Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争 作:放仮ごdz
オリ鯖を出す過程で兄貴以外のサーヴァントは変更して居る他、主人公がバーサーカーなので士郎たちのサーヴァントが変更しています。
Fateは書いた事無いので拙い文章ですが、どうぞ。
冬木市:新都の冬木中央公園
かつての第四次聖杯戦争で起こった大火事の跡地である人気のない寂しい広めの公園にて、一人の少女が自らの血で描かれ、赤く輝く魔法陣の前で手をかざして立っていた。
その少女は、齢18歳の卒業間近の高校生にして聖杯に選ばれたマスターだった。第五次聖杯戦争…魔術師達が己が剣である英霊で殺し合う儀式に選ばれてしまった、大火事に巻き込まれて孤児になっただけで魔術師ではないはずの少女だった。
この新都にある教会でとある二人の男…の片方のキンピカの男に何故か気に入られて世話になっているのだが、ある日右手に痛みを感じてそれをもう片方の男…神父であり父親代わりでもあるその人物に相談してみた所、それは令呪と言う聖杯戦争の参加資格だったのだ。
そしてその聖杯戦争の監督役であり第四次聖杯戦争の実質的な勝者でもあるその男に話を聞き、ついでにキンピカの男がそのサーヴァントであると知った。
それでキンピカから「自分達が守るから参加しろ」と言われ、そのままこの地が大火事の被害者たちの無念が詰まっている場所だから、火事に巻き込まれたお前の血と合わせていい触媒になると言われ、遠見からキンピカが見守っている中で詠唱を行なっていた。
もう何だか分からない上に文句も言わせてくれなかったから、今度キンピカに泰山の麻婆を喰わせようとか考えてはいるが今はその雑念を絶たねばならない。
少女は息を吸い、神父から教えられ何とか記憶した呪文を詠唱して行く。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公」
「降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
「
「繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する―――――
確かな手応えを感じて笑う少女。よく分からないがドクンッと心臓が跳ねた。直感的に感じたのだ。武者震いとでも呼ぼうか。
「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」
そこで彼女は、キンピカから「またあの狂犬の様な雑種と相対するのは
「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者―」
溢れだす赤き闘気に、遠見で見ていたキンピカは身を震わせ笑う。かつての自分と同じ、神に仇なった男。数多の泣き声が響き渡るあの場所なら来るだろうと直感していた。生憎、その性質上から狂戦士か復讐者のどちらかでしか呼べないが問題ない。あの、別の
「汝三大の言霊を纏う七天」
「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――」
これは大魔術の下準備。己が武器となる
「…サーヴァント・バーサーカー…でいいのか?一応問うぞ、お前が俺のマスターか?」
「…ば、バーサーカー…?」
理性を保っている狂戦士はそうぶっきらぼうに口を開き、少女はその事実に驚きを隠せない。キンピカ曰くバーサーカーは真面に意思疎通は不可能と知らされていただけに驚きと、その事から会話は期待できないと思っていたのが大きい。
「…もう一度聞く。お前が俺のマスターか?」
「…え、うん。私は、黒名。…
少女、クロナは右手に刻まれた、蜘蛛の様な形状の令呪を見せる。それを見たバーサーカーは満足気に唸ると視線をずらした。その方向は…キンピカが遠見している方向だった。
「ならマスター、さっそく始めるぞ」
「…え?」
そう叫んだバーサーカーは地面を蹴って一瞬で姿を消した。否、キンピカの元へ跳んでいた。そこでクロナは見た、彼の瞳が白目になり怒りに満ちた表情になっている事を。
「ほう、来るか。雑種め」
キンピカ…否、最強の英霊であるギルガメッシュは自身の宝具【
「ウオォオオラァアアアアッ!」
「なにっ!?」
バーサーカーはそれを見ると空中で肘から魔力の炎を噴出し加速した左腕でまず最初に飛んで来た大剣を掴むとその場で何回か回転して宝具の束を避けると、遠心力を伴った大剣を投擲。
ギルガメッシュは最初、あの雑種と似た様な事をすると別の武具でそれを撃墜するも、次の瞬間には眼前にバーサーカーが迫っており、拳を振り上げていた。
殺す気で放っていたアレが囮…改めてこの英霊の技量を見直し、苦肉の策と「我が友」を宝物庫から出そうとすると…クロナの声が英霊としての聴覚に聞こえた。
「待ってバーサーカー。その人は味方、攻撃しないで」
「ッ!」
マスターの命令に、ギルガメッシュの顔面に直撃する直前に静止する拳。ギルガメッシュは今にも宝物庫から「我が友」を出そうとしていた矢先だったが、その前に殴り倒されていたのは容易に想像できる。簡単に言えば、切札を出す前に当たり所が悪かったらやられていた。自分に匹敵するその存在にワクワクする自分もいるせいか、不思議と怒りは湧いてこなかった。
クロナの元へ戻るバーサーカーを見ながら余裕の表情を形作り、ギルガメッシュはバーサーカーをぼそぼそと叱っているクロナの元へ降り立った。
「雑種よ。存分によい英霊を引いた様だな。これならば勝利も不可能では無かろう」
「…うん。それはいいんだけど…バーサーカー、何故いきなり王様に襲い掛かったの…?」
問いかけてくるマスターに、バーサーカーはムスッとした顔で不機嫌そうに唸るが、ジロッとクロナが睨むと溜め息を吐き口を開く。
「この場で聞こえる泣き声が、全ての元凶がそこのキンピカだと喚いている。俺は貴様が気にくわん」
「雑種共の怨念を聞くか。それはさぞ、頭の中が五月蠅いのだろうな?」
「・・・?」
無言で訪ねてくる緘黙なマスターに、その眼から心配の意を汲み取ったバーサーカーは口元を吊り上げて笑った。
「止まない泣き声には慣れている。むしろこの泣き声は俺の怒りを増長する物でしかない」
「…それはそれで問題。バーサーカー、私はこの聖杯戦争で何としても勝って生きたい。聖杯による悲劇を失くしたい。聖杯を壊すために貴方を呼んだ、だから力を貸して」
「…マスターは怒っているのか?聖杯なんて物のせいで何かが失われる事に」
マスターである少女の瞳に、生前の自分が世界そのものに感じていた怒りに震える光を感じ取ったバーサーカーは問う。己の原動力足りえるそれが少女に在るのか否か。
「…うん。大火事で家族を失った、全てを失った。
王様達から歪んだ聖杯が起こした災厄だと聞いた。
元凶がアインツベルンって言う魔術師の家系が第三次聖杯戦争で呼びだした復讐者のサーヴァントだと知った。
魔術師なんかの都合でまた悲劇が起こるのだけは許さない。
私から全てを奪った聖杯とアインツベルンも許さない。
…貴方が聖杯を望むのならそうする。だけど、貴方はちゃんと怒りを覚える者の味方だと知っている。
卑怯かもしれないけどお願い、力を貸して。バーサーカー」
頭を下げるクロナ。それを腕組みし笑みを浮かべながら見下ろすギルガメッシュ。無言でマスターを見詰めるバーサーカー。どれぐらい経ったか…バーサーカーは、満足気な笑みを浮かべて手を差し出した。
「お前がこの世界に怒ると言うのなら、力を貸そう。怒るだけじゃ何も守れない。だがお前には戦う覚悟がある、それなら戦う手段が無いとな」
「バーサーカー…」
頭を上げるクロナ。目の前に差し出された手を握ると、バーサーカーは懐かしげに目を細めると真剣な表情で告げた。
「サーヴァント、バーサーカー。真名【アスラ】。幼子一人守れぬ力だが…言峰クロナ、テメェに力を貸してやる」
遥か太古の時代。ギルガメッシュが生前生きていた古代メソポタミアよりも古い、されど今よりも遥かに進んだ科学技術で神民と呼ばれる人間達から選ばれサイボーグ化した七人の将「七星天」が、何の力も無い人間達に神と崇められている時代で、その神に全てを奪われその怒りで地獄から甦り、悪鬼羅刹と呼ばれた神々の裏切り者とされた男…アスラ。
それがバーサーカーの真名。娘のために、消滅すると分かっていながら父親として創造神までもを殴り倒し、文明と共に消え去り次代に繋げた…神。その生き様は娘の口から語り継がれ、阿修羅神の原点としても知られている「怒り」の権化。そんな彼の優しさに、クロナは控えめに笑った。
彼女は知らない、自分の育ての親である二人がその火事を引き起こした要因だと。
彼女は知らない、同じ火事を生き抜いた姉弟とも言える少年と殺し合うことになるのを。
彼女は知らない、愉悦の肴にされている事を。
これは、この世の全てに怒る主従の物語。
主人公:バーサーカー
衛宮:アーチャー
遠坂:ランサー
アインツベルン:セイバー
間桐桜:ライダー
???:キャスター
???:アサシン
セイバーはアルトリアじゃありません、一応念のため。しかし流れはセイバールートが主体。次回は取り敢えず主人公とバーサーカーのプロフィールのつもりです。感想などをいただけたら嬉しいです。