笑い、「ひゃっははははっ!」と声を上げながら再び神速の斬撃がバゼットさんを襲う。

 

これだ、サモエド仮面の怖い所は。文字通り、斬れない物は何もない。一瞬で、ほぼ同時と言ってもいいぐらいの速度で幾度も斬撃を繰り出し何でもかんでも真っ二つにしてしまう。魔術的要因が無い物はほぼアウトだ。

 

 

「…しかし、いいんですか?私を倒すのはいいですが、貴方方の目的はこの街を守る事なのでは?ガンガン斬っちゃってますが」

 

「それはしょうがないな!私は争いは好まない、しかし時に必要な時がある。その時たまに建物が壊れちゃうのはご愛敬だ!」

 

「なるほど…狂人だと言うのはよく分かりました!」

 

 

全面的に同意したい。…クロナさんにあの台詞言ったら激怒するんだろうなぁ…あ、ライダーもキレそうだ。

 

そこから先は、もはや打ち合い。先輩どころか私と姉さんでも援護すらできない、サモエド仮面とバゼットさんのみの戦い。もはや速過ぎて何が何だかだ。その内、カキンカキンと金属がぶつかる音が聞こえてきた。何と、拳でサモエド仮面の剣戟にぶつけているらしい。本当に人間なのか本気で問いたい。

 

 

「ちぇすとー!」

 

「そこぉ!」

 

 

瞬間、信じられない事が起こった。間違いなく決まっていただろうサモエド仮面の一閃が、次の瞬間には刀身を叩き折った拳によるボディブローに変わっていたのである。…か、カウンター…!?

 

 

「がはあっ!?」

 

「侮りましたね。ルーンを刻んだこの拳……宝具とまではいきませんが、銃器ほどの威力はあったでしょう?」

 

「み、見事なり…これは効いたぁ…!」

 

 

転倒するサモエド仮面に、私達の驚愕の視線が向かう。当り前だ、バーサーカー以外で最強とも言える規格外サーヴァントなのだ。殺さない様に手加減をしているとはいえ、それに効いたと言わしめさせるあの拳…喰らったらただじゃすまない。姉さんは妙に頑丈だからいいけど、先輩にそんなの当たらせたら行けない…!

 

 

「ねえ桜、後で校舎裏ね」

 

「もし生きて帰れたらいいですよ、遠坂先輩?」

 

「…ふざけている暇があるのならそちらから攻めてみたらどうです?」

 

「言われなくても…!」

 

 

余裕の構えで挑発するバゼットさんに、投影した干将・莫邪を投擲する先輩。やはりそれはあっさりと弾かれてしまうも、そこを突いて姉さんが懐目掛けて突進。その意に気付いた私はバゼットさんの振り被ろうとしている拳に対し、念のため所持して置いたデリンジャーを懐から取り出して狙い、発射。

 

 

「くっ!?…しまっ、」

 

「ナイスよ桜!ハアァアアアアッ!」

 

 

一発の弾丸は右手首を撃ち抜いて明確な隙を作り出し、姉さんの放った渾身の拳がバゼットさんの腹部を捉え、殴り飛ばした。吹き飛び、塀に叩き付けられたバゼットさんは沈黙し、サモエド仮面の呻く声だけがその場に響く。…これで駄目ならそこで悶えているサモエド仮面を何とか再起させないと行けませんが…

 

 

「…まさかデリンジャーまで所持しているとは、私も甘いですね…硬化のルーンがなされている手袋を狙わず手首を狙ったその判断、見事です。しかし魔術師の癖して肉弾戦とは、言峰綺礼に習ったのですか?」

 

 

蹲ったままでそう声を投げるバゼットさんに身構える私達。一番近い場所にいた姉さんは警戒しながら応える。

 

 

「ええ。クロと一緒にあのエセ神父から学んだ八極拳よ。今時の魔術師は肉弾戦もできないとね」

 

「構えから見て早急に見抜くべきでした。病み上がりとはいえ油断が私の敗因でしょうか。ああ、少し前ならばこの程度、直ぐに起き上がれたものの…これではアーチャーに顔向けできませんね…」

 

 

そう言って、令呪の宿った右手を掲げるバゼットさん。それを見て何をしようとしたのか察した私たちは止めようと飛び掛かるが、一歩遅かった。

 

 

「令呪を以て命じます。来てください、アーチャー」

 

 

時計を見ると、作戦開始から二十数分…私達のミスで、戦局は動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありえない、ありえない、ありえない。(聖杯)が知らないサーヴァント何てありえない。私の最強のサーヴァントと互角の勝負を見せているこの男もありえない。全部、全部有り得ない。だから、私が納得できる答えを知っているこの白衣の男を逃がす訳にはいかない。

 

 

「貴方、あのアーチャーがどうやって召喚されたか知っているのなら吐きなさい!」

 

「生憎俺は人形なんぞの戯言を聞く耳は無くてな!」

 

「イリヤへの侮辱は許さないぞ…!」

 

「俺を打ち負かせてからほざけ!」

 

 

聖剣を手にしてセイバーのマスターソードと張り合う白衣の男に対し、私はキャリコで援護射撃するも、当たらない。確実に直撃するコースを狙っているのに、当てる事すら叶わない。もうセイバーに任せるしかなかった。

 

 

「デヤーッ!」

 

「回転斬りは攻撃範囲は広いが、上が疎かになるところは変わらないな!」

 

 

接近してきた白衣の男に対し、セイバーの放った回転斬りは、エクスカリバーを頭上に放り投げて自身は跳躍して回避。エクスカリバーを手に取り、繰り出してきた急降下斬撃にマスターソードを振り上げて弾き飛ばすセイバー。やはり駄目だ。あの男、何故か知らないけどセイバーの戦術を熟知している。アレでは不意を突いた一撃であっても届かない。

 

 

「なら、こいつはどうだ!」

 

「っ!?」

 

 

取り出したフックショットを、白衣の男の背後にある自動車に突き刺して引き寄せられる勢いで吹っ飛んだセイバーの盾アタックを、驚いた顔で横に飛び退き回避する白衣の男。セイバーは間髪入れずその手にブーメランを取り出して投擲、白衣の男の目前に飛ばしてその体勢を崩すと、ハンマーを取り出して自動車の前に停めてあったバイクを殴り飛ばし、体勢を立て直していた白衣の男はバイクが直撃して「ぐえっ」と悲鳴を上げて押し潰された。

取り出した弓に矢を番えて自身を狙うセイバーに、白衣の男は悔し気にバイクの下で呻いた。

 

 

「…くそっ、さすがは勇者か。あの英雄王なんかよりも強敵だ。何でもかんでも使いやがって、餓鬼の喧嘩かよ」

 

「元より勝つためには手段は択ばない性分だからな。それにマスターのオーダーだ、負ける訳にはいかない。それで打ち負かした訳だが、話してもらえるな?」

 

「…ちっ。負けは負けだ、教えてやる」

 

「よくやったわ、セイバー!」

 

 

セイバーの勝利に喜ぶ私だったがその時、妙な違和感を覚えた。白衣の男の浮かべた微笑に、まるで負ける事が想定内だと言わんばかりの満足感を感じたのだ。…ああ、理解した。この男の掌の上からは抜け出せない。

 

 

「アイツはな、8番目のサーヴァントなんかじゃない。だからって第四次聖杯戦争の生き残りって訳でもない」

 

「何を訳分からない事を…分かりやすく簡潔に述べなさい!」

 

 

取り出したコンテンダーを突きつけながら私がそう叫ぶと、白衣の男は仕方ないと言わんばかりに溜め息を吐くと、にやにやと笑いながら口を開いた。

 

 

「これだから凡人は…―――I am the bone of my Demento.(この身は狂気で出来ている)

 

 

瞬間、バイクが吹き飛んで来てセイバーが真っ二つにし爆発、視界を塞ぐ爆炎が晴れると、既に男は白衣を翻して立っていて。

 

 

「奴は一騎目のサーヴァントにして、二人目のアーチャーだ。後は自分で考えな、お人形さんよ」

 

「待て、ドクター!アンタは…」

 

「誰が待つかよ、時間稼ぎは十分出来た。…おいアインツベルン、死にたくなきゃ聖杯戦争から降りろ。さもないと奴の怒りに巻き込まれるぞ。お前はまだ、間に合うかもしれないからな。俺に可能性を見せてくれ」

 

 

セイバーの放った矢の三連撃をエクスカリバーで斬り飛ばしながら白衣の男は私にそう述べ、不可視になったエクスカリバーを地面に振り降し発生した風を目暗ましに去って行った。

 

…この私に、キリツグみたいにアインツベルンを裏切れって?

 

 

「冗談じゃないわ。…行くわよ、セイバー。士郎に借りを返さないと」

 

「…イリヤがそれでいいなら俺は従うよ」

 

 

少し不満げなセイバーはマスターソードと盾を背中に戻すとエポナを呼び出し、先に搭乗して私に手を差し伸べて来た。それを掴んでセイバーの前に座るとエポナが走り出す中、私は思考する。

 

 

…せめて、キリツグに文句を言いたかった。まさか死んでるなんて、思わないじゃない。だから私は、士郎を殺す。私とお母様を裏切ったアイツへの怒りを向ける先が士郎しかいないから。

…十年間、私が一人ぼっちだった時にキリツグの愛情を受けていた士郎への嫉妬かもしれないけど。…ああ、やっぱり一度ちゃんと話すべきかな。

 

 

その時だった。エポナの走る先の視界に、くたびれたコートを着込んだ死んだ目の男を捉えたのは。

 

 

「っ、止まって!」

 

「…イリヤ?」

 

 

私の指示に、手綱を引いてエポナを止めるセイバー。私は、言葉が出て来なかった。男は変わらずこちらを死んだ目で見据えて佇んでいた。街中を走っていた馬なんて気にも留めていない。その目は、確かに私を捉えていた。

 

 

 

死んだはずじゃなかったの?

 

冬木に来た翌日に墓地に赴いて文句を喚き散らかしたから?

 

それとも士郎を殺そうとしたから?

 

だから今になって、私の前に現れたの?

 

私に怒っているから何も言わないの?

 

何で、アインツベルンを裏切ったの?

 

何で、私を迎えに来てくれなかったの?

 

ねえ、何か言ってよ。

 

また、私を抱き締めてよ。

 

 

 

言いたいことは山ほどあるのに、あまりの衝撃に何も出て来ない。男は私をジーッと見つめ続けると満足したのか、振り返ると夜の闇に消えて行った。私は動けなかった。エポナから降りる事すらも、私の名前を呼んでいるセイバーに応える事もできなかった。

 

でも、間違いない。私がアイツを…10年間待ち続けた人物を、実の父親を、見間違えるはずがない。

 

 

 

 

 

「なんで、キリツグが……」




バゼットの敗北、セイバーに敗北した『M』の残したアーチャーの謎、イリヤの前に現れ去っていたくたびれたコートの男の謎と色々浮上してきた今回。特に最後のはかなり重要。

斬り抉る戦神の剣(フラガラック)を失っている他、病み上がりなためかなり弱体化しているバゼットさん。しかしサモエド仮面を退けるなど圧倒的な戦闘力は健在。こういうのに勝つにはやっぱり不意打ちが一番です。最後は令呪を行使した様ですが…?

ギルガメッシュには勝利してセイバーには負けた『M』、単純に節操の無さの差ですね。セイバーは過去の経験上、何でもかんでも使うので『M』も予想ができない、なので対策も不可能。しかしその予想の付かない負け方さえも計算してイリヤに伝えたい事を伝えた『M』マジ策士。

そしてイリヤの心情も明かされました。その直後現れたくたびれたコートの男は何者なのか!…ぶっちゃけ、あるサーヴァントを選んだ時点で考えていた展開への布石です。参戦させた理由だと言ってもいい。イメージは「仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010」のW編が近い。

次回、今回の同時刻でクロナVSアーチャーの直接対決を描きます。感想をいただけると励みになります。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。

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