やはり俺がドキドキ!させられるのはまちがっている 作:トマト嫌い8マン
八幡の周囲がまた変わっていくー
朝、いつものように登校していた俺はその途中で相田と菱川を見かけた。とりあえずスルーする理由もないし、挨拶だけでもしておくか。
「うっす」
「あ、八幡君、おはよう」
「おはよー!ねぇねぇ八幡君、六花ってあたしの奥さんみたいだよね!?」
「はぁ?」
朝っぱらから真面目にわけわからない質問が飛んで来た。何、奥さん?どゆこと?百合なの?2人は百合キュアなの?ハートがマックスで星がスプラッシュしちゃうの?あれ、なんか違うタイトルが混じった気が。
「お前らってそういう関係だったのか?」
「違うわよ!もう、ちゃんと最後まで聞いてよね」
「いや、おう。なんかすまん」
「奥さんって、一番近くにいる信頼できるベストパートナーのことでしょ?あたしにとってそれは六花かな?って」
「ほーん」
まぁお前らお互いに大好きフリスキーだもんな。それに菱川の方は割とガチなんじゃないかとたまに思ってしまうし。王子とツバメのように切っても切れない関係って奴なのかもしれないな。
そんな会話をしながら、俺たちは教室に着いた。もう周りもこの3人がいることに慣れたのか、特に刺さるような視線は最近感じなくなった。あぁ、これくらいの方がぼっちには生きやすいな。
今思い返すと、よりによってこの日にこんなことを考えたのは、もう既にフラグだったのかもしれないな。
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席に着き、本を取り出し読み始める。やっぱり視線を浴びずに住むのはいいことだ。相田と菱川も生徒会の話でいっぱいのようだし、久々の1人の時間を楽しむことができた。
チャイムが鳴り、朝のホームルームが始まった。教師が教卓に立つとみんな前を向いた。
「えー突然だが、今日からこのクラスに新しい仲間が増えるぞ」
「転校生ですか?」
「男?女?」
「ドキドキするね!」
途端にざわつくクラス。しかし転校生か。これは良かった。これでクラスの注目はさらに俺から外れることになる。あとは転校生とは必要最低限の関わりだけを持つように気をつけておけば万事オッケーだな。取り敢えず興味がない俺は再び本に目を落とした。
「みんなの方がよく知ってると思うぞ。どうぞ、入って」
ガラリと扉が開き、足音がする。クラスが一瞬シーンと、静まり返る。流石に不思議に思った俺は本から顔を上げた。
「えっ?」
「「「「「えぇぇぇぇえ!?」」」」」
その時、クラスの中で驚きの表情を浮かべていなかったのは先生と本人とやたらキラキラしてた相田だけだろう。入って来た転校生は誰もが知っている相手だった。特徴的な紫の髪、強い意思を示しそうなツリ目、そして整った容姿。アイドル、剣崎真琴がクラスメートになった瞬間だった。
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「剣崎真琴です。よろしくお願いします」
教室が爆発した。いや物理的にじゃないが音がね。男子どもの歓声に女子の喜びの叫び声。頭がガンガンするからやめてほしいものだ。とりあえず机に突っ伏してスルーしよう、そうしよう。
「それじゃあ剣崎の席は、あの後ろの方。窓際の列な。あそこで寝てる比企谷の隣だ」
「はい」
え?足音が近づいてくるのがわかる。俺の席の右側の通路から後ろを通り、反対側へ回ったのを感じる。椅子が引かれる音がして、空いていたはずの隣に誰かが座るのを感じる。ちらりと顔の角度を変えて隣を見ると、剣崎真琴がそこに座っていた。
「クッソー、なんであいつの隣なんだ?」
「俺の隣だって空いてるのに」
怨嗟の声が聞こえたような気がするがスルースルー、気にしたら負けだ。とりあえずこういう時にはとてつもなく便利なあの人の名言を使おう。ほんと使い勝手良すぎるだろブラウニーさんや。
「なんでさ?」
マジで使いやすいセリフ
「なんでさ」
日常でも使えるという