GATE SF自衛軍彼の地にて斯く戦えり   作:炎海

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「さあ今日も面白い小説のチェックを~♪ん、なんかこの題名見たことあるような……………………」


キェェェエェェェェエ!!アァァァアァァァァアアァ!!ルーキーランキング入っとるゥゥゥゥウウゥゥゥ!!



というわけで頭を殴られたような衝撃というものをリアルで体感しました。
点数つけてくださった、お気に入り登録してくださった皆さん、心から感謝します。ランキングにふさわしい出来に仕上げられているかどうかとガタガタ震えています。

今回からどんどんオリ要素が入ってくるため、そういうのがあれな方は覚悟をお願いします。

追記

2016/08/18
指摘を受けた誤字の修正を行いました。

2016/09/13
ご指摘を受けましたので、一部メカニックの設定を修正しました。


第三話 特地突入 夜明けは未だ来ず

 目の前に広がるのは赤黒く燃え盛る大地。

 地獄のような大気の熱が、保護スーツ越しに頬を焼く。

 

 水を求める声が、親を探してすすり泣く声が聞こえる。

 死体に刺す旗はもう無い。使い果たしてから、これは何体目の死体だろう?

 

 彼が服のようにぶら下げているのは、きっとずり落ちた彼の皮膚だ。

 背負っていた黒く焼け焦げた女性は、きっと呻かなくなった時には死んでいたのだ。

 

 助けた人が死んだのは何回目だろう。

 仮設テントで同僚が泣いている。寝付けずに吐き続ける者もいる。

 

 何度も探して何度も助けられなかった。

 何度も何度も懇願を聞いた。

 何度も何度もなじられた。

 

 

 何度も何故と問い続けた。

 

 

 

 何故、自分達が何をしたのだと…………。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ーーーーッ!?……ぜえッ、はあッ、はッ!!」

 

 声にならない叫びをあげて飛び起きる。が、あたりを見回すと、そこは破壊された街でも救護室でもなく、彼の住む家の寝室であった。

 

「…………はあ。夢か……」

 

 彼――伊丹はベッドから起き上がると、洗面所へ向かう。どうやら同居人はまだ起きてはいないらしい。蛇口をひねるとそのまま水流に頭を突っ込む。晩夏に差し掛かった季節の水道水は冷たく、ぐちゃぐちゃの頭を冷やしてくれる。

 一通り冷水を堪能したあとリビングへ向かうと、机の上に突っ伏したままの妻を見つけた。

 

「……またそのまま寝てる。いくら夏でも毛布くらい掛けろよな」

 

 そういうと、散らばっている電気ネズミが描かれた毛布をつかみ、彼女へかける。イベントもないのに何をそんなに徹夜することがあるのか……。

 

「ま、普通に考えて寝ずらいよな。夜中にいきなり叫ぶ奴と一緒に寝るとか」

 

 まだ外は暗く、出勤までには時間がある。とはいえ二度寝すればおそらく遅刻するだろう。

 久しぶりに飯でも作るか。そう考えると、フライパンと食材を取り出して適当な料理を作り始めた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 『銀座の英雄』、『二重橋の英雄』。マスコミや人々は敬意を込めて、本人には甚だ不本意でははあるが、伊丹はそう呼ばれている。

 呼ばれる切っ掛けとなったのは、言わずとも銀座事件が原因である。事件発生後、迅速に皇居への避難誘導を指揮し、多くの人々を救った功績により伊丹は大臣直々に表彰されたのである。

 

「……はぁ。重いんだよなぁそういうの」

「何いってるんですか、大臣から一級賞詞もらったうえ、昇進までしておいて罰当たりですよ?」

 

 そう言ってくるのは、同じ基地に最近赴任してきた倉田武雄三等陸曹である。伊丹とはそういう方面の趣味が合うことから、そこそこ仲がいいのである。

 ここは基地内にある食堂。午前中の課業を終え、倉田と伊丹は昼食をとっていたのだ。

 

「あのね、俺は趣味のために仕事してんの。だから趣味か仕事どっちを取るって聞かれたら迷わず趣味優先なの」

「相変わらずっすね二尉は。それで今のところは?」

「お前それわかってて行ってるだろ……。毎日毎日休日返上で銀座の後始末だよチクショー!」

 

 いくら銀座で活躍したといってもそれはそれ。たとえ英雄様だろうとも出動の連続である。なまじ評価されている分余計に仕事が増えてる気がするのだ。伊丹にとってはもはやいじめ同然の所業である。まあ他の隊員から言わせてみれば一級賞詞もらったうえ昇進までして何を文句言っているのだという話であるが。

 

「ホント同一人物とは思えませんよね。まあそれが伊丹さんの……なんていうか持ち味なんでしょうけど」

 

 かけられた声に伊丹が振り向くと、そこには一人のWAC(女性自衛官)が経っていた。

 肩まである黒髪は束ねて肩から垂らしており、口調に反し快活そうな顔の女性である。

 

「はっきり言っちゃっていいよ~泉。自覚はあるし」

「あら失敬。伝わってました?」

 

 泉二等陸尉、この基地の戦術機大隊に所属しており、狙撃手として活躍している女性である。銀座事件以降、こうして泉は伊丹へ何かと話しかけてくるのだ。

 伊丹の言葉に微塵も悪びれず、泉は彼の隣へ腰を下ろす。

 

「お疲れさん。瓦礫の撤去作業、まだかかりそうなの?」

「今は小隊ごとに交代で作業してます。操縦の訓練になるとはいえ、細かい作業だから神経使うんですよね」

 

 昼食の味噌汁をすすりながら彼女は答える。食べながら肩や首をほぐしてるあたり中々疲れているのだろう。

 

「戦術機も元をたどれば強化外骨格だし、こういう作業にも向いてるんだろうな」

「壊滅的な被害ってわけじゃないんですけどね。それでも大なり小なり瓦礫は出ますし」

「どこもかしこも人手不足ですしね。俺ら普通科の方もこき使われてますし、助けは多いに越したことはないと……」

 

 そういった作業用の機械も当然ある。しかし、やはり早期復興のためにはこういった支援も必要なのである。

 しばらくお互いに仕事の愚痴を言い合ってると、倉田が思い出したように話を切り出した。

 

「そういえば聞きました?銀座の門の前……今は銀座駐屯地ですけど、そこに戦車とか戦術機とかが運び込まれてるらしいですよ」

 

 『銀座駐屯地』、銀座事件のあと、自衛軍は即座に今回の騒動の原因である門を制圧したのである。門の周囲をコンクリートのドームで覆い、周りをフェンスで囲んで通行規制までしていることから、世間ではその様子を『銀座駐屯地』と言っているのである。まあ、調査のためにドローン等による斥候が入っており、そのための施設もおかれているからあながち間違いでもないのだが。

 

「…………おいおい倉田クン?君が何を言っているのか僕にはわからんなあ……」

 

 とぼける伊丹ではあるが、逃がさぬとばかりに泉が追い打ちをかける。

 

「そういえば最近、隊内の一部の義体適用者にイモータル義体の配備が進められているらしいのですけど、…………まあそういうことじゃないんですか?」

「そういうことって何よ!?」

「つまりそういうことですよ」

「…………ふっ。わからんなあ」

 

 相変わらずとぼけつづける伊丹、だが、それに反して泉は少し真面目な声で話す。

 

「『特地特別対策法案』もうすぐ通りそうらしいですよ」

「………………」

 

 その言葉に伊丹は押し黙る。彼女の言葉に少なからず心当たりがあったからだ。

 

「……なんか暗い顔してますね。倉田くんと伊丹さんのことですからよろこぶかなーって思ったんですけどね?ほら、二人とも好きでしょそういうの」

 

 だが、その言葉に対する伊丹の言動はつれない。

 

「つっても今わかってるのは豚とか犬頭の、それもあんまし可愛くないのばっかじゃん」

「ですよねー。こうなんていうか、ケモ耳っ娘とか期待出来たらテンション上がるんですけどね」

 

 謎の軍勢が出現してきた(ゲート)、政府主導で調査を行ったところ、その向こうには広大な、全く未知の土地が存在することが分かったのである。つまり、ファンタジーなどで語られるような異世界が存在するかもしれないのだ。日本政府はこの場所を『特地』と命名し、その特地に関する問題を解決するために『特地特別対策法案』を国会に提出したのである。

 

「なーにそんな湿気たこと言ってるんですか。いるかもしれないじゃないですか喋るライオンとか」

「それって、衣装ダンスを抜けたらそこは雪国でした。ってパターンじゃん」

 

 知り合いの意外なロマンチストっぷりに苦笑する伊丹。だが、確かに望みを捨てるのも性急過ぎるだろう。

 

「もしデカい怪獣とかいたら守ってくんない泉?巨大怪獣と戦うロボットとかお約束でしょ?」

「あはは、もしそうなら私、たぶんやられ役ですよ?」

「射撃徽章持ちが何言ってんだか。マニュアル操作で超長距離狙撃成功させたくせに」

「ヤタノカガミのバックアップ無しでですか?それって……」

「あー、おしまいおしまい!あれはホント偶然と奇跡の結果ですって!!」

 

 そうしてつかの間の休息は過ぎていき、戦士たちはまた任務へ戻っていく。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 数日後、伊丹宅

 

 激しい雨が窓を叩く。突然の豪雨により作業は中止となり、結局その日の課業終了時刻となってしまった。

 痛いほど冷たい豪雨の中帰宅した伊丹は、肩にタオルを掛けながらニュースを垂れ流していた。

 

『当然のことですが、その土地は地図にのっておりません。門の向こうに何があるのか、どうなっているのかは不明です。今回の事件で多くの逮捕者を出しました。今の日本において彼らは刑法による犯罪者、あるいはテロリストとなります。世論では門を破壊せよという声もあります。しかし門がまたいずれ、別の場所へ現れる可能性もありえます。故に我々は門の向こうを日本国内とし、彼の地の調査のため、補償獲得のため、赴くことを決定いたしました』

 

 テレビ画面の向こう、映し出される国会中継の中、現首相北条重則総理の演説が流される。それは、自衛軍を特地に派遣する『特地特別対策法案』が可決した演説であった。

 伊丹は手元にある紙を眺め、そのままベッドに倒れこむ。

 

「決まったんだね、派遣」

 

 部屋の入り口で声がする。それは今伊丹と一緒に暮らしている妻、伊丹梨紗の声であった。

 

「ああ、今度編成される特地派遣隊。その第一波に決まったよ」

「そか」

 

 そのまま彼女は入ってこず、部屋の前に立ったまま話続ける。

 

「特地ってさ、この前の……ああいう化け物がいる場所なんだよね?」

「たぶんな。ああいうの、あそこにはいっぱいいるんだろうな」

「いったらさ、戦いになるかもしれないんだよね?」

「まあ、運が悪ければ。っていうより間違いなくなるだろうな」

 

 しばらく静かになった後、こぼれるようにぽつりとこぼした。

 

「また……、危ないところに行くの?死んじゃうかもしれないのに……」

 

 その言葉を聞き、伊丹は少し返答に迷う。自分は戦うことが仕事であり、命の危険がある場所へ行くのは当たり前だ。それは今も昔も変わらない。

 少し迷った後、伊丹は結局梨紗が何を聞きたいのかがわからずにこう答えた。

 

「大丈夫さ。何かあっても保険金出るし、生活に困ることはないよ。死んだら貯金も使い物にならないしな」

 

 無難な答えだったと、伊丹自身は思っている。だが、梨紗の様子は違った。

 

「そっか」

 

 そうぽつりと呟いて、彼女はリビングへ戻っていった。その時に一瞬見えた彼女の顔は、まるで何かを悟ったような、悲しそうな笑みをしていた。

 

 

 

 

 

 その数日後、伊丹は梨紗から離婚届を受け取った。伊丹梨紗は葵梨紗となり、伊丹耀司は自ら暮らしていたマンションを出て行った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 銀座事件から三か月後、元銀座六丁目交差点。

 かつては車や人が往来していたそこは、今や自衛軍とその兵器が整列していた。

 周囲はフェンスやホログラム投影による交通規制案内で囲まれており、一般車の通行は無い。しかし、封鎖地帯より外は見物に来た野次馬でごった返していた。

 カメラを手に戦車や軍用強化外骨格の写真を撮るもの、報道に来たマスコミ、『戦争法案反対』等のプラカードやホロを掲げる活動家、様々な者が注目する中で、自衛軍による特地突入が開始される。

 総理を始めとした政府高官たちの『お話し』が終わり、今回の特地方面派遣軍総指揮官、狭間陸将が壇上に立った。

 

 「指揮官の狭間である!!これより、門の向こうへの突入を開始する!斥候は何度か行われているが、特地の実態はいまだ不明である。門を越えた瞬間から戦闘がある可能性も覚悟せよ!」

 

 狭間陸将による激励と作戦開始の命令を聞き、隊員たちが配置につく。あるものは軽装甲機動車(LAV)に、またあるものは戦術機用自走整備支援担架や2-42式戦車などへ、それぞれが決められた車両へ乗り込む。

 門を覆うドームが開き、乗車の完了したものから次々と突入していく。運転するもの、乗車するものたちの緊張が最大に高まる。門を抜ければ、即戦闘となる可能性があるのである。

 暗闇の終わりはすぐにくる。門を抜けると、そこは全く別の場所であった。アスファルトで舗装されていないむき出しの地面、そして車窓から見える天候も、昼夜からして異なるものであった。

 号令がかかり、全員が降車する。各隊が地面に伏せ、あるいは倒木などの物陰に隠れる。前方を警戒していた部隊が、敵を発見したのである。

 突入が完了した部隊は三割にも満たない。加えてこちらは罠も、弾除けの土嚢すらも敷いていない状態である。弾幕をかいくぐって接近されれば、完全に無防備となる。

 2-47式機械化歩兵装甲を纏った部隊が前衛に立ち、前方の敵に12.7㎜重機関砲を向ける。

 

 

 

 こうして、特地における特地派遣軍最初の異世界人との接触が開始された。

 

 

 

 

 




用語解説

『2-47式機械化歩兵装甲』
国内製軍用強化外骨格の2047年モデル。12.7mm重機関砲を始めとした高火力武装を装備し、歩兵と連携して運用することを前提に設計されている。そのため爆発反応装甲等の装備はオミットされており、近接戦闘においては他のモデルに一歩譲る。
現在はサイボーグ等の登場で新型のモデルの配置転換が進んでいるが、その高い信頼から未だに運用継続を望む声は高い。在庫処分とか言っちゃダメ、絶対。
(元ネタ:名前、及び兵装はマブラヴ『87式機械化歩兵装甲「MBA-87C」』より参考)

『2-42式戦車』
この時代においてはこちらも旧型戦車であるが、歩兵連携を主とした設計、運用思想のもと開発されている。
そもそも2040年代には『ヤタノカガミ』こそ存在しなかったものの、航空戦力の届かない場所や、無人機の投入が難しい戦場が多く発生していた。そのため、歩兵と連携する、いわゆる全時代に近い兵器が多数開発された。また、その頃はサイボーグの発達も不完全であり、生身の兵士に配慮したものとなった。
(元ネタ:オリジナル)

『戦術機用自走整備支援担架』
戦術機を運搬、及び整備基地より離れた場所で運用するための軍用車両。あくまで簡易的なメンテナンスまでであり、著しく破損した際は撤退するほかない。しかし、戦術機本体の推進剤等を用いずに輸送出来るのはメリットであり、陸上での長距離移動が想定される際に運用される。

『ホログラム』
いわゆる三次元空中投影映像。専用の投影装置を用いて非実体の立体や図形を作り出す技術。実体のある看板などと違い、非実体であるため通行等の妨げにならない。また、映像であるため設定の変更で自由に形を変えることができる。欠点としてはコストがかかること、実体と区別がつかないことである。そのため事故の原因になることも稀によくある。
(元ネタ:色々多すぎて不明。本作ではサイコパスを参考に使用)

『テレビ』
注文すればチョコレートが取り出せる…………かも?
(シラネ)


人物

『泉沙耶』
陸上自衛軍戦術機大隊所属二等陸尉
以前は対馬国境警備部隊に所属し、そこで対空スナイプを行っていた。射撃徽章持ちであり、通信異常によりヤタノカガミが使用不能になった際、補助を受けない戦術機での超長距離スナイプに成功している。
勤務地移転で東京へ来た後、銀座事件にて鎮圧に出動している。なお、本人は童顔であることを少々気にしているもよう。

『伊丹梨紗』
旧姓 葵梨紗、伊丹耀司の妻。
原作と名前が異なるため記述。電脳とか以外は原作とほぼ変わらず。義体化は無し。


人物関連は、あんまり書くとネタバレしちゃうのでこの辺で。兵器の○○式に関してですが、そのまま下二桁を使うと年代があれなことになっちゃうのでこんな感じに。あと、実際の自衛隊に比べて髪に関する規律が少々緩いですが、この辺はあくまで別の組織であるからという感じでお願いします。

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