「姿、現わしやがったな」
「そうだとも」
蛭子影胤・小比奈ペア。親子であり元序列134位のペアが僕の眼前にいる。影胤は、例の趣味の悪い仮面を付け、燕尾服を身に纏っている。小比奈のほうは、黒いドレスを身に纏い、小太刀だろうか短めの剣を2本携えている。
「やはり、里見くんと違って君には大人の落ち着きがある。里見くんは私を見るなり、殴りかかってきた。まぁ、悪い気分ではなかったがね」
「首謀者は、お前か」
「なんのことかね?」
「とぼけんな。各地の民警を襲っているヤツらはみんなお前が付けている仮面を付けているんだよ」
「なるほど。確かに、首謀者というのはこの私だ。しかし、各地の民警が襲われているというのは初耳だな」
「なにぃ?」
民警狩りをさせているのは影胤ではないという。嘘ついているだけかもしれないが、何となく嘘をついているようには思えない。根拠は無いが。
「ねぇ、あなた名前なんて言うの?」
「…………………夏来、佐々木夏来」
「へぇ!パパ、夏来を斬っていいかな?」
「小比奈、まだ斬ってはいけない」
「「……………………………」」
アイツ、何言ってんだ?確かに、この2人まともなヤツらとは思っていないが、まさか名前聞くなり斬りたいって言うとは思ってなかったわ。夏来も拳銃構えて完全に守りに入ってる。
「あぁそうだ。その君の言う民警を襲っているヤツというのは、多分、アイツだ。嵩幸!」
影胤は、嵩幸という人名を叫んだが、どこからとも現れる様子はない。しかし、なぜか夏来が険しい表情をする。
「どうした、夏来」
「………………………!!」
夏来が回れ右をしたかと思えば、いきなり、発砲した。僕も、夏来が見ている方向に目をやると、とてつもない速度でこっちに向かってきている男が1人。ソイツは、やはり例の仮面をつけている。
「避けるぞ!」
再び、道路の脇に飛び込んだ。さっきも飛び込んだために少し体が痛い。そして、起き上がった先には紺色のスーツを着ている男がいた。
「紹介しよう。コイツが、我が弟、豊中 嵩幸(とよなか たかゆき)だ。話したがらないヤツでね」
「弟、だと?」
影胤に弟がいるなんて聞いていなかった。おそらく、政府も知らなかったとは思うが。だが、敵が増えた、これだけは言える。この場で嵩幸ぐらいは行動不能にしtをいたほうがいいだろうか。
「おっと前山くん。私たちには手を出さないほうがいい。弟は、私よりも実力が上だ」
「………………………あぁそう」
薄々感じてはいた。弟の方が実力が上。さっき飛び込んできやがったときにな。
「あぁもう1つ、言うことがある」
「…………………なんだよ」
「君の会社に、スペシャルなプレゼントを送っておいた。気をつけたほうがいいよ」
「は?どういうことだよ…………」
質問していた頃には3人一斉にどこかへ飛んでいった。スペシャルなプレゼント、気をつけたほうがいい?…………………まさか、な。
「前、スマホ鳴ってるよ」
「あーはいはい」
こんなとき、でもないが誰だ電話かけてきやがるのは。あ、木更さんか。
「もしもし」
「ねぇ前山くん今どこ?」
「え?今会社に戻るところですけど」
「そう。じゃあ、今すぐ病院に来て」
「え?どうして…………」
「実はさっきね……………」
※
「木更さん!」「木更!」
「あぁ前山くん。夏来ちゃんも来たのね」
「木更さん、里見さんと延珠ちゃんが爆破に巻き込まれたって…………」
「えぇ。今治療が終わったんだけど、予断を許さない状況みたい」
木更さんは、平静を保っているつもりのようだが、声が震え、目から光が無くなっていて動揺しているのは一目瞭然である。
「にしてみ、誰が……………」
「木更さん、その犯人なんですが……………」
もう、犯人だったら分かっている。僕や里見さん、そして、全民警の敵だ。
「そうなの…………」
「厭に冷静ですね木更さん」
「ここで怒り散らしたって意味ないでしょ。それに、蛭子影胤とその弟を倒す理由が、また1つ増えたわ」
「そうですか………………え?木更さんは例の作戦に参加しないはずじゃ」
「あぁそれだったらね、民警狩りで戦闘に参加できるペアが少なくなってるから、今は人員が少しでも欲しいってことで私も参加することになったの。あなたたちにも、声がかかると思うわよ」
まさか、木更さんが作戦参加するとは思わなかった。僕らに声がかかるのはどうでもいいが、木更さんの参加はかなりの戦力アップに繋がるだろう。里見さんによれば、木更さんは天童式抜刀術の免許皆伝だそうだ。実力は相当なものの、腎臓の持病で長時間は戦えないらしいが。
「ところで、事務所のほうは?」
「事務所だったら、大丈夫よ。入り口の損傷は激しいけど、中のほうはほとんど無事よ」
「あぁなら良かった」
事務所にいろいろ貴重品とかもあったから、里見さんたちを心配している隅でその辺のことを心配している自分もいた。
「あら、いつの間にメール……………あ、早速お呼びがかかったわよ」
「もうですか…………」
「ほぉら、さっさと行く!」
木更さんはさっと背後に移動して僕の背中を押す。
「分かりましたよ。夏来、行く…………ぞ?」
夏来は、集中治療室の里見さんや延珠ちゃんをじっと見ていた。暗い表情で。
「夏来、どうした」
「ん?なんでもないよ?」
「嘘つけ、何か心苦しいことでもあるのか?」
「え〜?何でもないよ〜あ、今から何かするの?」
「え?うん、まぁな」
「じゃあじゃあ、それしようよ!」
はぐらかされてしまったが、人の嘘、隠し事を見つけるのは得意な方だ。今はとりあえず放置しておくが、今あることが終わったら必ず暴いてやる。
※
「聖天子様、お連れ致しました」
「ご苦労様」
執事らしき人物が僕を聖天子執務室に連れてきた。部屋の内装は至ってシンプルだった。そして、ソファに座らせられた。ちなみに夏来は別の場所で待機している。
「前山さん、まず結論から言います。あなたたち前山・佐々木ペアを里見・藍原ペアに代わり、蛭子影胤及びステージ4ガストレア討伐主要戦闘員に任じます」
「えーと、それはどういう………」
「先程、あなたの上司を補助戦闘員に任じました。補助戦闘員は、主要戦闘員のバックアップが主な任務です。そして、主要戦闘員は討伐作戦の最前線での戦闘が任務です。今回、蛭子影胤の襲撃で里見さんはじめ多くの主要戦闘員が戦闘不能になったため、あなたを戦主要戦闘員に任じた、ということです」
聖天子様の言葉をまとめるならば、この作戦では主に主要戦闘員が戦うけど、影胤の襲撃で主要戦闘員が戦闘不能になったから、僕と夏来は里見さんと延珠ちゃんの代わりに主要戦闘員に任じられた、というわけだ。でも、僕の頭の中で引っかかるのが…………
「お言葉ではありますが、僕の戦闘力で務まるでしょうか。それに、代わりは前任の所属から必ず選ばないといけないというわけではないのですよね?」
「仰る通り、所属から選ぶという縛りはありません。ですが、戦闘力に関してはあなたが飛び抜けて上でした。といっても、里見さんとは同等ですが」
「と、仰りますと」
「前山さん、あなた1ヶ月前に仙台エリアで里見さんと交戦したそうですね」
「えっ、どうしてそれを…………まぁ、お恥ずかしい理由で、ではありますが」
「それは後で話しますが、そのときあなたたちは引き分けに終わったそうですね。互いに戦闘力は同等なので当たり前ですが。しかし、あなたたちはまだ本気では無かった。そうですね」
「え?…………まぁ、確かに私のほうはそうですが、里見さんもですか?」
「えぇ。………………………この際ですし、里見さんの能力について、説明しておきましょう」
里見さんの能力、天童式戦闘術という武術と射撃くらいだと思っていた。だが、まだあるという。なぜ、夏来といい里見さんといい、何かを隠すのだろうか。まぁ、秘密や隠したい事というのはあまり口外することではないのだろうが。
過去最大文字数!まぁ中身はアレだけど。
次回、未定(ええはい)