ブラック・ブレット〜天童民間警備会社の新入社員〜   作:梨味

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久しぶりに木崎さん登場。

〜木崎 美羽〜
警視庁捜査一課の刑事。30歳。紺のスーツを着用し、髪は腰の辺りまで伸びている。声はラ!の絵里に近い感じ。


負の時代に生きる者

 

「前山さん、あなたはバラニウムをどのようにして武器として使っていますか」

「え?……………一応、剣として使っていますが、どうしてこのようなことを?」

「すみません、話が逸れましたね。本題に入りますが、約10年前、人類はガストレアに対抗するためバラニウムを見つけ出しました。そして、それを発見したのは四賢人の1人、室戸菫医師。ここまではいいですか」

「えぇ」

聖天子様はバラニウムについて話し始めた。それは全て僕でも知っていることではあったが。

「そして、ほぼ時を同じくして里見さんがガストレアによって左目、右足右手を失いました」

「え!?でも、里見さん、義手とか義足とかいう感じじゃなかったですし、左目だってちゃんとあるようでしたが…………」

「では前山さん、バラニウムを用いた機械化兵士計画、新人類創造計画はご存知ですか」

「え?いや…………」

「まぁ、ご存知でなくて当然です。新人類創造計画、身体を部分的に機械化し、超人的な攻撃力や防御力を持った兵士を作り出す計画です。その計画の責任者は室戸菫医師」

「えっ」

さっきから『え』ばっか言っているが、まさかここで菫先生が出てくるとは…………というか、これはもしかしたら里見さんと菫先生が繋がったかもしれない。

「もしかして、里見さんは室戸医師の手術を受け、機械化兵士にはなったものの、強さを手に入れ、失った部位を取り戻し今に至るということでしょうか」

「はい、そうです。里見さんは序列上は12万位ですが、元134位の影胤ペアも十分に渡り合える力があると思います。他のペアでは倒せなくても、里見さんだったら倒せると考えています。もっとも、こちらも蛭子影胤の情報はそれほど多く持ち合わせていませんので影胤が想定外の力を持ち合わせていなければの話ですが」

「そうですか」

政府、いや、聖天子様にとって里見さんは希望の光のようだ。134位と対等に渡り合える、いろいろゾクゾクするものがある。だが、ひとつ問題があるのはだれでも分かるだろう。

 

「ですが、里見さんは今生死の境を彷徨っているところです。里見さんのことですから、死ぬなんてことはないとは思いますがしばらく危篤を脱さなかったら、どのようにするおつもりで」

「ですから、里見ペアの代わりに、あなたたちを起用したんですよ」

「はぁ…………」

「さっきも申した通り、あなたたちの戦闘力は同等です。それに、双方にはまだ伸びしろがある。里見さんに蛭子影胤を倒すほどの力があるなら、あなたにも倒すことが可能ではありませんか」

「まぁ、それはそうなのかもしれませんが…………」

「前山さん、もはや東京エリアで蛭子影胤を倒せるのはあなたと里見さんしかいないんです。さらに、里見さんは満身創痍の状態です。そうなれば前山さん、あなたが死ぬ気で動かなければ東京エリアも確実に、死んでしまいます!」

聖天子様は少し怒り気味で僕に言葉をかけた。僕は、最初から最初から聖天子様への返事は決めている。けど、僕に務まるのか…………………いや、考えるほど無駄だな。

 

「聖天子様、僕の答えは最初から1つですよ。私なんかでよろしいのなら、里見さんたちの後任、喜んで引き受けさせて頂きます!」

「…………………ありがとうございます。尽力、期待しています」

「はい」

聖天子様は、少しホッとしたような感じだった。断るつもりなんてさらさら無かったが。

「では、次は佐々木さんを連れてきてください。彼女とも話したいことがあります」

「…………………分かりました」

 

バン!!

 

「…………………何?」

「聖天子様、動かないように」

部屋の外で銃声が轟いた。銃声が聞こえた方向には、夏来の待機している部屋がある。……………もしかしたら、かもしれない。腰から拳銃を取り出し、廊下に出る。

「何度も言いますが、聖天子様は動かないようにお願いします」

「………………………気をつけて」

「もちろんです」

拳銃を構え、歩き出す。すると、やはり夏来のいる部屋から硝煙のような匂いがする。

「動くな!……………ん?」

「あ、前〜」

部屋の中には警備員らしき人物がいた。死んではいないようだが、白目をむいてぐったりしている。おそらく夏来が返り討ちをしたのだろう。

 

「オイ、この警備員はどうした」

「え?なんか撃ってきたから返り討ちにしちゃった☆」

「いやいやしちゃった☆じゃねぇよ。というか、お前にケガはあるのか?」

「んー。腕に当たったけど、すぐに閉じちゃった」

「そ、そうか」

おそらく警備員の持っていた拳銃の弾はバラニウムではなかったのだろう。とりあえず、夏来が無事で良かったが。

 

 

「前山さん」

「あ、木崎刑事。夏来の聴取はまだ………」

「すみません。事件の当事者なので聞かなければならないことが山ほどあるんです」

「そうですか。まぁ気にせずやってください」

夏来が撃たれかけた事件で警察署に聴取にやってきた。もう小一時間ほど待っているが終わる気配はない。そして、気付いたら夜が明けていた。

 

「ところで、その警備員の動機は………」

「えぇ、お察しの通り、です。加害者は筋金入りの呪われた子供たち差別主義者。夏来ちゃんを殺したくてたまらなかった。だそうです」

「…………………そう、ですか」

許せない。仙台にいたときも、こういう状況を幾度となく見てきた。どうして、子供たちを攻撃するのだろうか。確かに、ガストレアが憎いのは分かる。僕だってそうだ。けど、いつ何時も子供たちを憎み攻撃しようなんて考えたことはない。なぜ、子供たちを攻撃したからって自分たちの負の感情は消えないことが分かっているのに、どうして……………

 

「前山さん、わたしはこれで」

「………………………わかりました」

しかし、僕はそう思っていても、そう思わない人は少なくない。いくら分からせようとしても分かってもらえない。僕たちのすることは、ムダなのだろうか。いくら願っても、ダメなのだろうか………………




独自解釈って言ってるのに原作を少しアレンジしただけな件について。

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