同居人   作:春の雪舞い散る

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 少し遅くなりましたが葉山隼人聖誕祭のSSです

 日頃塩対応なだけに年に一度くらいは?


一日遅れのバースデーデイト

 

 今日はアタシにとってはただの月末の一日

 

 早朝、新人戦制覇を目指す彩加の朝練に付き合うアタシはアクビを噛み殺しながら未々喧騒の残る総武校に登校した

 

 

 お昼休みになりいつもの様にみんなで集まってお弁当タイム

 

 アタシがいつもの様に彩加にお弁当を渡そうとしたら

 

 「ゴメン、ナゼか今日はお母さんにお弁当を持っていけって…」

 

 って下手な嘘を吐くけど仕方無いからアタシも調子を合わせて

 

 「そっか…しゃーねぇーな…アタシも我儘言って彩加を困らせる重いオンナにゃなりたくねえからな…」

 

 そう言ったもののこの弁当どうするんだよ?

 

 そう思って内心溜め息吐いてるアタシに

 

 「勿体ないだろう?」

 

 そう言われて

 

 「問題ない、ただでさえ少なくない敵を更に増やしてまで弁当ひとつをなんとかする気はねぇっ!」

 

 そう言って彩加に渡す予定だった弁当をカバンにしまうとざわつく教室内だが

 

 「隼人に渡したら渡したでごちゃごちゃゆーんだから黙ってろっ!

 

 優美子、わりぃけどこんなとこ(教室内に)居たくねぇから他所に行く」

 

 そう言って弁当を持って席を立つと放課後まで戻る事はなかった

 

 

 アタシが教室を出ていった後の話

 

 「だから言ったでしょ?八重ちゃんはどんな意味でもこそこそとされるのを嫌うって

 

 雪ノ下さんのお姉さんが用意したサプライズだって拒否したんだよ?」

 

 そう彩加に言われクラスの女子どもには

 

 「総武女子の料理上手女子のベストファイブに入るだろう八重の手作り弁当は女のあーしだって戸塚が羨ましいくらいなんだから隼人が羨ましがるの無理無いしっ!

 

 それを言わないで八重をキレさせる隼人もヘタレなんだしっ!」

 

 そう言って呆れてたんだってさアタシは懐かしのベストプレイスで一人静かにオペレーションを突っついてたから知らないし興味ない話だけどさ

 

 

 

 アタシがカバンを取りに戻ったのは部活が始まってしばらくたってからの事

 

 部活が始まって部室で顔を合わせると相変わらずやかましい結衣を睨み付けて黙らせてから

 

 「ここも空気がわりぃ、雪乃には悪いけど今日は帰る…どのみち予備校有るからゆっくりできないし」

 

 そう言って今日は部活もフケる事にして…ナニしよ?

 

 あんまし早く帰ると小町が煩い

 

 小町に話してなんとかなる話じゃないんだだから口を挟むなと思う

 

 アタシにそう言わせて気まずい空気にしたのは何度ある?

 

 いい加減学習しろっ!

 

 面倒臭いから屋上で空を眺めてたら沙希来て

 

 「予備校はどうするのさ?」

 

 そう聞いてきたから

 

 「未だ早いからここで時間調整、晩飯もあるからな」

 

 そう答えるアタシに

 

 「あたしも人の事言えた義理じゃないけどなんであーまで葉山を嫌うのさ?」

 

 そう聞かれたから

 

 「あの場であんな回りくどいことしてないで今日は誕生日だからって言って女子どもを黙らせてりゃアタシだって仲間だからな

 

 だがアイツはそれすらしない

 

 そんなヤツ相手に誤解の種蒔くような事はしたくねえ、アタシが好きなのは彩加と

蒼空だけだ

 

 まぁ蒼空に関しては沙希同様に可愛い弟としてだがな」

 

 そう言って再び蒼空を見上げるアタシを見てるアタシは悪くない

 

 

 

 予備校の授業が終わり夜の公園で弁当の残りを片付けてるアタシは侘しいからと言って頭の悪いヤンキー?チーマー?それとも業界人?

 

 そのいずれにせよ相手にする気の無い連中だからイグナイトを土手っ腹にぶちこんでやったら笑い声がしたから振り向いたら灰色の人がいた

 

 「あ、灰色の人…」

 

 そう呟くと灰色の人は呆れ顔で

 

 「弱いヤツしか居なかった良かったものの…全く何を考えてるんだ?送るからさっさと帰れっ!」

 

 そう言われて車にのせられて家に送り返された

 

 

 翌日はバイトの日だ

 

 開店時間よりは約出勤するアタシと沙希は店のオーブンフル稼働でクッキーを焼いている

 

 土日限定のサービス品で今やお店の名物と化している一品だ

 

 しかも焼きたてが食べられるのは開店後の一時間限定の品だから開店直後からの大にぎわい

 

 で大抵の客はその後のランチを食べてから席を立つからし烈な席取りゲームと化している

 

 今日はその中の一人に隼人がいた

 

 内心溜め息を吐きながら営業時間だから営業スマイルで応対する

 

 ソコには何もないのだからな

 

 サービスモーニングを(紅茶はカップてはなくティーサーバー、サンドイッチ、ボイルソーセージ、ハッシュドポテトのセットで千円)頼み早速お店のチャットに書き込み

 

 結構メイド達にも人気の高い客で営業的な意味合いで店長も大好きであるのでアタシに

 

 「隼人君って好い人だよね?」

 

 と、言って押し付けてくるからマジ勘弁

 

 アタシ等は手の空いてるメイドが控え室のパソコンでレスを返すから忙しいアタシは書き込みしないと言うかほとんど見ない

 

 ランチタイム突入、アタシと沙希はバタバタとフロアを駆け回る…

 

 コンパスが違うから沙希はアタシほどは駆けてないけどな

 

 今日の日替りランチはAランチ、ハンバーグプレート(デミグラスソース煮込みハンバーグと野菜炒めにポテサラとコンソメスープ税込1,500円)

 

 Bランチ、オムスパセット(いわゆるナポリタンを卵で包んだものとシーザーサラダにコンソメスープ税込1,200円)

 

 で、隼人が頼んだのはAランチでゆっくり味わっている

 

 ランチタイムが終わりアタシたちも交代で休憩に入り最後のメンバーの休憩が終わりアタシと沙希の勤務時間が終わるのが午後3時…

 

 「で、なんでお前がここに居るわけ?」

 

 従業員用通用口で出待ちしている隼人にそう声を掛けると照れたように

 

 「八重とデートがしたくてな…」

 

 そう言われて

 

 「アタシには彩加って相思相愛の彼氏が居るんだけど?」

 

 そう答えると

 

 「その程度で諦めるつもりはないよ」

 

 そう言われて溜め息を吐いて

 

 「アタシ的には諦めてほしいんだけど?」

 

 そう呟いて

 

 「仕方無い、昨日誕生日だしな…で、この後はどうするのさ?」

 

 アタシがそう聞いたら

 

 「映画を観たいが少し時間が有るから映画館に近い喫茶店でお茶しよう」

 

 そう答えるとアタシの手を引いてその喫茶店に向かった

 

 渋目の内装のお店でBGMはジャズが流れる大人の雰囲気のお店で初めて来たタイプの店で

 

 「な、なぁ…こんな本格的な店にアタシの飲む甘いモノってあるのか?」

 

 そう小声で聞いたら

 

 「カウンターの中のマスターがウイン風のコーヒーはいかがかな?お嬢さん」

 

 そう言われて

 

 「あー、それでお願いします」

 

 そう答えると

 

 「承知しました、隼人君はいつもので良いね?」

 

 そう言われて隼人も

 

 「はい、お願いします」

 

 そう答える隼人に構わず初めて入った空間を見回すアタシに

 

 「珍しいかね?」

 

 そうマスターに聞かれたアタシは

 

 「普段入るのは喫茶店よりファミレスかファーストフード…後はパイト先のメイド喫茶くらいですからね

 

 このお店とは方向性が違いますよね?ただ…」

 

 そう言って言葉を区切るアタシにマスターが微笑み続きを促すから

 

 「そうただジャズはよくわからないけどこの雰囲気は悪くない…騒がしいバイトに疲れたアタシの心を落ち着かせてくれる…」

 

 そう言って目の前に出されたコーヒーの香りを嗅いで思った

 

 「やっぱり違いますね…アタシはそれほどコーヒーには詳しく無いけれど一応お店でお客様にお出ししてますからそれなりに研究はしたけどやっぱり我流だったんだなって…」

 

 そう言って絶望の溜め息を吐いてしまった

 

 コーヒーの薫りと静に流れるジャズのお店…

 

 「明日もバイトだから都合がつくなら沙希を誘って来ようかな…」

 

 そう呟やいて

 

 「良い店教えてくれてサンキューな…」

 

 そう言って最後の一口飲み干し

 

 「時間、そろそろじゃないのか?マスター、勘定…「デートだって言ったろ?なら…こうゆー場面は男の俺に花を持たせてくれないかな?」」

 

 「「If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.」

 

 ってヤツか?」

 

 そう言って笑うアタシにマスターが  

 

 「ほう、和訳ではなく原文のそのセリフが出るとはね…」

 

 そう言われて

 

 「古い字幕の映画をDVDで何度も見ましたし本も原文を何度も読みましたから…結構好きなんですよね、フィリップマーローって…

 

 わかった、ここは隼人の男を立てておく場面なんだよな」

 

 そう言って支払い済ませて映画館に向かった

 

 「これか?」

 

 上映されている映画はリバイバル映画で前編、後編の二部作のラブ&アクションモノで久し振りに見る邦画の上にしかもアタシ自身は初めての劇場での鑑賞

 

 「宜しければこちらのカップルシートはいかがですか?」

 

 そう言われてそのチケットを買う隼人に

 

 「ポップコーンと隼人も紅茶で良いか?」

 

 そう言ってアタシが隼人に見せたのはストロー二本ざしのアイスティーで隼人ら飲み物ふたつ買っても平気だろうがアタシには持ちきらないから迷ってたらこれを勧めてくれたから買ったんだが…

 

 「イヤだったら何か違うの買ってくるぞ?」

 

 そう聞いたら何か嬉しそうに

 

 「イヤ、そろそろ始まる時間じゃないのか?」

 

 そう言って席を勧めてくれたから腰を下ろして開演を待った

 

 何かリッチなイスだなとか思いつつ

 

 ポップコーンをつまみながら映画を見るアタシはスリリングなアクションと軽妙な主人公とヒロインのやり取りに引き込まれていった

 

 第一部が終わる少し前に席を立ちお手洗いを済ませ紅茶のお代わりを買い席に戻ると今度隼人がお手洗いに向かった

 

 その戻ってきた隼人はバーガーセットを持ってきたからハンバーガーは有り難くいただきポテトは映画を観ながらいただく事にして第二部が始まった

 

 一部にはなかったカーアクションが格好良かったな

 

 え?恋愛部分についてはなにもないのかって?

 

 …………無い、よくわからないし下らない駆け引きがウザいしあざとい

 

 アタシには理解も真似したいとも思わないしあんな風には振る舞えないな…

 

 彩加に聞いてみようアタシってヤッパ可愛いげ無いよな?って…

 

 映画が終わって午後九時少し前で小腹空いてるって感じだからサイゼに行く事に

 

 ドリンクバーと隼人はピザでアタシはフォカッチャを頼んだ

 

 映画の感想を話したりして結構楽しかった

 

 家に送ってくれたのが11時近くで既に限界近いアタシは小町を相手にする事なく眠りに落ちたのだった




 
 少し長目ですがいかがでしたでしょうか?

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