「これは…………」
かなり多くの野次馬がいた。野次馬を掻き分けながら、商店街のアーケードの入り口までたどり着いた。その先には、モデルスパイダーだろうか。ガストレアがいる。
「あなたが、担当の刑事ですか」
「そうですが。あなたはどちらさまですか」
「こういう者です」
そう言うと、僕は刑事に許可証を差し出した。刑事は吟味するようにじっくり許可証を見つめる。
「あなた、今日許可証交付されたばかりじゃない」
「それが、何って言うんですか。他に民警はいないんでしょう?」
「まぁ……………」
刑事は、なにかもの言いたげに自己紹介始めた。
「私は、担当の木崎 美羽(きさき みわ)。警視庁の捜査一課所属です。そちらは?」
「僕は、前山っていう。天童民間…………と、こっちにガストレアが向かってきたぞ」
「どうやら、ガストレアは私たちに自己紹介する暇もくれないみたいね」
そう言って、木崎刑事は仮説のバリケードの扉を開け、僕をアーケード内に入れた。密閉されているためか、少し鼻をつくような臭いがする。
「ところで、あなたのイニシエーターは?」
「あぁ、それだったらもうあの子いるべき場所に配置しましたよ」
「あなた!許可を出す前に…………」
「説教だったら後だ。今はバリケードを閉じて、しかと見ててくれ」
バタンと扉が閉まると同時に、銃声が鳴り響く。
イニシエーター、もとい呪われた子供たちというのはそれぞれ特性があり、その特性とは、動物や昆虫の生態を受け継いだものだ。夏来ちゃんはモデルホーク。その名のとおり、鷹の特性を受け継いだものだ。動体視力を生かした狙撃、射撃。これが主な攻撃だ。今の銃声も、アンチマテリアルライフル、つまり対戦車用ライフルの銃撃によるものだ。この時点でものスゴイ威力だが、弾はガストレアが嫌うバラニウムによって、さらに増している。僕から見た感じでは、夏来ちゃんの銃撃はクリーンヒットしたようだ。ガストレアも轟音のような叫び声を上げている。
「前!あとは決めて」
「もちろん!」
もがいているガストレアめがけ走る。鞘から刀を取り出し……………
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
トドメの一撃。刀もバラニウムでできているため、コイツも効き目抜群だ。叫び声を上げたかと思えば、体がバラバラになった。相手が相手とはいえ、いろいろ罪悪感が湧き上がってくる。
「夏来ちゃん、終わったぞ」
「うん…………」
「だいじょーぶー?」
木崎刑事が、トロンとした声でこっちに駆け寄ってくる。よーく見ると、結構若いな。
「連携がすごかったわねぇ」
「一応、これでもさっき合流したばっかだけどね」
「そ、そう……………あ、これ、報酬ね」
「「ありがっとごっざいます」」
スゲー変なお礼をした。しかも、ハモっちまった。orz………とにかく、これで木更さんにケツを叩かれずに済みそうだ。
「じゃあ、形式的ではあるが………」
「えぇ」
「2031年、4月28日1645。前山・佐々木ペア。ガストレアを排除した」
「ご苦労様でした」
真面目な視線を交わしていたが、言い終わった後に思わず笑ってしまった。
「前〜」
「なんだ?」
「ご飯行こうよ」
「あぁ、もともと遅かったのにさらに遅くなっちまったな。行くか!」
「行こ行こ!」
僕と夏来ちゃんは、食欲のままに走り出した。肉食いてぇ。
「…………あ、多田島さん?こっち終わりました」
『おうそうか。どこの民警が来たんだ』
「ええと、天童民間警備会社ってとこですね」
『ほんとか!こっちも、その会社が来やがった』
「えぇ。でもこっちのペアはさっき合流したみたいです。その割には連携がかなり取れてましたけど」
『そうなのか。しかし、こっちのペアはバカなもんだ。報酬受け取るの忘れてやがるぜ』
「急いでたんじゃないんですか?ちゃんと渡してあげてくださいよ?」
『なぁに。今回は初回無料キャンペーンでやったんだろうよ。フハハハハ!』
「多田島さん、底意地悪いですね」
『なにぃ?………………まぁいいか。それより、お前はどうすんだ』
「とりあえず、一度家に戻って、また本部に戻ります」
『そうか、なるべく早く戻れよ』
「りょーかいです」
※
「ただいま戻りまし……た?」
「里見くんのお馬鹿!」
「お、おわったことはしゃーないだろ!」
「前、ここっていつもこんな感じなの?」
「いや、僕も今日来たばっかだから分からん」
帰社したら、男女の戦場を見てしまった。木更さんがすごい剣幕だが、一体何があったのだろうか。
「木更さん、何があったんですか?」
「里見くんが!報酬を受け取り忘れたの!最後のチャンスだったのにぃ!」
「そ、そうですかい」
何が最後のチャンスなのかは知らないが、相当頭に来ているらしい。さっきから執務机に当たっている。
「悪かったから机に当たるな。怪我するぞ」
「じゃあ里見くんが腹を切って誠意を見せてよ!」
「あのー?」
「何!」
「一応、報酬もらってきたんですがー?」
「ホント!?やっぱり年の功ってすごいわねぇ」
「いやまだ22なんですが」
確かに実年齢より上に見られるけどそんな歳いってねぇから!年の功出されるほど歳いってねぇから!
「ねぇ!なんで新人の前山くんが報酬取ってきて、なんで里見くんは報酬取ってこれなかったのよ!」
「んなこと言われても知らねぇよ!」
木更さんと里見さんの言い合いは見てて飽きないが、いろいろクドイな。
というわけで、刑事木崎美羽が登場!やったね!←?
次回は、延珠&菫先生登場!