真かみさま転生200X(未完)   作:tbc

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変容の水曜日1

 

>4日目(水)6:30

 ななみちゃん、おはようバズーカはやめなさい。

 

 

 

>4日目(水)7:00

 本日は昨日の働きをねぎらって、主にジプスのゲスト異能者たちを対象とした健康診断をするそうな。まあ実際は異能者としての素質・能力を調べる思惑も孕んでいるのだけど、それを説明したマコトさんはそんなこと知らないのでさておいて。データ取りをされるのはあまり気が進まないが、叛意に気づかれるのを無駄に早める必要は無いと承諾する。

 ま、その前に4体目のセプテントリオン、『メグレズ』の襲来を察知したんですがね。局内にアラートが鳴り響き、ジプス局員およびゲストたちの出動が要請される。この時間に出現するのは本体ではなく、射出された奴のビット、「芽」だが……メグレズはセプテントリオン随一の物理型ということもある。TRPG仕様で強化されている可能性を考慮し、彼らに同行して事前にデータを確認しよう。

 朝飯もまだで空いたお腹を抱えながら東京タワー近辺へ。予想通り、殻が壊れた後のドゥベみたいなカプリコのような「芽」が鎮座していた。ニカイア産アプリのアナライズではメグレズと表示されるところが、ミスリードを誘わせる。

 問題の実力だが、物語も中盤に入ってきたこともあり、露骨な弱点が減ってきた。とはいえ芽はボス特性を持たず、BS全般が弱点ということもあり、【ハマ】や【ムド】を撃てば一撃で倒せるだろう。それに一手使わせられるのは癪だが……かといって【S地母の晩餐】(頭についたSはSpontaneous、自動発動するスキルの意)なんて物騒なスキルを持っており、無視するわけにもいかない。TRPG版の地母の晩餐は【物理貫通】効果を持ち合わせる格闘攻撃スキルで、物理吸収や反射を持っている相手にも通用するため、必ずダメージを与えてくるのが嫌なところよ。

 

 データ検分を済ませたところで、主人公たちが処理にかかる。弱点を見ぬいた主人公が邪鬼ウェンディゴの【ブフ】でFREEZEを誘発、凍ったところに追撃の物理攻撃を仕掛けることで奴の地震(地母の晩餐)を連発される前に破壊した。戦闘不能等の被害も無く、楽勝であった。

 あまりの敵の弱さに主人公たちは戸惑いが先に来て、勝利を喜べない様子。そして自然とこちらに視線が向く。俺を困ったときの知恵袋にするんじゃない。

 あれは本体じゃない、メラクのビットと同じレベルのものだろうと答えておいた。となれば本体がどこにいるのかって話になるが、そこはジプスの仕事だとヤマトやマコトさんにぶん投げた。

 ともかく朝飯前の一仕事終わらせた次は健康診断である。8時半に開始するので集合とのことだ。

 

 ななみちゃんが代々木に行くというので、カーシーを2体貸し出して最寄りの場所まで【トラポート】させた。

 使った分以上に補充しなきゃ。

 

 

 

>4日目(水)8:00

【大地の声】でそのへんの精霊から紅の篭手をむしり、オーパーツで智慧の輪をむしる。後者はもったいないけど、主にリリス対策故。

 昨日オセから剥ぎとったデスブリンガーをジプスに売りつける、12万マッカなり。相変わらず上位アイテムの値段は桁がおかしいな。カーシーを10体セットで作ってもまだ余ってたので、そろそろミタマに手を出す。

 俺、一度くらいスーパーピクシー作ってみたかったんだ……

 

 

 

>4日目(水)8:30

 運以外の主要4能力値を御霊で最大まで上げ切り、マッカが半減したところでこれ今の手持ちじゃ完成させらんないなと冷静になり合体中断。全門耐性も付与してあげたかったけど、また金が必要になった時とかに残しとかんと困るし。

 

 健康ー診断ー。男女別に分かれて色々とチェックを受ける。詳しい内容は省略、しかし主人公大地少年ジョーさんの3人が見当たらないあたりさては覗きに行ったか、お主らも好きよのう。

 おトメさんに診てもらった後に、再度メグレズ襲来のお知らせ。憂う者登場のタイミングだし、戦闘はないな。よし任せた。俺は俺でこれから大事な用があるものでな。

 マコトさんに昨日のロナウドの件で、民間人の暴動を抑えるために幾つか動きたいことがあると告げる。本当は民間人を集めてジプスに対抗するためなのだが……真意を隠してマコトさんに頼むと、彼女も昨日は思うところがあったらしく許可を下ろしてくれた。何なら早速ジプスの局員を借りてもいいと提案されるが、交渉に赴くなら俺一人で十分なこと、これからメグレズの芽の掃討に忙しくなって手が足りなくなるはずなので断った。

 

 

 

>4日目(水)10:00

 東京都心部から離れ、小田急線沿いに世田谷区を進み、成城へ。高級住宅街として有名なこの地区に大城戸翁が引きこもっている。

 ポラリスの影響で、東京タワーから離れるほど侵食が進んで危険になっているのではないかと危惧したが、実際に足を運んでみれば今のところまだ大丈夫そうである。……しかし明日を境にこの辺も無に飲み込まれるんだろうなと思うと、少し物哀しいものがある。

 

 成城の某所にある邸宅を訪れ、ユーバー・ゲシュタルトの名を出すと屋敷の奥に通される。

 秘書に案内された先は過度な装飾のない、机やタンスが黒や木製の落ち着いた色合いの家具で揃えられたゴシック調の部屋だった。そこで暫く待っていると、後から悠々とした、しかしながら整列する豊かな髭を蓄え、足元まで伸びるのに皺の目立たないローブを身につけた姿からは全く隙が見えない姿を晒した、大城戸老がやってきた。

 交渉に身を固めていると、気張る必要はないと制される。その上で大城戸老は、戦には関われないが必要な知識だけは提供出来る、とこちらの要望はお見通しだとばかりに先手を取られた。流石は、一説には片目と引き換えに未来予知を得たとされるオーディンの化身だけはある。

 無駄な言葉遣いは相手の気を損ねるだけか、そう考えた俺は東京の政府が機能しておらず、ジプスが国家権力をかざして都心部を牛耳っている現状を知っているかの話から入り、続いてジプスに不満を持つ市民は大勢いるが、多くはジプスの権威や力に握りつぶされていること。ヤマト局長の悪巧みを知り、俺を含めたジプス内にいる現状への反感を持つ局員たちもいるが、『侵略者』迎撃のためにジプスの必要性から離反出来ずにいることを話し、俺はジプスに不満を持つ人々の受け皿となり、またヤマトの悪巧みの対抗馬となれる勢力を作りたいこと、そのために大城戸老の持つ国家権力への伝手や、あるいは魔術的・悪魔的な知識を借りたいことを告げた。

 大城戸老からはどうしてそのような結論に至ったか、あるいは俺自身のことや動機、理由について幾つか質問され、俺の出自に関わるがどうしても言えない(転生者である)ことだけは伏せて、別世界で経験したことであると明言した上で、できる限りの内容は説明した。

 

 ふうむ、と困ったように髭を撫でる大城戸老を前に、幾らなんでもしゃべりすぎたろうかと汗を垂らす俺。しかし、覚醒者を超えた超人だがあくまで人間の範疇であるヤマトと違い、神族の加護どころか神そのものの転生者である大城戸老とは、戦闘データでは測れないその身に秘める力はあまりに大きな差があり、ウソをついて見ぬかれないとも限らない。また、魔神オーディンはLight属性……正義や博愛、あるいは信念を大事にするスタンスであることから、より正直に交渉した方が相手の好みに沿う確信があった。

(もし交渉が失敗しても、政治から引退した大城戸老なら俺の情報を無闇に用いることはないだろう、と思ってたところもあるけど……)

 それは正解だったようで、困った顔は変わらないが俺の主張には納得した、と話す大城戸老。しかし、侵略者の首魁……『ポラリス』の力を借りず人間の手で頑張りたい、と言う割に悪魔の力は借りるのはアリなのかね?と俺の動機と目的の、特に痛いところをところを突いてきた。確かに、『ポラリス』も(明言されてはいないが)悪魔であり、俺が力を借りたいと思っている妖精たちや、目の前の大城戸老も魔神オーディンの化身(転生体)で、いわば一種の悪魔である。手段だけ言えば、ポラリスにせよその他の悪魔たちにせよ、悪魔の手を借りることは変わらないのだが……。

 しかし俺は、世界を自発的に変革するか、それともポラリスによって強制的にされるかで世界のその後は大きく違うと強く主張した。『ポラリス』はアカシックレコードを操作し、世界を直接書き換える権能を用いて強制的に人間の意志ごと世界を変革する力を持つが、変革した後の世界の状況を合理的でないと違和感を抱いた人間がいたとしても、アカシックレコードによりその人間の違和感は潰され……世界は進化も変化もなく、人間はずっと現状を維持、あるいは緩やかに衰退していき死滅する可能性が危惧されることを話した。これは、デビルサバイバー2のロナウドルートで進んだ場合のエンディングの様子で、俺が最も恐怖を覚えたことである。

 アカシックレコードが対象にするのは、人間の意志だけ。まさしくセプテントリオンのように、地球や世界の外から新たな悪魔や“侵略者”が訪れた時、アカシックレコードで意志の操作を受けた人間は“侵略者”を退けるだけの進化や目覚めを引き起こせるのか、果たして疑問である。そういう長期的な視点を見据えると、とてもじゃないが『ポラリス』そしてアカシックレコードによる強制的な意志統一を用いた、世界の変革は受けいられれないと、俺は話した。

 

 大城戸老からは「とてもじゃないが、寿命の短い人間の考えるべきことではないな」と苦笑される。

 ……まあ、確かにそうですけど。

 しかし、続けて「だが、逆にそれがいい」とも高く評価された。人間の身ながら、数多の平行世界に身を置く悪魔の思想を知るからこそ考えつく発想は、世界の破壊と創造を繰り返す神族たちには「ウケがいい」だろうと、大城戸老は俺の主張に筋が通っていると認めてくれた。

 

 だが協力は出来ない、と大城戸老は話す。何故、と理由を問えば単純に、この世界の悪魔たちは非常に弱体化しており、残った有数の悪魔たちは現在南極で事を起こしている真っ最中だ、とのこと。……ここにきて話に関わってくるかシュバルツバース!!

 それでは助力を得られないのか、と食って掛かる俺にまあ落ち着けと手を突き出し、代替案を述べる大城戸老。曰く、シュバルツバースがあることで得られる力もあると述べる。しかしそれには、まず『ポラリス』のことを語らねばなるまいと。

 

 ここから少し長くなるので、今のうちに休憩を入れておけと言われたため、許可を取って席を離れる。

 その間、メグレズの芽が起こしたものだろう地震が度々発生した。今頃、主人公たちは電車で大阪に向かおうとしていたところだろうか……。

 

 

 

>4日目(水)11:00

 トイレを済ませ、再び大城戸老の話を聞く。

 どうやら話は、DSの別作品……SJ(ストレンジジャーニー)とこのデビルサバイバー2世界がどう関わっているかについて語られるようだ。実際の内容は色々魔術的な専門用語が含まれていたため、自分なりに噛み砕いてなるべく簡潔にまとめる。

 

 まず、SJの物語から話す。SJは、文明の発達により地表を埋め尽くし、悪戯に地球を破壊、食い潰しつつある人間ごと地球をリセットするために、悪魔たちが地球を飲み込む亜空間「シュバルツバース」を生成したことから始まる。

 シュバルツバースを生成した悪魔たちの首魁メムアレフは「全ての母」とも呼ばれ、地球を“破壊”する人間たちを滅ぼすために、対となる“創造”の概念から地球のカオス属性の意志として顕現した悪魔である。故に、やがて亜空間内で準備が完了し次第、メムアレフがシュバルツバースを爆発的に拡大させ地球を覆い、文明を消滅させた後の地表で新たに陸地と生命を生み出す心づもりである。しかし、それを妨げるのが我らが南極シュバルツバース探査隊と、そしてメムアレフとまた別の対となる“管理(統制、統率?)”の概念からロウ属性の地球意志が顕現した三賢人、のはずなのだが……大城戸老の説明から、デビサバ2と共存するこの世界はその設定に重大な違いが生じていることが判明した。

 本来SJではメムアレフと対を為すはずの三賢人だが、この世界に彼らは存在せず、代わりにポラリスがメムアレフと対をなす宇宙意志として存在。メムアレフはシュバルツバースにより人間の文明をリセットすると共にポラリスの宇宙による無の侵食を止めようとしており、またポラリスはシュバルツバースごと地球の生命体を一度消し去って新たに管理し直そうとする、両者ともに原作と同じ手段を用いながら目的の半分が変わっているようだ。

 その影響で、シュバルツバース内で三位一体的な存在である三賢人の代わりに、ポラリスがゼレーニン(三賢人側につき、ロウ勢力のボスとなるはずだったライバルキャラクター)に干渉しているそうだ。その介入方法が天使なのかセプテントリオンなのかは不明だが、今のところメムアレフ側はシュバルツバース内に手一杯で地表に手を出す余裕はない。そこを突き、大城戸老は俺にメムアレフ勢力と交渉し、カオス側の手を借りることでセプテントリオン、およびヤマトらジプスと対抗する力を得られるだろうと案を話した。

 確かにその理屈なら力を得られるかもしれないが……メムアレフの考える地球リセットと、俺の考える世界存続の案では、例え一時はポラリスと戦うために手を取り合えても、事が終わればまたすぐに袂を分かつのではないだろうか?

 まさかそれも分からずに冗談で言ってやしないかと大城戸老に問い返すが、そんなことはない、答えは既に汝の中にあるはずじゃとはぐらかされる始末。つまりこの先は自分で考えろってことですかそうですか。肝心なところを投げやがって……!

 

 だが、とりあえず国家権力の方については紹介してくれることになった。メムアレフへの伝手は自分で見つけろとのことだが、一応ここを訪れた法的な後ろ盾は得る目的は達成したことになる。けど……悪魔的な後ろ盾はどうしたものか。

 

 

 

>4日目(水)11:30

 一旦【トラポート】で東京支局に戻ってきたが、ふと大城戸老に言われた話を思い返すと、何か心当たりが思い浮かんだ気がした。悪魔の思想と人間の共存というところで引っかかったのだが、なんだったかなーと少し足を止めて探っているうちにピンと来た。

 なんだ、確かに簡単に答えが出る話だった。デビルサバイバー1のアツロウくんみたく、人間の生活・知識に悪魔の存在を組み込めばいいのだ。

 悪魔が人間を脅かしたり、あるいは悪魔の庇護を受けることで生活出来るような環境下なら、人は地球を破壊し尽くすほどの傲慢な振る舞いを行えず、しかし悪魔の協力が得られる限り人は平和に生きていける。

 平和ではないが、ある意味平和でもある今こそがメムアレフの要望を満たせ、同時に人間の暮らしを保てる丁度いい塩梅だ。こと今になって、悪魔を隠す必要はないってね。正直が一番なのさ!

 

 ななみちゃんの方は妖精ピクシーを介した小妖精郷との交渉が終わり、比較的友好的な妖精たちの協力を得られることになったそうな。戦力としては心もとないが、悪魔であることがまた別の悪魔とのやり取りの役に立つことがあるだろう。悪魔を介して悪魔とのコネを広げるのが俺の目的だ。

 現在はイオっぱいや大地少年らと共にジプスの物資から一部を配給する準備を手伝っているとこらしいので、一段落ついたらまた彼女に妖精を通じた友好的な悪魔を捜索を引き続きお願いする。

 

 

 

>4日目(水)12:00

 大城戸老に紹介された、こんな状況下であるにも関わらず熱心に働いているという官僚の方へ早速挨拶に向かおうと霞が関へ向かう短い道中の間に現れた、憂う者。

 また唐突に現れ、何の話を切り出されるのかと思いきや……憂う者の大好きな、恒例の人間談義である。

 

 むづかし~言葉を使ってはいるが……要するにポラリスのように人間を弾圧したり、あるいはポラリスの力を借りて意志を統一するような、人間の自由な意志を失わせるのはどうなのか?という話だ。今更だな、否だ。だが憂う者、お前の考える世界の姿と俺の考える世界の姿は違うだろうよ。

 原作で憂う者ルートで行き着く先は、ポラリスを排した上で彼が新たなアカシックレコードの管理者となって世界を原始的なレベルからやり直し、人間だけで再進化、再成長、再発展するのだが……ポラリスにせよ憂う者にせよ大地少年の案にせよ元に戻るとかやり直しとかリセットとかばかりなため、正直言って無限ループって怖くね?という話。

 人間ならきっとなんとか未来を良くしてくれる、とか人間なら未来を変えてくれる、とか皆は仰るが……信頼と盲信は違うだろう。信念や信条を持つのは大事だが、それで視野狭窄に陥るのとはまた別だと俺は憂う者に語った。

 憂う者はいつもどおり、そうか、それも人の性か……みたいな何とも読み取れない反応を返し、俺の前から消え去った。あいつの考えは全然読めないなぁ……

 

 

 

 


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