Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争   作:放仮ごdz

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エミヤ編最終対決、開始です。

今回は題名通り、エミヤ、アーチャー、ライダー、クロナと言った遠距離戦エキスパート()の揃った頂上対決。ちょっとDMC要素がありますがご了承ください。楽しんでいただけると幸いです。


♯21:超遠距離弓兵頂上決戦

それは、夜までの準備の中で士郎の様子を見かねた凛の言葉がきっかけだった。

 

 

「衛宮君。この間アーチャーが宝具を使ったばかりだけど、投影までして魔力が足りてるの?」

 

「いや、それは…」

 

 

私と桜は武装の確認をしていたが、確かに士郎は魔力が圧倒的に足りない。しかもアーチャーが本領発揮するためには宝具が必須だ。

 

 

「だったらアサシンやキャスターみたいに魔力を外部から補えばいいんじゃないかしら」

 

「でもそんな魔力、何処から…?」

 

「そこで提案なんだけど…私の魔術刻印、移植してみない?」

 

「「!?」」

 

 

…思わず桜と一緒に反応してしまった。…うん、えっと…確かに魔力は必要だし…お、お姉ちゃんは許しませんよ!

 

 

「うら若きは恋せよ乙女!だな!」

 

「クロナさんのは恋じゃないと思います。…でも姉さんはどうだか…」

 

「どうでもいいけどサモエド仮面、出て来たならちょっと士郎の相手してやって。剣術はまだまだみたいだし、私よりアンタの方がいいでしょ」

 

『キノがサモエド仮面に真面な事を頼んでいる…だと…!?』

 

 

今日も変わらずライダー陣営はにぎやかだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その深夜

「…まさかあの悪鬼羅刹が戦闘不能に追い込まれるとは予定外だったが…クロ姉たちの事だ。どうせバーサーカーの復活時間を考慮して何かしてくると思うが…」

 

 

昨夜、中腹が否天の光線によって破壊され人が誰も居なくなった高層ビルの屋上で洋弓を構えたエミヤは鷹の目を駆使して未遠川を見張っていた。今のところ、敵影は見えない。代わりにボゴボゴと川の水面が波立っているので、復活が近い事が分かる。今度こそ、冬木を、さらには世界まで。否天で破壊尽くして、【この世全ての悪】になってもらわねば。

 

 

「私では、どう足掻いても【正義の味方】だからな。英霊の在り方とは難儀な物だ」

 

 

苦笑するエミヤ。その時だった。

 

 

「ッ――――I am the bone of my sword.」

 

 

咄嗟に右に向けて【熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)】を展開。飛来した光弾を全て受け止める。間違いなく、自分とは異なるもう一人のアーチャーの攻撃。しかし妙な事に…

 

 

「…敵は、どこだ?…ッ!」

 

 

続けて左側から光弾が飛来、右側に展開した盾を消して左に展開する事で防御する。しかし続けて、前、後ろ、右斜め前、左斜め後ろ、と。断続的にだが全方向から光弾が飛来してくる。これが齎す答えは、つまり。

 

 

「…まさか、冬木の反対側にいるとでも言うのか…!」

 

 

正解である。現在、アーチャーは【空の女王(ウラヌス・クイーン)】を発動し、ブラジルの辺境の空で浮いていた。時間が来た瞬間には作戦通り永久追尾空対空弾(Artemis)を連続して発射して行く。一度エミヤに出会っていたことで霊基は登録しロックオンできる。そこに向けて放つだけの簡単なお仕事である。

これは生前、妹との喧嘩(?)の際に大人気なく本気を出した際に見せた酷過ぎる戦法なのだが、マスターのためならこのサーヴァント、何でもするのだ。

 

 

「…目標補足、手応え無し。では、これで…!」

 

 

自分を囲む様に光球を輪の形で複数出現させ、巨大な翼を羽ばたかせる事でそれを一気に解き放つ。全方位からの同時攻撃。【熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)】は一方向に対して遠距離攻撃を完全に防ぐ宝具である。全方面はカバーできない。…はずだった。

 

 

「なるほど。確かに私がこれの本来の担い手では積んでいただろう…だがしかし、私は贋作者(フェイカー)なのでな。――――I am the bone of my sword.」

 

 

視界の全てから迫り来る、一発でも喰らえば致命傷となるそれに対し、正義の味方は不敵に笑むと開いた右手を頭上にかざして拳を握ると共に詠唱する。

 

 

「【咲き誇れ、(サンクチュアリ・)熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)】!」

 

 

瞬間、【熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)】がまるでエミヤを包み込む蕾の様に展開。全ての光弾を受け止め完全に防ぎ切り、花弁はまるで蕾が開く様に展開、エーテルに還元される。

生前の衛宮黒名との決戦で、全方位攻撃など普通にしてきたため会得した投影方法である。

 

 

「…プランB、行きます…!」

 

 

それを確認したアーチャーはマッハ24でブラジルの空から飛び立ち、時間をそうかける事無くエミヤの目前まで急接近。エミヤは身構えるも、そのまま直角に曲がって上昇してエミヤの直上、成層圏で急停止して取り出したそれ…凛から受け取った小粒のルビー三つを構え、ピッチャーの様に振り被る。

 

 

「…マスター(智樹)なら、効かない。でもマスター(智樹)じゃないなら…届けて見せる…!」

 

「――――投影、開始(トレース、オン)

 

 

そして投擲されたのは三筋の音速の流星。アーチャー(イカロス)からしたら生前、近付くなと言われた己のマスターに風邪薬を届ける為だけに出来る限り離れ、投擲した方法とほぼ同じ。街一つが壊滅するかもしれなかったこれを、普通のバットで打ち返したマスター(桜井智樹)は人間じゃない。

強化がなされたそれらは燃え尽きる事無くエミヤ目掛けて飛来し、それを見上げた正義の味方はその手にかつて見た大英雄の斧剣を投影。

 

 

「――――投影、装填(トリガー、オフ)。道具も使わぬただの投石で隕石級とは…かのダビデ王が知ったら泣くだろうな!」

 

 

そして振り上げ、斧剣の自壊を持って三筋の赤い流星を相殺した。

 

 

射殺す百頭(ナインライブズ)とまでは行かないがね。この程度の脅威など、今更だ。…平気な顔で核兵器な槍をぶん投げて来るクロ姉に比べたら…」

 

 

圧倒的な姉との実力差。それがエミヤの実力をさらに底上げしていた。これでも一人では勝てない衛宮黒名って何なんだろうとそれを遠目から強化した目で見ていたクロナは戦慄する。…まあそれも、ほとんど予想通りだったのではあるが。

 

 

「ならば…!」

 

 

永久追尾空対空弾(Artemis)も通じない。渾身の投石も相殺され、手持ちも無い。最後の手段なのか翼を羽ばたかせて加速、急降下し拳を構えるアーチャー。

 

 

投影、開始(トレース・オン)

 

 

それを視界に捉えたエミヤは慌てず、弓を投影しさらに赤い長槍と黄色い短槍を投影。まず赤い長槍を番えて引き絞った。

 

 

破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)!」

 

 

放たれるは、第四次聖杯戦争に参加した際、セイバーと偽って戦ったフィオナ騎士団一番槍ディルムッド・オディナが有した魔槍の一本。

自分に迫り来るそれが宝具だと認識したアーチャーは急ブレーキ、絶対防御圏(aegis)を展開して耐え凌ごうとするが…相手が悪かった。

 

 

「なっ…!?」

 

 

魔力の防御壁など無かったかのようにすり抜け、咄嗟に横に何とか避けるアーチャー。放たれたそれは刃が触れた対象の魔力的効果を打ち消す能力を持ち、クロナの改造魔術とも相性は最悪とも言える宝具である。さらに言えば、もう一本の魔槍と合わせる事でその効果は最大限に発揮される物だ。

 

 

必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)!」

 

 

破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)に連なる様に放たれたのは黄色の短槍。それは体勢を崩し絶対防御圏(aegis)を解除してしまったアーチャーの右翼を貫き、決して癒えぬ傷を与えた。墜落するアーチャーは自己再生を行なうも、その傷だけ再生されない。それもそうだ、この槍で受けた傷は槍を破壊するか使い手が死なない限り癒えることがないのだから。

 

 

「私も数多の聖杯戦争を生き抜いてきたものでね。宝具の見極めと選出ならば自信があるつもりだ」

 

 

市街地に墜ちて行くアーチャーを見据え、そうニヒルに笑うエミヤ。彼はアーチャーの有する宝具が、規格外のスペックと自己再生能力を有している物だと共有したバーサーカーの記憶から見破り、それに最も効果的であろう宝具を選んだのである。

手数の多さは覆らない。…ならば、それに匹敵しなくても同じ手数の多さが売りの英霊ならばどうか。

 

 

 

「…作戦通り(?)、クロナの言っていた宝具らしき物を受けてアーチャーが墜落したわね」

 

『英雄王ギルガメッシュから学んだ彼女の宝具知識は凄まじいね。アーチャーもアレならまあ大丈夫だろう。…でも、本当にやるの?ライダー』

 

 

エミヤのいるビルの正面で、その様子を見ていたセーラー服の少女はまるでボールを扱う様にポンポンとごく普通のストラップを放り、にやりと笑い振り被る。

 

 

「もちろん。行くわよエルメス、おりゃー!」

 

『せめて心の準備をー!?』

 

 

相棒の声など無視してサーヴァントになった事で得た人外の怪力でブンッとエルメスを放り投げるライダー。生前から五月蠅いからとよく投げていた事もあり、綺麗な放物線を描いてビルの壁に飛んで行くストラップを追う様に走り、ライダーは跳躍し一回転。

 

 

Time to rock(派手に行くぜ)!!」

 

 

バイクに変身したエルメスに飛び乗り、ビルの壁面を猛スピードで駆け昇るライダー。重力何て知らんと言わんばかりに爆走する。

 

 

「…む?――――I am the bone of my sword.」

 

 

下から轟く爆音に気付いたエミヤは剣を複数空中に投影、それを下目掛けて射出する。

 

 

「そう簡単には行かないわよね!」

 

『僕には当たらない様に気を付けてよね!』

 

 

左手でハンドルを握ったままポーチから45口径コルト・ガバメントを取り出し乱射。全ての剣を弾き飛ばし、そのまま直進するライダー。

 

 

赤原猟犬(フルンディング)!」

 

 

ならばと必中の魔剣を番えて射出するエミヤ。それに対し、コルト・ガバメントをポーチに戻したライダーはMinimiと呼ばれる軽機関銃を取り出して飛んでくる魔剣ではなく、少し上の壁面に向けて乱射乱射。罅を入れるとMinimiを投げ捨て、代わりに取り出したダネルMGLと呼ばれるグレネードランチャーを取り出して三連射。

 

 

「なんだと…!?」

 

 

ビルが揺れ、壊れた壁面が平たい瓦礫となってライダーに向かって落ちてくる。そして赤原猟犬(フルンディング)は瓦礫が盾になり炸裂。しかし貫く事は叶わず、ライダーはちょうど今走っている壁面と接する瞬間を狙って瓦礫に乗って駆け上り、それをジャンプ台に一気に屋上の上空へ飛び上がった。

 

 

「――――投影、開始(トレース・オン)

「――――憑依経験、共感終了」

「――――工程完了(ロールアウト)全投影、待機(バレット・クリア)

「っ―――停止解凍(フリーズアウト)全投影連続層写(ソードバレル・フルオープン)………!!!」

 

 

エミヤは瞬時にギルガメッシュと対峙した際の記憶を呼び起こし、自分の背後にまるで王の財宝の様に数多の武具を展開。それを連続で射出してライダーを狙う。すると、ライダーはとんでもないことをし始めた。

 

 

「ぶっ飛びなさい、エルメス!」

 

『僕、ぴーんち!』

 

 

空中で座席から飛び出すと、エルメスのハンドルを握ってエンジンを吹かし加速させて振り回し、武具を全て弾き飛ばし、さらにエンジンを吹かしてエルメスをミサイルの様に投擲。ぶっ飛んで来た大型二輪車に慌てて飛び退くエミヤ。

 

 

『ギャー!?』

 

「よっと!」

 

 

ガシャンっとエルメスは床に激突して火花を散らして横になり、ライダーはワイヤーフックを取り出して投げ付けて屋上の縁に引っ掛けることで駆け上り、エミヤの目の前に着地してコルト・ガバメントとM29と呼ばれる44マグナム弾を使用する大口径リボルバーを取り出して構えた。

 

 

「It's best!楽しすぎて狂っちまいそうだわ!」

 

「…狂うのはバーサーカーの時だけにしておきたまえ!」

 

 

干将・莫邪を投影して構えたエミヤとの、連射と連撃がぶつかる。火花が散り、弾が散らばり、エーテルが大気に還元され、破壊されたコルト・ガバメントの破片が散乱する。

 

 

「オラァ!」

 

「がはっ!?」

 

 

ライダーは弾が切れたM29を投げ捨てて蹴り飛ばしてエミヤの腹部に炸裂、改造ショットガンを取り出して接近し、エミヤの振るった干将・莫邪に対してヌンチャクの様に振り回して対抗。

 

 

「ウラララララララーッ!」

 

「ハアァアアアアアーッ!」

 

 

近距離で放たれる散弾と干将・莫邪がぶつかり合って火花を散らし、徐々に、徐々にライダーに押されて行くエミヤ。そして、

 

 

「そこぉ!」

 

「ッ…!?」

 

 

ライダーはショットガンを突き出し連射しながら突進。それによりついにフェンスにまで追いやられてしまい、エミヤは起死回生と言わんばかりに固有結界を発動しようとする。しかし、その時見えた。そして敵の思惑通りに動かされていた事に気付いた。

 

 

「クロ姉…!?」

 

 

目の前でライダーがショットガンを仕舞うと同時に拾い上げたマグナムに弾を込めながら突きつけるのと同時に、視界の端…ビル屋上の遥か真下、とある建物の屋上からこちらを見上げ、デグチャレフPTRD1941と言う名の全長2mオーバーの対戦車ライフルを構えた、背中にゴルフバッグを担いでいる言峰黒名の姿が、見えてしまった。

 

 

「まさか、今までの攻撃が全てブラフ…、サーヴァント二体が囮でクロ姉が本命だと…!?」

 

「そゆこと。もう気付いても遅いわ、全部作戦通り。合言葉は決まってんのよ」

 

 

そして、ランクDの宝具となったM29が突きつけられた額と、ライダーから受け取った弾丸を改造した対霊体専用弾が装填されたデグチャレフPTRD1941が狙う後頭部に狙いを定め、少女達の合言葉と共に引き金が引かれた。

 

 

「『JACKPOT(大当たり)!』」

 




エルメス『この間僕はずっと横に倒れていると言うね』

絶体絶命エミヤさん。サーヴァント二体を囮にするって、ねえ?

そらのおとしものギャグ回のネタ、学園キノの「ぴーんち!」ネタ、DMC3のバイクヌンチャクやらショットガンヌンチャクやら書けて今回は楽しかったです。

そして発動、クロナにいじめられた(?)ことで得たエミヤの宝具【咲き誇れ、(サンクチュアリ・)熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)】。全方位ローアイアスですが全方位と言いながら上は穴が開いているので弱いです。衛宮黒名にもそこを攻められて攻略されてます。

何気にアーチャーの宝具を使うために士郎と凛がUBWルートで行った魔術刻印の移植も冒頭でしています。簡単に言えば凛との魔力の共有(?)ですね。クロナと桜が反応したのは…ゲフンゲフン。これで何時でもアレが使える!

最後にクロナが使ったデグチャレフPTRD1941はクロナの魔改造による高速連射が可能で、霊体(サーヴァント)への攻撃も可能と言うケリィが聞いたら欲しがりそうな代物。重量は本来15.75kgですけどこれも魔改造で軽くしてます。
結論、クロナ「私の改造魔術は最強なんだ!(おじさん的なフラグ)」

次回、士郎&凛&桜&サモエド仮面VSバゼットさんと余裕があればセイバー陣営VS『M』戦。正直サモエド仮面がいる時点で積んでるけどあの人人間バーサーカーだから大丈夫だ問題ない。
感想をいただけると励みになります。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。

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