狩人の夜明け   作:葉影

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書くべき後書き、特に思いつかず。
思いつき次第追加します。


第19話 ラウラ・ボーデヴィッヒ

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遺伝子強化試験体(Advanced)C-0037』

 

『Code Name:Laura Bodewig』

 

それが私に付けられた名前だった。

 

軍の研究所。薄暗い実験室。

暗闇の中で静かに青く光る試験管の中で、私は造られた。

子宮の温もりを知らない私は、母親に抱かれた赤子の産声を出すことも無く、ただ戦いの為に造られ、育てられ、鍛えられた。

 

私は優秀だった。

訓練兵の中でも常に最高レベルを維持し続けた。

軍全体からの期待も厚かった。

 

 

─────しかし、それもISが発表されるまでの話だった。

 

 

ある時、ドイツ軍でもIS配備特殊部隊である黒兎隊(シュヴァルツェ・ハーゼ)が編成されることになった。

表向きはアラスカ条約に誓っておきながら、裏では平然とISを軍事利用する。それは暗黙の了解となっており、何処の国でも同じことだった。

IS適合性向上のため、直ちに私にも肉眼への移植手術が行われた。

 

麻酔が私の身体を蝕み始める。

越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)』と呼ばれたその治験を見物するため、軍の上層部の人間たちは手術室のガラスを隔て、私を観察していた。

 

瞼が重くなり視界が閉じていく最中、彼らの話し声が聞こえた気がした。

訳も分からない言葉だったが、心の何処かで私は記憶していた。

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

私の移植手術は、失敗に終わった。

移植された左目は不適合の影響で金色に変色し、右目の瞳は血のように赤く染まった。

私は力を制御することが出来ず、以降の訓練では全ての能力値において最低の成績を出し続け、『()()()』としての烙印を押された。

 

そんな中、私はあの人に出会った。

 

ドイツ軍の教官として一年間在籍した彼女は、極めて有能な人物だった。

私は彼女の教えの下、着実に力を伸ばしていき、再び軍のトップへと返り咲いた。

そしていつしか私は、失敗作でありながらもシュヴァルツェ・ハーゼの隊長に任命された。

 

 

ある日、私は彼女に聞いた。

 

『どうしてそんなに強いのですか?』

 

『どうすれば、そこまで強くなれますか?』

 

私の言葉に、彼女は一言だけ答えた。

 

『私には、弟がいる』

 

 

 

何故。

 

何故貴女は、そのような優しい表情をされるのですか──────。

 

私の知っている貴女は、強く、凛々しく、優しさなど見せない人だ──────。

 

 

 

だから、憎かった。

 

彼女をそんな顔にさせる人物が。

 

彼女の強さの邪魔になる、その男が。

 

 

 

 

 

 

 

──────力が、欲しいか?

 

 

 

欲しい。

 

あの男は、彼女の側から消すべきだ。

 

 

 

──────哀れな黒。どこまでも堕ちる失敗作よ。

 

 

 

何とでも言え。

 

力が得られるのなら、こんな空っぽの私など、何から何までくれてやる。

 

力の為なら、人間としての矜持など捨てて、()にだって成り下がってやる。

 

 

 

だから、力を──────。

 

 

比類無き最強を、私に寄越せ!!

 

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