Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争 作:放仮ごdz
そんな訳で魔改造イリヤさんVSアーチャー・ライダーです。正直強化し過ぎたと思ってる。リンクがいないと使えませんし。楽しんでいただけたら幸いです。
「僕はね、魔法使いなんだ」
その子供を引き取る際にそう言ってしまった彼は、目を輝かせるその子に本当の事は言えなかった。魔法…否、魔術がどんなに汚れた代物なのか。…自分がその魔術を使って、今まで何をしてきたのか。彼は僕を正義の味方だと呼んでいるが、そんな綺麗な物じゃないと言う事も。
彼は、正義の味方であるために多数を救う為に少数を切り捨てることを絶対の信条・手段として徹し続けた人殺し、
まさか、そんな自分の在り方を知り受け継いでしまった少女が居るなんて露にも思わずに。
「セイバー。さっそくだけど力を貸して欲しい事があるの。…聖杯戦争に勝ち残る絶対の手段、キリツグの戦い方を使うためには貴方の協力は不可欠だわ」
「…一体何をする気なんだい?」
「…簡単よ。…私自身が英霊とも渡り合えるようにする。キリツグの魔術ならそれが可能よ。アイツにもできたんだもの、私に出来ないはずがないわ」
そんな会話があった半年前…雪の姫君は、10年前からの怒りを糧に命を削る。
セイバーとバーサーカーがぶつかる一方、少し時間は戻って士郎達は何時の間にか先回りしていたイリヤと対峙していた。
「こっそりどこに行くの、お兄ちゃん?サーヴァントを連れているのに逃げるんだ、置いてけぼり何て酷いじゃない」
「イリヤスフィール…どうやって先回りを…?」
「桜、士郎、下がって!」
「待て、ライダー!」
率先して二丁のライフルを構えてイリヤを狙うライダーを士郎は止める。しかし、イリヤは自分を心配してくれたことに気をよくしたのか、儚げな笑みを浮かべる。
「心配はいらないよ、お兄ちゃん。例えサーヴァントでも…私に着いて来れないから」
「何を言って…!?」
「
その瞬間、イリヤはライダーの背後に現れる。そしてその手に何時の間にか握られていたトンプソン・コンテンダーから銀のフルメタルジャケットの弾丸が放たれ、胸部を背中から撃ち抜かれたライダーは崩れ落ちる。
間髪入れず、アーチャーが音速で肉薄するが、それよりも速くコンテンダーを投げ捨てイリヤは移動。次々とアーチャーの繰り出す拳を高速で動いて回避、その手に持った「強化」されたサバイバルナイフを叩き込み、アーチャーは左腕を犠牲にそれを受け止める。
「アーチャー!」
「…問題ありません」
士郎が叫んで駆け寄ろうとするも平然としているアーチャーはそのまま翼による打撃を繰り出すもイリヤは士郎達とアーチャーの真ん中まで移動してそれを回避、さらに大きめの種の様な物…セイバーから預かったデクの種を取り出すと地面に投擲。
「っ!?」
それは眩い閃光を放ってアーチャー、士郎、桜の視界を奪い、その隙にイリヤは使い魔でアーチャーをきつく拘束。さらに彼女の父親が愛用していたキャリコM950を、視界を取り戻し始めた士郎に向けて構えた。
「マスター!…この…!」
「残念、それはサーヴァントでもそう簡単に解けないわ。その形状で固定しているからね。マスターでも、やり方を考えればサーヴァントにも匹敵するのよ。セイバーがいないからって嘗めないでもらえる?……あのキリツグの息子がいるっていうからわざわざ習得して来たんだから」
「っ
「ええ。よーく知っているわ、10年前の事しか知らないけどね。じゃあさっき邪魔されたから改めて言うけどお兄ちゃん、私はアインツベルンの悲願である聖杯よりも楽しみにしていた事があるの。それはね?お兄ちゃんを、殺す事。貴方の事を知ってから、ずっとこの日を待ちわびていたのよ」
「っ…先輩!」
引き金に指をかけるイリヤ。その表情は無感情で、
「出来損ないの聖杯は黙ってなさい」
「くそっ…桜!本当にピンチなんだから来なさい変態侍!」
「正義の少女がピンチのとkマジでピンチみたいだから以下略!」
桜のピンチに反応したのは、心臓近くを撃ち抜かれて倒れていたライダー。力を振り絞って叫び、残りの魔力を総動員して本日二度目のエーテルの輝きと共にサモエド仮面が士郎と桜の前に出現、その刀で弾丸を切り払う。
「美少女の危機に駆けつけてこそ真の騎士!決してあの恐い狂戦士が居ないからでは…待たせてすまない!謎の美少女ガンファイターライダー・k」
「セイバーのサーヴァント!?貴方、一体なんなの!?」
「…っと、いい質問だ!そう私の名は!もちろん本名は言えないけど!変身した後の名は!」
「いいから早く答えなさい!」
再装填したトンプソン・コンテンダーをサモエド仮面の眉間に撃ち込むイリヤ。しかし一発だからかカキンと刀で弾かれ、今度はキャリコでずだだだだだだだっと弾丸の嵐を叩き込む。サーヴァントだからまた避けれるだろうと考えていたのだが、サモエド仮面はそれはまああっさり、赤い液体を散らしながら仰向けに倒れ込んだ。
「…え?」
「…は?」
「…ライダー!?」
「大丈夫大丈夫、ふざけてるからソイツ」
「生体反応残っています」
「私の名は!純白と正義の騎士たるセイバー!サモエド仮面!」
しかし直ぐに立ち上がり、マスター三人はポカーンと何を考えていいのかよく分からない表情で変態を見詰めた。ダラダラ赤い液体を額からマスク越しに流れているサモエド仮面に代表して士郎が戸惑いがちに問いかける。
「な、何で生きてるんだ…?」
「む、少年何のことかね?…ああこれか。少年よ、美少女達よ。トマトと言う野菜を知っているな。中には果物だと言う者もいる。ちなみに英語だと発音は「トメィトー」アクセントはメィにある。”トマトが赤くなると医者が青くなる”と言う諺がある程ナイスに栄養素を含み、特に…」
「ちょっと待て!まさか…その赤いのがそれだと言うのか…?」
「イザクトリー!そのとおりだ。私は撃たれた瞬間に体をトマトにしたのだ」
「嘘吐きなさい。いくらサーヴァントだろうと変態だろうとそんなことできるはずないでしょ」
そう言ってコンテンダーの銃口を向けてくるイリヤに平謝りするサモエド仮面はポケットから粒揃いのトマトを取り出して説明する。
「ごめんなさい。実際は飛んで来た弾の一つ一つを音速で取り出したこれらで受け止めただけなんだ。タネを明かすと大したことないね、てへっ」
「「「…」」」
いやそんなことねーよ、と心の中でツッコむマスター三人。
「その名も奴のスキル、ギャグ補正(トマト)よ」
『聞いた時は耳を疑ったね』
そのライダーの言葉に、改めてサーヴァントがとんでもない連中だと納得する。彼の騎士王が聞いたら激怒しそうな話だが。士郎はこのシリアルムードに耐え切れなくなったのか、年相応に呆けていたイリヤに問いかけた。
「…それでイリヤ、お前は爺さんの事を知っているんだな?」
「…そうよ。アイツの息子である貴方を私は絶対に許さない。死んでもらうわ」
「させるとお思いですか?」
「っ…
改めて士郎にコンテンダーを向けた瞬間、何時の間にか拘束を解いていたアーチャーの音速の拳がイリヤの居た場所の背後の壁を打ち貫き、イリヤは数メートル離れた場所に移動。アーチャーは桜の前に陣取っているサモエド仮面に礼を述べる。
「そこの御仁、時間稼ぎナイスです。助かりました」
「礼はいらないさ、エンジェルガール。当然の事だからね!」
「あ、危なかった…アーチャー、酷いじゃない」
そうぼやいてキャリコを構え、剣型の使い魔を出すイリヤ。しかしぜぇぜぇと息を吐き、負担が大きいのは誰の目にも明らかだ。我慢が出来なくなった士郎は叫ぶ。
「もう止めろイリヤ!それ以上は命に関わるぞ!」
「キリツグに耐えれたんだからこれぐらい……やっぱり、子供の身体じゃ無理だって言うの…?」
「…やめないんなら、やめさせてやるわ」
膝をついてなお、銃を離さないイリヤに、警察官が使っているニューナンブ三八口径リヴォルバーを取り出して銃口を向けるライダー。士郎が止める間もなく、引き金が引かれて銃弾が放たれ…ボロボロのセイバーが緑の風と共に現れ、マスターソードで切り払った。
「フロルの風!デヤーッ!」
「セイバー!?」
『戦闘は間違いなくつい今まで行われていた。アレだけの距離を一瞬で…?』
緑の衣はボロボロで帽子はほとんど原型を留めておらず、マスターソードを持った左腕は焼け爛れておりどう見ても満身創痍だ。そんな姿の自らのサーヴァントを見て、イリヤは自分たちの敗北を悟った。
「せ、セイバー…?何でここに…」
「イリヤの危機に気付かない俺じゃないよ。それにしても、何でその魔術を使ったんだ。習得したばかりでまだ慣れても居ないのに、二連続で…ほら、赤いクスリ」
「ありがとうセイバー…サーヴァント二体も相手にするんだからこれぐらいしないと行けなかったのよ。そっちは?」
手渡された赤い液体の詰まった瓶の中身を飲むと、どういう原理か全快したのか辛そうな表情は消え、代わりに心配げな顔で見つめて来るイリヤにセイバーは困り顔で頭を掻いた。
「…あのマスター、俺よりも格上のサーヴァントを使役していたよ。恐らく今の俺じゃ勝てない。恥ずかしながら、宝具まで開帳したって言うのに…情けないサーヴァントでごめん、マスター」
「ううん。ちゃんと助けに来てくれたじゃない。撤退するわよ、セイバー。フロルの風は後何回使える?」
「…さっきも使ったから今の魔力じゃあと一度が限界だ。だが逃がしてくれるか?」
「それは大丈夫よ。…ねえ、お兄ちゃん?」
「…っ、なんだ?」
最優のサーヴァントの登場に身構えていた士郎はイリヤの笑顔に戸惑う。それは敵に向けられる物じゃない、家族に見せる様な笑みだったからだ。
「うちのセイバーも満身創痍だし、そっちも残してきたあの女が心配でしょ?だから今回は見逃してあげるわ。行こう、セイバー。…次会った時は覚悟しておいてね。
「逃がしませn…「待て!」っマスター!?」
イリヤの言葉に、緑色の光が内包された菱形の透明な結晶を取り出したセイバーに向かって跳び出そうとするアーチャーを士郎の声が止める。
「イリヤの言う通り、今はクロ姉の安否だ。それにお前の傷も治さないと、そうだろアーチャー?」
「…分かりました」
「…やっぱり、お兄ちゃんは優しいね。行こう、セイバー」
「ああ。フロルの風!」
結晶が輝き、翠の風が吹き荒れてそれに包まれ、姿を消してこの場から立ち去るイリヤとセイバーを見届け、サモエド仮面も加えた士郎達は引き返してクロナの元に向かった。
その頃、疲れ果てたクロナは、結果的にセイバーに勝ち逃げされ地面に仰向けで倒れているバーサーカーの傍に倒れ込み、少しの間夜の風を感じていたが意を決し口を開く。
「…負けたね」
「…ああ」
「…やっぱり、私に怒ってる?」
「当り前だ。サーヴァントと一人で相手するなんて何を考えている。…テメェは少しは自分の身を考えろ」
「…ごめん」
「ああ、腹が立つッ!…だがお前のために戦うのも悪くねえ。次は勝つぞ、マスター」
「…うん。傷、大丈夫?」
「言っただろう、何時もの事だと。治るのには少なくとも半日はかかる。その間、無茶はするな。死なれたら困る」
「…分かった。多分そろそろ士郎達が来ると思うから、霊体化して教会に戻って。…送れなくてごめん」
「気にするな、腹が立つ。俺の好きでやった事だ」
そう言って姿を消すバーサーカーに、クロナは寝転がりながら感謝の意を心の中で伝えた。
「…それにしてもどうしよう。父さんに怒られるな、これは…」
立ち上がり、周囲を見渡すクロナ。アスファルトは剥がれでドロドロになり、クレーターはでき、さらには地面が未だに焼けている。深山町の住人に見つかれば大変だ。後処理係の義父にクロナは無言で合掌した。
「こんな事態、どうやっても誤魔化し切れない……ガフッ」
「言峰ェエエエエエエエッ!?」
「正直事後処理がめんどくさい。ガクッ」
「く、く、クロナァアアアアアアアアアアアアッ!」
その帰宅後、保護者二人からガチで説教されたのは御愛嬌である。いや本気で怒られた。バーサーカーまで正座させられて怒られた。クロナは泣いた、街中で極力宝具は使わないと誓った。特に深山町ではもう二度と。衛宮邸やら柳洞寺があるから無理な気がするが…
「…父さん、王様。許してヒヤシンス」
「ヒヤシンスっ!?そこに直れ雑種ゥウウウウウッ!」
まだまだ明けない、運命の夜は深かった。
最後までシリアスな訳がない(教訓)サモエド仮面とギルさんはギャグ要員。
そんな訳で
け、決してイリヤの使い魔じゃ戦い方をそこまで思いつかなかった訳じゃ無いんです!正直弱いとか全然考えてませんし!ただ、サモエド仮面のトマトネタを書きたかっただけなのに何時の間にかイリヤが魔改造されてたんです…決して原作イリヤじゃ瞬殺されるとか考えていた訳じゃ。ガチで瞬殺可能なアーチャーがいるのですけども。
…ところで桜って黒くない時はどんな魔術使えるんだろうか…治癒辺りと強化はさすがに使えると思うけども…おかげで一人だけ非戦闘員です。しょうがないね、うん。
次回はキャスターを出せればなぁと思います。原作みたいに士郎が瀕死になってない訳ですし。多分主人公の出番は少ないと思いますが、次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。