真かみさま転生200X(未完)   作:tbc

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魔法少女の先輩

 

>金曜日の夜

 ピクシーには大きな貸し一つと言って、日が暮れてから秘密病院に特攻。変身していれば人間の姿はわからないし、シャッターは悪魔の力でぶち抜けばいい。アラームが鳴り響き、大量の悪魔が現れるが【天扇弓】より放たされる無数の矢にて片端から全て打ち倒す。

【マッパー】により病院内の構造を把握するが、少女の居所は掴めない。手近な病室――中には人や悪魔、半魔人が閉じ込められている檻があった――の扉を開けては中を覗くも、見つけられず。そうこうしているうちに増援の気配が近づいてきて、焦る俺。そこに近くの病室の中から、「こっちだ」と声をかけられる。

 一瞬罠ではないかと思うも、ピンと来るものがありその部屋の中に飛び込んだ。予想通り、原作同様にスティーブンが―――相手は異なるがこの病院内の一室で待っていた。残してて良かったスティーブンとの絆。

 不思議な事に部屋へ入ったことに全く気付かず通りすぎる悪魔たちをやり過ごしつつ、スティーブンに状況を聞く。どうやらまだ主人公は捕まっていないが、自衛隊は悪魔と手を組んで研究や支配を広げつつあるようだ。

「出来れば相当な強さを持つ君にこそ、この病院の悪魔オリアスを倒して欲しいが……」とそこで一旦口を止めるスティーブン。

「悪魔召喚プログラム製作者の私も知らないより進んだ機能を持つ、まるで未来から持ってきたかのようなプログラムを持っている君にはきっと色々な事情があるのだろう」と勝手に悟られる。つーかこっちの事情半分バレてーら。

 あまり多くこちらの事情を話せば、またミレニアムの時のように利用されんとも限らんと、適当に話を合わせながら最近運び込まれた悪魔変身能力者の女の子を知らないか、と尋ねるとCOMPのマッピング機能に彼女のいるポイントを記してくれた。サンキュー、でもミレニアムの恨みを忘れてないから礼はしないぜ!

 

 異界化しつつある病院のフロアをどしどし進み、近道とばかりに壁をぶちぬいて現れた俺に驚く自称魔法少女を片腕でひっつかんでそのまま病院外壁をぶちぬいて脱出。少し離れたところで夜闇に紛れて変身を解き、そのまま井の頭公園の回復道場まで連行。悪いとは思いつつもなけなしのMAGで迷惑料を支払って、少女を預かってもらう。

 後は朝になったら気をつけて帰るようにとだけ告げて撤収した。寝る。

 

 

>土曜日

 しまった、黙って立ち去ったところで既にピクシーにバレてるんだから意味なかったじゃん!

 半ドンの後に学校を出ようとしたところで例の魔法少女に捕まった。文字通り抱きしめられる形で。他校の学生と校門でハグしてたと明日にも噂されるのは間違いないだろう。来週から戒厳令で学校が休みになるから全く問題ないけどな。

 

 逃げたいけど情報通のピクシーがいる以上はもう逃げられないんだろうなー、と諦めて近くの喫茶店にて内心泣きながら少女の感謝を受け取る。そういえば名前も聞いてなかったが、九条ななみちゃんと言うらしい。そんな魔法少女風悪魔変身能力者がTRPGリプレイにいたっけなぁ……。

 彼女が俺を尋ねたのは、何もお礼のためだけではない。魔法少女では無いが同じ変身能力者として、しかも窮地の自分を助けてくれた俺を先輩と崇めて自分をシゴいてほしいと述べてきた。まあ、これは予想出来た展開だし、彼女の異能が俺の求めるところと大きく外れているところさえ除けば、恩を売って仲間に取り込める理想の流れとも言える。魔法少女という変に異能への願望がある分、動かしやすそうだし。

 でも悪魔変身だと出来ることが全く被るんだよー。

 

 未だに自らの異能のことを妖精と契約した魔法少女だと勘違いしている彼女に現実を教えるべく、邪教の館へ連れていき悪魔合体を見学させる。病院内でしばき倒したついでにカードハントした妖精ゴブリンに、館で購入した妖精ジャックフロスト、所持する魔獣ケットシーを3身合体。破壊神アレスを爆誕させ……即座に造魔にシュート。

 コポコポと水槽の中に浮かぶ悪魔らにビビる彼女に、お前の変身悪魔もあそこに浮かべられるんだぜと現実を教えてやると私はユニコーンのままで戦い続けます!と叫ぶ。

 でも魔法少女に見た目が変わってパワーアップする展開はつきものやん?と聞けば「それもそうですね」とあっさり手のひらクルー。思ったより飲み込みが早いわ、この子。

 さて、具体的に俺に何を望むのかと九条ちゃんに尋ねる。色々説明してほしいのか、強くなりたいのか、魔法少女に協力してほしいのか、その他etc……。すると彼女は、「正直……(もにょもにょ)……けど、代わりに私の倒すべき敵、魔法少女が対決する邪悪な悪魔を教えてください!」と途中恥ずかしがるように発言を誤魔化しながら、大きく出たことを言う。しかし誤魔化したつもりのようでも、正直全部手伝ってほしいという言葉は聞こえてたぞ。

 魔法少女という勘違いはさておいて、倒すべき悪魔と一概に纏めるのは難しい。この東京にいる強大な悪魔の多くは、アメリカ大使館でメシア教大天使の手先となったトールマンや、ガイア教や悪魔と手を組み日本の独立を目指す自衛隊のゴトウ司令官の一派といった、それぞれの正義を主張する勢力を担っており、彼女の思う敵とは異なっている可能性が高い。最悪、相手の主張に感化されて逆に取り込まれる恐れすらあると考えるなら迂闊に答えるわけにはいかない。

 故にこの時代ではまだ現れないが、いずれLAW勢力の手先として神の降臨を手助けする魔神ヴィシュヌの名を上げた。奴が現れる頃には、大洪水が発生しメシア教もとい神の残酷さを彼女が知ることになるため、そう簡単に取り込まれることはなくなるだろうと思ってのことだ。

 それを知らぬ彼女は、それとなく聞き覚えのあるインドの創造神の名をハッキリ記憶に残したようだ。

 頑張るのはいいが、大天使ミカエルほどではないが相当高レベルな悪魔なので決して彼女一人で倒せる悪魔では無いことを念頭に。

「つまりもう一人魔法少女と集まってふたりはプ○キュアですね!」

 違うそうじゃない。けど落ち着いてくれるなら、今はそういうことにしてもいいか。

 

 

>日曜日

 いけない、ついついあの後流してしまったが明日には戒厳令で身動きが取れなくなってしまう。

 クラスメイトからハグされてた女の子を問い詰めるメールボムを無視し、急いで九条ちゃんに連絡を入れて駅で集合。吉祥寺から代々木まで電車でGOする。今日を逃せばエコービルからターミナルの転送装置を利用するしかなくなり、原作に関わらないとならなくなるところであった。危ない危ない。

 

 遠出した事情を尋ねる彼女に、今日はピクシーたちの集まる本拠地、妖精王と妖精女王のおられる妖精郷へ顔を見せることを伝えると目を輝かせて期待した。パワーアップイベントの前後とかで妖精の世界を訪れるのは魔法少女あるあるだけど、今日はそんなものじゃないから。

 例の情報通ピクシーをひっつかんで代々木公園へ。女神転生世界では明治神宮は日本の神々である天津神の神域であり、LAWにもCHAOSにも大きく影響されない中立地帯となっている。そこに隣接する代々木公園も影響を受けているが、日本の神の代わりに妖精たちが入り込み、妖精たちだけの世界を築いている。

 

 代々木公園の敷地内にある異界へ入り込むなり妖精たちの警戒に引っかかるが、情報通ピクシー案内により奥へと通される。TOKYOミレニアムの地下世界では一度も会うことはなかったが、初めて妖精王オベロンそして女王ティターニアと面を合わせた。何気にレベルだけならゴトウやトールマンよりも高い彼彼女らだが、妖精らしい中立的立ち位置を好むだけに外に干渉することは一切ない。尤も情報収集活動でピクシーを派遣したり、また下っ端の妖精たちに限っては例外もあるようだが……それは後で述べる。

 ともかく、日米、ガイアメシアの戦いに干渉する気もされる気もない妖精郷は現世と異界の間に非常に分厚い結界を張っており、東京にICBMが着弾した大破壊後の世界でも一切変化ない状態を保つほどの防御を備えている。更に、妖精の輪(フェアリーサークル)とも呼ばれる魔界へのゲートがあることから万が一の避難にも事欠かないと、フリーランスの人間としては協力関係につけられればこれ以上ない拠点が得られる中小勢力なのである。唯一弱点があるとすれば、経済力が一切無いことくらいだろう。

 一応九条ちゃんにも、中立を保つ性質のある妖精という悪魔の特徴について簡単に説明しておくが、そもそもLAWやCHAOSについて分からない彼女には中立が何を意味するのかいまいち分からないようだった。そのへんはぼちぼち鍛えながら説明していくとして……今は妖精たちとの交渉に専念することにした。

 オベロン様は、外部から人間が立ち入ることに難色を示していたが、ピクシーの執り成しに免じて取引条件を一つクリアすることで許可をくれることになった。外の政情が怪しくなってきた今、妖精種全体の中立を保つためにも外で暴力活動しているジャックフロストたちの軍団、邪悪帝国とやらを解散させろとのことだ。手持ちは苦しいが、俺の実力なら簡単なレベルだろう。しかしミレニアムでもそうだったが、妖精郷とフロストにはたびたび縁があるな。

 連中は大井町の冷凍倉庫を勝手に占拠して、フロストだけの異界を作り上げているらしい。新宿圏外なため、今日中に行かなければ戒厳令で締め出されるのは確実だろう……だが、どうせならそこの自称魔法少女のレベリングをついでに熟したいものだが、キングにしろジャアクにしろ少しレベルが高すぎるだろうか。

 しかし合体させられるほど手持ちのお金に余裕はない。ということで、彼女は随分苦労するだろうが【ラクカジャ】は張るので根気で耐えてもらうことに決定。回避だけに専念するなら、結構なんとかなるんじゃないかと思うし。

 

 情報通ピクシーを引き続き借りて、代々木から大井町まで電車で乗り継ぎ、【マッパー】やピクシーの情報を頼りながらその日のうちに件の冷凍倉庫を発見。魔王キングフロストと配下の無数のジャックフロストを相手に戦闘を開始した。

 ジャックフロストの群れに【ハマ】を打ち込んで数を減らしたり、氷結魔法による凍結を無効化したりと意外に善戦する九条ちゃん。しかし、やはりボスであるキングフロストにはハマの即死は通用しないし、ユニコーンの【突撃】ではキングフロストの防御力を抜くには不足している。挙句、【マハブフーラ】の巻き添えを食らいヒーヒーと泣き声をあげていた。

【雄叫び】により相手の攻撃力を低下させ(※)、なんとか耐えられる程度に防御面は仕上げたけど、今の彼女ではキングフロストにダメージを与えることが出来ず一方的に体力と命運を削られていた。本当に強い悪魔と戦うには力不足だということを実感してもらえたろうか、そう思いながらサクッと【至高の魔弾】でキングフロストの巨体を撃ちぬく。本気でやればこの程度はまだまだ余裕です。

(※キングフロストが強化魔法を消す【デカジャ】を持っていたので、【ラクカジャ】は通用しなかったのを忘れていた)

 キングフロストを倒した後の戦利品を漁っていると、マガタマをゲットする。ミレニアムでもそうだったが、TRPG準拠によりキングフロストだからこのマガタマを必ず持っているのだろうか。しかしそれよりも、戦利品を漁る【宝探し】のクリティカルでゲットしたフロストずきんを九条ちゃんが早速被っていたところが印象に残った。コミカル路線のかわいいファッションと魔法少女のファッションは別路線では?

 

 キングフロストを倒したことで直に邪悪帝国も解散するだろうし、妖精王との約束は果たしたことになるだろう。

 戒厳令で締め出される前にと急いで九条ちゃんを連れて冷凍倉庫を離れる間際、突然銃声が響いた。

 

 何事かと思ってあたりを見回せば、ちらりと見えた倉庫の合間に隠れようとする長髪と女子学生服。

 それと血を流し、苦痛に倒れ地に伏せる九条ちゃんの姿があった。

 

 


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