>情報収集の日
葛葉め、こちらを試すつもりかロクに情報渡さなかった。ヤロー見てやがれ。
九条ちゃんを明治神宮に預け、新宿駅で聞き込み調査。ミレニアムと違って高レベルスタートな今回は、習得順を調整して情報系スキルを入手する余裕があったため、そのスキル補正および運(≒魅力)を活かした高速情報収集により一日でパッと集めることが出来た。話によると、
・目立つ日傘を持った女性が歌舞伎町の暴力団を出入りしている。
・その暴力団「天堂組」は海外の武器を密売している噂がある。
・西口、都庁前付近に展開する自衛隊に混じり活動するダークサマナーを見かけた。
などの情報が得られた。特徴的な大型COMPを持つサマナーは見た目から特定しやすく、容易に……ここで出るか天堂組。倫理規範の崩れたミレニアムではだいぶ世話になったが、現代の法治国家日本ではその無法ぶり故に付き合えない相手となる。
さて、肝心のマヨーネだが原作(ソウルハッカーズ)での戦闘スタイルは強力な悪魔、幽鬼ヴェータラを前衛に置き怪異・紫鏡や火炎系の魔獣、それと氷結系の何かの悪魔で範囲魔法対策を敷き、本人は後列から魔法攻撃と回復支援を行う意外とダーク悪魔を使わないスタイルだったと覚えている。火炎系と氷結系の悪魔は忘れたが、紫鏡のレベル帯から考えるに30前後……魔獣オルトロスか妖獣アツユ、それと龍王ミズチではないかと考える。注意すべきは、TRPGだと他の悪魔より高レベルな幽鬼ヴェータラか。強力なダーク属性用スキル【毒手】を持つため呪殺対策がなければ痛手を負う可能性が高い。
幸い、物理耐性のある悪魔はいないと思うので、紫鏡に【マカラカーン】を張られる前にまとめて【天扇弓】で落とし、あとは個別に撃破していくのが妥当だろう。
この前倒したキングフロストの悪魔カードを素材にランクアップダウン、耐火炎を継承させ弱点補完した仲魔にしておく。呪殺は通るがBS無効で即死を防ぎ、あとは三分の活泉によるHPで耐える方針で。
念のため切り札代わりに、幾つかアイテムを補充しておく。
>マヨーネ討伐の日
情報のあった歌舞伎町と都庁前、どちらを張り込むか迷ったが都庁前に決定。経験を積ませるため九条ちゃんを連れてきたが、今回戦力には数えられないだろう。
マヨーネとは関係ない自衛隊の方々に見つかり、攻撃されそうになるが、会話と九条ちゃんのみりきにより戦闘回避。場所を変えて張り込みを続けるとやがて目深に帽子をかぶった婦人が現れる。顔は見えないが、【アナライズ】せずとも感じられる異能者臭がある。あれっぽいな……
確認のために近寄って声をかけると、返事より先に爆弾が飛んできた。変身前に攻撃ぐわあああ
死にはしないが、防御の薄い人間形態で攻撃されたものだから結構ダメージを負った。九条ちゃんは死にかけである。しかし回復する暇はなく、痛む身体を引きずってマヨーネを追跡。近場の路地裏で追い詰め、悪魔を召喚しての戦闘に突入した。
マヨーネ自身はクラス「クイーン」を持つ、電撃魔法を備えるレベル30のダークサマナー。召喚する悪魔は予想通り、召喚者のレベルにしてはオーバースペックな幽鬼ヴェータラLv44、それから怪異・紫鏡Lv25と魔獣オルトロスLv26、龍王ミズチLv30だ。紫鏡に動かれると厄介だったが、レベル差もあってこちらが先手を取りキングフロストを召喚、継承させた【冥界破】で周囲ごと紫鏡を粉砕させる。運良く追加効果が決まり、ミズチも即死した。反撃にオルトロスが【ファイアブレス】をキングフロストに吹くが、生憎【耐火炎】で上書きしているため全くのノーダメージ。
ヴェータラの【毒手】が俺に飛ぶが、即死さえ避ければ一撃では倒れることもない。遅れてアメノウズメに変身した九条ちゃんから【メディラマ】が飛び、ダメージが癒やされるのはありがたいが……回復ヘイトが向かい、マヨーネから【ムド】が飛ぶ。あかん。
即死しかけたが、【幸運】にも耐えたようであった。ほっ。
しかし時間をかけると何度【ムド】が飛ぶか分からない。何気に俺も呪殺対策は取ってないし、40%即死は結構当たるものなので心配がつきないと、早めに決着をつけることにする。やっぱダーク悪魔にはこれだよね、施餓鬼米ポイー。ボス補正なんてついてなかったヴェータラとオルトロスは即死する。
残ったサマナー本体に造魔が【回転斬り】クリティカルを決め、彼女の防御の上からマヨーネのビルの壁面に叩きつけ気絶させる。人間ボスはそこらの悪魔より戦略的な行動を取り、アイテムや装備を多数揃えていることもあり厄介だが、反面HP的に脆いのが与し易いとも言える。
マヨーネの懐に残っていた観音神符(クリティカルを通常に防ぐ消耗品)や聖明神符(破魔呪殺の即死を防ぎダメージを半減する消耗品)の他、装備していた防具や傘型召喚器を取り上げて、とどめを刺そうとした。
しかし目の前で命を取ろうとした俺を九条ちゃんが人殺しイクナイ!!(・A・)と止められた。
気持ちは分かるし、俺もなるべくであれば手を汚したくないが、戒厳令下の新宿は悪魔遭遇率が増加しており、それに自衛隊やガイア教徒、アメリカ軍が行動しているため輸送中に絡まれること必至。戦闘で生まれた隙を突いて逃げる危険性を考えると、ここで始末して召喚器だけ討伐の証に持ち帰る方が確実だと主張する。
しかし九条ちゃんは神宮で日本の悪魔について教育を受けてきた成果か、自身の理念を述べるだけだけでなく、ダーク属性の異能者や悪魔は屍体を操り生前同様の能力を発揮させる【ネクロマ】が使えることから身柄ごと持っていった方が良い根拠を持って反論してきた。確かにそれも正しいが、それならそれで死体を跡形残らず焼けばいい。
そう意見を切り捨てたかったが、今後彼女と信頼を深め、信用されねばならないことを考えると頭ごなしに批判するのはダメだろう……と、仕方なく彼女の意見を呑むかわり、「ここから先、俺はマヨーネの身柄の輸送に専念する」との条件をつけた。俺の実力を察知したか、襲ってくる悪魔の割合は減ったが、それでもガイア教徒やアメリカ軍は問答無用で襲ってくる。そうした戦闘が起きた場合、彼女一人で担当してもらうということだ。
彼女は俺の条件を即座に呑んだ。考えなしに受けたのであればわざと敵を引きつけてでも苦労してもらう気だったが……彼女の目に覚悟の色がそれなりに浮かんでいたので不要だろうと、真面目に輸送することにした。
ところでマヨーネの契約悪魔を奪えないかと試したのだが、傘型召喚器の操作方法が分からなかったことから断念した。まさか専用召喚器にこんな利点があったとは……。
>またまたご冗談をおっしゃる日
特攻隊やピットボールを渾身の【アギラオ】で吹き飛ばし、敵からの集中攻撃は命運で耐えたため、変身のコストもあって終いには命運がからっけつ、HPも瀕死のフラフラだったが、九条ちゃんは明治神宮までに起きた襲撃を戦い抜いた。
途中、マヨーネは気絶から復帰したが俺と造魔が常に見張っていることから逃走を諦めたようで。まあ、そうでなくとも起きる度にBSかけたり再び攻撃を加えて失神させたので逃げる隙はなかったと思う。
明治神宮にマヨーネの身柄を引き渡し、傘型召喚器も使いようが無かったので共に引き渡す。後日また葛葉の人とお話することになるだろうと、巫女さんが言う。本日のところは九条ちゃんも消耗し切ってるので、話に付き合わせるためにこちらも明日以降にしてほしいところだ。
とまれ約束は果たしたということで妖精郷に帰還。
>まさかの原作主人……こう……?の日
翌日も九条ちゃんが教育を受けるために明治神宮へ。
まさかの生ライドウが来るとは。でもコレジャナイー
もみあげ、学帽はどうした。というか魔法型かよ、ポン刀もどうした。眼鏡着けててどっちかってと漫画版のコドクノマレビトに出てきた友人の……なんだっけ、陰陽師の方と言われた方がそれっぽい。
それより何よりもレベルが俺と同等なのに突っ込みたい。ライドウといえば日本の最終スーパーマンなんだから超人成り立てとかでなくもうちょっとですね。
内心がっかりしながら交渉を進める。
内容は大真面目に、俺と九条ちゃんのスタンスについての話だ。まず葛葉とどういう関係を望むのか聞かれたため、俺は葛葉内でなく外部の協力者として友好的な関係を保ちたいことを伝える。一般人出なため、異能や伝統的な魔術や召喚術について一切の知識もないし、特に興味もないため葛葉に誇りを持つ人間とは付き合いづらいというのが半分、葛葉にいては動けない行動を取るため、あるいは依頼を受けるためにもあえて葛葉に加入しないのがもう半分である。
それは、まさしく今(の戒厳令下の状況)のことを指して言ってるのか?と聞かれ、頷く。表面上は同盟国でも、水面下では日本神族とヘブライ神族の対立から冷戦となっており、更に迂闊に手を出せば道連れにICBMを飛ばすアメリカ軍に、また堕天使だけでなく仏教等アジア圏神族を含むガイア教や同じ日本国内の国津神の助力も得ており関われば神族間戦争不可避の自衛隊、どちらも天津神が深く根付いている葛葉やその支援組織ヤタガラスにとって動きづらい状況だろう。そういう状況で、俺のような力があり葛葉ではない人間が動けるなら丁度良いスケープゴートにもなってくれるというわけだ。
……だからといって、それを安請け合いする気は一切ないが。実行すれば当然、アメリカ、メシア教、ガイア教のみならず表面上の同盟国として日本は実行犯として俺を突き出さねばならず、日本人さえ事情を知らない人間を敵に回すことになる。故に、安い金や物だけで働こうと思える仕事ではない、最低でも逃げ道をどうこうしてくれるくらいの報酬で無ければ。その問題さえ解決出来るのなら、俺としてもこの戒厳令下の状況は行動に支障をきたすだけなのでトールとゴトウをぶっ倒すこと自体は全く構わないのだが。そのへんを伝えると、上に話を通しておくそうだ。
話を戻して、九条ちゃんと葛葉の関係だが……彼女が何をどう望むかは深く関与する気はない。ただし彼女はまだまだ悪魔と異能者の世界を全然知らない人間である以上、一通り知識を身に付けるまではどこにも所属させない気でいると俺の考えを述べた。今代ライドウも、ならば特に言うことはないと納得した。
次に、スタンスを聞いた上での俺についての話。どうやってその力を身につけたのか、召喚器はどこで調達したのか、といった俺の能力について問われるが、サマナーでかつアウトサイダーであることを伝えるのみで、それ以上の事情は俺が隠したい別の“能力”に関わるため、言うことは出来ない。ただし経歴、経験は見た目通りではないので……と、転生については伏せておおよその能力は、仕事の斡旋にも関わるので伝えておいた。とはいえ真女神転生1原作主人公が金剛神界での修行を経験するように、意外と別世界や別次元で経験を積んだ異能者の存在は珍しくはあるが全くいないわけでもないので、ニュアンスは伝わったろう。念押しとして、今回の試験代わりの依頼は自力で調べたが、情報収集はあまり得手ではないため次からはなるべく戦闘だけで済む仕事を回して欲しい旨も伝えるが、善処するとのいまいち芳しくない返答が帰ってきた。これは……苦労しそうだ。
あとは、葛葉について聞きたいことはあるかと言われたので、平時・緊急時の連絡口や物品の調達などに使える店を紹介してもらう。ついでに戒厳令下の封鎖網を抜けて新宿外に出る方法も教えてもらったが……ただしこれはダークゾーン下で更にDARK悪魔が出没する地下を経由するルートなので、頻繁に使いたいルートでは無さそうだ。
以上の会話をもって、今代ライドウは葛葉の代表としてこれからの協力を俺と交わした。次からは新宿にある窓口を通して連絡してほしい、そうだ。望むなら葛葉の回復施設兼宿泊施設も利用できるようになったが、明治神宮での九条ちゃんの教育もあるし、暫くは妖精郷を出入りする方が便利だろう。
葛葉との協力関係に合わせて、明治神宮の神域の一部への立ち入りも許可されたため九条ちゃんに葛葉との交渉結果を伝えに行ったのだが、逆に九条ちゃんから明治神宮に所属すると宣言された。
うおおい!?
予定が狂った。
筆の速度が落ちてきました。
葛の葉との絆がどれだけ増えるかのダイスを振ったら爆発的な出目になったので、予定変更しライドウ(ほぼ名義だけ)を出した次第。