Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争 作:放仮ごdz
ちなみに昨夜、いざ寝ようとしている時に「暴食」を倒した時に手に入れた呼符でガチャしたら何故か知りませんけどヴラド三世(ランサー)を引きました。…貴方の元マスター、大食いだったものね…でもランサーは前回のアナさんで間に合っているから、アサシンかキャスターください。
今回はバゼットさんsideの始まりと、ランサー消滅後の翌日を描きます。そして『M』も再登場。楽しんでいただけると幸いです。
月光が映える夜。その時、私の命は既に灯火状態だった。憧れであるあの英霊を召喚しようとしていた矢先、謎の男から不意打ちを受け、咄嗟に応戦するも私の打撃は一切通じず、切札である
それから一週間。元々人の訪れない上にあの男がさらに何かしたのか、完全に人が拒絶されたかの様に近付きもしなかった双子館に放置された私は、一週間近く気を失っていてやっと目覚めた時、本当に命が尽き果てる所だった。その時、独りで誰にも知られずに死にたくなかった私が願ったのは、ただ一つ。
―――――誰か、助けて
その願いを聞き届けたかのように、彼は、正義の味方は私の元に来てくれた。
「問おう、君が私のマスターか」
「…問うより前に、まずは君の命を救わねばならんな」
手慣れた様子で私の左腕以外の傷口を何処からともなく取り出した包帯を巻き付けて手当てする赤い外套の男。何も返事を返せなかったが、彼はその手に稲妻を模った剣身の短剣を取り出すと、私の左腕に突き刺した。
「―――
すると光源が視界を塞ぎ、一瞬の後に私はいつもの感覚を取り戻した左手を開いたり閉じたりする。…腕が、戻った…?いや、令呪は消えているか…
「回復を拒絶する…とでも言うべきな悪質な魔術を掛けられていた様なので、コルキスの王女の宝具で初期化した。後は栄養を取り元気になって、治癒魔術でも使えば大丈夫だろう。なに、私も簡単な魔術の心得ぐらいはあるのでね。任せたまえ、恐らく一晩もかからない。一時間か二時間と言った所だろう。ところで買い物をしたいのだが、金はあるかね?」
「え、ええ多分…」
力無い手で懐を探り、確認すると財布と中身はちゃんと残っていた。…賊は本当に、令呪が宿った私の左腕だけが目的だったらしい。それを受け取り、金額を確認して「ふむ、二千円しかないのか。やりくりは得意だがどう栄養のある料理を作るべきか…」とか悩み始めた彼に、私は問いかけた。
「恐らくですが、私が貴方のマスターです…貴方は一体…サーヴァント、なんですか…?」
「ん?ああ、紹介が遅れた。サーヴァント失格だな。私は
「正義の…味方…?」
「忌々しくもだがね」
苦笑するアーチャー。その姿はまさしく英雄のそれだった。
「…私はバゼット・フラガ・マクレミッツ。よろしくお願いします、アーチャー」
「ああ、よろしく頼む。バゼット」
バーサーカーを戦闘不能にし、ランサーが消滅した翌朝。衛宮邸で不思議な集会が行われていた。
「さて、状況を纏めようか」
「待て、何で俺の家でやる必要がある」
腕を組んでどこぞの総司令見たく言った父さんの言葉に、アーチャーと一緒にお茶を用意しながら突っ込む士郎。ごもっとも、でもしょうがない。
「冬木教会は全壊な上に、凛の家も近くにバゼットさん達が潜んでいる可能性があるからここしかなかった。それとも駄目だった、士郎?」
「いや、いいけどさ…。でもこの人数は…藤ねえが来たらどう説明するんだコレ」
今ここには、元々住んでいた士郎、アーチャー、桜、ライダー、そして私に加え凛に父さん、そして何と王様まで居る。さらに付け加えるとランサーを失った凛と、私と父さんと王様もここに居候する事になった。凛は家に帰れや。
「あら、悪い?貴方のバーサーカーを止める為にうちのランサーは犠牲になったのよ。少しは見返りを欲しいわ」
「…でも、ランサーの命懸けの宝具でも結局バーサーカーを倒し切れなかった。このまま何もできなかったら、無駄死にって分かってる?」
「なんですって!私のランサーの捨て身があったから今ここに全員いるんじゃない!」
「落ち着け、凛。君の決断には皆が感謝している。あのままだったら冬木は全壊ではすまなかっただろう。最悪、更地にされていただろうな」
そうなのだ。私が気絶している間にランサーが自爆宝具でバーサーカーの体を吹き飛ばしたのはいいけど、殺し切れてはいなかった。行動不能になり、今は未遠川に沈んでいるが、同じく再生能力を持つアーチャーの見立て曰く、次の夜…つまり今夜には復活して来るそうだ。うん、バーサーカーならありえる。殺しても死なない上に、何億年経っても地獄から生き返って来た執念を持ってるからね。だから、やる事は一つ。倒し切れないなら、もう一度…
「まずはあの赤いアーチャーを倒す。その後、再契約すれば行けると思う。令呪が補充されるかは賭けだけど…それで一画使って、止まる様に命じる」
「それが妥当ね。あの状態だとどうやっても殺せないなら、戻すのが一番。問題はその赤いアーチャーとそのマスターだけど…」
「その赤いアーチャーだが、私と凛の使い魔による探索によると遠坂邸のすぐ近く、双子館に行方不明だったバゼット含めて滞在している様だ。しかし、私が行こうともしなかった事から見ると、どうやらまたあの『M』と名乗った男が何か仕掛けているようで、こちらからは攻め込めない。どうしても、見えない圧力に押し返され拒絶されてしまう」
私と凛の言葉に続けて、敵の本拠地についてそう述べる父さん。…拒絶、ね。王様も思うところがあったのか珍しく口を開いた。
「恐らくは奴が使っていたブライとやらだろうな。アレはこの英雄王の慧眼でさえも欺ける代物。魔術を応用し、陣地として仕掛けたのだろう。だが奴の性格だ、間違いなく
「多分、元々は『M』が、誰にもバゼットさんを見付けられないようにするために仕掛けたんだと思う。あの男にとっても今回の、三人目のアーチャーの召喚は想定外だったんだ。前回の聖杯戦争を生き残った例外である王様を抜いた八人目が召喚された事について、父さん。何か心当たりでもある?」
「無いな。ギルガメッシュは第四次の生き残りだが、今回英霊はちゃんと七騎召喚されている。
そう言って愉しげに桜を見やる父さん。桜は心当たりがあったのか少し表情が陰ってしまった。それを見て何を思ったのか、凛が仕切る様に立ち上がってわざとらしく咳払いして注目を集めた。
「出所が分からないにしても、出て来たもんはしょうがないわ。まずはあの赤いアーチャーの戦力を確認しましょう。まず、クラスは弓兵。そこのアーチャーとは別の意味で、正統派とは言い難い、剣も使うオールラウンダーに見えたわね。だけど、あの時見せたアレは間違いなく、竜殺しの英雄ジークフリートの有する魔剣バルムンクだった…だけどアレがジークフリートな訳がない。そう言えば真名に心当たりがあるみたいだったわね。クロ、衛宮君?」
竜殺しって確か「リンク」もそうだったなとか思い出している私と士郎に悪い顔で問いかける凛。…いや、まあ、ねえ?士郎もどうしてか知らんけど知ってたみたいだし…どう説明した物か。というか私が説明するしかないのか。ううむ…
「…えっと、まず大前提として…平行世界って信じる?」
「「「「「「?」」」」」」
元々平行世界について知っているのか、王様以外の疑問の声がその場に木霊した。
「つまりだ。あの赤いアーチャーはその平行世界の第五次聖杯戦争でクロナを殺したエミヤシロウ…と言う事か?」
「『M』の言葉を信じるならね」
とりあえず、平行世界の私が切嗣さんに育てられた事と、その私が聖杯を手に入れて世界を滅ぼしかけた事とか知られて不味い事以外はかいつまんで話した。やっぱりと言うか、王様の疑惑の目が向けられた訳だが。だってしょうがないじゃない王様、不要な情報は余計な混乱を生むだけだし。
「士郎があのアーチャーと似たような芸当でエクスカリバーと思しき剣を投影したのも、それがきっかけ…なの、士郎?」
「ああ。現実で成功したのは初めてだった。イリヤを守ろうって必至で…」
「そのアインツベルンは本家に聞いてみるって言って帰ったけどどうだろうね。また、第三次みたいにアインツベルンがルール違反したのかもしれないし」
…てかアインツベルンなら見殺しにしてても…でも、今はセイバーはまだ必要だ。私が、気絶している中少しだけ目覚めて目に焼き付けた光景は、固有結界だった。アレは不味い、王様でもヤバいかもしれないぐらい不味い。もしもの時はセイバーに任せるとして、よし我慢しよう。
「アイツが衛宮君だとして…弱点は?」
「…やっぱり、クロナさんですよね?あそこまで執着してましたし…」
「うん、桜の言う通り。自分から投げて置いて、クロナを取り返そうと必死だったね。目覚めてからは四肢を斬ってでも大人しくさせる!的な物騒な事言ってたけど」
「アイツの狙いはバーサーカーなのだろう?バーサーカー復活を邪魔する私達を排除しようとしているのは明確だ。この規格外な英霊達なら戦闘不能には出来ると昨夜の戦闘で証明されたからな」
「一人で駄目だったから、今度はマスターの力を借りて来るかもしれないな。…俺的に、魔術師ならそこまで無謀な人間がいるとも思えないが言峰綺礼。アンタはそのバゼットとか言う人物を知っているんだろう?どうなんだ」
そう尋ねる士郎。そうだね、普通の魔術師だったら利益か名誉がメインだから逃げる事もあるだろう。でも、あのバゼットさんは普通の魔術師じゃないんだよなぁ…世間知らずって言うか。家が家だからなのもあるだろうけど。
「…『M』に襲われ、弱っていた所に奴が召喚されたとしたら…バゼットは義理堅い。恐らくは自分の命を懸けてでも、奴の手助けをしようとするだろうな。だとしたら不味いな、私でも彼女と正面からぶつかればただじゃ済まないだろう。彼女は接近戦に置いては最強と言える。凛、クロナ。私がお前達に教えた八極拳程度じゃ手も足も出ない相手だ」
「なら、父さんを私達が援護してバゼットさんを相手してもらって、サーヴァント全員で赤いアーチャーを仕留めるって作戦はどう?」
私はそう立案するも、すぐに気付いた。父さん動けないんじゃね?
「そうしたいのは山々ではあるがな。私は一応聖杯戦争の監督をしている。今回の大騒動について、誤魔化すべく動かねばならん。情報は渡した、後は頼んだぞクロナ」
「だよね。…どう誤魔化すの?テロ、じゃ教会破壊されたの言い逃れも無い気がするけど」
「…ガス爆発、とか?」
「…が、頑張れ」
「胃が痛い…ギルガメッシュはどうする?クロナに力を貸すのか?」
出て行こうとする父さんだったが、私の後ろで仁王立ちして腕組みしていた王様を見てそう問いかける。…個人的には力を貸してもらった方がいいんだけど…
「ふん。今回ばかりはクロナ、貴様の不注意が招いた結果だ。
「…ごめん、王様」
「…しかし何だ。クロナに死なれても困る。バーサーカーめは
「…」
さすが王様、見抜かれてたか。私なら攻撃を躊躇してくれるかなとかバーサーカーに甘い考えを抱いてたんだけど。
…とりあえず、父さんは出て行き王様は霊体化して去ったけど方針は決まった。
「バーサーカーの方は王様に任せて問題ないとして、双子館をどう攻略するかだけど…私の、弓を扱う人間としての意見を言わせてもらえれば、多分赤いアーチャーは狙撃でこちらの邪魔をしてくると思う。高所からバーサーカーを見張っている可能性が高い。だとしたら、こちらから狙撃しにくい場所は限られている。赤いアーチャーはそこを急襲すれば問題ないと思う」
「じゃあその急襲は私に任せて」
「ライダー、任せた。それでバゼットさんだけど……赤いアーチャーに異変を感じ取れば、助けようと出て来ると思う。そこを突けば…」
「…つまり、アーチャーへの急襲とバゼットへの急襲。組み分けが必要ね」
その凛の言葉をきっかけに話し合い…赤いアーチャーへの急襲をライダーに加えて空から奇襲できるアーチャー、あの投影魔術に対抗できるであろう私が。
バゼットさんへの急襲を接近戦でも何とか応戦できるであろう凛に加え、士郎と援護として桜、そしてそのピンチに来ると言うサモエド仮面も入った。正直士郎と桜が心配だけど、私は赤いアーチャーに完敗しているからサーヴァントの協力がいる。
バゼットさんなら、マスターと変態だけでも頑張れば行けるはずだ。士郎がピンチになったら何故かアインツベルンも助けに来るだろうしそう言う意味でも安心だろう。
赤いアーチャーは、私が決着を付けねばならない。本当にそう思う。
「時間は今夜、バーサーカーが復活しそうな間際の時間帯。赤いアーチャー撃破後に急いでバーサーカーの元に行って、再契約する。それが最終目標。それでいい、皆?」
「異論はないわ。ランサーの頑張りを無駄にはさせないし、これ以上冬木に被害は出させない」
「はい、力不足でしょうが頑張ります…!」
「桜、貴方がピンチの時はサモエド仮面が呼び出される様にしておくから盾にしてでも逃げてよね!」
『うわ、辛辣。でもサモエド仮面が魔術師相手に不覚は取らないと思うけど』
「マスター、もしもの時は令呪で私をお呼びください」
「ああ。アーチャー、クロ姉を頼んだぞ」
…さて、上手く行くかね。…『M』が関わってるなら、一筋縄じゃ行かない気がするんだよなぁ…それでも、やるしかないんだけども。
バーサーカー、マスターが私でいいなら待っていて。必ず、取り返すから。だから…
気絶していた時にうっすら見えた、バーサーカーが私のせいで傷付き、否天に変貌して行く姿を思い出す。貴方の怒りは、私に対しての物だ。あの夢を見たとき、貴方を否天にさせちゃいけないと誓ったのに…マスターなのに、何もできなかった。
もし私がこの戦いで負けて、マスターに戻れなくて聖杯戦争に本当に脱落したとしても。
傷付く事を必要な犠牲として是としていた私のために、怒らないで。
作戦実行の夜。クロナ達の知らないところで、
「おいおい。まさか、衛宮士郎に手を貸すのか?そりゃ、バゼットにとっては過剰戦力ってもんだろ。アイツ一応人間だぞ?俺にあっさり負けるぐらいには」
住民が避難し、誰もいない事をいいことにセイバーの愛馬に乗って街中を駆けていたイリヤの前に現れたのは、白衣の男。セイバーがエポナを止め、イリヤは男を睨みつける。
「あら、悪い?前回の生き残りならまだしも、今回の聖杯戦争で私の知らないサーヴァントが召喚されたら行けないのよ。それに、士郎には助けてもらった恩がある。殺す前に、それぐらいは返してあげないと行けないじゃない?」
「衛宮士郎への怒りは残っていたか…安心したぜ。お前が奴に与したら面白くねえ。俺は
「…貴方、第三魔法を知っているの?」
「ああ、知っているぜ。それが科学で到達できる道であるのも、よーく知っている。てか作った。凡人共に渡す気は殊更無いし、使いたくもないが」
そう言って白衣の男、『M』はセイバーを見上げ、懐かしそうに笑った。
「よう、リンク。久し振りだな…俺を覚えているか?」
「…ああ、ドクター。何でアンタがここに存在しているかは知らないが…俺とイリヤに何の用だ」
「なに、新しい実験を始めたんでな。それをお前達に邪魔されたくないからお願いしに来たんだ。…城に引き籠っているつもりはねーか?」
「無いわ。それにその言い種、あのアーチャーについて何か知っている様ね。白状してもらうわ、セイバー!」
「了解した、イリヤ」
エポナを消してイリヤが着地すると同時に跳躍、剣を振り下ろすセイバー。『M』はそれに対し、ポケットに手を突っ込んで余裕の動きでバック転、易々と回避して愉しげに笑う。
「どうした、二人がかりでもいいぞ?かかって来い」
「「…!」」
ここでまた、新たな戦いが始まった。
アーチャーの戦い方を研究するべく時間とお金が無かったのでUBW劇場版を借りて見ましたが、予想以上にハートキャッチ(物理)がえぐかった。あと王様の慢心ヤバかった。
またフラグを建てまくる回になりました。次回から決戦です。
『M』による妨害で誰にも見つからず死のうとしていたバゼットからしたらエミヤは自分を救ってくれた正義の味方。エミヤの暴走をある程度許していたのはそう言う事情だったりします。
一方、王様、言峰、イリヤと「真相」を知っているであろう輩に執拗に接触する『M』の新たに始めた実験とは…?エミヤ召喚に関連ある様で全然想定外じゃなかったと思ったらバゼットさんが召喚したのは地味に予想外で焦ったりしてます。もう死んでいると思っていたバゼットなんかが召喚しやがったせいでせっかくのアーチャーが消える的な。
次回、バゼット&赤いアーチャーとクロナ達が激突。エミヤの暴走の果てにある物とは…?一話二話じゃ終わらないと思いますがよろしくお願いします。
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