GATE SF自衛軍彼の地にて斯く戦えり   作:炎海

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最初に一言。

マジすみませんでしたぁぁァァァアァァァァァァ!!!!!

いやほんとごめんなさい。今回あれを入れるにおいて元ネタからの大幅な乖離、独自設定の追加は避けられませんでした。今回はマシですが、今後登場させると無視できないレベルの改変が発生することをお許しください。本当に今回投稿するか半日くらい悩んでたレベルです。




全てはエロスのために。

2016/08/23
指摘された誤字修正しました


第二話 銀座事件 終息/終わりは斯くも唐突に

 かれは若くして竜騎士となった男であった。経験は熟練の騎士には劣るが、その槍の冴えと飛竜を駆る技量は他の同期達の追随を許さぬほどであった。

 彼はこの遠征に選ばれた当初、辺境の地への遠征などという泥臭いことに不満を感じていた。しかし知ればそこは未知の敵が住む国、そこで多大な功績を挙げればきっと素晴らしい栄誉と地位が約束されるだろう。例え未知の敵であろうとも、自分と相棒ならば打ち倒せる。そう信じていた。

 

 

 だが、その希望は敢えなく潰えることとなる。

 

 

 最初こそ彼と、彼が所属する軍は快進を続けた。逃げ惑う敵国の民を串刺しにし、街を蹂躙し続けた。異世界の国は物珍しい物が多く、飛竜の上からみる景色は格別であった。

 上空からの警戒に少々飽き、そろそろ腕の立つ戦士でもいないかと見回していたときであった。

 

「なんとこれは……。くくっ、名を上げる獲物に相応しいな」

 

 彼が見つけたのは、巨大な黒い動く物体であった。その大きさは飛竜以上、伝説の炎龍にすら匹敵するのではないかと言うほどの物であった。

 

「竜か鳥か、あるいは今だ知らぬ怪物か。とは言えこれだけでかい図体、討ち取ればさぞ功績になるだろうな!ーーハァ!!」

 

 一直線に飛竜を駆る。さあ敵はどうする、炎を吐くか水を吐くか、あるいはその巨体で襲い掛かるのか。まだ見ぬ敵の攻撃に身震いする。高揚感と共に槍を掲げ、その大きな腹に槍を突き立てーーーー。

 

「…………………………………………………えっ?」

 

 一瞬の出来事だった。いつもは素直に従うはずの相棒が、突然自分の指示を無視して方向を変えた。その事を彼が把握するより早く、身体中を衝撃が襲う。何が起こったかわからず体をみると、右半身の半分が無くなっていた。なんだ、何にやられた?彼がその疑問も痛みも感じるより早く、衝撃が彼の意識を刈り取った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「目標沈黙。次目標了解、照準変更」

 

 重い音を立てて薬莢が地面に落ちる。落ちていく敵が活動不能になっているのを確認し、重い銃口を次に観測手が指示した目標へ向ける。

 銃を持つのは人間ではない、しかしそれを動かしているのは人間である。人間より遥かに大きく、それでいて人間のように細かな動きを行う巨人。

 

 『戦術歩行戦闘機』略称『戦術機』。元々は作業用に開発されていた強化外骨格に武装を施し、人間に扱えない兵器を歩兵に使用させたのが始まりであった。この戦術はかつては閉所などの限定状況下などで使用されるものであり、航空戦力が整った屋外での使用はほとんどなかった。しかし、核事件以降その戦術は一変した。

 対空防衛システム『ヤタノカガミ』の登場である。現行の狙撃システムとしては最高峰の精度と拡張性を誇る代物である。本来は弾道ミサイル等の超高高度からの攻撃を迎撃するための戦術リンクシステムであったが、通常の対空迎撃へも用いられた。その命中精度はこの時代においても異常といわれるほどであり、捕捉された戦闘機が五秒で撃墜されたほどであった。無論その性能を最大に生かすためには専用の演算装置や衛星や観測手等の補助は必須である。だが、それを差し引いても『ヤタノカガミ』の性能は既存の戦術を一変させるには十分な性能であった。その結果従来の航空戦力や大陸間弾道兵器を用いた戦術は見直しを余儀なくされ、現在のようにまず地上戦力を用いた制空権の確保が行われるようになったのである。そのため、地上において航空兵器が使用できるまでの代替となる兵器が開発された、それが『戦術機』の発展の始まりである。その高い汎用性を生かし、戦術機は戦場において活躍してきたのである。

 

「目標沈黙。……やけにあっさり処理できるわね。」

 

 飛竜を打ち落とした戦術機の操縦士であり、敵の空戦力を打ち落としていた彼女――コールサイン『フェンサー06』はそうつぶやいていた。

 この時代、航空戦力があっさりと無力化されることは珍しいことではない。疑問に思ったのは敵が異様なまでにあっさりと空中の戦力を打ち落とされていったことである。『ヤタノカガミ』配備直後ならばともかく、今の時代に地上や衛星のシステムに対し何の対処もせずに航空戦力を飛ばすことなどまずありえない。それゆえに彼女はこの状況に疑問を感じたのである。―――陽動作戦、あるいは別の何かか……。そして彼女の疑問は正しかった。そう、相手がこの世界の軍隊ならば。

 ところでこの世ではごくまれにではあるが、当事者は真剣にやっているのにはたから見れば喜劇にしか見えないような事態が発生する。この場合もそれに該当するのだろう。フェンサー06の名誉のためにもう一度言っておくが、彼女の疑念はあって当たり前のものなのである。最大の問題があるとすればそれは相手が異世界の、それも対空迎撃という概念を持たない軍であったことである。当然であるが彼女は門の向こう側の敵とはこれが初の接触であり、故に敵がどのような戦術で動いているのか知らない。早い話が敵を過大評価しすぎちゃったのである。敵の能力が不明であるため万全の状態で迎撃態勢を整え何が起こってもおかしくないと最大限に警戒していると、今度はその敵が拍子抜けするようにかかってくれるのだ。変な疑問を持ってしまうのも当然といえるだろう。そして、想定外にさらに想定外の事態が重なった以上余計に警戒を緩めるわけにもいかない。

 こうして片方はあるはずのない地雷を探し、もう一方は何が起こっているのかわからないまま網に頭から突っ込むという何とも言えない光景が発生してしまったのである。当事者たちの名誉のためにもう一度言うが、これは様々な原因が招いた結果であり、彼らには一片たりとも非はないのである。

 

「本部から通信?……S-106小隊をこのブロックの警戒に残して残りの戦力は皇居桜田門に集結せよ。……なるほど、そういうことね」

 

 彼女が確認したのは、現戦域の敵がリアルタイムで反映される戦域マップである。これにより現戦域で活動する敵をリアルタイムで共有することができるのだ。そして現在の戦域マップ上の敵は、そのほとんどが皇居前に向けて進軍していたのである。そして彼女は知らないことではあるが、現在桜田門外では警察と、一人の自衛官が戦っていた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 皇居桜田門付近

 

 重い銃撃音が絶え間なく響く。腹の底へ響く一つ一つが敵の身体を撃ち抜き、その命をもぎ取っていく。すでに凱旋濠も桜田濠も死体で埋め尽くされ、美しかった景色は血で染め上げられていた。

 

「くそッ!!予想はしてたが数が多すぎる。いったいどんだけいるんだよあいつら……」

 

 借りた89式5.56mm小銃を構えながら伊丹は毒づく。それほどまでに異常な数の敵が押し寄せてきているのである。

 すでに交戦開始からそれなりの時間が経っている。もうすぐ増援は到着するだろうが、こちらも相当疲弊している。

 そして何より、装備の火力が足りないのだ。人間型の敵はともかく、オークやトロルを止めるには5.56㎜では火力が足りないのである。

 

「あー、大口径主義のあいつらの気持ちが少しわかったわ。それといまだに現役なんだなこの銃、ほんとすげーわ」

 

 義体が一般化する今、それに合わせた装備の更新も行われている。そんな中で生き残ってきた89式に伊丹は素直な敬意を表する。現在では霞のように消え去ったどこぞのキング・オブ・バカ銃とはえらい違いである。

 

「とっ、アホなこと考えてる場合じゃない。このままだと消耗戦だな……」

 

 現在桜田門には警視庁や皇居警備隊からの増援でそれなりの戦力がそろっている。しかし……。

 

「籠城戦になれば精神的な疲労も大きいからな」

 

 ここにいる人間の全てが殺し合いに慣れているわけでは無い。中には実戦が初めてのものもいるだろう。余裕はあるが気は抜けない、そんな状況である。

 強化外骨格に装備された20㎜リボルバーカノンが空に向けて火を噴く。『ヤタノカガミ』に対応した装備ではないため照準精度は劣るがそれでも放たれる火力はすさまじく、降下してきた竜騎士を肉片に変えるほどの威力を持っている。本来人間の手では扱えない兵器も扱えることこそ強化外骨格の利点の一つである。

 

 そして集まってくる敵の数が通りいっぱいにあふれ始めたころ、それは起こった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 基本的に作戦や部隊武装を展開する場合、必要となってくるのが敵のEEI(情報主要素)である。「どこにどんな敵がいるか」、「どれだけの戦力を配備すれば勝てるのか」その情報が必要となってくる。……しかし、今回に限っては「どんな敵であるか」というのはあまり参考にはならない。なぜなら敵は正体不明、どこの存在かすらもわからない敵であるからだ。しかし、敵がどんな装備をしているのか、あるいはどれだけの脅威を持っているかはある程度交戦すれば判明する。それゆえに作戦本部は今回の件を現有戦力で対処可能であると判断し、銀座付近の戦力に対して皇居前への集結命令を出した。

 作戦は皇居桜田門前に集結する敵勢力を挟撃するもの。幸いというべきなのかほとんどの敵勢力は皇居前に向かって侵攻しており、そこを叩けば一気に敵勢力を減らせるだろうというのが狙いである。

 

 そして、日本側による反抗が開始された。

 最初に気がついたのは誰だったのか?桜田門を囲む軍勢の内後方に位置していた兵士だろう。彼の耳に今まで聞いたこともなような轟音が聞こえたのである。無論ここに来てからは絶えず不思議なものを目にはしていた。しかし、今回はそれらを超えてさらにまずいものが迫ってきているような気がしたのだ。隣の仲間はいかに戦果を挙げるかに気を取られて気が付いていない。しかし、彼には昔似たようなものに襲われた記憶があった。そのときは死に物狂いで逃げ、必死に命乞いをして助かった、しかし次も同じ保証はない。少し逡巡したあと、彼は一目散に駆け出した。仲間の制止を振り切り建物の中へ逃げ込む。それが、彼とほかの兵士たちの命運を分けた。逃げ込む直後、彼は後ろを振り返り自分が正しかったと確信した。その目に映ったのはすさまじい速度で軍へ迫る巨人たち。そう、戦術機による増援であった。

 鎧の兵士や異形の怪物たちがひしめき合う皇居前内堀通り。鬨の声や方向で埋め尽くされた魑魅魍魎の群れの中へ、それらすべての音を塗りつぶす様に爆音が鳴り響いた。

 戦術機隊による掃討である。

 ひしめき合う敵の群れへ36㎜チェーンガンが叩き込まれる。それは今まで放たれていた火力の比ではない。棒立ちの敵はもちろん、オークの背後に隠れようとする敵も、盾を並べてしのごうとする者も瞬く間に殲滅していった。上空からこれを止めようとする飛竜は次々と後衛の狙撃部隊に打ち落とされ、あっという間に全滅していった。

 それだけではない。到着した歩兵部隊や機甲部隊からも銃撃が放たれる。

 敵側も投石機や弓矢などの武器で応戦するが、攻城兵器のほとんどは先制攻撃によって破壊され、放った弓矢もそのほとんどが届かない。もし届いたとしても、その巨体を傷つけることなどできはしないだろうが。

 運よく銃弾を受けなかった者、まだ歩けるものは必死にその場を離れようとする。彼らに理解できたことは自分たちが一瞬で窮地に立たされたこと、このままいれば自分も目の前の巨人に同じように殺されるであろうということだった。あるものは自分たちが追い込まれたことを信じられずに立ち尽くし、またあるものは目の前の巨人へ神に祈るが如く命乞いを始める。少し前まで隣にいた仲間が柔らかい音を立てて血や脳漿をぶちまけ、不幸にも死にぞこなった者が赤黒い血だまりの中で痙攣し続ける。皇居前の三叉路には無数の兵士の血や臓物で出来た絨毯と、放心して立ち尽くす生き残りの兵士のみが残されていた。彼らには目の前のものが何なのかわからない。ただ、それが絶対に怒りを買ってはならぬものであること、自分たちが何かとてつもなく恐ろしいものの怒りを買ったことだけは理解できた。

 そうして動くものがほとんどいなくなったころ。部隊長の号令で銃撃を停止すると、上空に待機していたヘリから次々と隊員たちが降下を開始し、残った敵を拘束し始める。通常の人間であろう敵は生身の隊員が、オークやトロルのような異形はサイボーグや強化外骨格をまとった隊員が行う。桜田門で迎撃を行っていたものたちも加わって速やかに拘束は終了した。

 軍隊は動き始めるは遅いが、いざ動き始めると迅速に行動して目的を達成する。まさに今回の戦いはそれを象徴するものであった。最初こそ主要機能中枢にダメージを受けたために指揮系統や命令が錯綜した結果効果的に対処できなかったが、指揮系統が回復してからは戦力の的確な運用により早期解決を可能とした。

 この戦いにより敵部隊のほとんどが壊滅。壊走したものや皇居へ集結せず各エリアを荒らしまわっていた敵も、追撃によりほとんどが制圧された。いくつかの敵は門の向こうへ逃げ帰ったがその門も制圧が完了し、周囲には調査用のテントや多目的車両が設置され始めていた。

 

 

 飛び去って行くヘリの音と後始末に駆け回る自衛官達の足音を背景に、『二重橋の戦い』は終わりを告げようとしていた。

 

 




用語解説

『戦術歩行戦闘機』
有人操縦型の二足歩行兵器。元々は通常の強化外骨格に武装を搭載して使用していたものが発展し、装甲や武装の増加、内部運動機関等の改良を繰り返した結果誕生したもの。後述のシステムの発達により戦場に出ずらくなった航空機の代替戦力として発達したが、現在ではその運動性と汎用性から兵器として独自の地位を獲得し始めている。…………というのが本作における戦術機の概要で、元ネタの戦術機はその誕生の歴史から少々違うためここでは説明を割愛させていただきます。
(元ネタ:『マブラヴ』およびそのシェアワールド)

『ヤタノカガミ』
核事件以降、大陸間弾道ミサイル等の脅威に対して本格的に対応策を模索する途中、ある兵器生産企業が開発した対空迎撃システム。
当初は戦術機や義体の超長距離への狙撃へ対応したOSとして開発されたものであったが、ある領土防衛戦の際に居合わせた試験部隊がこのOSを用いて敵爆撃機を地上から撃墜させたことで見直され、現在では衛星や演算装置の補助を用いることでほぼ100%に近い精度で航空戦力、および攻撃を撃墜できる総合対空迎撃システムとなった。
また、対空のみならず本来の狙撃用OSとしても使用可能であり、補助を用いなくても優れたOSとして単独使用可能である(もっともその場合の精度は使用者の技量に左右されるが)
(元ネタ:FAでブンドドやってたとき思いついたネタ)



戦術機に関してですが、当然ながら世代が上がるごとに登場が難しくなっていきます。特に武御雷とか出せる気がしねえ……。というかそれのみならず元ネタの戦闘機がこっちの世界だと普通に出てたりするので、名前を借りた全くの別物か、あるいは完全オリジナルの戦術機が出てしまう可能性もありますがご容赦ください。……へたし撃震から変わってきます。
『ヤタノカガミ』完全に中二のノリで作ってその辺にほッぽってたネタを、光線属種の代わりになるよう作り直したものです。というかこうでもしない限り戦術機出せないもん……。
今回は本当に苦労しました。まだ二話目なのにこれだよ……。
それと、コメントでアドバイスをくださった方々、本当に感謝しております。おかげで設定がさらに楽しくなりました。

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