Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争   作:放仮ごdz

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今回は前回と次回の繋ぎの話です。あんまり展開が進まないので.5としてます。

キャスターの軍隊に、クロナは一体どうするのか。キャスターの真名も判明です。楽しんでいただけると幸いです。

※9月5日、題名を変更しました。はい、ふざけました。


#11.5:結成、英霊エクスペンダブルズ

少々砂埃が目立つがカラッとした青空が、所々大小様々な丘が目立つが万里の長城と巨像の間は平地となっている砂漠が、それぞれ延々と広がる光景。

それこそが、キャスターの象徴たる宝具「皇帝率いる(フゥァンディ・リュ・)兵馬俑の軍勢(ビンマーヨン・ジュンシー)」である。

 

 

「問題なく目覚めたようだな、安心しろ仮初のマスター。我等の勝利は絶対の物となったぞ」

 

「そいつはいいな。任せたぜ、キャスター」

 

 

万里の長城の遥か前方に聳え立つは、ちょうど上半身が砂から出ている、三つ首の竜が右肩に乗っていて剣を胸の前にかかげ地面に刺している皇帝の巨像。

その剣の柄の上に佇む、陶器の仮面を外し自身の周りに五行の球体を浮かばせたキャスターは巨像の下の方から聞こえてきた声に当り前だと言わんばかりに頷き、砂漠に突如開いた穴から次々に現れた己の軍隊が集まった事を確認すると、振り向いた彼らに向けて大きく声を張り上げた。

 

 

「よくぞ来たな我が最強の軍隊よ、心して聞け!再び我々が目覚めたこの時代は何も変わらない、混乱と腐敗に満ちている!我々はこの時代に秩序を齎し、此度こそ我が支配下に置く!」

 

 

聞き様によっては真面目な演説に聞こえるが、それでも彼が言っているのは単に「誰も私に逆らわない様に侵略するぞ」と言う事である。それを知ってか知らずか、陶器の軍隊たる大軍勢は全員彼に視線を向け、何も言わずにその言葉を聞いていた。

 

 

「この時代には全てを牛耳る支配者が居ないと言う、それは由々しき事態だ。自由は秩序の敵だ!我が道に立ちはだかる敵には容赦などいらん、皆殺しだ!」

 

 

その演説は固有結界に飲み込まれた敵陣営にもしっかり聞こえており、その言葉で全員が内心で共闘を決意した事を知ってか知らずか、かのローマに名を轟かせた暴君でさえも恐れるに足らない最強最悪の皇帝は高らかに声を張り上げ、言葉を続ける。

 

 

「今ここに宣言しよう、この時代、この砂漠の外の世界を全て!全て、我が物とする!・・・これからお前たちを、万里の長城の先、外の世界へと導く。万里の長城さえ超えれば、お前たちは無敵となり外の世界を蹂躙できる!お前たちの役目は!大陸なぞよりも遥かに広大な世界を蹂躙し、決して滅びない私の帝国を、築くことだ!」

 

「「「「「「「「皇帝陛下!永遠に栄えたまえ!」」」」」」」」

 

 

主君たる皇帝の宣言に賛同するかのように全く同時に響き渡る、忠誠の声。そして彼らは各々が武器を手に振り返り、主君の敵へと刃を向けた。

 

 

「さあ!どこまで抗えるか見せてみろ、愚かな反逆者共よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何だ、これは?

 

校舎から外に出て俺がまず思い浮かべたのは、ただその感想だけだった。さっきまでここは人気のない夜の校庭だったはずだ。なのに今や青空が澄み渡り、広大な砂漠が目の前に広がっている。振り返ってみると、そこには校舎は無く代わりに巨大な延々と広がる壁があった。…確か、万里の長城だったか。何らかの魔術で移動したって事なのか?

 

 

「固有・・・結界?そうか、キャスターのサーヴァントだったら使えて当然か」

 

「遠坂?これが何なのか分かったのか?」

 

「固有結界よ、お兄ちゃん」

 

「なっ、イリヤ!?」

 

 

聞き覚えのある声に振り向くと、そこには砂漠に似つかぬ厚着をした雪の妖精が。…暑そうだな。あ、脱いで女物のスーツ姿になった。あんな小さいサイズあるのか。って、そうじゃなくて!

よく見てみると周りにはさっきまで居なかったはずのイリヤだけでなく戸惑うアーチャー、ライダー、セイバー、アサシン、バーサーカー、さっきクロ姉と戦っていた黒づくめの男、桜、クロ姉が・・・って、クロ姉!?

 

 

「クロ姉!無事だったのか!」

 

「お、おう士郎。ここどこ?あの黒いのと戦ってたはずなのに・・・ってバーサーカー!?なんでここにいるの!?」

 

「クロナさん!?危ないですよ!」

 

 

バーサーカーの存在を確認すると慌てて駆け寄るクロ姉の姿に、俺と桜は驚愕する・・・が、何故かアーチャーとライダー、凛と、今ちょうど霊体化を解いたのか姿を見せたランサーは素知らぬ顔だ。…まさか?

 

 

「・・・クロ姉のサーヴァントって、バーサーカーだったのか?」

 

「そうなんですか、クロナさん?」

 

「・・・」

 

 

俺達の問いに「あ、やっべーバレた」とでも思考しているだろう真顔で黙るクロ姉。しばらくの沈黙の後、イリヤに「いい加減白状しなさい、士郎の姉だってんなら正直であるべきよ」と言われて溜め息を吐き、クロ姉は口を開いた。

 

 

「うん、私はバーサーカーのマスター。あの時士郎達を襲わせたのは早く脱落させたかったから。でも、士郎と桜は戦う覚悟を見せたからやめる。私の自分勝手な願いのために士郎達に強制するのは間違ってるから。…で、バーサーカーは何でここに?待機してって言ったよね?」

 

「嫌な気だ・・・気を抜くな、死ぬぞマスター」

 

「「「「喋った!?」」」」

 

 

俺、桜、イリヤ、ライダーの驚きの声が響く。黒づくめの男も驚いていたようだが何故か納得しクククッと笑っていた。遠坂も「そっか、バーサーカーが喋るのって可笑しいのか。クロが異常だからそんなに驚かなかったけど」とかぼやいていたが、確かにクロ姉なら納得できる。…もう聞かないで置こう、今はそれよりも、だ。

 

 

「遠坂、イリヤ。固有結界って何なんだ?」

 

「普通は使えもしない大魔術。世界を一時的に書き換え自分の心象世界に対象を引き摺りこむ、現代魔術師でも使える者はそういないわ」

 

「小規模な物なら自身の内部に発動できるけど、ここまでの規模となると相当な魔力とそれなりの知識が必要ね。となると・・・」

 

「・・・キャスターの宝具に間違いない。宝具を二個も持ってるなんて想定外だった」

 

「キャスターって、クロ姉が昨夜戦ったっていうサーヴァントか?」

 

「うん、それがアイツ」

 

 

この状況をよく分かっているのだろう、遠坂とイリヤに聞くとクロ姉がその言葉に続け、指を遥か彼方の先にある巨像に向けた。よく見ると黒い鎧を着た男がいた。アイツがキャスターか……それにしてもクロ姉、一つ目の宝具を受けたのに無事だったのか。運がいいな、よかった。

 

 

そんな事を話しているうちに、砂漠のあちこちから穴が開き、そこからぞろぞろと不気味な陶器人形の兵士が軍隊の様に隊列を組んで行進して出てきた。その異様な光景に、絶句しながらも構える俺達。アレが、キャスターの宝具・・・軍隊を呼び出すなんて、ありかよ・・・

 

 

「・・・凛、アインツベルン。あの陶器人形の軍隊、中国系の男、そしてあの巨像に万里の長城。これって、あのキャスターの正体が分かる・・・よね?」

 

 

演説を始めるキャスターを睨みながら、静かに問うクロ姉。…俺と桜にはさっぱり分からんが、黒づくめは感づいたらしい。何か仲間外れにされた気分だ。

 

 

「ええ、私オコーネル夫人の書籍は全て愛読してるもの。中々に厄介な奴が喚ばれたみたいね。凛も、分かったでしょ?」

 

「・・・恐らくは紀元前に中国を制覇し、呪われて封印されるも近代に復活し暴れ回ったと言う最恐最悪の皇帝、アー・シン・ハンね。あの書籍通りの歴史を持つ男だとしたら・・・二つの時代に君臨した反英雄、確かに厄介だわ」

 

「アー・シン・ハン?」

 

「安心飯?天津飯の仲間?」

 

『ライダー・・・たまには書籍も読もうよ・・・書籍でも史実でも、知名度が高い英雄だよ』

 

 

ライダーの食い意地張った発言に呆れるエルメス。いや、俺もよく知らないんだが・・・とにかく、厄介な奴だと言う事だな。

 

 

「・・・そう言う事だけどどうする、イフ=リード=ヴァルテルさん?まだ勝負、続ける?」

 

 

すると黒づくめの男・・・ヴァルテルにそう尋ねるクロ姉。さっきまで戦っていたはずなのに、どこか親しげだ。

 

 

「なるほどな。とりあえずは遠坂の魔術師、アンタとは休戦だ」

 

「は?私が遠坂だけど、そこのはただの魔術使いよ」

 

「・・・あ?ランサーのマスターが遠坂だろ?」

 

「いや、だから私がランサーのマスターだって」

 

「私は言峰黒名。バーサーカーのマスター。ランサーは手伝ってくれただけ」

 

「・・・なんだ、勘違いか。早く言ってくれるとよかったんだがな」

 

 

どうやらヴァルテルはランサーと一緒にいたクロ姉を見て遠坂と勘違いしてたらしい。首を竦め、やれやれと言わんばかりに背中に装備していた杖を構えた。

 

 

「まあいい、じゃあクロさんよ。この場は一時休戦協定と行こうや」

 

「・・・昨日からそればかりだね。いいよ。アインツベルンも、それでいい?」

 

「・・・お兄ちゃんが私以外に殺されるのは嫌だもの。いいわ、手を組んであげる」

 

 

クロ姉が視線を向けるとイリヤも了承してくれた。これでこの場にいるマスターが全員、クロ姉と手を組んだ事になる。やっぱり、クロ姉は凄い。なんというか、カリスマ性がある。この人になら、力を貸してもいいと思わせる「何か」があるんだな。

 

 

「しかしやっこさん、俺とアサシンが集めた魔力まで利用しやがったか。キャスターのマスターはそれなりの策士だな。一杯喰わされた訳だな、アサシン?」

 

「なに呑気に言ってるんですかマスター?せっかく集めた魔力を思いっきり使われたんですよ、ムカつかないの?」

 

「ああ、もうめっさムカついてるさ。やるぞアサシン」

 

「はいはい。衛宮士郎も殺せないみたいだし、その鬱憤を晴らしますよ!」

 

 

そう言って杖を右肩に置き、煙草に火を点けるヴァルテルと、ナイフを構え舌で刀身をぺろりと舐めるアサシン。…どうしたものか、アサシンの奴まだ俺を殺す気でいるらしい。しかもこのアサシン陣営、よりにもよって集団ガス事故の犯人っぽいぞ・・・いや、我慢しろ。今はここを生き残る方が先決だ。クロ姉や桜、アーチャーとライダーを何とか生還させないと。

 

 

「ところで聞くけどアインツベルン。貴方、スナイパーライフルを使える?」

 

「使えるけど今は持ち合わせてないわ。それが何?」

 

「・・・ライダー、確か銃を人に貸せたよね?士郎と桜、あとイリヤに渡して。イリヤにはライフル、士郎達は取り敢えず使いやすい奴ね」

 

「いやまあいくらでもあるからいいけど・・・士郎と桜、使えるの?」

 

「とりあえず護身用。無いよりはマシでしょ。イリヤはライダーと一緒に援護をお願い」

 

「・・・適材適所って奴ね。分かった、セイバー。前衛は任せたわよ」

 

「ああ。…ライダー、イリヤに手を出したら何が在ろうと君を斬る」

 

「分かってるわよ。…まったくもう、何ですんなり共闘しようって気にならないの英霊って奴は・・・」

 

『ライダーだってサモエド仮面と共闘するのは嫌でしょ?一緒だよ』

 

「違うと思う。…士郎、桜は任せたよ」

 

 

とかなんとかぼやきながら、俺と桜にそれぞれM92F(映画でよく見るから名前は知ってる)とバトルライフル(威力は低いが反動が小さいライフル銃・・・だったはず)をそれぞれ弾倉(マガジン)と一緒に渡すとイリヤを担ぎ一跳躍で万里の頂上の上の方に跳ぶライダー。

桜はもう既にライダーから手ほどきを受けているのかあっさりと構えたが…俺だけ普通の拳銃なんだが強化して何とかしろって事か?そんな意を込めてライダーを見上げてみると、ちょうど確かシモノフとか言ったはずのスナイパーライフルを渡したイリヤに「大丈夫?」と聞きながらこちらの視線に気づき、一瞬考え込むと溜め息を吐きポイッとこちらに何かを投げてよこしてきた。ただ、それはちょっと大きくて受け止め切れず、アーチャーが手伝ってくれないと潰されていた。

 

 

「それはRPKって言う機関銃。日本人なら筋肉モリモリマッチョマンのメインウェポンだと言えば大体分かるでしょ?」

 

「コマンドーだろ?確かに大体分かるけど・・・使えんのかこれ!?」

 

「強化で何とかしろ、魔術師でしょ」

 

「・・・あー、うん」

 

 

・・・そう言えばイリヤも銃使ってたっけ。考えるのはやめよう、うん。

 

 

「ライダー、アーチャーにもM134ミニガンを。空から絨毯爆撃でかなり減らせると思う」

 

「了解。アーチャー、受け取って」

 

「了承しました。マスター、どうかご無事で」

 

 

そう言って投げられたガトリングガンを受け止め、翼を広げて空へ舞い上がるアーチャー。…相手にちょっと同情するな。俺はアイツのでたらめさを知っている。

 

 

「ライダーとイリヤは高台から、奥から士郎と桜が銃で援護、そこにアーチャーが空から絨毯爆撃で敵を減らした所にバーサーカーとセイバー、ランサーとアサシンが前衛、私と凛とイフが魔術で後衛をすれば勝てるはず。何か異論は?」

 

「立ち位置にあっていていいんじゃない?」

 

『彼女は多数のサーヴァントを従える事に長けているね。指揮官の才でもあるのかな?』

 

「あの女の指示に従うのは癪だけど・・・私とセイバーだけじゃ勝てないのは事実だしね」

 

「・・・銃使うのは初めてなんだがな・・・」

 

「ライダー曰く狙い方は弓と同じらしいので先輩でも大丈夫ですよ!」

 

「敵が動きます。始めましょう」

 

「叩き潰すッ!」

 

「今だけはアンタに背中を預けるよ、バーサーカー」

 

「さーて、やりますかねぇ。なあ、アサシンの姉ちゃん?」

 

「・・・ちっ。性別がばれたのはちょっと痛いか。まあいいや、鬱憤をあいつ等で晴らすもんね!」

 

「クロの案に乗るわ。さっさと切り抜けないとね!」

 

「よしっ、魔術師の頂点の一人に挑むとするか!」

 

「・・・頼もしい言葉、ありがと。行くよ!」

 

「「「「「「「「「「「応ッ!」」」」」」」」」」」

 

 

俺達の言葉に苦笑したクロ姉はきっと目を見開き、弓を構えて不敵な笑みを浮かべた。…せいぜい足を引っ張らない様に、一番信頼できる人の言葉を信じて挑むとしよう。相手は魔術師の頂点の一つの形、キャスターの率いる大軍隊。恐らくあの男は「悪」だ。ここで逃がしてはならない。相手にとって、不足無しだ。

 

俺にとっての、正義の味方に至るための戦いを、始めよう。




皇帝陛下!永遠に栄えたまえ!ただし赤王様な!

という訳で判明、キャスターの真名。アー・シン・ハン皇帝。って言っても有名ではなさそうなのでピンと来ないでしょうが、映画「ハムナプトラ3」にて最強のミイラとして登場した紀元前の皇帝です。この世界だとオコーネル夫妻、イムホテップなども実在しています。こんな風に復活するタイプの反英雄って二つの時代に君臨する訳だから強力だろうと安易な考えで参戦させました。

クロナが多数に対する判断力と指揮力を持っていると言う事も判明。時代が時代なら優秀な軍師か将軍にでもなれます。…もちろん、人理継続保障機関でも多大な才を発揮するでしょう(フラグ)。

実はサーヴァント出揃ってないんですが総力戦となります。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。

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