Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争   作:放仮ごdz

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レポート地獄を潜り抜け、ついでに七章もプレイしてクリアしてからやっと投稿。お待たせしました。
ガチャ?イシュタ凛さんに運を根こそぎ持って行かれたのか三十連して新規鯖零だよ!…五章の時はナイチンゲールとラーマが同時に来たんですけどね。円卓勢からも嫌われてる模様。例外はサモさんぐらい。
六章→敵サーヴァントが鬼畜。七章→雑魚の方が強い。こんな感じでしたね。

前回の最後に召喚された謎のサーヴァントの参戦で急展開。楽しんでいただけると幸いです。


#16:脱落、―――三人目の弓兵

――――今にして思えば、この夢はこれから起こる事を比喩していたのだろうか。

 

 

バーサーカーの背に、仮眠と言う形でおんぶしてもらい教会まで運ばれていた私は、刹那の時の中で夢を見た。

 

 

「グゥ…、無事だったか…」

 

 

相変わらずの両腕を失った姿で何とか立ち上がり、そんな自分に駆け寄ってくる、たった一人の娘によく似た少女に安堵の声を上げるバーサーカー。爆撃でもあったのか、周囲の建物は完全に崩壊していた。そして、高慢そうな女性の声が響いた。見上げると、そこにはバーサーカーを倒すためだけに集結した飛行戦艦の大軍勢。

 

 

「アッハッハッハッハ!デウス様に仇なす者は、全て滅ぼしてくれる!」

 

 

その女の声と共に、飛行戦艦群から降り注ぐ爆弾の雨。誰がどう見ても、助かる筈もない。そんな絶望的な光景だった。

 

 

「この世から滅せよ! アスラ!」

 

 

唖然と空を見上げ、そしてハッとそれに気付き、必死の形相で振り向き叫ぶ。

 

 

「来るなァアアア――――――――――――ッ!」

 

 

そこには、爆撃に気付かず、恩人である自分に向けて走って来る少女がいた。…バーサーカーたち神民と、この時代の人間達は言葉の疎通ができない。しかし、バーサーカーの必死の叫びが届いたのか、爆弾の雨に気付く少女だったが、時既に遅し。バーサーカーは駆けだしていたが、間に合わない。声にならない声で、最愛の娘の名を叫んだ彼の目の前で、視界が光に埋め尽くされる。

 

 

 

目を覚ましたバーサーカーが瓦礫の中から這い出し、目にしたのは。

 

 

爆撃で散々破壊され火の海となった跡地と、瓦礫に潰されている、自分よりも圧倒的にか弱いながらも、神々に怒りを抱き自分の生き様を見届けようとしていた少女の亡骸だった。

 

 

 

 

声にならない怒りの声を上げ、慟哭するバーサーカー。それは怒りではなく、悲痛の叫び。

 

怒のマントラが溢れだし、雷と炎の光柱が立ち上り、その余波だけで戦艦群のほとんどを跡形も無く、破壊して行く。

 

 

そして、姿を現したバーサーカーは腕を取り戻しながらも漆黒に染まった肉体を炎で照らし、悪鬼の如き面で戦艦群を睨みつける・・・異形の姿「否天」へと変貌していた。

 

六天金剛とは違う、怒のマントラで形成された巨大な四つの剛腕を顕現し、慟哭の絶叫を上げながら圧倒的な怒りの弾幕の嵐を持って、戦艦群を殲滅して行くバーサーカー。

 

その姿はまさしく、狂戦士。だけど私には。怒りに燃えているようにしか見えない悪鬼の面なれど、涙を流しているように見えた。

 

 

『世界を焦がす優しさ』

 

それこそ彼にぴったりの言葉。バーサーカーは誰よりも、優しい男だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたぞ。起きろ、マスター」

 

「ん…おはよう、バーサーカー」

 

 

そこで目が覚める。最近の夢は、バーサーカーの「物語」を彼視点で見て来たが…今のが一番きつい。私と同じで、手も足も出ず守れなかった命。マスターにサーヴァントは似るって言うけど、あながち間違いでもないらしい。でも一つ確信できる。バーサーカーを、「否天」にする様な事態には絶対にしてはいけない。

 

結局、私とバーサーカーは柳洞寺に手出しができず、その足で教会に戻った。衛宮邸に行ってもよかったのだが、昼間出会ったあの『M』と名乗った男について父さんと王様に相談しようと思ったからだ。

 

 

「ただいま、王様。父さん。…?」

 

 

…それになにより、嫌な予感があった。そしてその予感は、的中していた。

 

 

「父さん!?王様まで!」

 

 

父さんが、右腕が潰され頭から血を流した姿で気を失い長椅子に倒れていたのだ。その前の席には恐らく父さんを運んで来たのだろう、私服姿の王様が珍しく肩を上下させながら背もたれに圧し掛かっていた。私とその側に立つバーサーカーに気付き、あくまで余裕を保った笑みを浮かべてこちらを向く王様。

 

 

「ああ…クロナ、帰ったか。安心しろ、(オレ)も綺礼も、命に支障はない」

 

「でも…」

 

 

慌てて奥の部屋に行き、タオル、洗面器、包帯他手当のための道具をかき集め、バーサーカーに父さんを自室のベッドまで運んでもらい、応急手当てをしてから私は王様の元まで戻り、問答無用でその上着を引っぺがす。

外面からは分からないが、私には分かった。案の定、王様の胸部には深い切り傷があった。

 

 

「王様…これ、どうしたの?」

 

「なに。慢心が過ぎて油断してしまっただけだ。この程度、腹の中が焼け付く様な不快感があるだけだ」

 

「それ駄目な奴。大人しく手当されて、王様」

 

「…分かった。そこまで言うなら仕方があるまい、(オレ)を治療する事をお前に命ずる」

 

「はいはい。バーサーカー。王様の部屋までお願い」

 

「応ッ」

 

 

戯言を抜かす余裕がある王様を私は問答無用で突き倒し、バーサーカーに言って運ばせる。王様は珍しく、黙って運ばれて行った。…父さんも一緒の部屋に置いて治療した方がいいかな。それと一応凛にも伝えとこう。私は一応聖杯戦争の監督役の娘なのだから、冬木のセカンドオーナーである彼女には知らせる義務がある。

 

 

「あ、凛?ちゃんと電話に出れた?」

 

『う、うっさいわね!ランサーなんかの力を借りなくても普通に使えるわよ!』

 

「あっ…(察し)。とりあえず報告、アサシンの本拠地はやっぱり凛の言う通り柳洞寺だった。対策を考えなくちゃ。それと・・・父さんが何者かに襲われて重傷を負った」

 

『え、あの綺礼が!?…生きてるの?』

 

「命に支障はないから大丈夫のはず。とりあえず気を付けて、一応貴方とは共闘戦線にあるんだから」

 

『分かったわ。そっちも気を付けなさい』

 

 

・・・でも、王様があんな深い傷を受けるなんて尋常ではない。あの服を見るに、多分戦闘は鎧姿で行われたのだろう。でもあの鎧を貫く刀剣とその使い手など、私の知る限りは少ない。その代表たるマスターソードを有するセイバーか。それとも色んな姿を持つアサシンか…もしかしたら生きている可能性があるキャスターかもしれない。あの男の出鱈目さならありうる。

それでも、王様がやられたと言う事実ははっきり言って、有り得ない事なのだ。そもそもこの聖杯戦争に参加しているマスターと英霊は私とバーサーカーを除いて王様の存在を知る事も無いはずだ。最初から知っているとしたらそれは……………

 

 

一人、いる。Dr.『M』と名乗ったあの男だ。平行世界から来たと語ったあの男なら、王様の存在を知っていたあの男なら、何かしら対策を手に王様と父さんにここまでの傷を与える事も難しくないはずだ。

でも、何で二人を・・・監督役と、八人目のサーヴァントに何か不都合でもあるのか?

 

暗躍するとか言っていたのはこういう事か。よりにもよってうちの父親二人に手を出すとは。片方は意識さえ回復すれば無駄に得意な治癒魔術で何とかなるし、もう片方は魔力さえあれば何とか回復するだろう。それでも王様の方は時間がかかるだろうが。

 

 

「…全快するまでよくて三日、か」

 

 

…三日も王様が動けない。その間に、あの得体の知れない白衣の男が何かしたら・・・どうすればいい?王様にまで重傷を負わせるあの男に対し、私が何かできるとは思えない。…バーサーカーでもやられる可能性があるのだ。できれば関わりたくない。

どうしたものか…そう考えながらバーサーカーに包帯を持たせて王様を頼み、父さんの部屋に入ると、父さんは上半身を起こしてこちらを相変わらずの死んだ目で見つめていた。

 

 

「…クロナ。少しいいか」

 

「父さん。大丈夫?」

 

「これが大丈夫に見えるのか、お前は?」

 

「…父さんなら治癒できるでしょ」

 

「その通りではあるがな」

 

 

何が可笑しいのかクククッと笑う養父。怪我してなければ殴っているところだ。王様だったら問答無用で麻婆を流し込んでたかな。

 

 

「…さすが我が娘だ。我々が動けないと言うのにまだ余裕があるらしい。それで、一つ聞きたいのだが…」

 

 

正直言ってかなりびっくりして余裕はまるで無いんだけども。バーサーカーがいなかったらベッドにまで持って行くこともできなかったよ。…愛情は求めてないけど育ててくれた恩は感じてるから、あの医者絶対潰す。

 

 

「バゼット・フラガ・マクレミッツについて何か覚えはあるか?」

 

「バゼットさん?…知らないけど」

 

 

バゼットさんってアレだ。以前訪ねてきた、父さんの元同僚(?)で…父さんが既婚者だと知った上で好意を持っているように見えた人だっけ。それで、執行者で魔術師でもあって、現存している宝具を所有している珍しい一族だっけか。それがどうしたんだ?

 

 

「…お前には教会の者として言って置くが、彼女は本来この第五次聖杯戦争に選ばれた七人目のマスターだった。それが、聖杯戦争が始まる一週間前に私のところに連絡をよこした後、この冬木で消息を経ったのだ」

 

「バゼットさんが行方不明?」

 

 

・・・あの人がそんな簡単にやられるタマかね?多分物理戦だったら父さんに圧勝できると思うんですがそれは。それにあの宝具、後で王様に見せてもらったけど正直言って初見殺しにも程があるから心配はいらないと思うんだけど。…もう聖杯戦争が始まって四日ぐらい、つまり合わせて11日も行方不明って事か。なるほど、一応友人だし父さんでも心配するのが良く分かる。…あれ、何か引っ掛かるな。

 

 

「…もしかして、それがその怪我の原因?」

 

「…その通りだ。行方を知っていそうな輩がいたのでな、監督役として力づくで聞き出そうとしたらこの様だ。どうやら私も老いたらしい」

 

「そりゃ現役時代と比べれば…」

 

 

第四次聖杯戦争の父さんは何かすごかったらしいと王様から聞いている。令呪のストックを手に入れた最終決戦だと、もう何か人間超越していたんだとか。いくら老いたと言っても、父さんに勝てる人なんて早々いない。多分、あのイフが相手でも真っ向勝負なら父さんが勝つだろう。だとしたら、そんなことができるのは…

マスターだったはずの魔術師が行方不明になった。そんな話をつい最近聞いた気がする…それは。

 

 

「…もしかして、白衣の男…キャスターのマスター?」

 

「! 知っているのか?」

 

「街中で出会って話した。その時、まだサーヴァントを召喚していないマスターの一人から令呪を奪い取ってキャスターを召喚したとか言っていた」

 

「なるほど。話せない理由はそれか。監督役として、見過ごす訳には行かないな。ここは第四次と同じく、キャスター討伐と言う名目でマスターたちに潰してもらいたいところだが…」

 

「…その正当な理由がない以上、監督役は手出しできない。そうでしょ?」

 

「ああ。キャスターは倒されていないとはいえ、状況証拠のみだからな。一般人に手出ししたのも、証拠が無い以上は…」

 

 

今のところ、キャスターの仕業だって分かるのはあのテレビで放送していた一家惨殺事件ぐらい。後はアサシン陣営の集めた魔力を横取りしていたらしいし…ちょっと待った!

 

 

「え?…キャスターは、倒されていない?」

 

「ん?ギルガメッシュからそう聞いているが?」

 

 

マジか。あの対国宝具を生き延びたと言うのか。てか王様見てるなら手助けしても…私が拒んだんでしたね、分かります。

 

 

「…そう言えば倒されたとか『M』は一言も言ってなかった…」

 

「先入観に乱されたか。若いな、ごふばっ!?」

 

 

思いっきりハイキックを叩き込んでやる。いつもなら効かないが今なら効果抜群だろう。老いて油断してやられた人に言われたくないんですがそれは。

 

 

「…父さんは休んでいて。父さんの友人だし、私が聖杯戦争のついでにバゼットさんを見付ける」

 

「いや、休むどころか今死にそうなんだが…」

 

「父さんの日頃の行いが悪い」

 

「クロナが悪いと思うのだが?」

 

 

・・・・・・・・・いや、やっぱりいつも私をイライラさせる父さんが悪い。八つ当たりしてもいいじゃないか。

 

 

「…気を付けるのだぞ?最悪、バゼットは生きていない可能性もある。あの男を侮るな、奴は…」

 

「魔術師じゃ無くて科学者、でしょ。知ってるよ。…でも、私には勝機がある」

 

「いや、それもだが奴はエクスカリバーを使う、と言いたかったのだが」

 

「…はい?」

 

 

いや待って。それは待って。それって、あの憎き第四次キャスター、ジル・ド・レェの召喚した巨大怪獣的な何かを跡形も無く消し飛ばした世界で一番有名な宝具?確か以前聞いた話だと、あの未遠川を蒸発させたんじゃなかったっけ?そして何より、衛宮切嗣の命で顕現した聖杯を破壊した対城宝具・・・それを持ってるのあのヒゲ?…いや、さすがにそんなの喰らったら私の即席壁じゃ通用しないんですが。普通に死んじゃう。

 

バーサーカーでも原型を留められるかどうか。…いや、確か伝承だとあのヴリトラの砲撃に耐えれたんだから行けるか。宝具使えば。…宝具使えば。大事な事なので二回言いました。バーサーカーの宝具は正直言って使いにくい。

通常形態で使えるのは両腕失った状態じゃないと使えないし。後は強化形態か暴走形態だ。酷いのなら地球より大きくなれるのがうちのバーサーカーなのだ。いや、今のバーサーカーは使えないけど。そんなことしたらさすがに私が魔力切れで死ぬ。いくら【怒のマントラ】や【憤怒】があっても死ぬ。地球級は無理。魔力回路が私以上に膨大なアインツベルンでも無理だろう。

結局、私はエクスカリバーなんて使われたらどうしようもない。

 

 

「何の冗談?魔術師じゃ無くて科学者だったはずだけど?」

 

「冗談ではなくな。ギルガメッシュが「雑種程度が握っていい剣ではないわ」と言うぐらいだ、本物と同等の物なんだろうな。道具を使った魔術に見えたが」

 

「…それは気になる話」

 

 

つまり、あの男は下手すれば王様みたいに複数の宝具を持っている事になる。そうなると、はっきり言って勝ち目はない。王様の疲労度から多分、王様と剣で渡り合ったのだろう。切り傷だったし間違いない。

でもそれはそれだ。要は、奪い取ってしまえばいい。英霊の持つ宝具を奪うのはさすがに無理だけど、魔術師から宝具・・・というか魔術道具を無理矢理改造して奪うのは可能だ。凛の宝石魔術や第四次聖杯戦争に参加した時計塔の魔術師は水銀を使っていたらしいので天敵と言える。やろうと思えばアインツベルンのホムンクルスや、間桐の蟲だって奪い取る事が可能だ・・・と以前、父さんが説明していた。

 

私の改造魔術は、そう言う魔術に対して最強のアンチだ。ただし単純に物理が強い奴(父さんとかバゼットさんとか)や炎や水みたいな触れられない物体に対しては滅法弱いし、対象に意思がしっかりあると改造できない。アインツベルンのホムンクルスはほとんどが意識が軽薄で命令に忠実な人形だし、蟲は本能と直結しているから簡単に奪えるがしかし、人間や動物、さらに言えば我が確立している英霊に対しては何もできないのだ。

 

 

「とりあえず父さんは休んでいて。どうせキャスターやアサシンみたいな危険分子はすぐには動かないだろうし、私は一応アーチャー、ライダー、ランサーの陣営と協力関係にあるから警戒すべきはアインツベルンと『M』のみ。バゼットさんを捜せると思うから」

 

「くれぐれも怪我をしない事だ。ギルガメッシュが五月蠅いからな」

 

「分かってる」

 

 

あの人は父さんに比例してかなり過保護だ。私が王様に今回、「第五次聖杯戦争は私とバーサーカーだけで勝つから手出し無用」だとか言ったのは、かなり確信して王様が私のためにやり過ぎてしまうと思ったからだ。助言だけで済ましてくれている今はちょっと安心していたりする。

 

幼少期、トラックに轢かれそうになってそれを王様が【天の鎖】で助けてくれた事があった。あの時はトラックが拉げて、その鎖が王様にとって思い入れ深い物だと知っていた私は謝ったが、王様は安心させるように私の頭を撫でながら「貴様が死ぬぐらいなら我が友を使うべきであろう。クロナが嫌う殺人を避けてお前を救うにはこれしか無くてな?なに、気にするな。王の気紛れよ」と言って微笑んでいた。

…あの時は素直に「王様かっこいい!」とか思っていたが、大きくなって王様の伝承を知ったら【天の鎖(エルキドゥ)】を使わせてしまったと気が引けたものだ。私程度のために使うのはやめてほしい。愛がちょっと重いです王様。少し理知的になってください。独断行動ができるアーチャーじゃ無くてキャスターとかで。

 

 

 

 

 

 

 教会の外に出て、一息吐く。…今日だけで『M』との邂逅、彼から明かされた士郎とアーチャーの謎、アサシンの本拠地発見、王様と父さんの負傷、バゼットさん行方不明…色々ありすぎじゃね?まあアサシンの本拠地には手出しできないし、最優先はバゼットさんの捜索だ。恐らくキャスターに関しての情報を握っているはずだ。できれば、キャスターを倒した唯一の武器と呼ばれる「龍剣」を所持していて欲しい、楽に勝てる。

 

…いやまあ、生粋のクーフーリン好きの彼女がそれ以外の聖遺物持っているとは思えないが。もし凛がランサーをクーフーリン以外で召喚したらキャスターのクーフーリンが見れたのかね。そしたら楽だったのになぁ…ゲイボルクを持っていないならバーサーカーで勝てる目処があるし、何より一番の強敵であるキャスター・・・アー・シン・ハン皇帝がいなかったはずなのでかなり楽になったはずだ。……いや、バゼットさんが敵に回らなくてよかったと、そう思う事にしよう。

 

 

「おい、マスター」

 

「バーサーカー、どうしたの?」

 

 

扉を開け、出てきたバーサーカーは警戒している様子で、私は襲撃だと察して黒鍵を構え身構えると、バーサーカーは続けて信じられない事を言い出した。

 

 

「気配を感じた。会った事もないサーヴァントだ」

 

「え?…サーヴァント一人だけ?」

 

「ああ。構えろ、来るぞ…!」

 

 

いや待て。…バーサーカーが会った事も無い(・・・・・・・)サーヴァント?それはありえないだろう。バーサーカーは、王様も含めた己以外のサーヴァント、七騎全員と対決している。それなのに、会ったこともない?…アサシンか?いや、アサシンが単独で来るはずがない。キャスター戦でイフが負傷した上に、彼女自身も傷を負っていた。いくら集めた魔力で回復したからと言って、彼女にとって一番戦いたくないはずのバーサーカーに馬鹿正直に突っ込んでくるか?答えはNOだ。それにここに向かっていると言う事は交戦する気なのだろう。

 

・・・しかしだ、ライダーみたいな例外を除外して、マスターから離れて単独戦闘できるサーヴァント何て、限られている。そう、「単独行動」スキルをクラス別スキルとして持つアーチャーだ。そして現在、現界しているサーヴァントでアーチャーは二騎・・・王様と、士郎のアーチャー。しかし王様は負傷し、士郎のアーチャーは未だに魔力切れで姿を見せる事も出来ない。つまり。

 

 

「三人目の、アーチャー・・・?」

 

 

それを認識した瞬間、「強化」した視界に赤い外套を捉え、教会の正面に立っていた私ができた事なんて、決まっていた。黒鍵を複数取り出して改造したそれを目の前の地面に向けて投擲。

 

 

Become a shield sword of fury.(怒りよ、剣の盾となれ)!」

 

 

巨大化させて剣の壁を作った瞬間、私に向けて放たれた捻じれ狂った剣(・・・・・・・)が衝突。大爆発を起こして即席の防御壁を破壊し、吹き飛んだ私を受け止めたバーサーカーごと教会の扉に叩き付け、私達は扉を破壊して礼拝堂に転がる。バーサーカーのおかげで軽傷で済んだ。…狙撃。しかも今の爆発は宝具を意図的に破壊してその神秘を解放する壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)だ。

 

 

「やらせるか!」

 

 

続けて放たれた第二射を、掴んで受け止め外に投げ飛ばして爆発させるバーサーカー。サーヴァントが戦っちゃいけないルールな非戦地帯である教会で暴れるなんて、何のつもりだ。

 

 

「バーサーカー、そのまま防いで!私が仕留める」

 

「おうっ!」

 

 

私はマフラーを改造して純白の弓を作り、黒鍵矢を番えて引き絞り、今も尚第三射、第四射とバーサーカーに防がれている剣の宝具と思われる矢を放ち続ける敵を見据える。

それは、黒い弓を装備した、紅い外套と黒いボディーアーマー、白いマフラーを着込んだ、白髪をオールバックにしている浅黒い肌の男だった。

まさか、本当に私達の知らないサーヴァント…!?なんで、聖杯は確か、七騎までしか召喚できないはずだし、第四次聖杯戦争の生き残りでも、アーチャーは王様だ。正体不明の敵、なんだけど…彼を見て、親しみを持ってしまったのは、理由の分からない怒りを抱いてしまったのは何故なんだろう?

 

 

「―――Tell my anger in an irrational world.(理不尽な世界に我が怒りを伝えよ)

 

「―――I am the bone of my sword.(我が骨子は捻じれ狂う。)

 

 

私の改造黒鍵矢と、似た様な形状の剣の矢を番え、同じように詠唱しながら引き絞る赤いアーチャー。その姿は、数か月前まで私が弓道部部長だった頃、あまりにも綺麗で弓道部の誰よりも上手かったある少年の構えを彷彿とさせて。

 

 

「―――抉り破る螺旋の刺突剣(イリマージュ・カラドボルグ)!」

 

「―――“偽・螺旋剣”(カラドボルグⅡ)!」

 

 

螺旋を模った剣が同時に放たれ、衝突して大爆発を起こす。怯む私とバーサーカー。それは分かりやすいまでの大きな隙であり、しかしそれは間違いなく、相手の技量による結果で。

 

 

 

「…悪いな、クロ姉」

 

「ッ、クロナ!」

 

 

爆発に紛れてバーサーカーの横を潜り抜けた赤いアーチャーは、その手にデフォルメした雷の様な歪な刃の短剣を投影(・・)して私の前に立っていて。バーサーカーがこちらに向けて走り手を伸ばそうと試みるもそれは、あの夢に出てきた少女の様に私には届かず。

 

 

「―――投影、開始(トレース・オン)。【破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)】!」

 

 

私の胸に、「あらゆる魔術を初期化する」宝具の贋作が突き立てられ、鮮血が舞うと同時に彼の、私を安心させるような寂しい笑顔と、私の右手から彼の左手に移植されていく蜘蛛の様な形状の令呪が見えて。

 

 

聖杯戦争に敗北したと悟った私は、そのまま意識を失い、力無く崩れ落ちた。




説明多すぎてちょっと長くなりました。バーサーカーにおんぶされるクロナ、どう見ても親子。

紅いアーチャー「ルールブレイカー!」
メディアさん「それは私の台詞です!」

そんな感じでクロナ脱落、三人目のアーチャー登場。どうして召喚されたのか、マスターは誰なのか…そして彼の正体は!…白いマフラー付けてる時点でお察しの方もいるんじゃないかと。

バーサーカーにとってのトラウマ、目の前で救えなかった少女。…仮面ライダーにもそんなのいたなとかプレイしながら思った。オルガだけは絶対に許せねえ。オルガマリー所長は助けたい。アスラズラースの主題歌の歌詞の一部なんですが、「世界を焦がす優しさ」ほどアスラに似合う言葉はないかと。

王様と父親がやられて『M』をボコる事を決めたクロナさん。しかしエクスカリバーは怖い模様。怨敵を倒した宝具とはいえ、アレを敵に回すとか普通したくないです。


次回。傷付くクロナ、怒るバーサーカー。その結果とは、紅いアーチャーの目的は。


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