Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争   作:放仮ごdz

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お待たせしました。今回は言峰VS『M』、さらにギルガメッシュがついに動きます。そろそろアスラを暴れさせたいなぁ…

あ、イシュタ凛さんGETしました。ジャンヌ、沖田さん、ナイチンゲール、オリオンに次ぐ☆5なので歓喜したのは言うまでもない。七章が楽しみですね。


※一応注意。今回の話はFate/GrandOrder第六章のネタバレが在ります。それでもよろしければご覧ください。
楽しんでいただけると幸いです。


#15:記憶よ、輝ける銀腕となれ

路地裏で睨む合うのは、黒と白。片やカソックを身に纏い黒鍵を手にし八極拳の構えを取る死んだ目が特徴の男、言峰綺礼。相対するのは白衣と黒い手袋を身に纏い自然体で佇む好奇心しか感じ取れない目と髭が特徴の男、Dr.『M』。聖杯戦争の監督役と、キャスターのマスター。本来ならば戦うはずもない立場の者達だ。

 

 

「来いよ。知りたいなら、吐かせてみろ」

 

「・・・いいだろう」

 

 

瞬間、黒鍵を投擲し突進する綺礼。『M』は黒鍵を右腕で上方に弾くと、懐に飛び込んできた綺礼に左腕でボディブローを叩き込み、逆に殴り飛ばしてしまう。「強化」した上に元々魔術防御がなされているカソックでダメージを最小限に受けた綺礼は壁を蹴り上空に上がるとさらに取り出した黒鍵六本を雨の様に投下。右腕と左腕で防御する『M』の真正面に着地すると、ガラ空きの腹部に向けて拳を叩き込んだ。

 

 

「がっ!?」

 

「・・・その程度か」

 

 

さらに足に蹴りを叩き込んで体勢を崩し、続けざまにアッパー。吹き飛び、仰向けに倒れ込むも血を少量吐きながら、それでも立ち上がり不敵に笑む『M』。その様子に狂気を感じた綺礼は後ずさる。

 

 

「・・・お前は一体何なのだ?」

 

「なぁに・・・お前と同じ、ただの狂人だよ!」

 

「っ・・・!?」

 

 

魔術を使ったのか人間とは思えない、もはやロケットとも言うべき高速で突進してきた『M』の拳を、辛うじて右腕で受け止める綺礼。しかしいとも簡単にカソックの防御を貫いて叩き折り、折られた右腕に顔をしかめた神父はバックステップで後退。

 

 

「おっ、いい物があるじゃねーか。ここからは俺の独壇場だァ!」

 

「なに・・・?」

 

 

するとその様子に満足したのかコキコキと首を鳴らした『M』は、その辺に転がっていた鉄パイプを手に取るとにやりと笑い、カラカラと先端をアスファルトに引き摺って音を立てながら綺礼に迫った。

 

 

「どうしたァ!やっぱり全盛期より弱体化している様だなァ!」

 

「グゥ・・・ッ!」

 

 

連撃。何の変哲もない、綺礼の目をもってしても魔術を掛けたとは到底思えない鉄パイプの打撃が、カソックの防御を貫いて防御の構えを取る綺礼にダメージを与えて行く。有り得ないその状態に疑問が浮かび上がり、何もできず押されて行く綺礼。肉弾戦で押される事など、10年前の衛宮切嗣との決戦以来。

 

 

「・・・そうか、私も老いたな」

 

 

その記憶を引き出した綺礼はフッと笑みを浮かべると折れた右腕を思いっきりスイングして鉄パイプを弾き飛ばしたばかりかそのまま『M』の顔面に遠心力を増した拳を打ち込み、その一瞬の隙を突いて肉薄。左拳を突き出し、彼独自の人体破壊術である、渾身の八極拳を叩き込んだ。

 

 

「・・・全盛期の拳に比べたら全然だな、ククッ」

 

「治癒魔術・・・?!」

 

 

しかし内蔵が破壊されたはずの『M』はビクともせず、笑みを浮かべると共に頭突きで距離を放すと鉄パイプをフルスイング。自身が得意とする治癒魔術で回復されたと考えた綺礼は、それを折れた右腕で防御するもミシミシと嫌な音が鳴り、次の瞬間大きく吹き飛ばされていた。刃が無い状態の黒鍵をばら撒き、崩れ落ちる綺礼。もう右腕は完全に使い物にならず、頭からも血を流している。

 

 

「残念ながら俺は特別頑丈なんだ、魔術なんか使ってもいねーよ」

 

「馬鹿な・・・魔術も使わずに、どうして耐えれる・・・?」

 

「生憎と、俺は全盛期のアンタの拳を受けた事があってな。あの時は死ぬかと思った、だから自分の肉体を改造したんだ。俺は魔術師じゃない、科学者だからな」

 

「科学者・・・だと・・・?」

 

 

ある意味最も未知の敵。綺礼は立つこともできず蹲り、『M』はそれを見下ろしていると左手を突っ込んだ懐から何やら剣の様にXが描かれた大きめのUSBメモリらしき物体を取り出すとボタンを押し、右掌に出現した穴にメモリを挿入。

 

 

『Excalibur!』

 

「せっかくだ、アンタに見せてやるよ」

 

 

するとその右手に魔術回路が浮かび、その手に青と金で彩られた幻想的な美しさを持つ剣が具現化した。それを見て目を見開く綺礼。その剣には、黄金に輝く剣身には、見覚えがあった。忘れるはずもない、仇敵のサーヴァントが所有していた聖剣・・・その名も。

 

 

「【約束された勝利の剣(エクスカリバー)】・・・いい出来だろ?」

 

「ば、馬鹿な・・・アーサー王以外が、その聖剣を有するなど・・・」

 

「本当の綴りだと【E】で【X】じゃないんだがな、気にするな。しかもこれはな、ただの【約束された勝利の剣(エクスカリバー)】じゃない。ありとあらゆる可能性を凝縮した、オリジナルの聖剣以上の代物だ。豪華に死ねるんだ、ありがたく思え」

 

 

万事休す。鉄パイプだったらまだ何とか反撃を行なえたかもしれないが、目の前の男が持つのは間違いなく宝具、それも最も有名な聖剣だ。自分が成す術もなく真っ二つにされる未来を幻視してしまう綺礼。振り上げられる聖剣を前に、一矢報いようと『M』に見せないように無事な左手で黒鍵を構え、振り下ろされようとしたその瞬間・・・!

 

 

「我が庭で随分と好き勝手しているな、(オレ)の元マスターに手を出すとはどうやら死にたい様だ。それに、雑種如きが持ってよい剣ではないわ!」

 

「おでまし、だな!」

 

 

真上から襲う黄金の剣を、エクスカリバーを振り上げ斬り飛ばす『M』。弾き飛ばされた剣は綺礼の目の前にコンクリートを破壊しながら突き刺さり、『M』は上空を見上げる。そこにはヴィマーナに搭乗し頬杖をついている、黄金の甲冑を身に着けた人類最古の英雄王が冷たい視線で見下ろしていた。

 

 

「よう、英雄王様。この世界では初めましてだな」

 

「・・・雑種よ、一つ聞かねばならぬことがある。一体何をした?我が慧眼を持ってしても、つい今し方、その剣を手にするまで貴様の存在すら認知できなかった」

 

「そりゃ俺がアンタを拒絶していたからだろ?生憎、俺は誰かの下にいるのが大嫌いでね。アンタに見つからないように言峰黒名に接触するのは骨だったぞ」

 

「・・・よりにもよってクロナにまで手を出すとは・・・そんなに死にたいなら王の手ずから冥土に送ってやろう!」

 

「いいぜ、相手してやるよ。風王鉄槌(ストライク・エア)!」

 

 

そう叫ぶと風の鞘を纏い一瞬だけ不可視の剣となった聖剣を両手で振り被り、地面に叩き付ける『M』。

 

 

「なにぃ!?」

 

「ギルガメッシュ!?」

 

 

すると聖剣から解放された風の鞘が渦を巻いて竜巻が発生し、ギルガメッシュをヴィマーナごと巻き込み、自身もそれに乗って、綺礼を残して共に吹き飛ばされて行った。

 

 

 

 

 

 

ギルガメッシュと共に落ちたのは、冬木大橋だった。ギルガメッシュにとっては、10年前とある決着をつけた場所であるそこで、彼は目の前に立つ白衣の男に憤慨していた。

 

 

「ここなら被害を考えずにやれるからな。相手してもらうぜ、英雄王様」

 

「天を仰いで見やるべき(オレ)を地に立たせ、さらには剣を向けるか・・・もはや肉片すら残さぬぞ!」

 

 

ギルガメッシュの背後に展開する、いくつもの黄金の波紋。しかし白衣の男は動じず、聖剣を手に踏み込み跳躍、一気に英雄王との差を詰める。そして放たれる宝具の嵐。道路を削り、柱を抉り、空気の壁まで裂いて襲い来る暴力の渦に、『M』は真っ向から衝突。次々と聖剣で斬り払い、致命傷になる物だけを捌き、傷を受け衝突の勢いに押されながらも徐々に距離を縮めて行く。

剣一本で、人類最古の英雄王の猛攻を防ぐその姿は圧巻の一言。埒が明かないと思ったのか、ギルガメッシュは波紋を『M』をドーム状に囲む様に展開、地面以外の全方向から同時に射出した。

 

 

「いい加減、(オレ)の前から失せろ!雑種ゥ!」

 

「さっきみたいに風王鉄槌(ストライク・エア)じゃ防げないか…ならばっ!」

 

『Bly!』

 

 

エクスカリバーを光の塵にして消し去り、その手にXと書かれたメモリを出すと懐に仕舞い、代わりに取り出したBと書かれた黒紫色のメモリのボタンを押し、掌に突き刺した『M』はぼそっと呟く。

 

 

「―――I am the bone of my Demento.(この身は狂気で出来ている)

Poison is my body,and fire is my blood.(血潮は毒で、心は硝子)

I have created over a thousand blades.(幾たびの戦場を越えて不敗)

Unaware of Satisfaction.(ただの一度も満足はなく)

Nor known to Life.(ただの一度も理解されない)

He's always alone.(彼の者は常に独り)

There's nothing hollow Hill.(何もない虚ろな丘で)

Have withstood Demento.(狂喜に酔う)

Yet, those hands will never hold anything.(故に、その生涯に意味はなく)

My whole life was.(この体は、)

―――――"BLY・MaximumDrive" (きっと狂気で出来ていた)

 

 

瞬間、『M』の体から妙な圧が発生し、風となって宝具の雨を弾き飛ばした。辺りを破壊しながら散らばる自身の宝具群を見やり、波紋を出現させて回収しながらそれに気付いたのか不服そうに唸る英雄王に、『M』は「してやったり」とでも言いたげな笑みを浮かべた。

 

 

「…なるほどな。俺の眼を逃れた理由はそれか」

 

「ああ。俺の作った宝具の様な物だ。『拒絶』の記憶だ、ありとあらゆるものを拒絶する。今のは俺の魔術回路を起動してそれを媒体に魔術として使用しただけだ。英雄王、アンタに一矢報えて嬉しいよ。前のアンタにはボッコボコにされたからなぁ…良く生きてたな、俺」

 

 

愉しいのか「ククククッ」と不気味に笑う『M』。ギルガメッシュは腕組みしながら眉を吊り上げ、手の傍に出現した波紋から絶対に折れないと言われる名剣「デュランダル」を取り出し、刃を撫でながら睨みつける。

 

 

「合点が行ったぞ。貴様、世界の外から来た異物か。目的はなんだ?(オレ)の所有物たるこの世界に害を成そうと言うのなら、見逃すわけにはいかぬ」

 

「はっ!やれるのか?お前が一瞬見せた本気も、俺の小手先には通じないんだぜ?」

 

「…調子に乗ってくれるなよ?(オレ)宝物(ほうもつ)に手を出した罪は重いぞ!」

 

「っ!」

 

『Excalibur!』

 

 

デュランダルを手に珍しく自分から突進してくる英雄王に、咄嗟に右掌からBのメモリを射出して代わりにXのメモリを挿入した『M』はエクスカリバーを顕現して受け止め、弾き飛ばすがしかし、その重さに手が痺れたのか初めて余裕の笑みが消えた。

 

 

「どうやら剣の扱いならば(オレ)の方に分があるようだな!『拒絶』できるものならするがよい、雑種!」

 

「ちっ!俺は剣士じゃなくて医者なんだよ!拳で魔獣と殴り合える英雄様と一緒にするな!てか馬鹿正直に王の財宝使えよこの阿呆!」

 

(オレ)自ら剣を握ってやってるのだ!ありがたく受けよ!」

 

「ざけんな!」

 

 

エクスカリバーを片手持ちから両手持ちに切り替え、的確にギルガメッシュの剣戟を受け止めて行く『M』は吠えるが、ギルガメッシュの方はまるで玩具を見付けた子供の様に笑いながら攻撃の手を止めず最早災害と言ってもいい剣戟が橋の上で轟音を轟かす。

これが本物の英雄と、自称医者の圧倒的な差。技量も、力も、速度も、魂の質も、例えサーヴァント(分体)の身であってもその差は縮まらない。しかしこの『M』と名乗る医者、そう簡単には沈む男ではない。

 

 

「なら…【無銘勝利剣(ひみつかりばー)】。これで行こうか!」

 

「…む?」

 

 

ギルガメッシュの振り上げ斬撃を受け止めて大きく弾き飛ばされた『M』はエクスカリバーを右手に逆手持ちし、左手を突き出した。すると赤黒い光と共に、左手に顕現したのは赤と黒に彩られているがエクスカリバーと瓜二つの聖剣。眩く金とどす黒い赤。二色の星光を剣身に溜めて逆手持ちし、それを魔力放出の応用で加速。一気にギルガメッシュの懐に潜り込むと自ら加速した二剣を次々に高速で叩き込んでいく。

 

 

「皆には内緒だ!エックスカリバー!」

 

「小賢しい!」

 

 

ギルガメッシュも新たに取り出した、エクスカリバーと対を成す竜殺しの魔剣、グラムとデュランダルで対抗し受け止めて行く。神速と神業。ドドドドドドドドドドドドドッ!と剣がぶつかっただけでは響かないだろう轟音が轟き、彼等を中心にアスファルトが砕け散って行く。そして、

 

 

ガキィン!

 

「なにぃ!?」

 

 

鈍い音と共に、『M』の手に握られた二剣のエクスカリバーが粉々に砕け散った。ありえないことなのか、驚愕する『M』に、好機と見たギルガメッシュは一歩引き、波紋を一つ出現させて槍を一本音速で射出した。

 

 

「糞がっ!」

 

 

それを紙一重で体を捩り避ける『M』。しかしギルガメッシュは二剣をしまい、腕組みして【王の財宝】を複数展開。次々に宝具が放たれ、先程弾いた魔術が使用できないのか逃げに徹する『M』は一直線に顔に向けて飛んで来た黄金の砲弾を右手の裏拳で弾き飛ばした。その様子を見て確信したのか嘲笑するギルガメッシュ。

 

 

「なるほどな。貴様、本質は贋作者(フェイカー)だな?あの聖剣も、地球(ほし)の記憶とやらを使い再現しただけにすぎぬ。先の「拒絶」とやらも常時使用できるものではない。大方、手順があるのだろう?さらに言えば、貴様の体。半分以上は生身ではないな?義手、義足、いやそれ以上か。あの綺礼の拳を受けて立っていられたのも、サーヴァントと真っ向から張り合えたのも、それあっての物。貴様は魔術師ではない、小細工が得意な手品師だな。

しかし、人類最古の英雄王たる(オレ)に数秒でも張り合えるだけ上出来だがな、タネが分かれば手品もつまらぬ物よ」

 

「…初見でそこまで見抜いたのはアンタが初めてだ。ああ、その通りだ。俺の手品は道具を使うからな。どうしても一工程で相手に一歩劣る。ちなみに肉体は知り合いのマッドサイエンティストに製造してもらい俺が改造を加えた代物だ。さすがに筋力Aには勝てないがな、アンタ程度の筋力になら対抗できる。まさか接近戦を仕掛けて来るとは思わなかったが」

 

「誇れ、貴様を強者と認めての事だ。慢心せず(オレ)自ら相手してやる。だが(オレ)の宝物たるクロナに手を出した罪は赦せぬ、五体満足で帰れると思ってはおるまいな?」

 

 

再び全方向に波紋を設置し、虫けらを見るような目でそう問いかける英雄王に、白衣の男は自嘲気味に笑った。

 

 

「おう、あの女がアンタのお気に入りって気付いた時点からな。覚悟はできてる。さあ、決着を付けようぜ英雄王。…【記憶よ、輝ける銀腕となれ(スイッチオン・アガートラム)】」

 

 

瞬間、文字通り銀色に染まった右腕を構える『M』。ギルガメッシュは取るに足らないと思ったのか、そのまま全方位から【王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)】を射出。そして。

 

 

「なにぃ!?」

 

「覚えて置けよ英雄王。討っていいのは、討たれる覚悟のある奴だけだ」

 

 

一瞬で、前方の宝具のみを蹴散らして『M』はギルガメッシュの懐に飛び込み、放たれた宝具群が先程まで自分がいた場所に着弾する前に、黄金に輝く魔力で光剣を形成した銀腕の手刀を振り上げた。

 

 

「【一閃せよ、銀の腕(デッドエンド・アガートラム)】!」

 

 

そして鎧を裂き、肉体を大きく斬り裂いた斬撃はそのまま剣圧となって黄金の王を吹き飛ばす。吹き飛ばされた英雄王はすぐに持ちこたえたのか受け身を取り、『M』から20メートル程離れた所で着地。しかしダメージは深刻なのか苦しげに呻いた。

 

 

「どうだ?こいつはエクスカリバーの形の一つだ。この出力に耐えれる様に右腕を改造するのは骨が折れた」

 

「…どうやら(オレ)は貴様を見くびっていた様だ。まさか王の身に傷を付けるとはな。このままでは(オレ)も危うい、ここは潔く退いてやろう。だが分かっておろうな?次遭った時はその命、無い物と思え」

 

「俺だってアンタとは二度と戦いたくねーよ。もちろん、言峰綺礼や言峰黒名・・・アンタのお気に入りにも手は出さねえ。だからって神父の捜しているバゼット・フラガ・マクレミッツの情報を教えるつもりもないからあっちから襲ってきたら返り討ちにするがな」

 

 

なにが可笑しいのか「クククッ」と笑う白衣の男に分かりやすく嫌悪感を顔に出すギルガメッシュ。正直今不意打ちで宝具を撃ち込んだら勝てる気がするが、それはプライドが許さない。この男は真っ向から挑んで勝利せねば気が済まない。

 

 

「綺礼は別にいいが、クロナには二度と手を出すな。あ奴は純粋すぎる節がある、もしアレ以上誑かそう物なら…分かっておろうな?」

 

「はいはい。あっちから接触してこない限りは何もしねーよ。英雄王様の逆鱗には触れないようにするさ」

 

「それなら安心しろ。しっかり(オレ)の逆鱗には触れている」

 

「…そりゃ失敬。じゃあな」

 

 

そう言って橋の縁まで走り、「よっ」と短い掛け声と共に川に飛び降りる『M』。ドボンと水音が聞こえたところから、監視を逃れるために水中に逃げた様だ。

 

 

「…ふん。また(オレ)の目を拒絶したか。あの頭脳、この世界の物でないのが残念でならぬな。…しかしヌァザの神造兵装、アガートラムと来たか。偽物でなければ(オレ)も乖離剣を抜かねばならなかったかもしれぬ。警戒して置いて損は無い、か」

 

 

そう呟くと霊体化し、その場から去るギルガメッシュ。

 

 

 

 

 

数十秒経った頃。男は、白衣を翻して橋の下に捕まっていた手の力のみで跳躍、着地すると一息吐いた。

 

 

「…エクスカリバーを出して川に沈めただけなんだが騙される物だな。さてと、これからどうするか。メディア辺りでもいれば取り入って何時も通り暗躍するんだが…あの皇帝様は下手すりゃ殺されるからなぁ。大人しく帰るとするか。ちっ、つまらん。英雄王と接触したせいで公に動けないのは痛いなこれは」

 

 

 

掌からXのメモリを排出し、それを懐に仕舞って男は帰路に着く。監視の目は多々あるのだが、そのどれも彼を捉えられなかったと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、冬木最高の霊地と呼ばれる円蔵山。その中腹に立つ寺院、柳洞寺に続く階段の踊り場に白いマフラーを身に着けた制服姿の少女と、冬だと言うのに薄着を身に着けた巨漢の男が佇んで見上げていた。クロナとバーサーカーである。

 

 

「…まさかと思ったけど、やっぱりここか。集めた魔力を回収するなら龍脈を使うのが都合がいいもんね。どうやって侵入して本拠地にしたのは謎だけど」

 

「…この階段には何もないが、そこら中の木々に奴の仕掛けの跡がある。結界も張ってあるから力ずくで壊してもいいが、こちらもタダじゃ済まないぞ」

 

「まあ真正面から攻め込んでもいいんだけど…確か無関係の一般修行僧が50人ぐらいいるって聞いてるし、生徒会長の実家でもあるから暴れる訳にも行かない。面倒な所に本拠地を建ててくれたよ、アサシン陣営」

 

 

凛の情報からここだと突き止めたはいいが、何もできない。そんな状況だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「問おう、君が私のマスターか」

 

 

そして、有り得ない第八のサーヴァントが現れた。




今回一番苦労したのはFate特有のなんちゃって英語。クロナの詠唱は基本そのままなので、本気で苦労しました。DEMENTOって名作ゲームを見付けられたのはいい収穫。

しかし鉄パイプで言峰を圧倒して、その拳を受けたのに立っていて、聖剣を使いこなし、英雄王の慧眼さえも拒絶し、王の財宝を真面に受けず、さらには英雄王と互角の勝負を繰り広げたばかりか重傷を負わせるこの男、『M』一体何なんだ。いや真面目に。
ギルガメッシュはしばし退場です。何故って次回からの話は絶対介入して来るから無理やりにでも行動不能にしないと行けなかったんです。

ちなみに【無銘勝利剣】はFGOのアサシン、謎のヒロインXの宝具で、【一閃せよ、銀の腕(デッドエンド・アガートラム)】はFGOのセイバー、ベディヴィエールの宝具です。前者はともかく何故後者が使えたのか?…はいすみません、まだ未プレイの方は本当にすみません。

アサシン陣営の本拠地は原作キャスター陣営の本拠地、柳洞寺。分かっていた方もいるんじゃないでしょうか。では最後に登場したサーヴァントとは?やっと次回からアスラを本領発揮させるための布石です。理由付けが一番大変ですね、はい。

感想をいただけると励みになります。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。

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