Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争   作:放仮ごdz

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バーサーカーVSセイバー後半戦。深山町がヤバいこの対決、楽しんでいただけたら幸いです。


#5:「貴公は貴公の道をゆけ」「…借りて行く」

時をも超え輝く退魔の剣(マスターソード)

 

魔王の支配した世の闇を切り払う聖剣に宿った退魔の光を、聖三角(トライフォース)状に斬り裂いて一瞬のみ光の斬撃を溜め込み、聖三角を完成させると同時に一気に解き放って文字通り魔を退ける、彼の【約束された勝利の剣(エクスカリバー)】に匹敵する対魔宝具。

 

 

その一撃はバーサーカーが交差して防御しようとした鋼の如く堅き両腕を六本全て消し飛ばし、そして満身創痍の身にした。バーサーカーの傷口からはエーテルが大気に漏れ出し、腕の付け根からは内部の機械部が見え火花が散っている。

 

 

「バーサーカー、大丈夫!?」

 

「何時もの事だ、問題ない」

 

 

アスファルトの触手をセイバーに襲い掛からせながら駆け寄るクロナに、バーサーカーはぶっきらぼうに応えるがどう見ても問題だらけだ。ふら付いてこそいないが、このままでは明らかに不味い。これでは攻撃も、防御すらできない。いやバーサーカーは元より防御なんてそんなにしないのだが。

 

 

「アレを凌ぎ切るなんて…正直、驚いたよ」

 

「私としてはアスファルトを全部粉々にしてしまったのが驚くべきことなんだけども」

 

 

何時の間にか、アスファルトの触手は全て凍り付き、砕け散っていた。これでは改造したアスファルトも意味が無い。クロナは少しでもセイバーの動きを止めようと黒鍵を構え改造をしようとしたその時、信じられない事が起きた。

 

 

「オラァアアアッ!」

 

「なっ!?」

 

 

両腕を失ってなお、飛び出し踵落しを叩き込むバーサーカーの一撃をマスターソードの腹で受け止めながらも驚きに表情を染めるセイバー。

当り前だ、普通ならば腕が無くなった時点で激痛から動けなくなるはずで、とても戦える状態ではない。しかしバーサーカーは歯を食い縛り、一度後退してから突撃、強烈な膝蹴りを叩き込んだかと思えば回し蹴り、そのまま踵落しと、己を防戦一方にまで叩き込んできたのだ。驚かないはずがない、むしろ何で自分が押されているのかセイバーの豊富な経験でも理解が追い付かない。

 

 

「くたばれェエエエエエッ!」

 

「ぐっ、あっ…!?」

 

 

ヤクザキックで盾を押し退けてから至近距離で叩き込まれた頭突きに、セイバーの視界は歪む。咄嗟にマスターソードを振り上げるも避けられ、再び連続攻撃の嵐。一撃一撃が重く、対処しきれなくなってくる。明らかに、先程よりも力が上がっていた。

 

 

「何でだ、何でそこまで傷を負って戦える…?!」

 

「気に入らないだけだ!一人で背負いこもうとするマスターもッ!平気で人を殺すと言いやがるあの子供もッ!人の痛みを煽り苦しめようとするあの男もッ!――――女子供を情け容赦なく殺そうとする貴様もッ!」

 

 

それは、怒りだけで突き進んできた男の、この現界で得た全ての怒り。

 

 

「変わったようで大事な所だけ何一つ変わっちゃいないこの世界もッ!そして、守るべき女に心配させてしまっている様な俺自身もッ!全てが全て、気に喰わぬッ!」

 

 

怒髪天。バーサーカーは赤いオーラの様な怒のマントラを纏い、全身のラインを光らせて叫び、渾身の踵落しを叩き込んだ。

 

 

「大!回転斬りッ!」

 

 

それを受け止める、回転で遠心力を加えて赤い円の軌跡を描いて振るわれたセイバーの斬撃。両者の攻撃は拮抗し、その衝撃波から周囲が砕け散って行く。イリヤが人避けの結界を張っていないと住民が出てきて騒ぎになっただろう。だからこそ、この神々の対決とも言える攻防を見ていたのはクロナと、そしてそれを見物していた二人組だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりあの緘黙な嬢ちゃんがバーサーカーのマスターだったな、嬢ちゃん?」

 

「ええ。あの口ぶりから予想はしていたけど……まさか自分のサーヴァントに痛手を負わせてまでする事かと思っていたからね。あの尋常じゃない再生の速さなら納得だわ。アレは多分、魔力以外のエネルギーも消費している。そうでもないとクロ自身の火力の説明がつかない」

 

「だな、その通りだと思うぜ。彼奴は多分、俺よりも古い時代の英霊だ。油断しちゃならねぇ相手だな、あのマスター共々」

 

「元より油断する気はないわ、何せあの綺礼の娘だもの。それにしてもまさかアインツベルンが出て来るなんて…あのままだったら衛宮君と桜が死んでいたかもしれないし、其処はクロに感謝ね」

 

 

そう会話をするのは、離れた場所から戦況を窺っていたランサー陣営。綺礼に事情を聞こうと教会に向かった所、ちょうどクロナ達が来たので綺礼に会わずに様子を窺う事にしたら案の定ビンゴだ。一番警戒しないと行けない相手はアインツベルンでも外からの魔術師でも無い、よく知っているあの少女である。

 

 

「まあセイバーの真名が少しでも分かったのは収穫ね。リンク、海に沈んだと言われる大陸ハイラルに伝わる何人もの勇者の総称。その中の一人なんだろうけど…判別は難しいわ。もう一つ気になるのは…あれって、どう見ても阿修羅なのよね」

 

「だな。だが嬢ちゃん、聖杯戦争ってのは基本的に神霊の類は召喚されねぇんだ。俺みたいな半神はともかく、阿修羅ってのは正真正銘の神様だ。呼び出せるはずがねぇ存在だぞ」

 

「…つまり、阿修羅もしくはそれに準ずる英霊と言う事ね。やっぱり得体が知れないわ…」

 

「ところであの嬢ちゃん、ピンチだぜマスター。助けてやらねえのか?」

 

 

セイバー、そしてバーサーカーと戦いたそうにうずうずしているランサーに凛は溜め息を吐き、呆れたように言葉を述べる。

 

 

「まったく…アンタねぇ、これは戦争なの。仲良しごっこじゃないのよ、巻き込んでしまった衛宮君はともかく…桜やクロを守る義理は私には無いわ。ここで潰れてくれた方が勝利に近付くって物よ」

 

「やれやれ。魔術師ってのは面倒な生き物だな。合理的に考えやがる、だがな。まだ一日しか付き合いの無い俺だが…これだけは分かる、アンタはお人好しだ。これを放って置けるほど嬢ちゃんは冷血じゃない。なのに何で、黙って見ていやがるんだ?言ってくれれば直ぐ行ってサーヴァントだけを倒してくるぜ俺は?」

 

 

そう笑ってくるランサーに、凛は諦めたかの様にフッと笑い口を開く。それは、何時もの事だと慣れている雰囲気だった。

 

 

「…必要ないからよ。付き合いが長いから知ってるの。あの子はね、決して諦めようとしない。折れないで諦めないで、そして打開策を見出してしまう奇才なのよ。諦めの悪さ。それがクロの特技よ。そしてサーヴァントはマスターに似るって言うし…あのバーサーカー、瀕死にした程度じゃ多分、止まらない」

 

 

 

 

 

 

 

凛の言う通りだった。腕を失おうとも闘争心を失わないバーサーカーは、そのままセイバーのマスターソードを押し退け、サマーソルトキックを放って空中に蹴り飛ばす。

 

 

「ぶちのめす!」

 

「なにっ…!?」

 

 

そして渾身の頭突きが腹部に炸裂、突風が巻き起こりセイバーは吹き飛ばされ…そして背中から叩き付けられながらも受け身を取り立ち上がり、何を思ったのかマスターソードをしまい、その手にポーチから取り出したのは…何と、彼の身の丈はある巨大な剣身の両手剣。その名も「ダイゴロン刀」だ。

 

 

「…お前にはこれがいいみたいだ。行くぞ!」

 

 

振るわれるそれの、さっきまでとの一番の違いはリーチ。そして一撃の威力。踏み込んでは行けない、一撃の威力が桁違い。バーサーカーは受け止める事が出来ず、避けて避けて隙を探す。しかし、隙が見当たらない。

 

 

「デヤーッ!」

 

「グゥッ…!?」

 

「バーサーカー!」

 

 

強烈な斬り上げ攻撃を受け、背中から倒れ込むバーサーカーに思わず駆け寄るクロナ。そして彼に触れた時…謎のビジョンが流れて来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――それは、月面での闘い。バーサーカーの、かつての師との対決の記憶。

 

 

「さあ、猛り狂おうぞ!」

 

「天上の美姫を抱くとも―――――天下の銘酒を干そうとも―――――慰められぬ無聊を託っておったが…この一撃、一撃が…我の血を沸かす!喰らうに値する(オトコ)と認めようぞ、アスラ!」

 

「行くぞ、行くぞ、行くぞ!アスラアアアアアアアアアアアアッ!」

 

「なんと愉しきことか!この世界は、まさに我らのためのもの!これが最後の一太刀となろう、見事受けてみせい!」

 

 

…何とも武人なお師匠である。「欲」のマントラに適合した八神将にして七星天の一人、オーガス。それが彼の名。地球をも貫く程に伸縮する、物干し竿にも見える一本の刀を手に、バーサーカーを追い詰めるその力は圧巻の一言。本来ならば彼は勝てなかっただろう。しかし、決定的な違いがバーサーカーに勝利をもたらした。

 

 

 

「悪に会わば悪を砕き、善に会わば善を砕く!今一度言おう、我は貴公であり、貴公は我だ!」

 

「同じであってたまるか…!」

 

「ではどこが違う、何が異なる!?」

 

「…貴様には、死んでも解らん!」

 

「ハッハッハ!…ならば、拳をもって示せ、アスラ!」

 

 

それは意地、苦しむ娘の存在からなる底知れぬ怒り。たったそれだけが、腕をもがれ腹を地球ごと貫通され、満身創痍のバーサーカーの拳がその刀身を叩き折り、残ったそれを奪い取り渾身の一撃を決めた要因だった。

 

 

「戦いきった。愉快、この上なし!…………………最後に立ちし者が絶対に正しい。ならば、アスラ。貴公は、貴公の道をゆけ」

 

 

その言葉と共に、満足気な笑みを浮かべて消滅するオーガス。バーサーカーは新たな敵の襲来を察知し、その刀を蹴り付け口で持ち、迫り来る星の災厄の大群に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

そこで視界は目の前の現実に戻る。そこには立ち上がり、そして足下に出現した、折れた日本刀を蹴り付け眼前に浮かばせるバーサーカーの姿が。

 

 

「…借りて行く。宝具開帳、無明鬼哭刀(むみょうきこくとう)

 

 

瞬間、バーサーカーは刀の刀身に噛み付いて口で構え、刀身が怒のマントラで染まり長く伸びると驚異的な速さで突進した。

 

 

「デヤッ!」

 

「フンッ…!」

 

 

ダイゴロン刀の一撃を、口に構えた刀で受け止め、それを軸に跳躍するバーサーカー。そして首を動かして身体ごと振り降ろすと、刀身は巨大な炎の刃と化し横に避けたセイバーのいた場所を融解させ切断。そのまま着地して横に一薙ぎ、セイバーはダイゴロン刀で受け止めるも力が足りず押し返される。

 

 

「ウラァアアッ!」

 

 

そのまま一回転、二回転、三回転。回りながら何度も何度も刀身を叩き付け、剣術なんて技能でもないのに最優たるはずのセイバーは押されて行く。

 

 

「堕ちろォオオオオッ!」

 

「なんて…重い…!?」

 

 

バーサーカーは再び跳躍するとペッと刀を吐き捨て、今度は両足で握るとそのまま急降下斬り。刀身に右手を添えたダイゴロン刀で受け止めようと試みるセイバーだが予想以上の重さに、片膝を付く。それを見るとバーサーカーは頭突きを叩き込んで体勢を崩させ、刀を宙に投げ捨てると再び口で刀身を噛んで構え、踵落しを叩き込んだ。

 

 

「ッ…フロルの風!」

 

すると緑の閃光が眩き、セイバーは何時の間にかバーサーカーから十数メートル離れた所に立っていた。クロナはそれを見て訝しむが、バーサーカーは関係ないとばかりに再度突進。セイバーはダイゴロン刀では敵わないと見たのかポーチに戻し、代わりにマスターソードを抜いて盾と共に構え、こちらも突進する。

 

 

「時の女神に七人の賢者達よ…我が聖剣に彼の者を打ち倒す退魔の光を宿したまえ!」

 

「……来いッ!」

 

時をも越え輝く退魔の剣(マスターソード)!」

 

 

そして、炎を宿らせた刀身と退魔の光を宿らせた剣身が激突。クロナは咄嗟にアスファルトの剥がれた地面に手を付け分厚い壁を形成、さらに強化をかける。同時に魔力と怒のマントラの奔流による衝撃波が辺り一帯に広がった。




と言う訳で発動、バーサーカーの対人宝具『無明鬼哭刀』
11.5話の大暴れがそのまま宝具として昇華した、今は亡き師匠・オーガスから借りたままの名刀。大軍でもいけますが結局もみくちゃにされてたので対人が妥当かと。

ストーカーしていた凛にバーサーカーのマスターだとばれたクロナの今後は一体どうなるのか。一番警戒するべきマスターとか言われてますがそれはどうでしょうねぇ…(意味深)

次回はちょうどその頃の士郎達VSイリヤ。サーヴァント二体相手にイリヤはどう戦うのか、こうご期待。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。

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