「八重先輩はナニを飲んでるの?」
そう言って無警戒なアタシの手に在るストローホッパーのストローを口に含むと中身を飲んで
「市販のスポーツドリンクに似てる気がするんだけどな…」
首だけ前倒しで考えながら疑問を口にするヒエンに
「市販の粉末タイブだよ、それを薄目に作ってるだけだ…」
事態を把握出来ないままアタシは彩加を眺めていた
サードゲームが始まりコートに立つと雑念は一旦排除されヒエンのサーブから試合は再開された
ヒエンのサーブはこの四人の中じゃ最も早く多分球質も重いフラットサーブだ
でもぶっちゃけたらこの四人中じゃって話で今度の夏の大会で全国に出れるかって聞かれたら現状じゃ無理だろう
動きを見てはっきりと彩加との違いがわかる
アタシの所見で言うと彩加の動きはダブルスを組んでいてもシングルスのプレイヤーのそれなんだけどヒエンの動きはダブルス、特にミックスダブルスでミドリが動き易くなるように…
ただそれだけを考えながらプレイしてきたのがスゴくよくわかる
それが正確な表現かは知らないけどそう、きっとこれがよく聞く安心して背中を預けられる相棒って言うヤツに違いない
でもそれはシングルスプレイヤーの思考じゃないしそのままじゃシングルスプレイヤーの動きはできないハズだしできないからシングルスプレイヤーとしては全くの無名なんだと思う
「ゲームウォンバイ八重、ヒエン4ー0」
その声でやっと意識が日常に回帰したアタシ大きく息を吐き出しスポーツドリンクを飲んでもう一度大きく息を吐き出した
「初めて組んでみたけどスゴく動き易いのな…ヒエンと組むのってさ…ブラコン妹の気持ちがちょっとだけわかった気がするよ」
そう言われて驚いてるヒエンに
「違うのか?アタシはてっきりお前達兄妹はシスコンとブラコンと思ってたんだがな、因みにアタシはシスコンだし家の親父は娘至上主義のドタコンだからな」
苦笑いでそう答えると
「ふ~ん、先輩妹さんがいるんだ…」
そう呟いたらしいけどアタシには聞こえなかった
コートチェンジのインターバルを経て
「相手はコンビネーションに戸惑っているから今の内に一気に叩く」
アタシのその言葉に頷くとコツンと右の拳を差し出したからアタシも右の拳を軽くぶつけて互いの健闘を祈った
アタシのサーブから始まるフィフスゲームのファーストサーブは角度跳ねる方向を変えたものでその予想外の変化に対応がしきれずレシーブミス
打球は無情にもネットに突き刺さりフイフティーンラブ
ようやく第一セットのクライマックスですが…