1時間遅れの出社
2021年 4月28日
「そ、そんな…」
食い殺されていく、友達も、先生も、近所の人たちも。そして、家族も。
「前ちゃん!早く!」
「やだ!守ることができなかった!だから、僕も…………!」
「私たちがいくらベストを尽くしたって、守りきれなかった。全員を守り抜くことなんてできなかった。そうでしょ!?」
「……………………くっ!」
とりあえず、自衛隊の輸送機に駆け込んだ。青村の叱咤もあったが、なにより、目の前の現実から逃れたかった。だから、逃げた。
これが、僕が全てのガストレアを倒す原動力になっている。だけど、それでこの10年、僕は感情を失った。だけど、あの人が僕にまた感情をくれた。強さと共に………
※
10年後 2031年
「天童民間警備会社は………」
かなり冷静だが、実を言うと1時間遅刻している。だって焦ったってすぐ辿りつけるわけじゃないじゃん。え?早く着く?うるせぇなコノヤロー。
僕は、前山(まえやま)。22歳。一応、今日から民警だ。これでも、ある能力を持ってる。それがどういうものかは知らないけど。
「ここか?」
とりあえず、それらしいところには着いたが………え?闇金とかゲイバーがあるんだけど。とてもじゃないけど一般人は入りづらいんだけど。あ、でも民間警備会社はあった。
「……………………入るか」
もしかしたら、人生最期はガストレアじゃなくて、闇金かもしれないかもしれないなコレ。
※
ガチャ「おはようございます」
「ああ!やっと来た!」
な、なんだ?ドア開けて挨拶したらなかなかの美女が。しかも…………
「デカい……」
「え?」
「あ、いや………………それより、ここは天童民間警備会社でよろしいでしょうか」
「もちろん、ここよ。私、社長の天童 木更。確か、まえ………」
「前山です」
「そうそう!今日からよろしくね!」
「はい!こちらこそ!」
良かった。思っていたよりもかなりいい人そうだ。ただ、やっぱり巨乳に目が行ってしまう。言ってしまった瞬間に斬られるじゃないんかと思ったけど。
「ところで社長」
「あっ、木更って呼んで。里見くんは同い年だけど、前山くんは私より年上でしょ?だから、名前くらいは………」
「そうですか………………木更さん」
「フフッ…………何かしら?」
恥じらわずにいってみたつもりだが、すっげえ恥ずかしい。社長とか年下とか関係なく、相手が女性だから。
「里見さんは、どこに?」
「里見くんだったら、多分もうすぐ来ると思うわよ?」
「そうですか………」
東京エリアに来て、まず里見さんに会おうと思っていたが、留守ならば仕方ない。
「ねぇ前山くん」
「はい」
「仙台エリアにいたときはどうしてたの?」
何の脈略も無い質問だった。まぁ、里見さんもシャイボーイって感じだから、木更さんに僕のことほとんど喋ってないのだろう。気になるのも分かる。
「僕は、小学校の頃の幼馴染と2人暮らしをしてたんです。青村 綾音っていうヤツと」
「あら女の人?いい関係じゃない」
「え?あ、いや、誤解しないでくださいよ!」
「フフッ」
出社十数分にして主導権握られてるんですけど………ちなみに言っとくと、断じてそういう関係ではない。ただ一緒に果たしたいことがあっただけ……
「おはよう木更さん」
「あ、里見くん」
どうでもいいことを考えていると、里見さんは帰ってきた。ここに来る途中、同じような服を着た人を見た。あのときはわからなかったが、里見さん、学生みたいだ。
「お久しぶりです里見さん!」
「久しぶりだな、前山」
里見 蓮太郎。天童民間警備会社に所属するプロモーター。今分かったが、どうやら学生さんのようだ。
「あ、前山」
「何ですか?」
「一応、薄給だから覚悟しとけよ?」
「えっ」
里見さんの薄ら笑いの変態っぽさも驚いたが、少給はもっと驚いた。だって……
「民警って儲かるんじゃないんですか?下世話な話するようですけど」
「大手はな。でも、ここみたいなぽっと出の民警はほとんど儲からない。木更さんを見てみろ、スーパーのチラシかぶりついてる。俺も、酷い目見た………」
「はぁ…………」
どうやら、生活水準の低下は覚悟しといたほうが良さそうだ。でも、チラシにかぶりつくことがないようにしよう。あと酷い目って何だろう?
「木更さん!」
「な、なによ里見くん………」
「前山に、言うことがあるんだろ」
「あぁ」
「?」
そう言うと、木更さんは机から紙を取り出した。おそらく、アレだろう。
「はいこれ」
「民警許可証受領書ですか」
「そう、許可証をもらってやっと晴れて民警だから、確実に受け取ってきてね」
「はい」
「それと、許可証もらったら、IISOでも手続きをしてきてね」
「分かりました」
IISO。国際イニシエーター監督機構というらしい。ここで、序列の管理やプロモーター、イニシエーターの選定を行っているらしい。許可証をもらい、IISOで手続きを踏まないと、プロモーターとしての仕事はできないという。
とりあえず、僕の民警生活は始まった。特に、面白いこともヤバイことも無いが、まぁ普通に始まるに越したことはないだろうが。とにかく、早くイニシエーターに会ってみたいな。なんでも…………
ロリ
らしいから。
まだロリ軍団は出しませんよ?