枕元の目覚まし時計を見る。
これが、習慣というやつなのだろうか。まだ一週間も経っていないのに、いつも起きる時間に自然と意識が覚醒した。クリパ後夜祭の今日は自由にしていいと、上司の
「
この声は、
「今日は、休みなんだ」
「何兄さんみたいなこと言ってるんですか? 早く起きてください」
若干、不機嫌そうな声色に変わった。そういえば、昨日話すのを忘れていた。睡魔も相まって説明するのも面倒、無視を決め込む。
「もー、兄さんといい、まったく......!」
ぶつぶつと文句が聞こえ、タメ息をついた
「素直に起きないと、朝倉家伝統の起こし方をしますよ。えっと~、さくらさんの部屋に行けば、辞書あるかなー?」
辞書という言葉に何故か本能的に危険を察知、素早く布団から顔を出す。
「事故が多いみたいだな。頻繁に起こるのか?」
「いいえ、普段はあまり。でも、最近ちょっと多い気がします」
「ま、師走ですから」と、
「
おぼんを持った
残りの料理を運びに
ほぼ同時に、白い謎の宇宙生物はりまおが、姉妹と入れ替わるようにして居間に入ってきた。はりまおは、テーブルの上で湯気を立てる朝飯の匂いに釣られたのか、
「さくらは、どうした? まだ寝てるのか」
「あお? あんっあんっ」
首らしき場所を動かして、顔だけを俺に向けて鳴いた。
「ふむふむ。今日は、朝から会議でもう学校へ行っているのか。って、何で俺たち普通に会話してるんだ?」
「あん?」
不思議そうに首を傾げる、はりまお。何故だか、妙に考えが分かる様になった。やはり
「サンタは来たか?」
「むぅ~、
少し頬を薄紅色に染めて、恥ずかしそうに目を背けた。どうやら、クリスマスにプレゼントを配ってまわる物好きな爺さんは来なかったらしい。
「私の所には来たよ」
「えっ? ほんと?」
「赤じゃなくて、白だったけど」
「白?」
白と聞いて、
「それで何を貰ったの?」
「フラワーズのプリンだよ」
フラワーズって、それ俺じゃないか。白って白衣の事かよ。フラワーズは、昨日見舞いのプリンを買った商店街の洋菓子店。正式には、ケーキ・ビフォア・フラワーズ。訳すると、花より団子。先日、
方向が真逆、和菓子と洋菓子と云うことで棲み分けが出来ているらしい。
「いいな~」
「お姉ちゃんも、お願いしたらきっとくれるよ。今日はクリスマスだし」
「そうかな?」
「そうだよ。ですよね、
「俺に振るなよ......」
玄関まで二人を見送り居間の
「おはようございます」
「ああ、おはよ。遅いな」
「
「ああ、そうか」
昨日は、
「
ラップされていた朝食を食べながら訊いてきた。
「今日は休みなんだ。好きにしていいっていわれてる」
「そうですか、じゃあ俺は行きますね」
「ああ」
「
「あ、はいっ。今行きます」
濡れた手をタオルで拭きながら、急ぎ足で戻って来た。画面を見た
「
テレビに目を戻すと、さっき見たのとは違う別の事故のニュースが流れたいた。幸いにも死者は出ていないが一日に二件。冗談じゃなく注意した方がいいのかも知れない。
「
「あん?」
「
翼を持つ少女、か。
「わかった。先に行っててくれ、着替えてから行く」
「いえ、図書室で話すそうなんで案内しますよ。どうせ暇だし」
客間に戻って着替える。(学校だし、白衣でいいか)。何時もの服に着替えて、俺たちは玄関で合流して風見学園へと向かった。
風見学園に到着。やはり後夜祭、
いつもの昇降口前で別れ、中庭で待ち合わせ、
「居ませんね」
「ああ」
まだ来ていないのか、ぱっと見図書室に人影は見当たらない。
「待っていた」
「うおっ!?」
突然死角から聞こえた声に驚いた
「居るなら返事しろよっ」
「はっはっはっ。こんな事では暗殺を回避できんな、常に警戒を怠らぬ事だぞ?
「誰に狙われてるんだよ、俺は.....」
呆れた
「で、何がわかったんだ?」
「うむ。こちらで説明する」
図書室の一番奥、入り口からも見えない四人掛けのテーブルに案内され、
「古来、神の使いと云われた者がいた。今は仮に
言い得て妙だが、翼を持つ人型の生物。天使という名称はうってつけだ。
「
「俺は、お前が何を言ってるのかさっぱり分からん」
「俺も......」
「ふむ。簡単に言うのなら、常人では有り得ない不思議な力を有し人々を導いていた存在。と言ったところだ」
「それはつまり......」
魔法使いの
「魔法使いの様なもんか?」
「まあ、その認識でもよかろう。日本では
「で、それが?」
「まあそう焦るな、ここからが本題だ」
焦らす様に、にやっと口角少し上げる。
「その存在――天使の姿は、肌は
「翼!?」
「これだ」
人の形をした者の背中から何かが延びている様に見える。
「正確な時代は分からないが、おそらく1000年以上前に書かれた絵と推察されている。そして、これが文献を元に我々非公式新聞部の精鋭が再現した画像だ」
「こ、これは――」
「って、化け物じゃないかっ!?」
「そう褒めるな、照れるではないか」
「いや、褒めてないからな?」
「まあ、これは比喩を再現した物だ。こっちが本命だ」
画面をスライド操作すると別の画像に切り替わった。正しく翼を持つ人間だ。
「見た目は普通だな」
「ですね。普通の人の背中に翼があるって感じ」
「だが所詮これも憶測に過ぎん。実際はどんな人物だったのか......皆目見当もつかん」
「さて、この天使の記述だが......。資料は少ないものの全国各地に伝承として残っている事が判明した。地域によって様々だが多くはこう呼ばれている――『
パンッと外で大きな破裂音の様なものが響いた。
「煙だっ!」
「何?」
「うむ......」
席を立ち外を見る。校門へ続く道の露店から煙が上がっていた。野次馬も集まって来ている。
「
「さすがは
「......たしかに......」
昨晩の打ち上げ花火の様な暗躍はするが、実被害が出るような事はしないって事か。
「とりあえず行ってくる」
「あっ、俺も行きます」
図書室を出て現場へ向かう。校舎の外に出てるとすぐに見知った顔を見つけた。
腕に生徒会の腕章を着けて野次馬の整理をしている
「
「弟くんっ。あれ?
「何があったの?
「露店のガスボンベが破裂したんだよ」
答えたのは
「ケガ人は?」
「こっち、着いてきて。弟くん、
「はい」
まゆきの後をついて生徒会のバリケートを越えた先の現場の露店前までやってきた。初期消火が早かったのか、被害は見た感じ
ケガ人は現場近くにいた女生徒と、消火を行った教師。幸いにも切り傷程度の軽いケガをしただけでさほど大事には至らなかったのが救いだった。
「お疲れさま」
「ああ。それで事故原因はなんだったんだ?」
「それが......」
「よく分からないのよ」
当時、店は無人。火も使っていなかった事が確認されている。ガスボンベはクリパに合わせて新調した物で使い回しではないらしい。
「にしても――。最近、こんなのばっかだね」
「ほんとね......。気をつけなくちゃダメだよ? 弟くん」
テレビでも事故が多いと報道されていたが、実際身近で起きると緊張感が違う。(けどな~......)。
「でも、先生も
「あの子って弟くんと同じ学年だよね」
「はい、隣のクラスです」
名前は、
ケガ人(
それは――
この『