やはり俺がドキドキ!させられるのはまちがっている 作:トマト嫌い8マン
授業も終わり、やっと刺さるような視線から解放されると思った俺は一伸びしてから帰り支度を始めた。
「八幡君、一緒に帰るよ!」
「あ?生徒会はどうしたんだ?」
「今日はお休みなのよ。特に大きな案件もないしね」
「それに、まこぴーにこの辺りを案内したいしね。だからほら、行くよ」
勝手に俺の鞄を引っ掴んで歩きだす相田。苦笑しながらついて行く菱川に、特に気にしている様子もなく続く剣崎。溜息を一つこぼし、俺も後を追いかけることにする。
校門近くまで行くと、何やら外が騒がしいのに気づく。ピンクのハッピを着、整列する男達。
「まこぴー、お疲れ様です!」
「「「「「お疲れ様です!」」」」」
「何だこれ?」
「なんだか、凄いわね……」
「この人たちは、真琴の応援団の方達ダビィ」
いつの間にいたのか、真琴のパートナーのダビィが教えてくれた。流石はアイドル。にしても、わざわざ学校まで来るか普通。まぁ、ダビィ曰く、礼儀正しいいい人たちばかりらしいから問題はないのかもしれないが。
ところでさっきからその応援団の皆さんの視線を感じるのは気のせいですかね。えっ、違う?だと思ったよ。
「まこぴーと学校、いいなぁ」
「制服姿も可愛いし」
おおう、応援団員の心の声ダダ漏れですよ。そこへ団長らしき人からの一喝。プライベートを守るのも自分たちの務めだと言いきり、何やら団員の心得を全員に復唱させ始めた。
いや、あの、ここ校門前なんですけど。
暫く校門で団員達を眺めていると、何人かの大人が校門に近づいてきた。服装や持ち物から察するに、剣崎真琴の学校まで取材しにきた雑誌記者あたりだろう。
唐突に写真を撮り始める記者達。おいおい、制服を着ている間は、剣崎真琴も一生徒だろうが。それに、他の生徒の顔も写ってるのは流石にまずいんじゃないのか。というか、これだと剣崎も帰ることができなさそうだ。ここは俺が、
「相田、ここは「私がなんとかするわ」は?」
「マナと八幡君はまこぴーを連れて、裏門から」
俺が言い切る前に、菱川が前に進み出た。
「あなた方。ここは一般の学校ですよ。制服を着ているうちは、真琴さんも一生徒。それに、うちの生徒の写真を勝手に撮られては困ります。お引き取り下さい!」
「そうだそうだ!まこぴーのプライベートは俺たち応援団が守る」
菱川と応援団が記者達を引き受けてくれているうちに、俺たち三人は裏門から出て、相田の家に向かった。
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「迷惑かけちゃったわね、ごめんなさい」
相田の部屋にたどり着いて一言目に出たのがこれだ。剣崎もどうやらあれには参ってたようだ。
「全然大丈夫!ああいう時の六花は本当に頼りになるんだから」
「そう。とても信頼してるのね」
「うん。なんてったって、あたしの奥さんだからね」
「奥さん?」
「言葉通りには受けなくていいぞ。ただ単にそれくらい阿吽の呼吸で通じ合ってるって感じだ」
「なるほどね」
「あ、あたしおやつ準備して来るね。二人はここでちょっと待ってて」
そう言って部屋を出る相田。いきなり剣崎と二人きりになってしまった。気まずいわけでは無いが、なんだか少し緊張してしまう。あ、ダビィとシャルルいるから二人では無いな。
「ねぇ、少し聞いてもいいかしら?」
「ん?まぁ、答えられる範囲でな」
「あなたは、どうしてマナたちと一緒に行動していたの?」
「していた?」
「初めてマナがプリキュアになった時も、あなたが一緒だった。同じ秘密を共有しているから一緒にいるのはわかるけど、あなたって、その、一人でいるのが好きな印象があるから」
「まぁその認識で間違ってねぇよ。実際、あいつと関わるようになってまだ半年も経ってないしな」
言いながら思い返すと、この数ヶ月がいかに濃ゆいものだったのかを実感する。そうか、まだほんの数ヶ月なのか、相田と菱川と同じクラスになって、相田がプリキュアになって、菱川もプリキュアになって、四葉財閥のお嬢様と知り合いになり、今こうして大人気アイドルの剣崎真琴と話している。
うん、マジで濃ゆすぎんだろ。
「まぁ、なんだ。相田と同じクラスになる前までは、学校では完全ぼっちだったんだよ。あいつから話しかけるうちに、なんとなく菱川とも話すようになって、遠足で同じ班になったって感じだな」
「そうなの……じゃあ、あなたはただの一般人で、偶々あの場所でマナがプリキュアになるのを目撃したから、ジコチューとの戦いに巻き込まれたってこと?」
「まぁ、概ねそんな感じだな」
少し考え込む剣崎。やや真剣な表情で問いかけてくる。
「怖く無いの?あなたは戦わなくていいのだから、逃げたっていいのに」
「いや怖ぇし、いつも逃げてるだろ?その辺に隠れてるだけだしな」
「そうじゃなくて。本当なら、あなたは戦いを見届ける必要も、見守る必要もないはずでしょ?なのにどうして、」
「あー、一つ言っておくけど、俺は別に義務感とかで関わってるわけじゃないからな」
「えっ?」
少し説明するのが照れくさい気もするが、真剣に聞いて来たからには正直に答えるべきだろう。頭をガシガシとかきながら口を開く。
「まぁ、なんだ。巻き込まれたのはそうなんだが、もう知らぬふりをするには知りすぎちまったしな。それに、相田達といるのも、存外悪くないって思ってるし、あいつらの力になれるものならなってやりたいって、そう思ってる。あいつらには、割と感謝もしてるしな」
「感謝……じゃあ、私と似てるのかもしれないわね」
「……かもな」
顔を見合わせて笑う。丁度相田がドアを開け放って入って来たため、会話は終わったが、なんだか、前よりも剣崎と仲良くなれた気がする。まぁ、あくまで俺が勝手に思ってるだけなんですけどね。
全然話が進まないなぁ
まぁ、なかなか見直す時間も見つけられてないし