GATE SF自衛軍彼の地にて斯く戦えり   作:炎海

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そろそろ季節は十二月、秋なんてなかった(遠い目)。

スカイリム、未だにアーンゲールの敵対バグだけがどうしても解けないんですよね。
強引にコンソロール使っても失敗でしたし。あれか、「お前にドラゴンボーンの資格など無い」ってか?
このまま声の道を無視して別のクエストに行ってもいいのですが、どうにもしこりが残るんですよね。というか爺ども、自分でシャウト使えって言っておいてキレるなよ!!
ところで、体型MODは7baseが一番形がイイと思います。おっぱいサイコー。

今回、伊丹は主人公らしい主人公です。私もこれを書いている途中で「これはまさに主人公だ」と思ったので間違いありません!!




第十七話 背中合わせのその笑顔―It's duble face.

薄暗い路地裏に銃声がこだまする。

 

「え…………………?」

 

 栗林が後ろを見やると、暗い色の服装の男が倒れていた。伊丹はそのまま男に近づくと、銃口を向ける。

 

「あんた、さっきからずっとついてきてたよな。俺がゴーストハックにかかったとでも思ったのか?さてと、取り敢えず死ぬか、それとも苦しんで死ぬかどっちがいい?」

 

 男の取り落した特殊拳銃を蹴り飛ばし、伊丹は背筋の凍るような声で尋ねた。男が腕を上げようとした瞬間、その肩にもう一発弾を撃ち込む。

 

「誰が動いていいって言った?あんたが何処の誰とかそういうのはいいさ、とりあえず質問だ。地下鉄をジャックしたのはお前たちか?」

 

 冷徹に、冷静に伊丹は男を嬲っていく。その眼は、ただ冷たく男の姿をとらえ続ける。言葉の端々に浮かぶ、静かな怒気がその場を縛ってゆく。

 

「Drop dead……,you cunt!!(くたばりやがれ……、このクソ野郎!!)」

「俺がそんなことを言えって言ったか?あいにく時間がないんだ。今すぐ撃ち殺していいんだぞ?」

 

 そう言いながら、伊丹はさらにもう一発を下半身に打ち込む。路地裏に絶叫が木霊し、男が汗をかきながらもがく。男の袖からナイフを拾い上げると、伊丹は男の眼球にそれを近づけた。

 

「仕込みナイフ、それも暗殺用の特殊仕様か………。お前、これ誰に向けようとしてたんだ?………ああ、答えなくてもいいぞ、さっきの質問が先だ。日本語で言え、どうせ喋れるだろう?」

 

 銃口をずらさないまま、伊丹は男の傷口をナイフで弄繰り回す。たまりかねて呻きながら、男が口を開いた。

 

「Damn…….知らない……、地下鉄のことには関与していない」

「地下鉄のことには……か。それ以外は?」

「…………、知らないといっているだろうこのpsychoが……」

「そいつはどうも」

 

 唾を吐く男に、伊丹はもう二発弾を撃ちこむ。そのまま男の手をナイフで地面に縫いとめると、もう一度尋ねた。

 

「よかったな、義体化しない限りはこれで一生ベッドの上だ。で、なんだって?」

 

 もう一度、周囲が凍えるような声で伊丹は尋ねる。

 

「Aah………!!送迎バスへの工作だけだ。それ以外は本当に知らない、本当だ……!!」

 

 答えを気にすることなく、伊丹は男の顔面を思いっきり蹴り飛ばす。

 

「真実?」

「…………w……wait!Please wait!!(ま、待て……。待ってくれ)。わかった全部吐く、本当だ……」

「そうかよ。ほら、この指も~げろ♪」

 

 無表情で繰り出される声と共に、プラスチックの割れる様な音が響いた。

 その後も、真実を確かめる伊丹と、嬲られ続ける男の問答は続いた。幸いなのは、この場には少なからず、戦いを経験したものばかりであったことだろう。只の民間人であれば、見ただけでも卒倒しかねないような光景であるからだ。しばらくの後、得た答が真実だと確信した伊丹は、後ろに向けて声をかける。

 

「栗林、俺のカバンから身代わり防壁(アクティブデコイ)を取ってくれ」

 

 冷たい声のまま、栗林へと頼みごとをする。普段であれば小言の一つでもいうはずの栗林が、おびえたように肩を震わせた。そのまま恐る恐るカバンを開けると、一つの装置を取り出した。

 

「これ……、電子戦用の身代わり防壁……」

「ああ、それだ。貸してくれ」

 

 身代わり防壁とは、電脳を用いた電子戦用の道具だ。使用者の脳が、フィールドバックで焼き切られないようにするためのものである。

 

「さてと………、電脳錠はもうないし、こいつであんたの脳を弄らせてもらう」

 

 伊丹は、首筋から自身の電脳を身代わり防壁へつなぐ。そして身代わり防壁からもコードを伸ばし、それを男の首筋へつないだ。ちょうど、身代わり防壁を伊丹と男で挟むつなぎ方である。

 だが、直結しての電脳介入を行おうとした直後、それは起こった。

 

「…………不正アクセス警告?――――クソッ!!やられた!!!」

 

 身代わり防壁が作動し、伊丹は強引にQRSプラグを引き抜く。直後、男の身体が痙攣し、白目を剝いてピクリとも動かなくなった。

 

「隊長!大丈夫ですか?」

「ああ、こいつ挟んでなかったら焼かれてたわ。潜伏型のウイルスプログラムか……。電脳に介入されれば発動する類のタイプだ」

 

 栗林の心配する声に、伊丹は男から目をそらさずに答える。

 

「死んだ………?」

「いや、直前で上書き命令ぶち込んで停止させた。けど、脳機能の一部は死んでるだろうな。良くて脳障害、下手すりゃ植物状態だろうな。脳サルベージに期待するしかない」

 

 そう言うと、伊丹は用は終わったとばかりに立ち上がる。その背中を、栗林は困惑するかのような目で見つめていた。

 

「隊長……、貴方一体?」

「只のオタク自衛官、それも昼行燈のダメ人間がこんな技術持ってるはずがないってか?」

 

 その視線に、伊丹は暗い目を向ける。いつもの彼と同じとは思えない、泥の様に濁った瞳だ。

 

「別に大したことじゃないさ。こうでもしないと生き残れなかった」

「生き残る……、ため?」

「興味本位で聞くならやめとけ。中年おっさんの黒歴史なんぞ、痛々しいってもんじゃないぞ」

 

 伊丹は茶化す様な返答をするが、栗林の頭には先ほどの眼が残り続けた。あれは、尋常の生き方をした人間の瞳ではない、もっと薄汚れた………。

 

「いくぞ、栗林」

 

 その思考を中断させるように、伊丹の声が響く。改めて見上げた彼の顔には、先ほどの凍り付くような気配は微塵も残っていなかった。

 

「……って、ちょっと待ってください!まだ一つありますよ、大事なことが!!」

 

 そのまま命令に従いかけた栗林は、直前で踏みとどまる。まだ重要なことがのこっているのだ。

 

「駒門さんです!なんであの人に電脳錠を使ったんですか?」

 

 そう、伊丹が駒門をいきなり襲ったことの説明がまだなのである。この説明がない限り、背中を預けることはできないからだ。

 

「ああ、そういえばちゃんと説明してなかったな。早い話、あの人が最も怪しいからさ。それこそ、限りなく黒に近いレベルでな」

 

 そう、伊丹はあっさりと告げる。そのことに、栗林と富田は怪訝な顔をした。

 

「駒門さんが……ですか?」

「ああ、内通者がいるのはほぼ確定に近かったからな。だが、これだけ罠をかけても特定できないとなると、もう駒門さん本人か、ソレに限りなく近い人物が怪しくなってくる」

 

 そう言って、伊丹は駒門に向き直る。駒門は先ほどの伊丹の襲撃を受けた時から、変わらない姿勢で固まったままであった。

 

「駒門さんが……ですか」

「ああ、彼自身が内通者か、或いは視界を盗まれでもしたか。いずれにせよ、もっとも黒いのは確定に近い」

「ですが……、目を盗まれているならば我々の可能性も……」

「いや、それはないさ」

 

 困惑する富田に、伊丹は確信するかのようにかぶりを振る。

 

「なぜです?」

「守護天使が付いてるからさ」

 

 そういうと、伊丹は自身の頭を叩く。

 

「富田、栗林、お前たち出かける前に、幕僚から外部記憶装置を渡されただろ?その中の防壁プログラムを入れとけって」

「ええ、あれってそんなにすごいんですか?」

 

 その割にはそこまでの容量もなかったような、と首をかしげる富田に、伊丹は苦笑を浮かべる。

 

「あれは通常よりも強力な攻勢防壁のプログラムだ。それだけじゃない、知りうる限りほとんど大量の電子戦用プログラムを組み合わせた、『ぼくのかんがえたさいきょうのぼうへき』を地で行く化けもんソフトだよ。正直国際法を楽しく踏み越えてるヤバ目のプログラムなんだ。終わったら消しとけよ、残してて面倒なことになっても知らんからな」

「こわ……、なんつーもの入れさせてるんですか……」

 

 栗林が呆れたように返す。

 

「それに、確証はもう一つあるんだ……」

「それは?」

「言ってもいいけど、リアルで消されかねないぞ?」

 

 黒い笑みを浮かべてそう返す伊丹に、二人は全力で首を振る。今しがた既にギリギリの話を聞いた後に、さらにその上を行くであろう話を、聞きたくはなかったのである。

 

「さて、それじゃあ行こうか。とにかく、ここは離れた方がいい。少し長いをし過ぎた、追っ手に見つかる前にトンズラするぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは………?」

 

 路地裏を駆けること少し、こそこそとしながら伊丹一行がたどり着いたのは、少し古めのマンションであった。

 

「え?俺のセーフハウス」

 

 あっけらかんととんでもないことを言うと、伊丹は扉を開けて入っていった。それに慌てたように、部下二人も続いていく。

 

「セーフハウスって、隊長本当に……、いや何でもないです」

 

 少なくとも、普通の自衛官が持てる様なものではない。セーフハウスを維持している時点で、きな臭さは比ではないのだから。

 

「まあ、そのうち引き払う予定だったんだがな。今じゃあほとんど使わないし」

 

 そう言うと、伊丹は部屋の鍵を開ける。……扉の奥からは埃臭い……、ではなく何故か生活臭溢れる匂いが出てきた。

 

「人……、住んでます?」

「あー、やっぱり使ってたか」

 

 部屋の中には、大量のアニメ系毛布やフュギア、紙の本が並んでいた。

 

「セーフハウス?」

「……旧な。空き部屋使わず維持できるほど、自衛官の給料高くねーんだよ」

 

 生活臭のする部屋を、一行は奥へ入っていく。ゴミ袋に詰まったカップ麺の殻、書きかけの原稿用紙、ついさきほどまで誰かがいた形跡がそこら中にあった。

 

「あいつ……、人が維持してるからって入り浸ってるなこれ……」

 

 伊丹から、呆れとも苦笑とも取れるような声が聞こえてくる。

 

「い、イタミィ……。何なのよこれぇ……」

「なんというか……、蛮族の住処ような散らかり具合だな……」

 

 他の面々も、その酷さに呆れ返る。そのくらいの散らかり具合であったのだ。

 

「………何て言うか、見るからに駄目人間っぽい人が住んでそう」

 

 栗林が率直な感想を呟いたその時、部屋の玄関から物音がした。

 

「ーーっ!?誰か?」

 

 先程まで追われていた事もあり、その気配に敏感に反応してしまう栗林。彼女がそんな反応をするのも、無理はないだろう。彼女は咄嗟に、近くにいたテュカを庇うように立つ。富田と伊丹も各々に動き、何時でも迎撃出来るよう鹵獲した銃を構える。

 

「ひっ………、だ、誰よあなた!!」

 

 だが、返ってきたのは素人丸出しの怯え声であった。その声を聞いた伊丹が、ハンドサインで銃口を下ろすように伝える。

 

「久しぶりだな、梨沙」

「へ………、先輩?」

 

 伊丹がその人物の名前を呼ぶと、気の抜けたような声と共に廊下に面した扉が開く。そこには、ビニール袋を下げ、大きな眼鏡をかけた女性が立っていた。そう、ここに住んでいたのは、伊丹の元妻の梨沙であった。

 

「よっ!久し振り」

「あれ、先輩明日こっちによるんじゃなかったの?て言うかそこのかわいい子達誰よ?」

 

 周囲が呆然とするなか、元夫婦の感動の再会は、あっさりと終了したのであった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか隊長がご結婚なされていたとは」

「意外ねぇ」

 

 周囲が奇異の眼差しで見つめるなか、当の本人達

はそれぞれが知らぬとばかりに好きにしていた。

 他の面々も、棚に置かれたフュギアを気味悪がるもの、部屋の角に置かれた薄い冊子を読み耽る者達など様々である。

 

「で、なんで巻き込んだのさ?」

 

 ペンタブを繋げたパソコンの前に座りながら、梨沙はじっと伊丹を見つめていた。

 

「ここしかなかったのさ。必要な道具も揃ってるし、近くのホテルに転がり込むよりかはずっと良い。巻き込んだのは………、その、悪かったよ」

 

 伊丹がそう言うと、梨沙は「そっか」とのみ呟やき、画面に目を戻していた。

 

「聞かないのか?詳しいこと」

「いいよ。先輩、困ってるんでしょ?ていうか、ここはそもそも先輩の持ち物だしさ、私が文句を言うのも筋違いじゃん。光熱費浮かすために転がり込んで、その上文句とか人としてどうよ?それにどうせ、また言いにくいことなんだろうし」

 

 ペンを走らせながら、彼女はそう返す。画面を向いている梨紗の表情は、伊丹からは何も見えない。ただ、その言葉の端々には、不安よりも安堵に近い感情があった。

 

「先輩はいつもそう、一人でどっかに行っちゃう。先輩が死んだら義母さまもあの子たちも、皆悲しむんだよ?」

「………………気付きはしないよ、あの人はもうな。それに、俺はお前に子供を産ませた覚えはねえぞ?」

 

 陰のある声で伊丹がそう言うと、梨紗は笑いながら振り向いた。

 

「分かってるくせに……。心配してたよ、白菊のみんな……」

「会って自分で伝えるさ、元気だってな。何人か帰国しているらしいし」

 

 懐かしそうな目で、伊丹はカーテンで閉め切った窓を見つめる。

 

「二霞は今、太郎閣下と一緒にいるらしい。十夜は対馬から離れられないってさ」

「それ、私に言っていい情報なの?」

「知らない仲じゃないだろう?」

 

 梨紗の呆れた声に、伊丹はあっけらかんとしながらそう言う。

 

「あの頃からずいぶん経つのか……。懐かしいね、皆の声。先輩があの子たち連れてきたときは、何事かと思ったよ」

「癇癪で家が吹き飛んだけどな。今となっちゃあ……、いや割とひどい思い出だなやっぱ……」

 

 頭を押さえながらそう話す伊丹に、梨紗はころころと笑う。

 

「笑い話にできるなら、それはきっといい思い出だよ。少なくとも、笑いあえた思い出………」

 

 梨紗はそう呟くと、嚙みしめるように天井を見つめた。伊丹には頭が痛く、梨紗には楽しかったらしいその思い出は、今では過去のものであった。

 

「ねえ先輩。先輩は、今でも夢に見るの?あのこと…………」

「…………………ああ、頭ん中に焼きついてるさ。ずっとな……」

 

 

 

 

 暗い夜が過ぎ、時計の針は回り続ける。日が明けるのは、もうすぐそこであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カーテンを閉め切った暗い部屋の中で雑魚寝をすること数時間、皆疲れているからか、部屋の中は寝息とパソコンの駆動音のみが聞こえていた。

 そんな中、栗林は見張り番を交代し、窓の外を眺めていた。

 

「尾行の気配はなし………、か。やっぱり駒門さんなのかな………?」

 

 朝食のツナマヨサンドをかじりながら、栗林は思わず呟いていた。窓の外は明け方で、空もうっすらと白みがかっていた。

 

「うわ、このサンドイッチ不味…………。って、これ義体用食じゃん」

 

 かじったサンドイッチの不味さに顔をしかめながら、栗林はコンビニ袋を漁る。ここに入っているものは全部、冷蔵庫に元々梨沙が入れていたものである。

 

「あ、ごめん。先輩用に買ってきたの、分けるの忘れてたわ」

 

 その様子に気が付いたのか、近くでペンタブを握りながら作業をしていた梨沙が謝罪を口にした。

 

「いえ、自分達が勝手に拝借してますので。………こっちは大丈夫かな?」

 

 取り出した袋を眺めながら、栗林は半眼で文字を眺める。袋には、『おにぎり麝香猫果味 130円』と書かれていた。

 

「ん、どうしたの?」

「いえ、何でもないです」

 

 そう言うと栗林は、持っていたおにぎりをそっと袋へしまった。誰だろうこんなゲテモノを買ったのは。

 

「伊丹隊長って、ゲテモノとか好きなんですかね?」

「んー、あの人割りとその辺ノリが良いからねー。ドリアンは私の趣味だけど」

 

 どうやら、元夫婦揃ってゲテモノ好きらしい。そう思ったとき、ふと栗林の中で疑問が芽生えた。

 

「あの………、夫婦って離婚しても、一緒にいるものなんでしょうか?」

 

 栗林も、今年でそろそろ結婚を考える年頃だ。だからこそ、この元夫婦の在り様が、少しだけ気になったのである。

 

「んー、どうだろ。私も先輩も、今のところ別れた後の方がうまくいってるんだよね」

「別れた後の方が?」

 

 離婚とは上手くいっていないからするものなのではないのか?それなのに「別れた後」の方が上手くいくとはどういうことか。何故と考える栗林に、梨沙は自嘲気味に呟く。

 

「うん、そーだねー。何て言うかさ、妻としての役割を演じられなかった?そういうのかな」

 

 やることはやってたんだがねー。と、梨沙は遠い目をしながら伊丹の寝顔を見る。

 

「私自身、妻っていうものを甘く見てたのかもしれない。先輩は良くしてくれたよ?少なくとも酷い夫とかそう言うのじゃなかった」

 

 

 

 …………けどね。

 

 

 

「私には、あの人は重すぎた。逃げたんだね、私。あの人が磨り減っていくのを、私は止められなかった。…………はは、本当最悪の女。身勝手だ」

 

 蔑むように、梨紗は自分の手を見つめる。

 

「私はさ、あの人が落ちていくのを止められなかった。受け止めるには重すぎて……、それで逃げ出しちゃったんだ。私じゃ……、あの人の支えにはなれなかった」

「それって………?」

「……ああ、ごめんね。こんなくっそつまんない話しちゃって。ようはさ、お嫁さんに行くなら覚悟しとけよー!ってこと。……って私が言っても説得力無いか……」

 

 栗林は伊丹のことについて梨紗に問おうとしたが、彼女はすぐに話を打ち切ってしまった。

 

「もう朝が明けるし、そろそろ皆も起きだすでしょ。さて、これからどうしよっか?」

 

 そう言いながら、梨紗は奥の部屋へと入っていってしまった。取り残された栗林は、開けかけた口をそのまま、彼女を見送るしかなかったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殿下、これは……」

「ああ、日本の芸術作品。その一つだろう」

「まさか、ここまでの芸術が存在したとは」

「これは…………。見ろボーゼス、ここまで詳しく。おお!こんなところまで!!」

「まあ!素晴らしいですわ!!ところで殿下、この来訪の終了後ですが………」

「おのれボーゼス、抜け駆けか?」

「いえ、このボーゼス。必ずや技術を暴き、わがものとして見せます。しかる後には我らが原点となるグレ×ワルを……………」

「そうか!!そうかそうかそうか……!!ああ、想像するだけで心が躍るな!ふ

、ふふ、ふふふ腐ふははははは!!」

「………ふ腐ふ。殿下、わたくしもです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 太陽は落ち、また昇る。開けぬ夜は無く、覚めぬ夢もまた無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして始まらぬ夜もなく、安寧の終わりもまた必定である。

 

 

 

 

 

 

 




用語集

『身代わり防壁』
電脳を用いた作業を行う際、過度な負荷により電脳が焼き切れ、作業者が死亡するケースがまれに存在する。身代わり防壁は、そういった過度な電流を遮断するための使い捨ての防壁のことである。電子戦においては重要であり、これがあるか無いかで生存率が大きく変わる。ただし大きさもそれなりであり、徒歩での移動中などは使用が困難である。また、絶対ではなく潜り抜けての電脳への攻撃手段も存在する。

『サイボーグ食』
サイボーグ用の食品。生身の人間が食べても問題はないが非常にまずい。全身義体に必要なもののみで構成されており、全身義体であればこれのみで生活可能である。値段も安価であり、口が義体化されていれば味覚もデータでごまかせることから、全身義体適用者では好んで購入するものが多い。グルテン以外は電脳と義体用のマイクロマシンがほとんどである。今話で栗林が食べたものはツナマヨ味付けがされたもの。ただし電脳の味覚データと連携させるための味付けであり、生身の栗林には薄いツナマヨらしき味がするグルテンの塊になる。味も噛み応えも最悪である。

『おにぎり麝香猫果味 130円』
コンビニのおにぎり、ドリアン味。食べた客曰く「なぜ存在するのかわからない物体」、「金の無駄、買ったことをおにぎりに懺悔したいレベル」とのこと。



主人公性難聴『え、なんだって?』を患っている、これはつまり伊丹は『よくある主人公』であるということに他ならない!!(名推理)


はい、わかっていますごめんなさいお願いだからそのナイフしまってください。あ……、やめて、そこは曲がらない方向……。ああぁぁぁあぁぁぁあああぁぁぁあああ!!!!!!!!!!(めきめきごりゅっ)


というわけで今回は主人公らしい難聴&梨紗再登場でした、最後に何かあるけど見てない方向で。
敵がどこかもわからない、味方が誰ともわからない。不可視の糸が伊丹一行をからめとる。首に回ったその糸は、ほどくにはすでに遅すぎた………なんつって。


次回「俺はおとんじゃありません!!」

  
どれだけ汚れた手だろうと、それでも救った笑顔がある。



タイトルは未定です。

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