Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争   作:放仮ごdz

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お待たせしました。VSキャスター編、終決です。

今回はアーチャーの見せ場回。キャスターのマスターも判明。そして相変わらずキャスター強いです。楽しんでいただけると幸いです。


#13:空の女王の最終兵器

延々と広がる砂漠の固有結界。その主を囲むは六騎のサーヴァント。バーサーカー、セイバー、アーチャー、ライダー、ランサー、アサシン。対するは二つの時代の君臨した皇帝、キャスター。

 

 

「ミスラァアアアアアアアッ!」

 

 

最初に跳び出したのは、バーサーカー。同時に放たれる、矢の雨。否、確実に殺すために放たれた矢の流星群。残りの軍勢もサーヴァントを無視して全員突撃、決着を付けようと波となってマスターたちに襲い掛かる。応戦するマスターたち。武器やら破片やらが吹き飛んでくる中、バーサーカーは拳を叩き付けた。

 

 

「単調な動きだ」

 

 

バーサーカーの拳を受け流し、同時に裏拳で吹き飛ばしてダウンさせるキャスター。

 

 

「「はあっ!」」

 

「速いが、それだけだ」

 

 

その隙を突いて同時に跳び出したアーチャーとアサシンを、先程サーヴァント達の猛攻で吹き飛んで傍に突き刺さっていた陶器兵の槍を引き抜くと薙刀の様に振るって二体を薙ぎ払い、自身の槍を突き出して突進を繰り出したランサーの槍の穂先を上に打ち上げ、槍の柄を頭部に折れる勢いで叩きつけて撃沈。

 

 

「隙有り!」

 

「隙はあえて見せる事も必要だ」

 

 

ランサーが撃沈する一瞬、自身がキャスターの視界から隠れていた事に気付いたライダーが対戦車ライフルを撃ち込むも、キャスターはそれを槍を手放し、腰から抜いた剣で一刀両断。まさか弾丸が斬られるとは思わなかったのか固まるライダーに向け、ちょうど飛んで来た陶器兵の頭部を蹴り飛ばして顔面に強打させて転倒させると、背後から飛び掛かって来たセイバーのマスターソードを振り返り様に剣で受け止め、不敵に笑う。

 

 

「どうした?それでは私を倒した冒険者にも劣るぞ」

 

 

そう呆れたように笑うとキャスターは見る見るうちに獣の姿に変身、剛腕でセイバーを殴り飛ばし、四肢を駆使して突進してランサー、アーチャー、セイバーを纏めて吹き飛ばした。

 

 

「フックショット!」

 

「はあっ!」

 

「師匠直伝、蹴りボルグ!」

 

 

空中に吹き飛ばされた三人はそれぞれ、セイバーがフックショットを背中に打ち込んで鎖を巻き取り高速移動、アーチャーは空中で静止して音速の拳を繰り出し、ランサーは吹き飛ばされた勢いはそのままオーバーヘッドキックで己の槍・・・ゲイボルクを蹴り飛ばし、剣と拳と槍の攻撃が獣の姿をしたキャスターに迫る。

 

 

「無駄だ!」

 

 

しかしキャスターは三つ首竜の姿に変身してそれらを防ぐとセイバーとアーチャーを翼で吹き飛ばし飛翔、着地したランサーと、こちらに向けて攻撃しようとしていたライダーとアサシン、バーサーカーを纏めて体当たりで突き飛ばした。

 

 

「・・・ミスラァアアアアッ!」

 

「ナニッ!?」

 

 

すると、生前から吹き飛ばされるのに慣れていたバーサーカーはすぐさま受け身を取ると大跳躍、キャスターの背に飛び乗ると首を掴んで締め上げ、暴れるキャスターの頭部に目掛けて頭突きを繰り出して叩き落とした。

 

 

「グアッ!?おのれ!」

 

「行くぞォ!」

 

 

叩き落とされたキャスターは獣の姿になりバーサーカーを掴んで投げ飛ばそうとするも、バーサーカーはバックステップでそれを回避。同時に、地を蹴り一瞬で肉薄すると強烈な拳をキャスターの頬に叩き込んで殴り飛ばす。巨体が宙を舞い、砂漠の岩に頭から激突して人間の姿に戻るキャスター。そんな隙を見逃す英雄達ではなかった。

 

 

「「「「決める・・・!」」」」

 

 

バーサーカーは両拳に怒のマントラを溜めて空中でグッと両腕を後方に向け、セイバーはマスターソードに聖なる光を溜めて【時をも超え輝く退魔の剣(マスターソード)】を、ランサーは回収した槍を手に跳躍して空中で投げ槍の体勢となり【突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)】を、ライダーは【魔射滅鉄(ビッグカノン)】を、それぞれ放とうとする。

 

 

「・・・決める、か。愚かな。そして残念だったな、貴様たちの負けだ」

 

 

しかし、キャスターは意味深な笑みを浮かべ、現時点で明確な決め手を持たないためただ警戒していたアーチャーとアサシンはその笑みの意味を察すると背後・・・マスター達の居る場所に振り向いた。

そこには、炎を突き破ったのか陶器兵の剣で胸元を斬られて倒れているイフと、その横で陶器兵の顔を殴り飛ばすも背後から襲ってきた陶器兵の槍で抑えられる凛、そして万里の長城の上から銃で何とか応戦しているも時間の問題なイリヤと桜、その真下で黒鍵が尽きたのか拳銃とマフラーを改造した槍を手に応戦するクロナと、それを援護しに降りたのか弾が尽きたライフルを「強化」して殴打し応戦しつつも押されている士郎、傷付いたマスター達の姿があった。

 

 

「マスター!」

 

「イフ、クソッ・・・!」

 

「逃がさん」

 

 

慌てて向かおうとするアーチャーとアサシン。しかし目にも止まらぬ速さで剣を投擲しアサシンの背中を斬り裂いたキャスターの言葉でアーチャーも静止し、アサシンは倒れ伏す。そしてそれに気付いた他のサーヴァント達の動きも止まり、バーサーカーとランサーは何も放たぬまま悔しげに着地。その様子に満足したのか立ち上がるキャスター。

 

 

「炎の壁で止まるのは生憎と矢だけでな。我が軍団には一切効かん。貴様らの将は、そこを間違えた」

 

「っ・・・動くな!」

 

『駄目だ、ライダー!』

 

 

桜の様子を見やり、一撃で仕留めようと【魔射滅鉄(ビッグカノン)】の引き金を引くライダーと、それを止めるエルメス。必殺の弾丸が放たれ、ライダーは勝利を確信する。…しかしだ。

 

 

「魔弾か。しかし、当たらなければどうということはない!」

 

「がっ!?」

 

 

キャスターは獣の姿になると紙一重でそれを回避、距離を詰め、変身が解けて最弱に戻ったライダーの首根っこを掴むと地面に叩き付ける。耐久がEまで下がったライダーは成す術もなく撃沈した。

 

 

『ライダー!ライダー!・・・キノ!』

 

「ふん。…む?」

 

 

思わず真名を叫んでまで無事を確認しようとするエルメスだがライダーは意識を失っており返事は無く、キャスターは興味が失せたのかそれを捨て置くと、今度はその隙を突いてマスターの元に向かおうとしていたバーサーカーとランサー、アーチャーに視線を向けると猛速で突進してバーサーカーとランサーの頭部を掴んで背後に投げつけ巨像に激突、二人の意識を飛ばす。

 

 

「逃がさんと言ったはずだ!」

 

「っ!?」

 

 

さらに三つ首竜の姿になると飛翔して追い付くとアーチャーの翼に噛み付き、地面に叩き付け、空中で人型になると剣を手に急降下、乗っかると同時に翼に剣身を突き刺しアーチャーを地面に縫い付けた。

 

 

「くっ・・・」

 

「ふっ、見た目はいい女だな。サーヴァントでなければ側室にしてやった物を・・・惜しい事だ」

 

「私はマスターの物です・・・貴方の物ではありません!」

 

「甘い」

 

 

零距離で繰り出される拳。しかし変身した三つ首竜の鱗には通じず、その口から放たれた炎を零距離で浴びてボロボロになっていくアーチャーはどうするか迷った。…宝具を使うか?しかし無断で使う訳には・・・その時だった。

 

 

「フロルの風!」

 

「なに!?」

 

 

ただじっと佇んで好機を窺い倒れている振りをしていたセイバーが緑の風に包まれて姿を消し、見るとイリヤの傍にまで瞬間移動しマスターソードで陶器兵を斬り伏せていた。思わずそちらに視線を移す移すキャスター。同時に、アーチャーはその隙を突いて拳を繰り出してキャスターを殴り飛ばし、翼から剣を引き抜き血を流しながら立ち上がる。そして、声が聞こえた。

 

 

「アーチャー!」

 

「!」

 

 

その声の主は、聞き間違えるはずもない、自分の主。衛宮士郎の物だった。見てみると、クロナと背中合わせに戦っている士郎がこちらをしっかりと見据え、信頼の籠っている視線をアーチャーに向けていた。その姿に、かつての主を重ねるアーチャー。その胸が、トクンと弾んだ。

 

 

「宝具を使え!無茶な事だと分かってる…だが、俺達を守ってくれ!頼むぞ、アーチャー!」

 

 

その言葉で、意を決した。魔力の波動が風となって砂漠に広がり、それだけで全ての陶器兵が砕け散る。その光景に唖然となるサーヴァントとマスター達。…何よりも驚いていたのは、キャスターだった。

 

 

「ちょうど一分。賭けに勝った様だな、クロナよ。さあアーチャーよ、(オレ)に見せるがよい。貴様の王としての形を!」

 

 

空で黄金の王が笑みを浮かべる。その全てを見透かす瞳には、大逆転への指示を送り力を使い果たしたのかへたり込むクロナを慌てて受け止める士郎と、機械的に呟きながら目を瞑り佇むアーチャーが映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「《思考制御(エモーショナル)プロテクト100%解除》《可変ウィングプロテクト解除進行中・・・100%》《自己修復プログラム開始》」

 

「な、何を言っている・・・?」

 

 

見る見るうちに傷を修復して行くアーチャー。紀元前を生きた皇帝は、未来を生きた未知の圧力に気圧されていた。自分など地を這う蟻の一匹でしかない・・・そう思わせる圧が、目の前の少女から放たれていたのだ。未知の物に対し、生物はどうしても臆してしまう物だ。

 

 

「《機能プロテクト解除進行中・・・70・・・80・・・90・・・100・・・!》」

 

 

そして開いたその瞳は、紅く染まっており、標的(キャスター)のみがただ映っていた。これがアーチャーの宝具。リミッターを外し、真の力を解放した姿。地上を蹂躙するべくして生まれた、空の兵器。

 

 

「《―――自己修復完了》…宝具(モード)空の女王(ウラヌス・クイーン)発動(オン)。出撃します!」

 

 

巨大化した翼を広げ、頭の上に天使の輪っかの様な光輪を浮かべ、天高く飛翔するアーチャー。キャスターも三つ首竜の姿となり応戦しようと翼を羽ばたかせるが、如何に幻想種の頂点である竜と言えど、・・・王には勝てない。それが道理だ。

 

 

「《目標補足(ターゲット・ロックオン)》【永久追尾空対空弾(Artemis)】発射!」

 

「なにっ!?」

 

 

翼を広げ、放たれるは複雑な軌道を描きキャスターに迫る光弾。キャスターは旋回しそれから逃れようと高速で飛翔し、砂漠の空をとにかく羽ばたく。しかし、光弾はキャスターを追尾し、例え巨像を盾にしようと誘導するも直角で曲がりそれを回避。逃げ切れず、一発一発がいっぱしの爆弾以上の威力を持つそれを浴びてキャスターは撃墜。

 

 

「おのれ・・・!燃えろ!」

 

 

何とか耐え切り、翼を羽ばたかせて遥か上空のアーチャーに迫りながら火炎弾を連射するキャスター。

 

 

「…【絶対防衛圏(aegis)】」

 

「…馬鹿な」

 

 

しかしそれも、アーチャーを覆う様に球状に展開された、エネルギーで形成された光の障壁により打ち消されてしまい、再びArtemisが放たれ今度こそキャスターは撃墜。人の姿に戻り、息絶え絶えに何とか立ち上がった。

 

 

「ここまでとは…しかし、これで終わりだ!」

 

 

吠えるキャスター。同時に、地下で生み出されマスターたちに向けて攻め込む陶器兵の大軍。守れるサーヴァントはセイバーのみ。一見、積んでいた。

 

 

「させると思いますか?」

 

 

しかし、それもArtemisが空から蹂躙。陶器兵を全滅させるとその手に漆黒の弓と、槍の様な形状の矢を取り出し番えて黒紫の炎を燃やして空に向けるアーチャー。

 

 

「マスター、魔力をお借りします」

 

「なにっ!?」

 

 

それを見て驚くキャスター。他のサーヴァント達も空を見上げ、絶句する。宝具には基本的に対人、対軍、対城と言った具合に規模と威力が変わってくる。

例えばライダーの【魔射滅鉄(ビッグカノン)】は対人、キャスターの【青銅の馬引く大陸制覇(チントン・マーイン・ダールーヂーバー)】は対軍である。かの有名なアーサー王の【約束された勝利の剣(エクスカリバー)】は対城だ。しかし、今アーチャーが展開したそれは違った。その威力、規模は・・・対城より上の、対国宝具。国をも滅ぼす威力と規模である。慌てて残る力を振り絞り、自身のマスターの元に駆けつけるサーヴァント達。

 

 

「おい、仮初のマスター!」

 

「な、なんだよキャスター?アレがどうかしたのか?」

 

 

キャスターも巨像の下にまで来るとそこに隠れていたワカメ髪の男を引っ張ると地下に続く入口まで走る。

 

 

「見て分からないのか?アレは対国クラスだ、真面に受ければ死ぬではすまんぞ!」

 

「な、なにぃ!?どうするんだ、僕はまだ死にたくないぞ!」

 

 

そんな会話を繰り広げながら逃げるキャスターたちを眼下に見据え、アーチャーは力の限り弦を引き絞り、そして放った。

 

 

「【最終兵器・空ノ落し物(APOLLON)】」

 

 

上空に向けて放たれる、黒き炎を纏った超高熱の矢。放ったと同時にアーチャーは翼を羽ばたかせ、音速で士郎達の元まで飛翔。着地と同時に、自身に展開できる限界の大きさでaegisを展開。

 

 

 

そして、大爆発が固有結界の全てを覆い尽くし・・・ガラスが砕け散る様な音と共に、固有結界【皇帝率いる(フゥァンディ・リュ・)兵馬俑の軍勢(ビンマーヨン・ジュンシー)】は瓦解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

クロナside

強烈な光源に視界を奪われ、目を開けるとそこは夜の校庭。後ろを見ると、バーサーカー、桜とライダー、凛とランサー、アインツベルンとセイバー、イフとアサシン、そして士郎・・・と今回の功労者、アーチャーが立っていた。しかし全員満身創痍で、特に士郎は魔力切れなのか肩で息をし、アーチャーは霊体化一歩手前で少し薄れている。

 

本当に、ヤバかった。無事と言えるのはずっと援護射撃に回っていたアインツベルンと、私と士郎が庇って無傷の桜くらいだ。その他のマスターは全員魔力切れもしくは重傷、サーヴァント達もボロボロで戦えそうにない。でもこれでやっと、キャスターを倒せたはずだ。固有結界を破壊するつもりで放ったアレは、王様の切札には匹敵しないけどそれでも十分すぎる威力だった。あのキャスターはアーチャーの・・・えっと、バリア的なのに守られてなかったはずだからただじゃ済むまい。

 

 

「マスター・・・負担ををかけない様に自分の魔力だけでと思ったのですが、奥の手を使うためにお借りしました・・・申し訳ございません」

 

「いや、いいよ。俺が宝具を使えって言ったんだしな。それに、アーチャーがアレを使ってないと全員死んでいた。なにより、お前のおかげでクロ姉を、桜を、遠坂を・・・俺が守りたい人達を守る事ができた。ありがとう、アーチャー」

 

「マスター・・・申し訳ありませんが、もう戦えそうにありません。しばらく、休ませてもらいます・・・」

 

「ああ。お疲れ、ゆっくり休んでくれアーチャー」

 

 

そんな会話の後に、霊体化し姿を消すアーチャー。…本当、お疲れ様。しかしアーチャー凄いな。あの弓矢もヤバいけど、何より・・・あのキャスターを圧倒した姿。アレはヤバい、下手したら私のバーサーカーも勝てないんじゃないかな。でも魔力をあんなに消費するとはかなり燃費が悪いのか?とりあえず、労いかな。

 

 

「バーサーカーもありがとう。大丈夫?」

 

「腕が二本残っているだけで十分だ。大事ない」

 

「ならいいけど」

 

 

かなりキャスターに甚振られていたからな・・・本当に大丈夫かな?

 

 

「ごめん、桜!私がちゃんと考えていれば、あの変態を呼び出して桜を守れていたのに・・・」

 

『ライダーは宝具のデメリットをちゃんと理解しないと。ただでさえ当たらないのにさ』

 

「気にしないで、ライダー。ちゃんと戦えない私も悪いから・・・無事でよかった」

 

 

「イフ。しっかりしなさい、その程度で死ぬようなタマじゃないでしょアンタは」

 

「・・・アサシン。お前こそ、俺を心配する暇が在ったらその背中の傷どうにかしろ。痛々しい」

 

「サーヴァントなめるな、この程度で死ぬ訳ないじゃない。…マスターに死なれたら私が困るんだっての」

 

 

「ランサー。よく頑張ったわ、でももう少し早く決めて欲しかったかも」

 

「無茶言うじゃねーか、マスター。そんな冗談が言えるならアンタも大丈夫の様だな」

 

「ちょっとヤバかったけどね。衛宮君とアーチャーには感謝しないと」

 

 

「ねえセイバー、聖杯戦争って何だっけ?」

 

「少なくとも今回のはバトルロイヤルじゃないね、イリヤ」

 

「・・・とりあえず、私のピンチによく来て守ってくれたわ。さすがねセイバー」

 

 

・・・うん、他のところも問題ないらしい。いや、下の三名は問題ないのは私にとって問題だけど。…アインツベルン、まさか私が戦えないからって襲って来ないよね?

 

 

「それはお前だ、クロナ」

 

「だよね」

 

 

この場にいるマスターが卑怯じゃない事を祈ろう。…そう言えばキャスターのマスター、誰だったんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人称side

クロナの提案で今回限りの同盟が解散となった頃。学校の林の中で、その影は動いた。片方はボロボロのキャスター。もう一人は砂埃塗れだが無傷の男だった。息絶え絶えのキャスターを睨み付け、ワカメ髪を振り乱し激昂する、仮初のマスター。

 

 

「はあ。死ぬかと思った。もっとしっかりしろよ、キャスター!」

 

「何もしていないお前がよく文句を言えるな、仮初のマスター?・・・いや、間桐慎二よ」

 

 

月光であらわになったその姿は、まさしく間桐臓硯がライダーに倒され間桐邸が瓦解と化したあの晩、気絶していた間桐慎二その人であった。その手には魔導書らしきものが握られており、睨み返してきたキャスターに怯む。

 

 

「どうした不満か?ならばその一回限りの令呪を使い私を従わせるといい。その瞬間、貴様のマスター権は剥奪されるがな」

 

「ま、待て!悪かった、僕が悪かったから落ち着いてくれ!」

 

 

怖じ気付く己の、仮初のマスターにふんっと鼻を鳴らしたキャスターは空を仰ぐ。あの時、完全に崩壊する直前で瓦解して行く固有結界の外に出ていなければこの男もろとも焼滅していた。あの弓兵、次会った時には必ず・・・!

 

 

「貴様より、あの男の方が私を導く軍師(マスター)としては優秀だったな。まったく、何を考えて貴重な令呪を使ってまで貴様なんぞにその偽臣の書とやらを与えたのか、理解ができぬ」

 

「そりゃ僕が天才だったからだろう!凡人の自分より、僕の方が優秀だと気付いたからさ!あの髭も、いい事をしてくれたよ!アハハハハハハハハッ!・・・次はしくじるなよ、今度は確実に仕留めるんだ。あの恩知らずな駄妹も、正義の味方気取りの馬鹿も・・・僕を見もしなかったあの女も、遠坂だって・・・僕の足元にも及ばないって事を証明するんだ、キャスター!」

 

 

不気味に笑う仮初のマスターに、やれやれと言わんばかりに溜め息を吐くキャスター。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その様子を、不可視の宝具を身に着け上空から見下ろしていた男がいた。ギルガメッシュである。

 

 

「【熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)】だったか・・・これが無ければ(オレ)も危うかったかもしれぬ。アーチャーめ、あれ程の物を有すか。恐ろしき物よな、雑種風情にしては。…しかしキャスターのマスターめ。この(オレ)でもその存在を知ることができぬとは・・・一体何者だ?」

 

 

険しい表情を浮かべそう呟くギルガメッシュ。その視線は遠坂凛と別れ士郎と桜、バーサーカーとライダーと共に帰路に着くクロナへと動き、その表情は見守る物となった。

 

 

「クロナよ、よくぞ耐えた。アーチャーのマスターに指示を送り、その宝具を引き摺り出して窮地を脱するとは中々の策だったぞ。帰ったら褒めてやらねばな」

 

 

そう笑うとヴィマーナを旋回させ、黄金の王もまた帰路に着くのだった。




まさかの主人公、見せ場なし。魔力切れと黒鍵切れなんだからしょうがない。
アーチャーのトンデモ宝具「空の女王」と「最終兵器・空ノ落し物」のおかげで、とりあえずはキャスターを退けました。そしてキャスターの(仮初の)マスターが間桐慎二だと判明。真のマスターはギルガメッシュでも知りえない存在との事ですが・・・?

キャスターの宝具の弱点ですが、気付いた人いるかな・・・?ヒントは、固有結界の中でのキャスターの戦闘方法です。これでだいぶ分かると思う。詳細は、キャスターとの決着編で。

次回は噂のキャスターの真のマスター登場。と言っても型月のキャラじゃないです、はい。神父も動きます。
感想をいただけると励みになります。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。

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